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オイディプスの刃



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オイディプスの刃の評価: 4.59/5点 レビュー 17件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.59pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全17件 1~17 1/1ページ
No.17:
(3pt)

赤江瀑の傑作長編小説。作品は星5、表紙は星0

赤江瀑の作品まで表紙をコミック的なイラストにするのはやめて頂きたい。本文を読めば作品のイメージにそぐわないことはわかるはずだ。出版業界も大変なのは理解出来ますが、小綺麗なイラストでオタクを釣る様なやり方はやめましょう。作者の美学に反する行為です。
オイディプスの刃 (角川文庫 緑 376-3)Amazon書評・レビュー:オイディプスの刃 (角川文庫 緑 376-3)より
4041376033
No.16:
(5pt)

陶酔的な情念の〈呪い〉

赤江瀑は、呪う作家である。
その阿片にも似た濃厚な情念にとらわれた者は、赤江瀑を追いかけないでいられないであろう。その意味で、赤江瀑の呪いを知らない人は不幸であるし、幸福でもあろう。何も知らずに、明るく平凡な生活の中で、消費的な娯楽とその快楽に生きるというのも、それはそれで無難な幸福には違いないからだ。

赤江瀑を語る上で、「ホモセクシャル」というその属性を、語り落とすことは出来ない。
著者生前には、公然と語りづらい部分ではあったものの、デビュー短編集の『獣林寺妖変』初版単行本の帯には「妖艶! ホモセクシャルの世界!!」という惹句が踊っていたのだから、読む人が読めば、それは否定のしようもないことだったのである。

「ホモセクシャル」作家の系譜と言えば、だれでもまずは『仮面の告白』の三島由紀夫を思い出さずにはいられないだろう。そして、その盟友であった中井英夫が書いた、幻想ミステリの巨峰『虚無への供物』では、赤江瀑がモデルとして登場しているというのは有名な話である。その名も「氷沼紅司」。

また、赤江瀑周辺の「ホモセクシャル」作家と言えば、それはなにも小説家にとどまるものではない。赤江瀑の著作の装幀を担当した、人形作家の辻村ジュサブロー(講談社文庫版『獣林寺妖変』『罪喰い』等)、装幀画家の村上芳正(角川文庫版『海峡』『美神たちの黄泉』等)もまた、忘れがたい「魔の美神」的な存在だ。

彼らに共通するのは、その「耽美」性と、ホモセクシャルゆえの「疎外感と渇愛」であろう。
今のように、若い女性の間でBL(ボーイズ・ラブ)小説が当たり前に消費されても、あるいは社会的に性的少数者(LGBT=lesbian, gay, bisexual, and transgender)の権利が広く叫ばれるようになっても、まだまだ世間の「生理的偏見」までが薄れたわけではないのだから、まして赤江瀑世代の「疎外感」は、けっして尋常一様ものではなかったし、だからこそ逆に、それは消費社会における「ぬるま湯的な作品」には見られない、「赤黒い情念」の渦巻く、非凡な作品へと結晶し得たのである。

本書『オイディプスの刃』は、赤江瀑の長編代表作である。
赤江瀑は、基本的には短編型の作家で、長編は必ずしも得意ではない。というのも、情念をこめた緋文字で物語を綴るタイプの作家には、プロットの構築性が求められる長編は、不向きだったからであろう。
しかしまた、『オイディプスの刃』の場合は、赤江瀑がその個性を矯めることなく、むしろそれを過剰なまでに投入することで、「赤江瀑の長編」として成功した、例外的作品でもある。
本作は「宿命の兄弟」の物語として語られるが、それは「ホモセクシャル的な関係性」を「兄弟」いう形式にズラして描いた作品と考えても、間違いではないはずだ。だからこそ、この物語は「過剰に濃厚」なのである。

ちなみに、本作では「刀剣と香水」がテーマ的に扱われているが、これは容易に「男根と精液(とその匂い)」のメタファーであることが理解できよう。
また、こうした小道具の扱い方は、中井英夫の『虚無への供物』が「植物と色彩」をテーマにしたことと関係があるのかも知れない。中井が、構想して果たし得なかった三部作の残り2作は「鉱物と音」「動物と臭い」をテーマにしたものであった(『ケンタウロスの嘆き』所収「黒い水脈」)。

