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ソラリス



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ソラリスの評価: 4.32/5点 レビュー 136件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.32pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全116件 61~80 4/6ページ
No.56:
(5pt)

飯田訳のほうが読みやすい

飯田訳「ソラリスの陽のもとに」のほうが文章表現が洗練されていており、スラスラと場面が浮かび読み進められる。
それに対して、沼野訳「ソラリス」は精密な描写表現を目指していると思われるが、表現が廻りいくどい箇所もあり直観的な理解が遅延する事がある。
この2冊についての読み進め方としては、先ず飯田訳を読み全体を把握した後に、沼野訳でロシア語版の削除された部分や改編された箇所を補完するのが最適解だろう。
少し読み始めてから読書スタイルの戦略を変えてみた。
飯田訳「ソラリスの陽のもとに」を数ページ読んでは、沼野訳「ソラリス」の同じ箇所を読んでみた。
手間と時間は掛かるが、翻訳者の訳の感覚の違いや出版社が自己検閲で削除した部分がよく解った。
ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)Amazon書評・レビュー:ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)より
4150102376
No.55:
(4pt)

なんせ装丁が素晴らしい


内容の素晴らしさについては
すでに多くのレビュワーの方々が書いてらっしゃるので
わたしはまったく別の面から本書を推したい。

本書、なにが素晴らしいといって装丁が素晴らしい!
装丁について言及されている方が皆無なのが不思議な
くらいだ。
イラスト、フォント、色合い、すべてがバランスよく、
このうえなくセンス良し。端的に「かっこいい」のだ。
わたしの歴代の「ベスト装丁」では1位か2位にくる。

所蔵を前提とするなら、以上の理由から
わたしは早川書房版よりもこの国書刊行会版を
強く推します。

なお、以下も余談的になるが ―

映画マニアのあいだでは
A・タルコフスキーの 『惑星ソラリス』 といえば
ロシア (旧ソ連) の巨匠の傑作として名高いわけだが....

翻訳者の解説 (あとがき) によれば、作品解釈をめぐって
原作者レムとタルコフスキーの間で 相当「大人な喧嘩」
があったそうである。
原作者レムは 『惑星ソラリス』 を酷くこきおろし、
タルコフスキーに 向かって「あんたは馬鹿だ」 とまで
言い放っている (笑)
( 翻訳者は両人の資質の違いを、上手く表現している―
タルコフスキーは 「郷愁の人」、レムは 「違和感の人」であると)
もちろん上をもってして『惑星ソラリス』の評価が揺らぐことはないのだが、
映画版 のカルト的人気と考え合わせると、このエピソードはとても興味深い。
ソラリス (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ソラリス (ハヤカワ文庫SF)より
4150120005
No.54:
(4pt)

人それぞれ

面白いかは人それぞれです。読んでみたい人は、読んでみてください。
ソラリス (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ソラリス (ハヤカワ文庫SF)より
4150120005
No.53:
(5pt)

幼き創造主

いやー…
SFファンとしてこの小説を完全な翻訳で読めるのは幸福の至りとしか言いようがない。
人間の悲しみについての、哀切な、哲学的な物語と、ハードSFが一体化した、稀有な傑作。

ネタバレになってしまうが、とりとめのない感想。
訳者の後書にあるとおり、この小説はどのような受け止め方でもできると思うが、こういう受け止め方もあるんだという参考に。

「お客さん」はソラリスがニュートリノを凝集させることによって分子?レベルで人間を模造して作ったもの、いわば生きた幻だ。
ソラリスは人間の似姿を創造した。でも何のために?と問うなら、自問しなければいけない。われわれは自分が何のために創造されたか知っているのか?
物語の終盤でケルヴィンが言う「欠陥を持った神を崇める信仰」とはグノーシスのことだろう。ソラリスはわれわれを造ったのとは違う、別の幼き創造主(デミウルゴス)、またはそれに比肩する何かなのだろう。

なぜわれわれは不死身でないのか、愛する者との身を引き裂かれるより辛い別れをなぜ経験しなければいけないのか?
われわれは永遠に答えの出ない問いを問い続ける宿命だ。他の知性体がこの宇宙にいたとして、それを必ず理解できるなどと思わない方がいい。ましてや他の星の知性体が人間と似ていることを期待するなど余りにも幼稚。だって、われわれは自分たちの創造主の意図すら理解できないのだ…

