主の変容病院・挑発
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短編集
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評判
主の変容病院・挑発の評価:
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主の変容病院・挑発の総合評価:
7.33/10点 レビュー 3件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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私が興味を覚えたのは、病院を制圧し、医者たちを脅し、患者たちを殺戮するのが、ドイツ将校と彼らの手先となったウクライナ兵士たちであることだろう。ドイツとロシア(ソ連)に挟まれたウクライナは(もちろんポーランドもだが)この時代、二つの強国に蹂躙される。ウィキペディアによれば第二次世界大戦におけるウクライナの《犠牲者は800万人から1,400万人とされている。ウクライナ人の間では5人に1人が戦死した》とあるが、同時に多くのウクライナ人がソ連赤軍の先兵にもなれば、ナチの手先にもなったのだ。
レムのこの小説は戦後、ソ連の支配下にあった共産主義国ポーランドで書かれたため、ソ連(ロシア)に批判的な言葉は許されなかった。著者は細心の注意を払ったであろうが、『主の変容病院』は社会主義リアリズムの枠組みに合わないとして出版が許可されない。
レムはこれに続く部分を書き、三部作『失われざる時』を『主の変容病院』執筆から八年も経て、やっと出版にこぎつける。だが第二部『死者たちの中で』、第三部『帰還』はその後、レムによって封印され、再刊も翻訳も許可されていない。今世紀に完結した三十巻以上のレム著作集にも、一部断片しか収録されなかったようだ。
『主の変容病院』においてレムは、後に『宇宙戦争』論(『高い城・文学エッセイ』収録)でも記すように、いかに人々が無慈悲な制圧下のなかで隷属化され、仲間を裏切り、自分が助かろうとするかを描いている。それはソ連のスターリン体制のなかで蔓延した悍〔おぞ〕ましいばかりの人間のありようであったが、レムは小説のなかでそれにふれることができなかった。
この小説の後、レムはSF『金星応答なし』を書くが、レム初めての単行本となるその著作には、レムが生きる世界をおおうロシア共産主義への妥協がみてとれよう。