ともあれ、赤江瀑の作品は、残念ながら「読者を選ぶ」。
平凡で起伏のない日常を、パステル色の幸福を生きている人には、とうてい理解できない世界を、赤江瀑は描いているからだ。いや、描かざるを得ない生を歩んだ、「宿命」の作家だったからだ。

赤江瀑が読者へと突き出す、目に見えない妖刀。
その切っ先が、あっさりと空を切るかのように通り抜けてしまう、生きる世界を異にする人たちが多い中で、稀に、その刃が胸肉に立って、赤黒い血を噴き出させる読者がいる。
赤江瀑は、そんな読者のために、何度でも甦るだろう。
赤江瀑は、決して「代わり」の生まれて来ない、最初で最後の「宿命の小説家」なのである。
オイディプスの刃 (角川文庫 緑 376-3)Amazon書評・レビュー:オイディプスの刃 (角川文庫 緑 376-3)より
4041376033
No.15:
(5pt)

陶酔的な情念の〈呪い〉

赤江瀑は、呪う作家である。
その阿片にも似た濃厚な情念にとらわれた者は、赤江瀑を追いかけないでいられないであろう。その意味で、赤江瀑の呪いを知らない人は不幸であるし、幸福でもあろう。何も知らずに、明るく平凡な生活の中で、消費的な娯楽とその快楽に生きるというのも、それはそれで無難な幸福には違いないからだ。

赤江瀑を語る上で、「ホモセクシャル」というその属性を、語り落とすことは出来ない。
著者生前には、公然と語りづらい部分ではあったものの、デビュー短編集の『獣林寺妖変』初版単行本の帯には「妖艶! ホモセクシャルの世界!!」という惹句が踊っていたのだから、読む人が読めば、それは否定のしようもないことだったのである。

「ホモセクシャル」作家の系譜と言えば、だれでもまずは『仮面の告白』の三島由紀夫を思い出さずにはいられないだろう。そして、その盟友であった中井英夫が書いた、幻想ミステリの巨峰『虚無への供物』では、赤江瀑がモデルとして登場しているというのは有名な話である。その名も「氷沼紅司」。

また、赤江瀑周辺の「ホモセクシャル」作家と言えば、それはなにも小説家にとどまるものではない。赤江瀑の著作の装幀を担当した、人形作家の辻村ジュサブロー(講談社文庫版『獣林寺妖変』『罪喰い』等)、装幀画家の村上芳正(角川文庫版『海峡』『美神たちの黄泉』等)もまた、忘れがたい「魔の美神」的な存在だ。

彼らに共通するのは、その「耽美」性と、ホモセクシャルゆえの「疎外感と渇愛」であろう。
今のように、若い女性の間でBL(ボーイズ・ラブ)小説が当たり前に消費されても、あるいは社会的に性的少数者(LGBT=lesbian, gay, bisexual, and transgender)の権利が広く叫ばれるようになっても、まだまだ世間の「生理的偏見」までが薄れたわけではないのだから、まして赤江瀑世代の「疎外感」は、けっして尋常一様ものではなかったし、だからこそ逆に、それは消費社会における「ぬるま湯的な作品」には見られない、「赤黒い情念」の渦巻く、非凡な作品へと結晶し得たのである。

本書『オイディプスの刃』は、赤江瀑の長編代表作である。
赤江瀑は、基本的には短編型の作家で、長編は必ずしも得意ではない。というのも、情念をこめた緋文字で物語を綴るタイプの作家には、プロットの構築性が求められる長編は、不向きだったからであろう。
しかしまた、『オイディプスの刃』の場合は、赤江瀑がその個性を矯めることなく、むしろそれを過剰なまでに投入することで、「赤江瀑の長編」として成功した、例外的作品でもある。
本作は「宿命の兄弟」の物語として語られるが、それは「ホモセクシャル的な関係性」を「兄弟」いう形式にズラして描いた作品と考えても、間違いではないはずだ。だからこそ、この物語は「過剰に濃厚」なのである。

ちなみに、本作では「刀剣と香水」がテーマ的に扱われているが、これは容易に「男根と精液(とその匂い)」のメタファーであることが理解できよう。
また、こうした小道具の扱い方は、中井英夫の『虚無への供物』が「植物と色彩」をテーマにしたことと関係があるのかも知れない。中井が、構想して果たし得なかった三部作の残り2作は「鉱物と音」「動物と臭い」をテーマにしたものであった(『ケンタウロスの嘆き』所収「黒い水脈」)。