そして、何のために作られ、壊されるのかさっぱり分からないまま多大な犠牲を払ってミモイドや対称体を調べ続けるソラリス学者たちは、顕微鏡や望遠鏡を片手にこの世界と格闘する科学者たちとあまりに似ていないだろうか。
この小説は現実の壮大な戯画でもあるのだ。

この小説のラストもまた、多義的な受けとめ方ができるものだが、それでもわれわれはこの世界を理解しようとする努力を止めないんだ、という前向きなものだと考えたい。
ソラリス (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ソラリス (ハヤカワ文庫SF)より
4150120005
No.52:
(4pt)

圧倒

1961年に東欧ポーランドで発表されたSF小説。今読んでも設定等に古さを感じるところがなく関心した。知性をもった海という未知との遭遇を通じて主人公の思考が愛や神について深く掘り下げられいく過程に圧倒された。
ソラリス (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ソラリス (ハヤカワ文庫SF)より
4150120005
No.51:
(4pt)

人間の理解を超えている ソラリスの海

島地勝彦が薦めていたので、読んでみた。

訳者あとがきに、作者の創作意図がうかがえる文章が掲載されており、

宇宙は、人間の理解を超えていて、人間の知性で理解しようとすることの限界を説いている。

『「かれら」の文明が「われわれ」の文明と全く違った道を進んでいるとしたら。

クリスの目前にいるハリーも、ハリーであってハリーではない。』

クリスは人間の知性、感情をもって、ハリーに愛情を感じだすが、それは決して海の策略ではない。

主人公クリスは、「不完全さを、本質的、内在的特質としてもってる神」の存在を想像した。

幼稚な神、不完全な神、『それは何も救いはしないし、何の役にも立たない、ただ存在するだけ』。

長く世界の人に読み継がれている作品だけに、根底に哲学的深淵を感じる。いい読書体験ができた。
ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)Amazon書評・レビュー:ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)より
4150102376
No.50:
(4pt)

不思議な世界観だった

ロシアの友人に勧められて読んだ本。(作者がロシア人)一言でいうと「おもしろい」です。ただ、抽象的な表現や難しい専門的な用語があり、たまにその部分を何度も読み返したりしたりもしました。この表紙が、本の世界観をうまく表現してると思います。じっくり本の世界に浸りたいと思うときにお勧めしたい本です。
ソラリス (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ソラリス (ハヤカワ文庫SF)より
4150120005
No.49:
(5pt)

眩暈がする

正直言うと私は旧訳で挫折していまして再挑戦という意味で新訳を手に取ってみたのですが、今回は最後まで読み進めることが出来ました。

主人公を通して物語を読み進めていくと様々なフィールドの研究者たちが時には熱狂的に、時には諦念を交えながらソラリスという生命体の謎を探求する様子を窺い知ることが出来ます。それはまた飽くなき探求心の象徴であり、ひたすらに敗北を余儀なくされた人類の歴史でもあります。

時折、ソラリスの描写が挟まれるわけですが、変容に富んだ捉えどころのないソラリスに私の乏しい想像力はオーバーフロー気味でした。ソラリスの研究者たちが頭を抱えるわけですね......

冒頭にあるように本書は私にとって難解な部類の本に入ります。しかし、クローズド・サークル的な状況のもと主人公を前にして意味深にして不可思議な行動を取る研究仲間たちや、主人公を巡るラブロマンスが本書のページを捲る手助けてくれました。恐らく、全面的にコンタクトに焦点をあてられていたら再度の挫折を余儀なくされたかもしれません(笑)

最後に、本書を読み通して常に感じていたのは、レムの圧倒的な想像力でした。ここまで緻密に描写をし仮想とはいえ学問の体系や、独自の理論を築く力量には唖然とするしかありません。それが読みにくさの要因となっている感が否めませんが、ただの飾りではなく説得力ある世界を構築するためのファクターとしているのには流石というかしかないです。
ソラリス (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ソラリス (ハヤカワ文庫SF)より
4150120005
No.48:
(5pt)

エンディングは断然映画よりこっち

新旧いずれかの映画をご覧になって興味を持たれた方もいらっしゃると思いますが、まったく違うエンディングで非常に静かに物語が終わります、映画の劇的な終わり方と違って物足りないと感じる方もいらっしゃると思いますが原作者のスタニスワフ レムが言いたかったことがここに凝縮されていると思います。

映画を批判するわけではなく映画は別物として観て面白いと思いましたが、個人的には原作版の静かなエンディングのほうが深く心に残っていて面白いと感じています。
ソラリス (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ソラリス (ハヤカワ文庫SF)より
4150120005
No.47:
(5pt)

なぜ,レムにノーベル文学賞をやらなかった!

