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地獄の道化師



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地獄の道化師の評価: 4.00/5点 レビュー 17件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全11件 1~11 1/1ページ
No.11:
(5pt)

オイ、お前には、この世に絶望した人間の気持ちが分かるかね。ウフフフフフ

常人の想像を絶する悪魔の知恵、狂人の幻想。悪魔の着想。狂人の叡智。狂人の国の論理。こういうおどろおどろしい言葉が並ぶ。まさに乱歩節。私は、本作のプロットはよく出来ていると思う。トリックは手垢に塗れており、現実的にやや無理があるのは確かだが、本格推理小説ではそもそもないのだし、乱歩の代名詞たる通俗スリラーものとしては傑作である。

第一の事件、彫像轢死事件。踏切内に、オープンカーより石膏で作られた若い美女の裸女像が落ちてしまう。列車に轢かれるや、石膏像の中から本物の美女の死体が出てくる。死んだ人間が塗りこめられていたのだ。たしか乱歩の『一寸法師』にも似たような描写があった。が、顔面がほとんど原型をとどめておらず、所持品もないので、身元鑑定が行えない。昭和14年の作なので、DNA鑑定などはできないものの、指紋照合や歯型鑑定などはできたかもしれない。が、その辺はさらっと身内の人間による、「身体的特徴の一致」によってパスしてしまう。昔はこんなもんだったのかなと思いきや、後ほど、伏線となってくる。

第一の事件の後も、犯行は続く。なんと、第一の事件の被害者のもとに、生前、奇妙な道化師の指人形が送りつけられていた。被害者は、その指人形が送られて以降、自分の死を暗示させる言動を取っていた。そのように証言をした妹が、警察署からの帰り道、その指人形にそっくりな道化師に後を付け回され、

”ふと気が付くと、耳朶のあたりに生暖かい人の息吹が感じられた。あい子はギョッとして立ちすくんだ。そして、突然、ねちねちとした太い嗄れ声が鼓膜をくすぐったのである。「オイ、お前には、この世に絶望した人間の気持ちが分かるかね。ウフフフフフ、それがどんな気持ちだかわかるかね」今にも倒れそうな気がしたが、それをやっとこらえて、怖いけれども、振り向かないではいられなかった。首をねじ向けて、ヒョイとみると、肩の上に道化師の顎が乗っかっていた”

こういう慄然とした文章を書かせると乱歩の右に出る者はいない。妖気に溢れ、怨念に満ちた、読む者を震撼させる表現は、非常に臨場感、スリル満点。道化師の人を食ったような態度は恐ろしく、明智の手をすり抜けて、やすやすと第二の犯行を遂げてしまう。

それにしても乱歩の筆致はすさまじい。例えば、次のような文章はどうであろうか。

”やがて、屏風の框の畳から一尺ほどの高さのところに、白い虫のようなものが、ポツンと現れた。そして、その白いものが、少しずつ、少しずつ大きくなっていった。それは人間の指であった。指が極度の臆病さで、屏風の端から、麗子の方へ伸びてくるのであった”

通俗怪奇小説は伊達ではない。残念ながら、こういう演出の仕方は、その後の小説家には受け継がれず、例えば少年漫画である金田一少年の事件簿などに主役を奪われた感がある。私も、コナンや金田一などの漫画世代だが、乱歩の小説を受け継いだのは彼ら少年漫画の世界であったのは悲しい。乱歩のような筆力を持った小説家の登場が待たれるところだ。

最近の作家の、表面的なエログロナンセンスを掻撫するような作品の横行に対し、呆れるよりも、むしろ痛ましい気持ちになってくるのだ。内に秘めた狂気の発情、積年の頃から増幅された劣情がもたらす情欲的な嫉妬、飢えた野獣のように求める肉感的な快楽と挫折、そういうものを艶消しのような表現で幼く露見させては鼻白むのである。もはや、乱歩の作品は「通俗」スリラーとか、「通俗」怪奇とは呼べなくなってしまったのかもしれない。高尚なものとなり、手の届かないものになってしまったのかな。
地獄の道化師 (江戸川乱歩文庫)Amazon書評・レビュー:地獄の道化師 (江戸川乱歩文庫)より
4394301491
No.10:
(4pt)

地獄の道化師 江戸川乱歩

女の暗い情念に、戦慄しました。 普通、ここまでがんばる女って、いるかしら。
地獄の道化師 (江戸川乱歩文庫)Amazon書評・レビュー:地獄の道化師 (江戸川乱歩文庫)より
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No.9:
(5pt)

江戸川乱歩の傑作選〜設定の妙と懐かしの光景も

小学生の頃、学校の図書室で借りて貪り読んでいたのが、
江戸川乱歩のジュニア向けシリーズでした。
大きく怪人二十面相と、そうでないものとに分かれ、
どちらかというと、後者のほうが少年心に面白かった記憶があります。
犯人探しそのものもさることながら、警察との微妙な駆け引きの中で、
小林少年をうまく用いながら、みずからの天分や推理力のみを頼りに、
寸でのところで事件を解決に導く明智小五郎の技に、
少年時代の僕は、探偵という仕事に憧れたものでした。
本書も、乱歩の代表作二編が収められたものですが、
すぐに犯人が割れるわけではなく、いくつかの重要な伏線が意図的なものである可能性まで含めて、
装いの中に、真相のカケラを辿ってゆくプロセスから、最後には見事に全貌が浮上し、
しかし、明智は傍証として、その一部に重要な探りを入れることを忘れず、
極めて入念なアプローチだと感心させられることしばしばであり、
またもや完全犯罪は防がれるのでした。
蔦の絡まる洋館風の瀟洒な建物や、当時オープンしたてのデパートなど、
昭和の懐かしい光景もあちこちに登場するので、
それらも併せて、設定の妙味を愉しんでもらえたら、と思いました。
地獄の道化師・一寸法師 (春陽文庫―江戸川乱歩文庫)Amazon書評・レビュー:地獄の道化師・一寸法師 (春陽文庫―江戸川乱歩文庫)より
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No.8:
(5pt)

