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さよなら妖精
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さよなら妖精の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.95pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全88件 61~80 4/5ページ
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著者の出世作らしいボーイ・ミーツ・ガール・ミステリー(と中に書いてありました)。 ある雨の日に偶然、主人公は一人の外国人少女と出会う。彼女は行くあてもなく途方に暮れているところで、結局は主人公の口利きもあり同級生の家に住むことになる。それがきっかけで、マーヤというその少女と主人公たちとの不思議な交流が始まり……。 お話どうこうではなく、まず文体がとても気になりました。 この小説は、おそらくは「本格ミステリー」と呼ばれるタイプの小説です。で、文体もほぼそれに準じているように思えます。(僕も詳しくないので曖昧ですが) この文体がものすごく癖のある文体なのです。 なんと言うか、ある意味でとてもキザな文体、あるいは「賢い」風の文体とでも言えばいいのでしょうか。 正直、慣れていないとかなり違和感を覚えます。 この点、ミステリー好きでないととっつきにくいかもしれません。 ただ、お話自体は小ネタも含めてほどほどに面白く、青春物語としても読めるので、慣れれば楽しめるかもしれません。 マーヤという少女の人物造形が秀逸なので、マーヤを想像するだけでも楽しめる要素はありです。 でも、僕はこの文体が嫌い。 こういうのが好きな人には、西澤保彦さんなんかをお薦めします。 | ||||
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平成3年(1991年)4月、高校3年生の守屋路行は、橋のたもとで雨宿りする白人少女マーヤと出会う。守屋と3人のクラスメイトは、マーヤを中心に、少し刺激的ではあるが平和な2ヶ月が過ぎてゆく。 マーヤが帰国しようという直前、守屋は受験勉強の合間を縫って、本を読んで彼女の故郷のことを知ろうと必死になる。だが、所詮は座学。マーヤは「人間は、殺されたお父さんのことは忘れても、奪われたお金のことは忘れません」と言って、悲しく彼を突き放す。そして、マーヤの送別会の日、クラスメイトの太刀洗万智が中学留年していたことを知らされる。 そしてマーヤは故国に帰った。 それから1年後、大学生になった守屋とクラスメイトによる謎解きが始まる――。 本書は、典型的なボーイズ・ミーツ・ガールの青春小説であると同時に、ミステリ小説でもある。なにしろ、私がご贔屓の創元“推理”文庫から刊行されているのだから。 舞台こそ藤芝市という架空の都市だが、主人公・守屋の日記を読み返すというスタイルで現実の世界情勢とリンクしているため、いやが上にも登場人物の現実味が増してくる。 守屋は私より10歳ほど年下。そして、あの年、ユーゴスラヴィア紛争の映像をテレビで見ていた。 私たち日本人は、(少なくとも飛鳥時代以降)単一民族であり、単一の母国語を話し、民衆による革命はなかったと教えられてきた。だから、多民族国家だったユーゴスラヴィアの内情は、本や新聞を読んでテレビの映像を見たくらいでは理解できない。 そして、生まれてから藤芝市を出たことすらなかった守屋にとっては、中学留年という異質な経歴を持つ太刀洗の気持ちすら分かってやれなかった。 さて、そんな守屋も、いまや30代半ば。きっと日本の会社で中堅リーダーとして頑張っているに違いない。はたして彼は、ユーゴスラヴィアのその後を知っているだろうか。 本書が出版されてから少し後、マーヤの想いにもかかわらず、ユーゴスラヴィアを構成していた6つの共和国はそれぞれ完全に独立する。この事実が、物語をいっそう切なくさせているのである。 | ||||
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著者の初期作(第3作目)にあたるこの「さよなら妖精」は、初期の最高傑作ではないかと思います。「島国ニッポン」の尚かつ地方都市の高校生達と、今は無き「ユーゴスラヴィア」から来た同年輩の女性との、たった2ヶ月の出会いと別れ・・・女性は一人の青年を「覚醒」させて、母国に帰って行きますが、「ユーゴスラヴィアの果たして何処に帰ったのか」が、最大の「謎解き」となっています。そして、この視点こそが、この作品を他とは一線を画した、傑作の高みに押し上げています。著者は「日常的な」物語を描く事が多く、この作品もやはり「日常的」です。しかし「日本人」と「ユーゴスラヴィア人」が、その「日常」の中で出逢う事にこそ、この作品の大きな意義を感じます。この作品は、出来るだけ若い人に読んで貰いたいです。そして大人になって、堂々と世界に飛び出して行って貰いたい・・・なぜかそんな気持ちにさせる、素晴らしい一冊です。 | ||||