というのが,わたしの口癖なんだけど,これほど高度に科学と文学を融合させた小説家がいたろうか? いや,いない。
レム自身科学者だったし,レムと同レベルの科学者でSF作家という人はいると思うが,レムほどの文学性を持った人はいない。

宇宙に生物がいたとしても,人間型である可能性はほぼ無いとわたしは思う。
ここでは,惑星ソラリスの海が生物だ。 レムの作品では,宇宙の他の生物との意思疎通はできないと考える。

わたしも,人間型宇宙生物はいないと思うし,意思の疎通もやはりできないと思う。 宇宙生物はそれほど異質だと思うからだ。

レムの作品はSF好きだけでなく,全ての文学好きの人が満足できるレベルの小説ばかりだと思う。

レム全集の Kindle版 配信を,強く望む。 「天の声」「枯草熱」「リンファーテルの公式を含む短編集」などなど,全部読みたい!
英語だったら頑張って読むんだけど,ポーランド語を今から習得するのは,キツいです。 全集お願いします!
ソラリス (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ソラリス (ハヤカワ文庫SF)より
4150120005
No.46:
(5pt)

『わかりにくさ』が本質の物語

あまりSFは読まないのですが、美しい装丁とあらすじに惹かれて、一切の予備知識なしに国際線の中で一気に読みました。スッキリさせてくれない、そして悲しい、長い余韻の中で考え込んでしまう物語でした。
ソラリス研究者たちの悪戦苦闘を物語る観察や科学史がこれでもかと緻密に説明されます。思うにそれらは、ソラリスを理解しようとする人類の努力のほとんどが的外れでトンチンカンで意味を為さない事の描写です。
人類の試みがトンチンカンであるのと同様に、ソラリスから人類へのコンタクトもトンチンカンなのです。それ故に人類は混乱し恐怖し悩み苦しみ、悲劇を演じることになります。
この『人とソラリスの噛み合わなさ』こそが、レムの卓抜した想像力が提示した、実在の根本から違う者同士のコンタクトの姿なのでしょう。
ソラリスが遣わす訪問者は、親愛なる者の姿で強い執着と関心を持って人の前に現れます。ソラリスはきっとなぜ人がそれに恐怖するのかどころか、下手すれば恐怖というものすらよくわかっていない。
2周目を読むときには、1周目は不気味で仕方なかった訪問者の懊悩や感情を思いながら読むことになるでしょう。それは、1周目にはあくまで人類たる主人公の主観的視点にいた読者が、地球外生命体という全く得体の知れない絶対的他者の視点を理解しようと考え始めた第一歩なのかも知れません。
ソラリス (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ソラリス (ハヤカワ文庫SF)より
4150120005
No.45:
(5pt)

哲学的思考を潜在的に盛り込んだ、現在でも十分通じる、斬新なSF小説である

一読して損はないと思う
更に、スタニスワフ・レム の作品を読みたくなった
余談ですが、再訳版の「ソラリス」より、物語としては断然読みやすいと思う
ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)Amazon書評・レビュー:ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)より
4150102376
No.44:
(5pt)

