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虚史のリズム
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虚史のリズムの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.43pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全6件 1~6 1/1ページ
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なにしろA5判1100ページである。読み終えるまでに20日間も掛かってしまった。 奥泉らしいと言えば、奥泉らしい作品である。 山形県の田舎で、終戦後に元中将夫妻が殺される。 誰が殺したのか、目的な何か? というところから話は転がっていくのだが、この殺人事件そのものは、何度も登場する割には決定的に大きな役割を持っているわけではない。 その金庫から「K文書」なるものが持ち去られたらしいのだが、このK文書には日本の未来が記述されているらしい。 なぜ未来が記述されているのかと言えば、それは多元宇宙と往還できた人物が、その見聞を記述したものだからだ。 そして、俄か探偵となるおっちょこちょいが舞台回しを演じる。 元中将の末弟、その甥である元士官の妖艶な妻、アマゾネス社会の実現を目指す女、多元宇宙論と宗教「皇祖神霊教」との融合を追求する陸海軍の超天才たち、そして暗黒街とGHQの高官たちが登場して目まぐるしい。 しかも、この物語には幾重にもなった二重性が組み込まれている。 あちらの世界である「第一の書物」とこちらの世界である「第二の書物」、戦争末期のフィリッピン・ネグロス島での死の行軍と戦後の世界、人間の世界と鼠化した人間の世界等々である。 さらに、本書には文字の意味情報だけでなく、視覚的なリズム情報までもが埋め込まれている(写真)ので、もう読むのが大変なのである。 それでも、例によって不思議な読後感が得られるのが奥泉作品の不思議なところである。 終盤部分で本書が10年以上前に読んだ『神器 軍艦「橿原」殺人事件』(これのレビューはコメント欄に)の続編のような位置にあることに気づく。 どうやら、20年以上前に読んだ『グランドミステリー』にもつながっているらしいが、そっちの方は内容を忘れてしまっているので、何とも言えない。 先年読んだ『雪の階』にもつながるという情報も出ていたが・・・。 これらをもう一度読み直してみるか思案中である。 もう一つ付け足せば、どうやら本書はこれで完結ではなく、今後さらに他の作品へとつながっていきそうなのである。 嗚呼w | ||||
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探偵パート主人公は、”神器”主要登場人物でもあり、軍人パートでは、”グランドミステリー”登場人物が複数名出てくるので、内容はそれらを当然踏まえている。tasteとしては探偵パートはユーモアがあり、やや”クワコー”的であり、そこが良かった。軍人パートは、少々イデオロギーや天皇論がうるさいし、著者が大好きなネズミ人間、ロンギヌス物質、多元宇宙などが出てくる、それは良いが、とにかく長いので既視感が転じて、ややげんなりしてきたのも事実である。澄江さんという人物造形は、この著者の作品ではおなじみのキャラで(例えば、新・地底旅行のサト)、いわゆる天然かつ東北弁を話すうら若き女性であって、大変に魅力的。一方、謎の美女、倫子さんは話が進むにつれ単なる好色女性にしか見えて来ず、その内面をもう少し描写してあげなければ可哀想だなあ、と感じた。小説内エピソードとして、ピアノの嗜みがある澄江さんが、GHQ内のレストランでピアノの生演奏を突然頼まれて快諾してしまうのだが、20分の持ち時間をどう構成するか悩んで、苦し紛れに女学校の校歌をメニューに入れたら、レストランのマネージャーが気に入って、仕事の終わった後、個人的にリクエストした、というのがある。大筋には何ら関係ないこの種の細部に著者の才能が現われるから、この長大な小説を面白く読み進められるので、ぜひこのようなところが好きな愛読者もいると著者には知っていただきたい。なお、今作では、いろいろの人物が節目節目でお手洗いに行くだの、小用を足しただのの描写が頻発しているが、まあ実生活では当然の生理現象であるがわざわざ律儀に書いてある小説は珍しい、著者も年齢を重ね男性特有の老化現象をきたし、それが意識的にか無意識的にか影響しているのであろう。また、dadadaというのは、ダダイズムを踏まえてのことだろうがそうすると死者のリズムなるものも相対化されてしまうし、多元宇宙なるものが記憶の改ざんによるという志津子さんのいうセリフもそれと呼応するのではないだろうか?最初と最後に光る猫への言及が少し出てくるのは、愛読者サービスか?初見の読者には何だかわからなくて、気がつかないだろうくらいのもの。 | ||||