ともあれ、赤江瀑の作品は、残念ながら「読者を選ぶ」。
平凡で起伏のない日常を、パステル色の幸福を生きている人には、とうてい理解できない世界を、赤江瀑は描いているからだ。いや、描かざるを得ない生を歩んだ、「宿命」の作家だったからだ。

赤江瀑が読者へと突き出す、目に見えない妖刀。
その切っ先が、あっさりと空を切るかのように通り抜けてしまう、生きる世界を異にする人たちが多い中で、稀に、その刃が胸肉に立って、赤黒い血を噴き出させる読者がいる。
赤江瀑は、そんな読者のために、何度でも甦るだろう。
赤江瀑は、決して「代わり」の生まれて来ない、最初で最後の「宿命の小説家」なのである。
オイディプスの刃 (河出文庫)Amazon書評・レビュー:オイディプスの刃 (河出文庫)より
4309417094
No.14:
(5pt)

陶酔的な情念の〈呪い〉

赤江瀑は、呪う作家である。
その阿片にも似た濃厚な情念にとらわれた者は、赤江瀑を追いかけないでいられないであろう。その意味で、赤江瀑の呪いを知らない人は不幸であるし、幸福でもあろう。何も知らずに、明るく平凡な生活の中で、消費的な娯楽とその快楽に生きるというのも、それはそれで無難な幸福には違いないからだ。

赤江瀑を語る上で、「ホモセクシャル」というその属性を、語り落とすことは出来ない。
著者生前には、公然と語りづらい部分ではあったものの、デビュー短編集の『獣林寺妖変』初版単行本の帯には「妖艶! ホモセクシャルの世界!!」という惹句が踊っていたのだから、読む人が読めば、それは否定のしようもないことだったのである。

「ホモセクシャル」作家の系譜と言えば、だれでもまずは『仮面の告白』の三島由紀夫を思い出さずにはいられないだろう。そして、その盟友であった中井英夫が書いた、幻想ミステリの巨峰『虚無への供物』では、赤江瀑がモデルとして登場しているというのは有名な話である。その名も「氷沼紅司」。

また、赤江瀑周辺の「ホモセクシャル」作家と言えば、それはなにも小説家にとどまるものではない。赤江瀑の著作の装幀を担当した、人形作家の辻村ジュサブロー(講談社文庫版『獣林寺妖変』『罪喰い』等)、装幀画家の村上芳正(角川文庫版『海峡』『美神たちの黄泉』等)もまた、忘れがたい「魔の美神」的な存在だ。

彼らに共通するのは、その「耽美」性と、ホモセクシャルゆえの「疎外感と渇愛」であろう。
今のように、若い女性の間でBL(ボーイズ・ラブ)小説が当たり前に消費されても、あるいは社会的に性的少数者(LGBT=lesbian, gay, bisexual, and transgender)の権利が広く叫ばれるようになっても、まだまだ世間の「生理的偏見」までが薄れたわけではないのだから、まして赤江瀑世代の「疎外感」は、けっして尋常一様ものではなかったし、だからこそ逆に、それは消費社会における「ぬるま湯的な作品」には見られない、「赤黒い情念」の渦巻く、非凡な作品へと結晶し得たのである。

本書『オイディプスの刃』は、赤江瀑の長編代表作である。
赤江瀑は、基本的には短編型の作家で、長編は必ずしも得意ではない。というのも、情念をこめた緋文字で物語を綴るタイプの作家には、プロットの構築性が求められる長編は、不向きだったからであろう。
しかしまた、『オイディプスの刃』の場合は、赤江瀑がその個性を矯めることなく、むしろそれを過剰なまでに投入することで、「赤江瀑の長編」として成功した、例外的作品でもある。
本作は「宿命の兄弟」の物語として語られるが、それは「ホモセクシャル的な関係性」を「兄弟」いう形式にズラして描いた作品と考えても、間違いではないはずだ。だからこそ、この物語は「過剰に濃厚」なのである。

