ピース
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巨木ではなくとも決して小ぶりではないであろう楡の木が倒れた。語り手のウィアは暖炉のそばで眠っていて気づかず、自分はもう死んでいるのではないかと考える。そして回想が始まっている。冒頭を読んだだけで、ひどく頭が混乱させられる。 脳卒中を病んでいることからして、ウィアは若者ではないと見当をつけるが、少年になったり中年になったり、やはり老人であったりする。 オリヴィア叔母とピーコック教授の3人で探検した洞窟の思い出、本書の表紙を想起させる磁器(チャイナ)の卵、贋作を書き続ける古書店主、図書館司書の女との宝探し、石化していく薬局の店主、数え上げたらきりがない魅力的で真偽の定かならぬ挿話が、しばしば脈絡を無視して次から次へと語られていく。それらの挿話が互いにどのように関連し合うのかはわからない。ジャガイモを原料に作られるオレンジ風味の飲料とはなんだろう。 わからないことだらけで読み返す。読み返すたびに発見がある、ような気がして、けっきょくわからない。けれども読み返さずにはいられない。精巧に組み立てられていながら、決して噛み合わない歯車のような不思議な小説。歯車と歯車の隙間を埋めて本書を小説たらしめているのは、やはりフィクションの力だろう。SFや幻想ではおさまりきらない傑作。 | ||||
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まず題名の「ピース」。これが意味不明である。 解説には逆説的な意味合い(つまり平和の反対の語義)として解釈しているが、平和といったら平和なのかもしれない。 全編通してウィア氏の少年期からの日常しか描かれていないのだから。 「ケルベロス第五の首」と同じで、過去から未来へと時間通りに続く記憶の記述を一旦ごちゃまぜにして順番に語っていくスタイルを取っている。 カードゲームで表現するとカードを全てシャッフルして一番上のカードから一枚ずつ取っていくようなものである。(ウルフ氏の場合、カードの絵柄も意味不明だろうが。) 静謐に語られる世界観にひたすら酔える作品であり、あくまで今作はSF小説ではなく幻想文学である。 雨の日に読みたいとまで贅沢を言えないが、休日に1人じっくり読みたい一冊である。 | ||||
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米SF作家ジーン・ウルフの初期の長編で、「」の次に書かれた作品だそうだ。 舞台は1900年代のアメリカ中西部で、特にSF的ガジェットは出てこない。 しかし、ジーン・ウルフという作家は舞台が未来の地球であれ宇宙の植民星であれ、装飾的でゴシック調の文章を書く人で、この小説も文体は大変華麗であり、そういった意味ではまぎれもなくジーン・ウルフ的である。 いやむしろ、「ケルベロス第五の首」よりも「」よりも本作は難解かもしれない。 主人公が読む本、登場人物の語り、登場人物が別の者から聞いた話、など様々な形をとって数多くの物語内物語が挿入され、入り組んで配置されている。 時として話者が途中ですり替わることすらある。 またジーン・ウルフらしく、語られない物語もある。(ロイスはどこに行った?25口径の拳銃?) またそもそもストーリーは(全体を通したストーリーというものがあるかどうかすら疑問だが)時系列には進まない。 過去の出来事が、思い出されるままに語られる。 本書の最後に掲載されている解説によると、ジーン・ウルフ本人は本書は記憶と物語に関連する作品だと述べているそうだ。 作者本人からあまり多くは語られていないそうだが、本書からは1900年代初から半ばの、アメリカの土着の生活の空気が漂う。 記憶というのは主人公ウィアの記憶という意味だろうが、作者ジーン・ウルフの記憶という意味もあるのではないか。 そしてまた感じるのは、そういった過去の記憶への愛惜である。 本書自体は難解で解釈が難しいストーリーであるが、自分の人生で邂逅し、今は失われてしまった人々や物語への愛情を込めたセンチメンタルな物語、として読むのが正解なのかもしれない。 | ||||
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なんとはなしに後回しにしていた「ピース」を読了。実際に読み始めたら、どこへ向かうのかわからないストーリーと挿話に導かれるように小説の世界に入り込んでしまいました。 微妙に色合いの違う美しいシフォンを何枚も何十枚も重ねたような、その重なりの色合いによって、優美だったり、グロテスクだったり、素朴だったりと、ほとんど数十行おきに様々に印象が変化するなかで、ひんやりとした大理石のような全体の姿がおぼろげではあるけれど見え隠れしているような、そんな世界です。 読後のインパクトという点では、「ケルベロス第五の首」のような鮮やかさはないし、「デス博士の島」のような味わいもないけれど、「幻想文学の傑作」と言い切ってしまうことすら浅薄に思えるような物語世界を堪能できます。非日常が苦手な方にはお薦めしませんが、SF読者である必要は全くない作品です。 | ||||
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静謐な文体で様々な幻想のエッセンスが渋くきらめくように語られる、装丁のイメージ通りの美しい作品。 謎めいた登場人物たちが織りなすエピソードが穏やかでありながら混沌とした迷宮に読者を誘い魅了してやまない『ケルベロス第五の首』と並ぶ幻想文学の傑作。 まずは予備知識無しで読むことをお勧めする。 巻末の西崎憲氏による精細な解説は読む度に謎が深まる、この小説世界を探求する読者への素晴らしいガイドとなっている。 | ||||
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