2つの両極端なレビューになった

異星人または異性生物体との意思疎通について、心底考えさせられる。
異星人も私たち地球人と同じ思考回路や思考形態を持つ、と前提して物語が作られることが多い。
私もそう思っていたが、テッド・チャンの『あなたの人生の物語』を読んで、あまりに無邪気だと気付かされた。
なので、パイオニア10号に載せられたメッセージ板は、異星人にとって恐らく何の意味も持たないだろう。
いや、この場合の「意味」って一体何を意味するのだろう。
ソラリスの海は生命体らしい、ということは分かるが、なぜこんなことをするのか? という問いに答えは出ない。
そもそも、地球から遠く離れたソラリスに生命体が存在する、ということ自体が、地球人に何か関係があるのか、というと、ない。
関係ないのに、しかも一方通行だと分かっていて、なぜわざわざ理解しようとしなければならないのか。
地球人には好奇心があるから?
意思疎通できる、理解できると期待するから?
そう考えると、ソラリスの海が地球人の脳内の「何かの部分をキャッチ」して、それを原子ではない粒子で形にする、というのも変だ。
キャッチするということは、疏通するということではないのか。
しかし、この考えに対しては『意思ではなく、核酸の言語によって多分子の結晶の上に書きとめられた絵を取り出したのだ』と身も蓋もない答えがちゃんと用意されている。
そして、その原子ではない粒子でできたハリーは、地球人のように思考した結果、自分の存在を無にする道を選択する。
ハリーの地球人のような思考は、ソラリスの海によって組み込まれたものだ。
これも考えれば考えるほど訳が分からなくなる。
ケルヴィンは、ソラリスの海がケルヴィンを創り出しているかのような悪夢を見るが、もしそれが本当にできあがったら、どうなるのだろう。
残念ながらそれは悪夢で終わってしまった…。
いや、こんなレビューはやめよう。
書きなおそう。
異星に行ったら、死んだはずの人が突然目の前に現れた。
かつて愛し、傷つけ、それがもとで自死してしまった人だ。
どうやらそれは、異星の生命体『ソラリスの海』が作り出したらしい。
となれば、海に何かの意図があり、それを理解したいと考えるのは当然。
そのために「ソラリス学」という学問まで作られた。
しかし、悪戦苦闘の末、「海の意図を理解することはできなかった」と悟るまでの物語、ということになるのかな。
ソラリス (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ソラリス (ハヤカワ文庫SF)より
4150120005
No.43:
(5pt)

SFミステリースリラー

不思議な読後感の残るSFであり、ミステリーであり、怖い怖いスリラー小説である。新訳ということだけど、既訳を読んでいない私にとっては、実に読みやすい日本語ではあった。

 SFにしては、ETとのガチンコ対決もなければ、派手な立ち回りもない。実に、そう、実に哲学的なラヴ・ロマンス、ミステリー&おっそろしいまでのスリラーである。お相手は意識を持った「海」?っていうことがすでに現地ソラリスでは明々白々なことである!

 よく分からないままに話が進行する。問題点をクリアしないままに「私」と妻(?)ハリーとの切実なお話が進行する。巨大な黒人女って何だったんだろう?ベルトン博士の証言に出てきたこれまた「巨大な子供」っていうのは、何?
 何もわからない・・・・何も解決していない・・・・・

 ムンティウスの「ソラリス学入門」で勉強してみようと、大阪・中之島図書館の蔵書検索を調べてみると・・・・・・
ソラリス (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ソラリス (ハヤカワ文庫SF)より
4150120005
No.42:
(5pt)

現代の古典。でも小説としてお勧めはしない

「現代の古典」の完訳版がはやくも文庫化されたことに感謝。

翻訳はたしかにぎこちなく感じるところがある。これは訳者あとがきにあるように
意図的なものだろうと受け止めた。すらすら読みやすいラブロマンスとしてでなく
古典文学として原文に忠実に訳した結果と考えれば、許容範囲だと思う。
(ちなみに私はチェーホフ短編集の愛読者で、沼野氏の力量は常々尊敬している)

古典としての価値は★5つ。

もっとも、それと小説としての面白さは別だ。
人間形態主義を排して思考実験を突き詰めれば、こういう形もあるとは思う。
しかし、地球外理性との相互理解を排し、心の理論の類推を排し、技術水準の類似を
排し、、、という風につきつめると、結局、まったく理解を絶する謎しか残らない。
相互作用が皆無のところには何もストーリーが生まれない。
ひたすら不可解なだけ。

同じファーストコンタクト物でも、たとえばクラークの「宇宙のランデブー」はきちんと
小説作法にのっとっているから、本書にくらべて圧倒的に面白い。

総じて、SF小説の安易な定型を破壊した点には大きな意義があるらしい(だから古典)が、
破壊した先に新しい小説世界を構築できたかというと、どうだろうか?
というわけで、読んで損はないが、あまり期待しないでね、というところ。

(4月30日補足とともに一部削)

この本を「哲学的だ」といって持ち上げる評が米アマゾンなどに見られる。
しかし、それは間違っていると思う。

哲学(自然哲学)というのは、世界の謎に直面したときに、人間の理性を限界まで使って
謎を解明していこうとする営み、知的な構えを意味している。
不可解を不可解のまま放り出すのは、哲学とは正反対で、むしろオカルトという。
小説として捉えれば、結末を放り出す点で、夢オチと五十歩百歩である。