ちなみに、本作では「刀剣と香水」がテーマ的に扱われているが、これは容易に「男根と精液(とその匂い)」のメタファーであることが理解できよう。
また、こうした小道具の扱い方は、中井英夫の『虚無への供物』が「植物と色彩」をテーマにしたことと関係があるのかも知れない。中井が、構想して果たし得なかった三部作の残り2作は「鉱物と音」「動物と臭い」をテーマにしたものであった(『ケンタウロスの嘆き』所収「黒い水脈」)。

ともあれ、赤江瀑の作品は、残念ながら「読者を選ぶ」。
平凡で起伏のない日常を、パステル色の幸福を生きている人には、とうてい理解できない世界を、赤江瀑は描いているからだ。いや、描かざるを得ない生を歩んだ、「宿命」の作家だったからだ。

赤江瀑が読者へと突き出す、目に見えない妖刀。
その切っ先が、あっさりと空を切るかのように通り抜けてしまう、生きる世界を異にする人たちが多い中で、稀に、その刃が胸肉に立って、赤黒い血を噴き出させる読者がいる。
赤江瀑は、そんな読者のために、何度でも甦るだろう。
赤江瀑は、決して「代わり」の生まれて来ない、最初で最後の「宿命の小説家」なのである。
オイディプスの刃 (1979年) (角川文庫)Amazon書評・レビュー:オイディプスの刃 (1979年) (角川文庫)より
B000J8GSGS
No.13:
(5pt)

陶酔的な情念の〈呪い〉

赤江瀑は、呪う作家である。
その阿片にも似た濃厚な情念にとらわれた者は、赤江瀑を追いかけないでいられないであろう。その意味で、赤江瀑の呪いを知らない人は不幸であるし、幸福でもあろう。何も知らずに、明るく平凡な生活の中で、消費的な娯楽とその快楽に生きるというのも、それはそれで無難な幸福には違いないからだ。

赤江瀑を語る上で、「ホモセクシャル」というその属性を、語り落とすことは出来ない。
著者生前には、公然と語りづらい部分ではあったものの、デビュー短編集の『獣林寺妖変』初版単行本の帯には「妖艶! ホモセクシャルの世界!!」という惹句が踊っていたのだから、読む人が読めば、それは否定のしようもないことだったのである。

「ホモセクシャル」作家の系譜と言えば、だれでもまずは『仮面の告白』の三島由紀夫を思い出さずにはいられないだろう。そして、その盟友であった中井英夫が書いた、幻想ミステリの巨峰『虚無への供物』では、赤江瀑がモデルとして登場しているというのは有名な話である。その名も「氷沼紅司」。

また、赤江瀑周辺の「ホモセクシャル」作家と言えば、それはなにも小説家にとどまるものではない。赤江瀑の著作の装幀を担当した、人形作家の辻村ジュサブロー(講談社文庫版『獣林寺妖変』『罪喰い』等)、装幀画家の村上芳正(角川文庫版『海峡』『美神たちの黄泉』等)もまた、忘れがたい「魔の美神」的な存在だ。

彼らに共通するのは、その「耽美」性と、ホモセクシャルゆえの「疎外感と渇愛」であろう。
今のように、若い女性の間でBL(ボーイズ・ラブ)小説が当たり前に消費されても、あるいは社会的に性的少数者(LGBT=lesbian, gay, bisexual, and transgender)の権利が広く叫ばれるようになっても、まだまだ世間の「生理的偏見」までが薄れたわけではないのだから、まして赤江瀑世代の「疎外感」は、けっして尋常一様ものではなかったし、だからこそ逆に、それは消費社会における「ぬるま湯的な作品」には見られない、「赤黒い情念」の渦巻く、非凡な作品へと結晶し得たのである。

本書『オイディプスの刃』は、赤江瀑の長編代表作である。
赤江瀑は、基本的には短編型の作家で、長編は必ずしも得意ではない。というのも、情念をこめた緋文字で物語を綴るタイプの作家には、プロットの構築性が求められる長編は、不向きだったからであろう。
しかしまた、『オイディプスの刃』の場合は、赤江瀑がその個性を矯めることなく、むしろそれを過剰なまでに投入することで、「赤江瀑の長編」として成功した、例外的作品でもある。
本作は「宿命の兄弟」の物語として語られるが、それは「ホモセクシャル的な関係性」を「兄弟」いう形式にズラして描いた作品と考えても、間違いではないはずだ。だからこそ、この物語は「過剰に濃厚」なのである。

