奇跡なす者たち
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国書刊行館が出版した8篇から成る中短編集である。書かれたのは50~66年だ。 同工異曲の作はひとつもないのに、摩訶不思議なトーンは通ずるものがある。 『フィルクスの陶匠』は陶器と色彩にこだわった芸術SFともいうべき作品だ。プロットの捻りが秀逸だ。 『音』は音楽がモチーフの幻想譚。 『保護色』は小味なアイデアが冴える生態学SFだ。 『ミトル』は文明から取り残された少女が主役の異星奇譚とでもいうのか。痛ましくも不思議な美しさをたたえた佳作である。 『無因果世界』は、五篇の短編の中では白眉だ。因果関係が壊れた世界という発想が素晴らしい。走っても進まない、石を投げても飛ばない。こんな世界を描けるのは、ヴァンス以外にいないだろう。 後半の中編三作はいずれも傑作だ。 表題作は先人(原住民)と魔法を駆使する尊大な人類軍の戦いを描く。 装備で勝っているはずの人類は、先人の特殊な戦法に散々に打ち破られる。ベトナム戦争を連想するなあ。魔法が論理であり科学である世界で、最後にもうひとつのやり方が示唆される。二重捻りで真実に着地するこの快感! 異世界を描くのが得意な作家だが、本書のナンバー1は、『月の蛾』だ。住民は全員仮面をかぶっている。 仮面は職業・地位・相手との力関係などを示すシンボルなのだ。会話は楽器を演奏しながら歌わねばならない。 地球から派遣された主人公は、潜伏する殺人鬼を逮捕せねばならない。 全員が仮面をつける世界で、どうやって?異色ミステリの逸品ともいえる。 『最後の城』昆虫人メックVS人間の貴族たち。異様な世界の戦争という点では表題作に似ているが、内容はかなり違う。 本作は思索を凝らした深みはない。そのかわり奇怪な亜人たちの描写が秀逸だ。毒舌家の巨鳥がかわいい。痛快娯楽編である。 よくぞ訳してくれた。これからも楽しみにしてます。 | ||||
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一級の小説を読んだ後には深い余韻に包まれるものです.読後しばらく経った後であってもストーリーとともに,余韻が鮮やかに蘇ることはよくあるものです.しかし,さらに時が経てば,まず小説の細部の描写の記憶が失せていきます.そして,小説への感慨も薄れ,最後にはストーリーさえあやふやになってしまいます.それでもまだ余韻が残っていることに気付くときがあります.感慨やらストーリーやらが失われてしまったせいで,逆に余韻はさらに濃厚になったとさえ感じられる程です.そんなとき,ストーリーやら描写やらは実は単なる夾雑物に過ぎないのではとさえ思ってしまいます.本作はまさにそんな一冊です. | ||||
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亡き浅倉久志さんに依るSF及びファンタジーの巨匠の作品集。 異星文化と特異な生物相の描写が、矢張り素晴らしい。「フィルスクの陶匠」のブラックなオチも面白いし、奇想天外な生物兵器合戦を描く「保護色」、一枚のスケッチの様な「ミトル」、ニューウェーブな「無因果世界」、ファンタジーとSFを融合させた「奇跡なす者たち」、本巻の中で異文化テーマの決定版とも云うべき「月の蛾」、滅びた地球を舞台に、メンタリティの異なる種同士の争いを中世騎士物語風な戦いで描いた「最後の城」など、いずれも傑作揃い。 この後、ジャック・ヴァンス・コレクションの刊行も決定していると云うし、浅倉さんも草葉の陰で喜んでおられる事だろう。 | ||||
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ザ・フーが本国はもとより、海外では高い評価を受けているのにも関わらず、日本ではとてもマイナーな地位に甘んじているように、SF界においても、ジャック・ヴァンスは、日本ではいまいちの状況だ。 出版されていても絶版状態だったり、正直、書店で見かけることが殆どない作家の一人だと言ってもよい。 そんなヴァンスの作品集が出た。 かなり読み応えのある中編も収録されており、読み応えがある。 よく言われるように、異郷・異世界の独特な世界観、文化、風俗などを描くことを得意にしており、ストーリーそのものはシンプルだけど、生活様式や文化のエッセンスがとても面白くて、作品に引き込まれてしまう。 表題作は、太古の”野蛮な”科学技術が廃れ、高度に洗練された魔法が跋扈する世界のチャンバラもの。 この他に、人々は全て仮面を身にまとい、様々な種類の楽器をTPOに応じて奏でることによりコミュニケーションを行う異星の物語や、文明が退行してしまった遠未来において、奴隷用に改良した亜人間の反乱を描いたものなど、一風変わった世界観が構築されている。 仮面を外すことを耐えがたい屈辱と考える文化 作業、労働を行うことを避け、享楽的生活に逃げ込むセレブ達の文化 こうした特異な文化では、当然ながらカルチャーショックが起こり、小さな誤解が大きな騒動、戦争に発展してしまう。が、元をたどれば、瑣末なことだったのだよというテーマにも通じることがあり、コミュニケーションが裏テーマになっていると読めなくもない。 もっと、ジャンジャン紹介してほしい作家だ。 | ||||
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浅倉久志さんのお気に入り作家ということで刊行に期待してたヴァンスの短編集。 冒頭の2作品を読んですぐ、なんとなくモヤモヤした落ち着かない読後感が残りました。 これは舞台を異星でなく地球の架空地域にして、SFというジャンルを取っ払ったら、よく言う「奇妙な味」の小説としてより味わい深いものになったんじゃないか。少なくとも現代日本ではそのほうが多くの読者を得られるだろうし。 けれどもその他の作品を読むにつれ、あ、やっぱりSFでよかったんだ、と気付きました。 奇妙な味の作家は多いけれど、それだけではない鬼火のようなきらめき--ストーリーを追っているときはリズミカルだけど地味な文章に思えるのに、読後にはキラキラと跳ねていたような残像が残る独特の魅力は、SFという世界にこそぴったりはまっていたのだと。 アイデアというか、オチにあっと驚くしかけや目新しさがあるわけではないのに、この鮮やかさ。作家がジャズで身を立てようとしていたと聞くと、なるほど、そうだまさにジャズだ、納得させられました。 はまって、味わう、そういう作家かなと思うので、好みは分かれそうですが、食わず嫌いやスルーだけはもったいない味わいです。 | ||||
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