DVDと同時に買いましたが原作は読むべきですね

このドラマ、BSでもDVDでも別の配役で監督も別(だと思う)で観たのですが、双方に違いがあり、原作を読みたくて取り寄せました。謎が解けました。どうしても俳優の個性とか脚本家とか、まぁ監督もそうなのでしょうが、変えてしまいたくなるのでしょうね。原作を読んで乱歩のいいたいことがよくわかり、当然登場人物の本当の職業、音楽の選曲などの違いを知ることができました。
原作を読むのが一番いいとわかりました。乱歩の小説の中でもすぐれた作品に間違いありません。
地獄の道化師―江戸川乱歩全集〈第13巻〉 (光文社文庫)Amazon書評・レビュー:地獄の道化師―江戸川乱歩全集〈第13巻〉 (光文社文庫)より
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No.7:
(4pt)

2作品収録

どちらも似たような展開ですが、どちらも存分におぬぬめ楽しめますm(_ _)m

地獄の道化師 は 明智小五郎 vs ピエロ
一寸法師 は 明智小五郎 vs 一寸法師

どちらもキャラ立ちした殺人犯ですが、ピエロ vs 一寸法師 という構図にした場合、どちらが魅力的か?
ひとそれぞれ好みによりますが、両者互角ということにしときます。
犯人は意外や意外です。
地獄の道化師・一寸法師 (春陽文庫―江戸川乱歩文庫)Amazon書評・レビュー:地獄の道化師・一寸法師 (春陽文庫―江戸川乱歩文庫)より
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No.6:
(5pt)

誰の「地獄」か

『地獄の道化師』とは「地獄から来た恐ろしい道化師」という単なるタイトルロールではない。
切羽詰った犯人が土壇場で仕掛ける絶望的なトリック自体が「地獄」なのだ。
乱歩全作品中一二を争う陰鬱と凄惨。少年の頃に読んで受けたトラウマは今も消えない。
地獄の道化師・一寸法師 (春陽文庫―江戸川乱歩文庫)Amazon書評・レビュー:地獄の道化師・一寸法師 (春陽文庫―江戸川乱歩文庫)より
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No.5:
(4pt)

一寸法師の方が面白い

地獄の道化師は、最初に思いついた陰鬱なイメージを無理につなぎ合わせた結果だと思いますが展開がやや強引すぎて、どうも納得感に欠ける結末になっています。むしろ表紙では「他一篇」と省略されている「一寸法師」の方がはるかに面白いです。色々と制約のある現在では大々的に宣伝できないのでしょうか。
地獄の道化師・一寸法師 (春陽文庫―江戸川乱歩文庫)Amazon書評・レビュー:地獄の道化師・一寸法師 (春陽文庫―江戸川乱歩文庫)より
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No.4:
(4pt)

一寸法師の方が面白い

地獄の道化師は、最初に思いついた陰鬱なイメージを無理につなぎ合わせた結果だと思いますが
展開がやや強引すぎて、どうも納得感に欠ける結末になっています。

むしろ表紙では「他一篇」と省略されている「一寸法師」の方がはるかに面白いです。
色々と制約のある現在では大々的に宣伝できないのでしょうか。
地獄の道化師・一寸法師 (春陽文庫―江戸川乱歩文庫)Amazon書評・レビュー:地獄の道化師・一寸法師 (春陽文庫―江戸川乱歩文庫)より
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No.3:
(5pt)

「地獄の道化師」など

本巻には「地獄の道化師」「暗黒星」「幽鬼の塔」に少年探偵団
ものの「大金塊」が収録されている。「地獄の道化師」はおどろ
おどろしい展開ながら、本格的な犯人探しものに全力投球した
乱歩がうかがえる佳作である。エログロ表現を書けなくなった
当時でも乱歩の筆は読者にからみつくような力を持っている。
地獄の道化師―江戸川乱歩全集〈第13巻〉 (光文社文庫)Amazon書評・レビュー:地獄の道化師―江戸川乱歩全集〈第13巻〉 (光文社文庫)より
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No.2:
(5pt)

乱歩らしい

地獄の道化師・一寸法師ともに乱歩らしい作品です。私は「地獄の道化師」の方は後半で犯人が分かりましたが、「一寸法師」の方は最後まで分かりませんでした。両作品とも明智小五郎が登場しますが、特に「一寸法師」では明智が法を守るために探偵をしているわけではなく、あくまで自分の謎解きを楽しむために探偵をしている様子がうまく表現されているように思います。現代では不適切な表現が多く含まれていますが、いずれも名作であるのは間違いありません。
地獄の道化師・一寸法師 (春陽文庫―江戸川乱歩文庫)Amazon書評・レビュー:地獄の道化師・一寸法師 (春陽文庫―江戸川乱歩文庫)より
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No.1:
(5pt)

悲しき女道化師

婚約者が自分をどうしても愛さず、美しい妹に惹かれてしまう。婚約者の音楽家仲間の女性にも嫉妬して凶行に走る悲しき「女道化師」。作品中、犯人はひとことも話さない、という設定だったように思いますが、犯人の凶行がなによりも雄弁に犯人の感情を物語っている点が凄絶だと思います。
地獄の道化師 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:地獄の道化師 (角川文庫)より
4041053129

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