ちなみに、本作では「刀剣と香水」がテーマ的に扱われているが、これは容易に「男根と精液(とその匂い)」のメタファーであることが理解できよう。
また、こうした小道具の扱い方は、中井英夫の『虚無への供物』が「植物と色彩」をテーマにしたことと関係があるのかも知れない。中井が、構想して果たし得なかった三部作の残り2作は「鉱物と音」「動物と臭い」をテーマにしたものであった(『ケンタウロスの嘆き』所収「黒い水脈」)。

ともあれ、赤江瀑の作品は、残念ながら「読者を選ぶ」。
平凡で起伏のない日常を、パステル色の幸福を生きている人には、とうてい理解できない世界を、赤江瀑は描いているからだ。いや、描かざるを得ない生を歩んだ、「宿命」の作家だったからだ。

赤江瀑が読者へと突き出す、目に見えない妖刀。
その切っ先が、あっさりと空を切るかのように通り抜けてしまう、生きる世界を異にする人たちが多い中で、稀に、その刃が胸肉に立って、赤黒い血を噴き出させる読者がいる。
赤江瀑は、そんな読者のために、何度でも甦るだろう。
赤江瀑は、決して「代わり」の生まれて来ない、最初で最後の「宿命の小説家」なのである。
オイディプスの刃 (1974年)Amazon書評・レビュー:オイディプスの刃 (1974年)より
B000J960DI
No.12:
(5pt)

赤江美学の初期の代表であり耽美ミステリの嚆矢

まずは、先のレビュワー様にお礼を!
私も同感です。
最近やっとオンデマンドやアンソロジー収録などで復刊されてますが、是非とも全集をお願いいたします!

地方都市の素封家と美しい後妻、その屋敷に滞在中の若い研ぎ師。
そして、突然起こる惨劇。
物語は、妻の連れ子である次男の目線で進んで行きますが、彼は飽くまで進行役であり狂言廻しに過ぎません。
主役は正に「オイディプスの刃」です。
同性への憧憬、複雑な血縁関係に依る近親相姦的感情を刀剣や調香をモチーフに描いた赤江美学の代表格であり、耽美ミステリの嚆矢と言えます。
クライマックスは静謐にして妖美華麗、ちょっと奮えが来ます!

79年にこの作品を読み、中学生だった私はすっかり赤江先生の虜になりました。以来、新刊はもちろん、装幀違い、版元違い、アンソロジーまで赤江 瀑の名があればついつい買ってしまい、かなりのダブりもあります。
赤江ファンはこのタイプが多く、漫画家の辻村弘子さんが同じことをお書きになってました。
確かに今では会話文など少し古く感じるかも知れませんが、嵌まったら最後、すべての作品を読まずにはいられなくなると思います。

若いファンが増えれば、全集刊行の可能性も高くなりますよね
オイディプスの刃 (河出文庫)Amazon書評・レビュー:オイディプスの刃 (河出文庫)より
4309417094
No.11:
(5pt)

刀剣の魔力で読ませる耽美ミステリ(ネタに触れます)

由緒ある刀剣で不可解な殺人が起こり・・・というお話。

以下のレビューでこの小説のサワリとD・K・ブロスターという人の短篇「超能力」のネタに触れるので読んでない人は読まないでください。

恥ずかしながら、赤江さんの小説を読むのはこれが初めてでして、背徳的、耽美的という話は聞いておりましたが、実際にその通りで、その耽美的な所に中毒性を感じました。また、平成に入ってなくなった昭和の雰囲気も感じとれました。推理小説としての意外性もあり、個性的で良く出来た作品だと思いました。

昔のイギリスで書かれたゴースト・ストーリーにD・K・ブロスターという人の「超能力」という短篇がありまして、内容は、色々な国の刀が飾ってある館で日本の刀剣を握った少女がその刀剣の魔力に憑かれ、周囲にいる人を切りつけるという気味の悪い話でしたが、昔から日本の刀剣にはそういう魔力があったらしいのが判ります。この作品もそういう刀剣を所蔵したが為に惨劇に見舞われた家族の悲劇に思えました。