もっとも、不可解をそのまま提示する文学ジャンルもあって、それを怪談という。
本書も怪談だと捉えれば、人物描写が薄いことやストーリーがないことも納得できる。
SF怪談「宇宙耳袋」だと思えば、まあ本書もありかなと、ちょっと考え直した。
ソラリス (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ソラリス (ハヤカワ文庫SF)より
4150120005
No.41:
(5pt)

古典的名作の現代的意義

すでに古典的名作となっているレムの『ソラリス』
地球外生物を人類とは意思疎通を図ることの不可能な存在として描いた本作は
ファーストコンタクト物の新境地を開いた作品として、確かに古典といえるだろう。
しかし現代においてもそのSF小説としての価値は高い。
現代社会においても、しかも宇宙へ出るまでもなくこの地球上においてさえ
人類はいまだに意思の疎通を図ることができない数々の生命体に取り囲まれている。
私たちはそれらの生物と意思を通じ合うことができなくとも協調を図っていかなくてはならないのだ。
旧訳『ソラリスの陽のもとに』における評価の高さはそのままこの完全訳にも当てはまるだろう。
ソラリス (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ソラリス (ハヤカワ文庫SF)より
4150120005
No.40:
(5pt)

不思議な魅力を持つ名作

A.タルコフスキー監督『惑星ソラリス』(1972、ソ連)は、インテリ好みのSF映画の傑作としてよく知られている。
原作は、ポーランドの作家スタニスワフ・レムによる本書『ソラリス』(1960)。日本では飯田規和訳『ソラリスの陽
のもとに』(ハヤカワ文庫SF)が、1965年の初訳から長年読み継がれてきた。

沼野充義による新訳は、ハヤカワ文庫版ではカットされていた部分も訳出され、著者の狙いがより鮮明になった印象だ。
従来の版に親しんだ者もこの機会に再読する価値が十分にある。訳者による巻末解説も充実している。

もともと『ソラリス』は、主人公の心理学者ケルヴィンとその自殺した恋人ハリーとの再会の物語として多く語られてきた。
ソラリスの海によって、ケルヴィンへの《お客さん》としてハリーが送られてくる。そのハリーをめぐるケルヴィンの葛藤が
最大の読みどころとされてきた。心理小説としての側面に焦点が当てられてきたのである。

しかし、新訳の再読で、その読みは本来違っていることを確認した。

巻末の解説にもある通り、作者レムの狙いはソラリスという絶対的な他者とのコミュニケーションの不可能性という思弁にこそある。
つまり、SFという形式を使ってしかできない思考実験を十二分に行うことが、この小説のメインテーマなのだ。相当な紙数を
費やして描かれるソラリス学に関する描写や、第8章「怪物たち」での海の作り出す様々な模様の説明がその証拠といえる。
さらに架空の書物であるギーゼ『ソラリス研究の10年』の詳細が、著者ギーゼの性格描写とともに二十数頁にもわたって
記述されていることなどに、思弁SFとしての質がはっきり現われている(183〜206頁)。

この思弁の部分は、実のところ、十分説得的な議論を展開しているとはいえない気もする。表面的な用語の難しさのわりに、
実質的内容がないようにも感じられるのだ。しかし、にも関わらず、ある種の哲学書のもつオーラを本書も持っている。
よくわからないけど、魅力があるのだ。

そして、全体としての難解さ(とそれに伴う読みにくさ)にもかかわらず『ソラリス』は甘いラブ・ロマンスでもある。
ハードSF『ソラリス』のなかで、実はサイド・ストーリーでしかないハリーとケルヴィンの再会に、何故こんなにも魅せられるのか。
何度も繰り返されてきたこの問に、また私もとらわれる結果となった。不思議な魅力をもった名作である。
ソラリス (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ソラリス (ハヤカワ文庫SF)より
4150120005
No.39:
(4pt)

最初から唸らされます

静かな重みで、ジワジワ来ます。映画の惑星ソラリスは全部観ましたが、同じ内容なら、このSFのシナリオ、もう少し何とかハッピーにならないものかと・・・思わずには居られないので、まだ最初の方しか読んでいません。これから時間を置きながら、しみじみと読んでみたいと思っています。評価は本当は★5つでも不足する位だと直感的には十分思うのですが、ストーリー的に、自分が万一主役だったら耐えられないと思う点で、悩んだ末の★4つです。ゴメンナサイ。
ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)Amazon書評・レビュー:ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)より
4150102376
No.38:
(5pt)