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私は、著者の短編「玉野五十鈴の誉れ」(Story Seller (新潮文庫)収録)を読み、その独特な世界と完成度に感心し、「この著者のほかの本を読みたい」と思いました。そして、多くのレビュアーさんが絶賛する(あるいは好意的にレビューする)この作品を手に取りました。 私にとって本書は少し冗長に感じる部分もあり、期待が大きかった分やや期待はずれの要素もありましたが、全体としては、異文化を素直に受け止めようとするマーヤ(ユーゴスラヴィアという独特の状況にある外国から来た少女)も、真摯に考え生きようとする主人公(地方都市に住む男子高校生)も、そのほかの人物も好感がもてる作品です。 また、冒頭の出会いのシーンから全編を通じての雨や湿気を含んだ重い空気感は、なかなか印象的です。 謎解きの要素は少なく、ミステリーとして読む本というよりは、普通の小説として読む本と思います。 | ||||
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ユーゴスラビアから来た少女と高校生たちの2ヶ月の交流を描いた青春小説. 外国人が見せる大人びた言動と,それに相対する高校生たちの未熟なりに真摯な受け答えが心に残る. 同世代の外国人が国のために,という使命感を帯びて海外を見に来るということ自体が, 部活と受験と恋愛くらいしかイベントのない日本の高校生には新鮮であろう. また,外国人というフィルターを通して初めて実感できる日本の姿がよく描かれている. それは,ユーゴスラビア人の少女が語る,かの国の社会情勢,文化背景に非常にリアリティがあるからであろう. 2ヶ月の交流の中で得たものはユーゴスラビアとの相対の中で見た日本の姿だけではない. これといって熱中できるもののなかった主人公にできた関心の対象や 表面的な付き合いしかしていなかった仲間の別な側面というのも 当たり前の高校生活だけでは出会うことはなかったはずである. 分裂した母国に帰って行った少女が,どの国に帰ったのかが, この作品の最大の謎解きであり,伏線の貼り方や解決もよくできている. 最後に目にする手紙の内容は,ある程度予測可能とはいえ,なんとも言えない読後感を与える. 作者の描く青春像には,どうすることもできない壁にぶち当たる無力感が描かれることが多いが, その中でも本作はとびきりのものといえる. | ||||
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東欧から来た少女と、日々をたんたんと生きる少年のボーイミーツガール作品。 何かにのめりこむことのない高校生が、東欧からきた少女との交流を通じて、 自分のやりたいことをみつけます(?)。 日常の謎を推理する場面と、東欧からきた少女と高校生たちの交流が 交互に進み、読むことに飽きません。 ・人が死んでばかりの推理小説に嫌気がさした方 ・東欧の歴史に少し詳しくなりたい方 ・米澤穂信が好きな方 にオススメの作品。 | ||||
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1991年4月。日常を送っていた高校生たちが違う日常を過ごす少女と出会うことによって、日常の境界が曖昧模糊となっていくひと時を描いた物語。 当初この作家氏の評価も出版物も何も知らないでタイトルへの好奇心のみでこの本を手に取った(笠井潔氏のバイバイエンジェルとのタイトルの相似ゆえにと思われる)。読み始めると一切の無駄な描写を省いた簡易的かつ古典とも思える美しい文体を意識した文章に目を奪われた。そして次第に物語の登場人物たちのいい意味での没個性にはまっていった。 自分のくだらない文章でこの物語を細かく評価する気はありません。ただ、この物語をまったくの無関係な第三者に推薦する根拠としてどうしてもいたいことが一つだけあります。見知らぬ国で起きている悲劇への無関心、当然の中に隠れている不思議、思春期に訪れる自分への可能性の挑戦。全てまとめたそれらは、自分たちの歩んできた軌跡そのものではないのか、ということです。この物語の続きを歩んでいく決意を固めた人間、放棄した人間も等しくこの物語を読んで、今の自分を愛おしく思ってほしいです。 私たちは生きているからです。そんなことを思わせてくれた本でした。 | ||||
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ユーゴスラヴィアからやってきた少女との偶然の出会い。 その少女マーヤと地元を見ることによって、日本という国を認識しなおすとともに、平凡だった日々にユーゴスラヴィアへの新たな扉が加わった。 日常ミステリーに分類されるのだろうが、基本的には青春小説だと思う。 青春小説に、日常ミステリーを少しだけ混ぜている感じ。 日々の生活に虚無感を感じていた主人公は、確固たる意志を持つユーゴスラヴィアの少女、マーヤに感化される。 このマーヤが実に魅力的なのだ。 外国人特有のズレ具合といい、その裏に潜む信念といい。 読んでいるこっちまで感化されてしまう。 ライトノベルのような軽い小説を読んでいたと思ったら、いつの間にか話題が深淵なものとなり、いつの間にか感化されていた。 数時間でさっと読めるので、気になる人はぜひ読んでみてください。 | ||||