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1090ページもある分厚い本だけど、内容ぎっしりめっちゃ面白かった。 | ||||
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最高オブ最高です。奥泉光節ここに極まれり。オススメです! | ||||
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あの戦争の戦中戦後に真正面から向き合って、とにかく読み応え十分。 さらにミステリーやオカルト的な要素も加わり、ぐいぐい引き込まれ ます。 ただし分厚いです。そして重たいです。読み切るのにはそれなりの気合と 体力が必要になるでしょう。 | ||||
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・究極の探偵小説であり探求文学。名文章と神展開を心ゆくまで堪能できるページターナー超大作 ・と勝手に騒ぐいちファンです。 ・以下、奥泉読者に向けて業務連絡です。 ・自分は今再読中です。 ・A5千百頁の実物は予想以上に分厚い重い。どこで読むか事前に決めておいて。装幀カッチョよくオブジェぶりがスゴい。絶対単行本で入手すべき。本棚にこれ刺さってたらクール。帯は取っちゃいました。 ・【配達には注意を要する】重要だと思うので隅付きにしました。段ボール箱詰めでしょうか。 ・まさに奥泉文学アヴェンジャーズ。キャラも題材も。集大成ぶりが逆に怖い。もっと書いて先生!本家アヴェンジャーズの作品自体はマーヴェル・サーガの中間報告みたいなものと解釈。ご同様に本作は集大成ではなく単なる中間報告ということで勝手に思いこみますすいません。 ・いや本当に集大成感がスゴくてまるでゴールみたいなんですよ。それが寂し過ぎて。 ・主にグランド・ミステリー、神器、雪の階からキャラアセンブル。他に吾輩は猫である殺人事件。鳥類学者のファンタジア… 新地底旅行、モーダルな事象からはロンギヌス物質。あと何? ・雪の階ファンは最後まで席を立たないで。 ・プロットはグランド・ミステリーの直接の続編。某キャラが登場してから一旦閉じて前作を二十分くらい飛ばし読みしました。 ・グランド・ミステリーの友部はなぜ本作では山部になったのか?モデルとなる人物と云々とか?(妄想) ・例によって謎が謎を呼ぶトラディショナル連載小説スタイルでどんどん引っ張ります。本当にうまい。 ・残り五分の一からの展開は人によって意見は様々でしょう。ただページを繰る手は休ませない。 ・ジャングルをさまようフラッシュバック連発と鼠の自問自答はキツかったけど自分は受け入れました。奥泉氏は地獄のような幻想いわゆるバッドトリップの言語化を読者の期待以上に執拗に追求するお方。本作でも連鎖爆発&大爆発。 ・対する石目パートの軽妙な文章がイイ!グレた坊っちゃんみたいな奥泉文学あるある文体。 ・奥泉文学あるある天皇制考察。今回はかなり踏み込んで語っています。かなり。その緊張感たるや!なお旧約聖書から名ヒールがゲスト出演。 ・奥泉文学あるある平易な言葉で重要な思想を説く。 「自由っていうのは、生きようとすることなんだと思う。なんていうか、生きていることのエネルギーっていうのかな、そういうのがどんどん出てくるのが、自由ってことなんだと思うんだよ」 ・奥泉文学あるある知識に裏づけられた痛烈な批判。 「慰安婦はただの娼婦じゃない。普段は兵隊の相手をするんだけど、戦闘になれば、負傷兵の介護をしたり、弾を運んだりもした。爆弾が雨霰と降るなかでね。口先だけの参謀なんかよりよっぽど戦争に貢献したのに、負けだとなったらみんな棄てられた。残飯かなにかみたいにね」「RAAの話を聞いたときには呆れたわ。国が率先して売春宿をはじめるなんて前代未聞。敗戦からまだ二週間くらいしか経ってないときによ」「とにかく敗戦後の日本が官民あげて真っ先に取り組んだのが、売春宿の設立だったっていうのはよく覚えておいたほうがいいわ」 ・日本文学史にさんぜんと輝くあの娯楽小説からカメオ出演あり。 ・セッション?音楽に関する?シーンのやたら愛想のいい外国人男性あれは誰だろう? ・その他元ネタご教示願います。 ・クライマックスはdadaそのもの。単行本の小口からクライマックスの箇所がわかる珍しい仕様です。 ・黒塗文書のまがまがしさをイメージしているのかなと自分の感想。 ・滝の上演イベントが素晴らしいあれは思いつかない。究極の和モノ。 ・結末。あそこで死ぬ人たちについて自分としては少し驚きました。じゃああの団体って悪くないじゃん。 ・自分のような奥泉中毒にとって、本作は千百頁にわたって氏の名調子にひたれるテラ多幸空間でした。 ・ラスト一行はあれしかない。 | ||||
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