個人的に今まで読んだSFの中で一番難解な作品でした

地球外で生命体が存在するというソラリスという惑星の探査に派遣された学者が様々な体験をし・・・というお話。
この小説に関しては読んでいなくても映画化されたものを観た、或は粗筋は知っているという人が多いと思うので、作品の要諦に触れますが、人間の意識を反映する海が面積の大部分を占める惑星で人間が自分の自我と対面することで、人間とは何か、何故我々は存在しているのか、本当に存在しているのか、というアイデンティティを問うているのではないかと思いました。「我思う故に我あり」という命題がありますが、本当にそれで証明できるのか、もしかしたら全ては妄想で不確定なのではないか、と人間存在の不明瞭さを読者一人ひとりに突き付けているのではないかと思いましたが、見当違いでしょうか。そういう解釈が成り立つとすれば、後続のプリースト「魔法」やオースター「ガラスの街」等に与えた影響は大きいと思われます。サイバーパンク以降、最近のテクノ・ゴシックと呼ばれるものも「ソラリス」なくしてはなかったでしょう。あらゆる意味で源流と言える小説だと思います。
私的には今まで読んだSF小説で一番難解な小説で、ソラリスに関する探究の部分や主人公の内省部分等は数学や物理や心理学の論文を読んでいるようで些か辟易しもしましたが、自己省察に役立つ有益な読書体験でもありました。
ハリウッドで映画にした時は難しい思弁的な部分を全てとっぱらって単なるラヴス・トーリーにしたらしいですが、確かにそういう読み方も可能ですし、そういう部分が作品の多様性に寄与している部分も多々あると思いますが、なんだかねぇ〜とも思います。ピンチョンがオーウェルの「一九八四年」を悲痛な恋愛小説であるところを見逃してはならないと指摘しているのでそういう読み方もありだとは思いますが・・・。
それと今まで翻訳されていたのが、ポーランド語からロシア語に翻訳されたものを更に日本語に翻訳していた重訳だったらしいので、今回はポーランド語から直接翻訳しているということでとても嬉しかったです。重訳はあまり好きではないので。レムは全部ポーランド語からの訳で選集といわず、全集でだしてもらいたいですね。
ソラリス (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ソラリス (ハヤカワ文庫SF)より
4150120005
No.37:
(5pt)

愛を叫ぶ

愛を叫ぶ

SFというジャンルの中で、かなり珍しい題材を扱った作品。
意識を持つ海・海によって作り出された人間の存在。
人間の「意識」とは何か。与えられた刺激に対してまるで
そもそも自律的に反応するかに見える「海」は、人間が理解できる「意識」を
持っているのか。
海の意識が「目的」とすることは何か。単なる「反応」と「自律的意識」は
判別できるものであるのか。
「海」によって生み出された「人間」は、人間に「反応」するだけではなく、
「意識」を持ちうるのか。
主人公はその「恋人」の存在に苦悩する。

なにやら小難しいことを述べているように思えるが、この作品では
主人公の心の動きや、抽象的とも思える観念を長々と述べながらも
冗漫な箇所は少しもない。

不思議な緊張感と共に、物語は始まる。
主人公の前に出現する、確かに「海によって生み出された恋人」ではあるが
人間とどこが異なるのかさえ曖昧になる、確かに「意識」を持った存在。

海もまた不可思議な存在。
あるものを分析し、生物までも生み出すことができるのにも関わらず、
海には「目的」も、「何かを生み出しそれを利用する意識」もない。
この「海」には、人間が通常持ちうる「知性」や「理性」が果たして
あるのか。

主人公の内面や「海」を把握しようとした人間の苦闘を描き、
派手な箇所はほとんどない。
しかし、最後まで一気に読み通せる力強い文章。

一読して、この題材ではかなり好みが分かれだろうと思った。
後に映画化されたこの作品の評価も二分されたのも頷ける。

通常の「SF作品」とは一線を画す。
まさに名作であるとは思うが、SF的要素が少なく、ハードSF等を読みたいと
思った人は、読みにくいだろう。

いかなるジャンルであっても、文学作品は存在しうる。その明証になろう。
ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)Amazon書評・レビュー:ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)より
4150102376

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