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米澤さんは今まさに気鋭の作家。このミス2010では作家別投票で1位の栄冠に輝いた。 時は1991年、日本。何気ない日常に現れた妖精は、異国の地からやってきた女の子だった…。 1年後、彼女の去った日本で主人公は思い出の中に彼女の故郷を探し求める。 主人公の日記を通した回想を中心とする本作は、青春小説としての瑞々しさを押さえつつ、 思春期特有の自己陶酔、内省的な側面を一人称で描き出す。所々に社会的な前提はあるものの、 国際情勢だとか歴史に疎い人でも堅苦しく思う必要はない。青春小説としてキャラ読みも可だ。 彼女は主人公に、読者である僕に何を残してくれただろうか。はっきりと記憶に残る小説だった。 | ||||
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タスキに書かれた「ボーイ・ミーツ・ガール・ミステリー」という意味が解らず、戸惑いながら読み始めました。はっきり言って退屈だった。登場人物には好感持てないし、ストーリーも(最初は)つまらないし…。ただ、僕もユーゴスラヴィアに多大な興味があり、戦後間もないボスニア・ヘルツェゴヴィナに単身個人旅行をしたくらいだから、そっちのほうで読むのを断念せずに済んだ。最後の方で、ようやくこの小説は「本格推理小説」だったと気付いたら、俄然全体的に面白くなった。 ただ個人的な趣向かもしれないが「登場人物に好感が持てない」というのがネックで「★5」にはならなかった。米澤 穂信の描く 高校生程度の年齢の登場人物たちには、必ずこの手の ヒーロー&ヒロイン が登場する。他の作品の「ボトルネック」なんかだと、上手い具合にストンとハマる気がするんだけど。 | ||||
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1991年(平成三年)4月、守屋路行(もりや みちゆき)と太刀洗万智(たちあらい まち)の高校三年生のふたりが、ユーゴスラヴィアから来た17歳の女性、マーヤと出会うところから、話は動き出します。 日本語は上手なんだけれど、物事をしっかりと受け止めてから話すせいか、会話の端々に、「んー」て言葉が入るマーヤ。日本の文化や歴史、宗教やものの考え方などの本質に興味を持ち、質問し、どんどん吸収していくマーヤ。あどけなさが残る中にも、きりりとした芯の強さがうかがえるマーヤ。黒目黒髪の、この美しい異国の女性キャラが魅力的だったこと。それがこの作品を、後を引く、忘れがたいものにしていましたね。 一方、太刀洗万智ことセンドー(守屋がつけたあだ名)の、日常の謎をいち早く解いて、実にそっけない種明かしをするキャラも、個性的であり魅力的でした。著者の後年の作品『ボトルネック』に登場する嵯峨野サキにつながる、「想像力」を働かせて物事の真実を見ることを重要視する女性。ただ、この作品では、マーヤという、スポットライトがよりくっきりと、強く当たっている登場人物がいたためか、押さえ加減で書かれていた気がします。それが、ややもったいなかったかな。 マーヤがらみの小道具では、なんと言っても、紫陽花(あじさい)のバレッタ。マーヤの黒髪によく似合う、紫陽花を浮かし彫りにあしらったバレッタが、乾いたある音(ネタバレの恐れがあるため、ぼかして書いています)とともに、強く印象に残りました。 | ||||
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守屋、大刀洗、白河、文原、そしてマーヤ。最初読み始めたときは、 彼らの他愛もない会話が退屈に思えてしょうがなかった。だが、読み 進めていくうちに、会話の中に隠されているマーヤの思いにしだいに 気づかされていった。どこに帰るかだけは決して言おうとせずに帰国 したマーヤ。そこから守屋たちの謎解きが始まるが、ユーゴスラヴィアは ひとつの国でないことを思い知らされる。退屈だと思えた会話の中に ちりばめられたマーヤにつながる手がかり・・・。それを知ったとき、物語の 面白さが見えてきた。マーヤはどこに帰ったのか?そしてマーヤのその後は? ラストは胸が痛くなった。戦争がいかに悲惨なものか!そして何気ない日常 生活がどんなに貴重なものか!この作品に込められているものは、あまりにも 重い。 | ||||