あと、靖国神社が昔は刀剣を鋳造する為の所だったそうで、戦争で亡くなった人を埋葬するのに使われるのはそういう理由があったのかとか思いました。

同性愛、今でいうLGBTも出てきますが、この頃は異常で背徳的、国によっては犯罪だったせいか、却って魅惑的に描写されている様にも思えました。いかにもこの時代らしい雰囲気でした。

この人や山田風太郎氏は出来れば全集にしてほしいです。日影丈吉さんは全集になった事を鑑みれば不可能ではないかも。

刀剣の魔力で読ませる耽美ミステリ。是非ご一読を。
オイディプスの刃 (河出文庫)Amazon書評・レビュー:オイディプスの刃 (河出文庫)より
4309417094
No.10:
(4pt)

類まれな美質

オイディプスの刃。この印象的なタイトルを最初に意識したのは、1986年に映画化されたときで、最後に意識したのは、2012年に作者の赤江瀑が亡くなったニュースを見たときだったと思う。そして今やっと、僕はこの長年気になっていた小説を読了したのである。

とても読みやすいことに驚いた。パラパラめくってみると、漢字は多いし、「読みにくそう…」と思わずにはいられない本だ。実際、表現も凝りに凝っているし、ウネウネと流麗な比喩も多い。それなのに、これほど読みやすいのはどうしたことか。赤江瀑という作者の類まれな美質なのかもしれない。

内容は純文学のような、エンターテインメントのような…不思議な話なのだが、とにかくグイグイ読ませる。全体的に高雅な匂いを漂わせながら、でもときどき安っぽい展開もあったりして、やはり位置づけとしては「ミステリ」ということになるのだろう。が、そのように安易にジャンル分けできないところが魅力、という気もする。

こんな言葉が、妙に胸に残った。「知らなくても、知りあえる人間の結びつきを、駿介は大事にしてきたつもりだった。知らそうとしても、知らせつくせないものを人間はかかえている。知らすまいと思っても、知れてくるものもある。知ることよりも、わかりあうことの方を、駿介は選んだ」(P206)
オイディプスの刃 (角川文庫 緑 376-3)Amazon書評・レビュー:オイディプスの刃 (角川文庫 緑 376-3)より
4041376033
No.9:
(3pt)

映画が先か、原作が先か

映画をみて、原作でストーリーをおぎなうために読みました。原作だけではイメージが作りにくいと思われます。しかし映画の出来が良いというわけではありません。
オイディプスの刃 (1974年)Amazon書評・レビュー:オイディプスの刃 (1974年)より
B000J960DI
No.8:
(5pt)

赤江瀑もっと読みたくなりました

先日映画を観て読みたくなったので購入。以前探したときはめちゃめちゃ高くて諦めてましたがお手頃な価格で見つけられてやったです
オイディプスの刃 (1979年) (角川文庫)Amazon書評・レビュー:オイディプスの刃 (1979年) (角川文庫)より
B000J8GSGS
No.7:
(5pt)

装丁について

内容は書くまでもない、赤江瀑さんの傑作です。

この書籍は初版の装丁が二種類あります。
元版は 山下秀男さんの装丁
後版は 横尾忠則さんの装丁
角川小説賞の受賞を機に装丁が変更されたと思われます。
メインの写真に掲載されているものは横尾忠則さんの装丁によるものです。
ともに同じ日付で初版本が存在しますので、コレクションの際はご注意ください。
そういった意味でも、貴重な書籍と思います。
オイディプスの刃 (1974年)Amazon書評・レビュー:オイディプスの刃 (1974年)より
B000J960DI
No.6:
(3pt)

読み応えはあった

一人の刀研ぎ師の死によって、母も、父も、失うことになってしまった三人の異母兄弟。
その後の人生が語られ、刀剣の奥行きの深さ、そして、母が調合師だったことに端を発する
香水の世界の蘊蓄の数々にも魅了された。
ただ、最後の最後になって、納得がいかず、首をかしげながら本を閉じることになってしまった。
こんなに家族がたくさん死ぬ必要があったのか。まるで自分たちで血を滅ぼそうとするかのように。
そして、最後に提示された刀研ぎ師の言葉は、最後の説明にかなり無理があって納得できない。
結果、なんなんだ、この人たちは。わけわからん……という感想になってしまいました。
オイディプスの刃 (角川文庫 緑 376-3)Amazon書評・レビュー:オイディプスの刃 (角川文庫 緑 376-3)より
4041376033
No.5:
(5pt)