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「犬はどこだ」に続いて読んだ米村さんの本ですが、これがまた素晴らしく、今年度に読んだ本の中でも三本の指に入るくらい面白かったです。 古典部シリーズと同じく高校生が主人公ということで、もう少し軽い感じを予想していたのですが主人公の芯が熱くて、ぐっと心に入ってきました。主人公は、弓道部所属の高校三年生。彼と、友達の「センドー」こと大刀洗万智は梅雨前のとある雨の日の学校帰りに、不思議な少女と出会います。マーヤと名乗る少女は、単身で二ヶ月間この街の知り合いのところに下宿する予定でしたが訪ねてきてみればその人は既に死亡し、途方に暮れていました。彼は彼女をこれも友人で旅館の娘である白河に紹介、マーヤは旅館に住み込むことになりました。かくして、彼とその友人たちとマーヤの、短い、しかしこれ以上ないくらい大きな変化をもたらす二ヶ月間が始まるのでした。。 ということで、その二ヶ月のちょうど一年後の回想シーンから始まるこの小説、青春ものというくくりでいえばまさに青春ど真ん中ですが、ただの青春恋愛ものではなく、ユーゴスラビア出身の将来政治家を目指す一人の少女をヒロインに据えたことで、主人公の悩み・葛藤・世界観の変化・恋の激しさが全ての面においてさらに際立ち、読んでいてやるせなく苦しくなるような小説に仕上がっています。恋愛的な要素もさることながら、成長物語としても素晴らしい出来です。 間違いなし、文句無しにお勧めです。 この小説を読んで改めて思ったんですけれど、同学年であれば、もうこれは仕方のないことだけれど、どうしても女性の方が早く成熟してしまっています。男子自身は気付いてない、馬鹿さ加減、気の回らなさ加減、子供さ加減が本当によく描けていて、それがまたぐっと読み手それぞれの昔を思い出させてくれてはまり込む要素となっています。是非読んでみて下さい。 | ||||
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〈セカイ系〉という言葉があります。 個人が社会や共同体といった中景を飛び越え、直接、 「セカイ」の運命と向き合うという物語群のことです。 そして、多くの場合、華奢な外見とは不釣合いな 戦闘力を有する「戦闘美少女」がヒロインとなります。 いわば、ある種のオタク的想像力や欲望の産物なわけですが、 本作において作者は、その枠組を取り入れた上で、 真逆の地平を目指しています。 日本人には、あまり馴染みのないユーゴスラヴィアから来た 好奇心旺盛な美少女・マーヤは、まさに題名の通り、異世界の 「妖精」といった感があり、その無邪気な振舞いからも、 いかにも「ラノベの住人」のような存在です。 物語の前半は、異邦人である彼女の瞳を通すことで、我々の 何気ない「日常」が再発見され、新たな意味づけがなされる、 という著者お得意の「日常の謎」的展開なのですが……。 後半、物語は一変します。 高校生が、国の違いを乗り越えることは 容易なことではないし、過ぎてしまった 時間を取り戻すことは不可能です。 無力な主人公の行動は、どこまでいっても 自己満足にすぎないのかもしれません。 しかし、たとえそうであったとしても、たしかに マーヤとともに過ごした時間が存在し、同じ一つの 世界に生きる存在であることも事実です。 セカイを変えるのではなく、 変わらない世界といかに 理性的に向き合うか― 本作は、それを真摯に追求した作品です。 | ||||
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角川スニーカーで不発(それらも良作。単純に角川の戦略ミスによる)であった作者を、一躍注目作家へ押し上げた出世作。 甘みと苦みが共存した上等のチョコレートのような味わいを見せる米澤作品の中で、これはかなりビターで、胸がしめつけられるような印象深い後味を残す。 心を落ち着けて、じっくりと賞味したい作品だ。 結末を心に焼き付けたら、もう一度頭から読み返してみるとよい。 それまでさらっと流していた風景が違ったものに見えてくると思う。 ところで、そもそもこの作品は古典部シリーズの一つとして書かれていたものだという。 とすると、守屋が折木、文原が福部、白河が千反田、太刀洗が伊原だったのだろうか・・・それはそれで読んでみたい気もするが(笑)、しかしそうはならなかったことに感謝したい。卒業して少し疎遠になった後に回想するという効果的な舞台設定が無くなるのは惜しいので・・・ 何はともあれ、素晴らしい作品であることは間違いない。文句なしの五つ星。 | ||||
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読了後のインパクトはかなりのもの。本当に素晴らしいの一言です。是非みんなに読んでいただきたい作品です。 | ||||
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平凡で淡々とした日々に突然目の前に現れる ユーゴスラビアから来た少女マーヤ。 特別目標のようなものをもって過ごしていなかった主人公の生活に 風穴をあけることとなります。 しかし劇的な何かがあるわけではなく、 マーヤと主人公やその仲間との普段の生活が話の主です。 マーヤは日本の文化に疑問をもち、事あるたびに 「哲学的意味がありますか?」と聞きます。 というわけで、推理はわりと日常的なことが題です。 推理一つ一つは軽く読めて楽しいですよ! 自ら「ただ生きているだけ」と言う主人公が 自分は今まで何を見てきた?何をした?何を知っている?と 生き方に疑問を持ち、それを打破しようと考えるところは、 私がそのようなことで悩んでいた時期だったので、 ものすごく共感してしまいました…。 話はユーゴスラビアの紛争の話にもつれ込んだりします。 でも日常の温かさを失わない、現実的なのに不思議な話でした。 | ||||
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1991年のある田舎町。何事にも無愛想で、程々にしか興味と行動を示さない高校生の主人公の前に、全てを新鮮に受け止める外国人の少女、マーヤが現れた。高校の同級生を巻き込んで、地味ながら新鮮に進んでいく国際交流。彼女が現れた理由が次第に露わになっていくなかで、主人公の心に変化が表れて…。 劇的な事件が起こるわけでもない、至って淡々とした展開ですが、描かれる淡々とした一日のシークエンスがとても味わい深く、爽やかさと暖かい懐かしさを与えます。自分はなんて何も考えていない子供なのだろうという幼さへの自覚と別れ、そして友人と無駄に過ごす日々のかけがえのなさの再認識。読んで頂ければ分かりますが、地味な内容に反して、読中読後感はとても鮮やかな空気に包まれました。ライトノベルや青春小説で片付けるには惜しい、心理的な世界の広がりを感じさせる出来です。ラストの衝撃と喪失感や女の子のクラスメイトは良くも悪くも村上春樹の影響が大きいですね。「羊をめぐる冒険」をほうふつとさせます。まあ現代の曖昧とした喪失感を表現した文章で、彼の影響を受けていない作家を探す方が難しいのですが。 ノスタルジックな演出も抑え目なので、青春小説は好きだけれど恩田陸はあまり嗜好に合わない、という方にお勧めなタイプの作品だと思います。これからが楽しみの作家さんです。 | ||||
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作者の出世作、というだけあって、優れた短編のようなスッキリした後味を残す佳作。父の仕事の関係で、短期に日本に滞在することになったという、ユーゴスラビアから来た少女、マーヤ。彼女と主人公達の触れ合いを描くのが本作だが、それは回想として語られるのであって、現在はマーヤは帰国し、そしてユーゴスラビアは内紛状態にある。彼女を心配した主人公達は、幾つかの共和国として成り立つユーゴスラビアの、どの国に彼女がいるのかを突き止めるために、彼女の過去の言動を日記から拾い出して推理しようという、表面的にはそういう進行となっている。この物語構造だけでも充分に斬新であり、同時に、消息を心配する友人として、たったそれだけのことしかできないもどかしさ、すなわち、マーヤがどの国に帰ったのかを突き止めると言っても、それがわかったからどうだというのか? それでも何かせずにはいられない、というメンタリティが作者独特の雰囲気を生み出しているといえる。要するに、青臭いのだ。物語の結末として、彼女は危険を承知の上で帰国したのであり、彼女の覚悟に対して主人公達は、あまりに子供であったことを突きつけられるしかないのである。これはそんな、細かい日常の謎に触れるミステリでありながらも、遠い国の少女を想う、青春小説である。 | ||||
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日本の高校生たちが普通の町で偶然に出会った外国からの少女. この少女がどこから来た(帰った)かというのが謎になっていて, 帰国後,その中の少年の日記を辿るかたちで物語は進んでいきます. これだけだと『日常の謎』のような作品かと思いがちですが, 大半がこの少女と出会った少年たちのやり取りに割かれていて, ミステリというよりも青春小説の要素が強いように感じます. そして謎である少女の行方が解き明かされていくわけですが, ここは,少女と過ごした思い出や会話からの言葉が次々とつながり, まるでパズルが完成していくような気持ちよさがあります. しかしその結論,そしてさらに明らかになる事実には, ある程度予想できたとはいえ,なんとも言えない気持ちに. また,クールで無愛想だった仲間の本当の気持ちと, この短い出会いをきっかけにひと回り成長した少年の姿, 哀しいのですが,まさに青春ですがすがしい気持ちです. どうぞじっくりと,思いを巡らせて読んでみてください. 余談ですが,少女が日本の習慣に戸惑うところが, 『日常の謎』としていくつか盛り込まれているのですが, こちらについてはむずかしめというか少し期待はずれでした…. | ||||
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