「商品の説明」を補足します

※帯の解説文より転載。第一回角川小説賞受賞 異才赤江瀑の妖美 華麗なロマンの世界!名刀「備中次吉」の刃の妖しいきらめき、……「疑惑」の花ラベンダーの芳潤な香…。夏の日の午後、大迫家に起った血の惨劇をプロローグに、ギリシア悲劇の王オイディプスのように母を愛した三人の兄弟の運命を、謎を秘めた劇的展開で描く、著者会心作。
オイディプスの刃 (1974年)Amazon書評・レビュー:オイディプスの刃 (1974年)より
B000J960DI
No.4:
(5pt)

異端の美学文学最高傑作の一つ

赤江瀑の才能が絢爛豪華な花を開いた傑作長編。あらすじはアマゾンさんのブリーフィングに譲るとして、特に言いたいのは、(1)主人公の研ぎ師に対する同性愛的な情念(あからさまには一切語られない)(2)彼の行方不明になる弟の切ないほどの愛憎 (3)作者と弟の示す尋常でない詩歌の才能 である。それらが単なる耽美文学に終わらない高貴な文学的芳香を放つ。三島由紀夫も生きていれば嫉妬したのではないか?この傑作が絶版?再販を希望します。
オイディプスの刃 (角川文庫 緑 376-3)Amazon書評・レビュー:オイディプスの刃 (角川文庫 緑 376-3)より
4041376033
No.3:
(5pt)

香たつ「刀」

日本刀と香水。そしてむせ返るような血の匂い。ある暑い夏の日、日盛りの庭で、若き砥ぎ師が殺された。その場で自殺した母、後に割腹自殺した父。遺された大迫家の三人の息子たちはその後、それぞれの道を歩む。兄は母と同じ調香師に。弟は駿介と引き離された後、家を出たまま行方不明に。そして駿介は京都の夜の町に身を埋める。やがて運命の糸に手繰り寄せられた三人は再び巡り合う。しかし、それは新たな悲劇の始まりだった。一本の刀と、ラベンダーの香り。あの日大迫家で起きた惨劇は、一体なんだったのか?そして、兄と同じ香り、同じ名前の香水を調香した「彼」は一体何者なのか?怒涛の急展開とラベンダーの香りに酔いしれて欲しい。
オイディプスの刃 (角川文庫 緑 376-3)Amazon書評・レビュー:オイディプスの刃 (角川文庫 緑 376-3)より
4041376033
No.2:
(5pt)

香たつ「刀」

日本刀と香水。そしてむせ返るような血の匂い。
ある暑い夏の日、日盛りの庭で、若き砥ぎ師が殺された。
その場で自殺した母、後に割腹自殺した父。
遺された大迫家の三人の息子たちはその後、それぞれの道を歩む。
兄は母と同じ調香師に。
弟は駿介と引き離された後、家を出たまま行方不明に。
そして駿介は京都の夜の町に身を埋める。
やがて運命の糸に手繰り寄せられた三人は再び巡り合う。
しかし、それは新たな悲劇の始まりだった。
一本の刀と、ラベンダーの香り。
あの日大迫家で起きた惨劇は、一体なんだったのか?
そして、兄と同じ香り、同じ名前の香水を調香した「彼」は一体何者なのか?
怒涛の急展開とラベンダーの香りに酔いしれて欲しい。
オイディプスの刃 (1974年)Amazon書評・レビュー:オイディプスの刃 (1974年)より
B000J960DI
No.1:
(5pt)

はまれば、暫く、抜けられません。

哀しいかな。絶版の嵐。一度はまれば、暫く、抜けられなくなる作家です。そして、おそらく一度虜にされてしまえば、古本屋や、ネットを彷徨うことになります。それを覚悟で手に取っていただきたい。この『オイディプスの刃』は、初期の代表作です。ストーリー的にも完成度が高く、赤江瀑にはまるか、単なる耽美派ミステリーの一冊として捉えるか、読者にとって絶好の試金石となるでしょう。
オイディプスの刃 (ハルキ文庫)Amazon書評・レビュー:オイディプスの刃 (ハルキ文庫)より
4894567024

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