(短編集)
とうもろこし倉の幽霊
- 幽霊 (229)
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理解不能な現象を勝手に作り出し、そしてその理解不能な現象を華麗に解き明かす。ラファティの小説世界において不可能な事はほぼ無く。(ということは不可能が不可能なのか?いや、不可能もまた可能というべきなのだろう。)自分自身を尻尾から飲み込み始めた蛇はやがて自分自身の頭をも飲み込んでしまう。そんなことあり得ないって?それがあり得るのがラファティの小説群。いや、今回もまた堪能(たんのう)した。 | ||||
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シリアスな短編が多く、「九百人」のような「ほら話」群を期待していた私は、作者観が変わりました。 意外な作品群を抽出して下さった訳者殿に感謝いたします。ラファティ版「伝記集」ですか、うむ面白いです。 「下に隠れたあの人」は、人消しマジックの奇術師の深層意識に潜む様々な人格が「こんなん出ました~」みたいにポンポン出現する。プリーストの「奇術師」を連想しました。 「さあ、恐れなく炎の中へ...」では、人間の個体の中にはそれぞれ異なる種族(宇宙人?)が宿っている。同様の設定は頻繁に使われるので、作者は真剣にそのような宗教観を持っていたのかもしれません。 「王様の靴紐」は存在しないフロア13階に住む小人の話で、これは「ゲゲゲの鬼太郎」の「だるま」とそっくり。後者が素朴な幽霊話なのに対し、前者は解説にあるように「ファシズムの陰が落ちている」的な不気味さがあり、「鬼太郎」の素朴な怖さとは異質である。 「千と万の泉との情事」では、主人公は人の手が触れていない泉を探し廻るが、どの泉も人工物(金属加工されている)と気付く、というディック的な作品。日本では泉は人が管理して神社まで建てるのが普通だよ、と主人公に反感を感じました。語りが超シリアスなのは原著の編集者さんの仕業でしょうか? | ||||
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偉大な戯言?愚かな予言?久しぶりに読んでいて眠りに誘われた。作者絶好調の語り口だが、教科書の様に理解しようとすれば眠くなる。いや、春だから(笑)…とんでもなく素晴らしい寓話だ…などと理解を示す程厚かましくはない「解らない」が素直な感想だ。法螺ばなしなんだから難しい解釈は不要かもしれないけど、なんと云うか思わせ振りに畳み掛けてくるから考えてしまう。気がつくと本を手放して舟を漕ぎ始める。 | ||||
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魔術師に、ほんとも、ウソもありません。 この世がウソなら、あの世はほんとう? 真逆? 本書二番目の短篇小説「下に隠れたあの人」の物語がおもしろかったです。 「あの人」とは誰か? 英語のタイトルでは、「あの人」とは The Man。 定冠詞 The が付いて、大文字で始まる Man だなんて、そうザラにはいません。 だれだれ? この作品「下に隠れたあの人」には、固有名詞が驚くほどたくさん出てきます。 だれがだれだか? 驚くほどたくさんの別人がいるんです。名前が違えば、別人ですか? 変幻自在の「あの人」にもう騙されています。 この短篇小説の主人公は、大魔術師ザンベジを名乗るチャールズ。 よくある名前の Charles です。 「その表層部は腐っているろくでなしだった」(37頁)が、 「一皮剝いた下では悪い男ではなかった」(37頁)。 「主人公は不思議な魔法の力を持った変幻族(プロテアン)--もう一人の自分--に出会う」(281頁) チャールズの得意芸は、“人消し”のマジック。 「もう一人の自分」を消してしまうマジック。 「もう一人の自分」を消してしまえば同時に、「もう一人の自分」の名前も消えてしまう。 消されるのは、「人」とは言っても、女ではない。 女性ヴェロニカは最後まで消えません。実在感、満点。 消えるのは、いつも「下に隠れたあの人」。 「宿無しのルンペン男」、「チビ道化師」(26頁)、「チビ乞食」(27頁)。 しょぼい「あの人」。 「小男 c」(41頁、42頁、44頁)。小男だから、(舞台の)下に隠れるのはカンタンさ。 「舞台の上を行ったりきたりする一分と三十秒のあいだに、身につけた衣装を六回もすっかり取り替えてみせる」(27頁)ことのできるのも、こいつ、この小男。 「人消し」の芸なんだから、一人の男は一回きりの名前で舞台に登場します。 そして、一分と三十秒後、あっけなく消えます。 次の舞台では、別の名前になっていなくては、消えたことになりません。名前の再使用不可。 というわけで、道化師の「小男」の名前は、舞台の数だけ次々に変わっていくんです。 「名前が次々に変わっていく道化師の名前はすべてアルファベット c で始まる」(280頁) アルファベットの「c」で始まる名前って、こんなにもたくさんあったんですね。 どこか三流っぽい、その小男の名前をこれでもか、これでもかと 会話(「ストレートな語り」)の中で繰り出す著者「ラファティ」。 この作家、名前の偏執狂みたいで、奇妙でおもしろい。 原題は、「The Man Underneath」 舞台の下に身をひそめる、幽霊みたいな「チビ道化師」の話。 「The Man」だなんて、くくく。男の中の男みたいで笑っちゃいます。 しょぼい、小文字の「c」で始まる名前の男という設定が、おもしろい。 「小男」の名前なんだから、名前の最初の一文字も「小文字」というわけです。 それにしても、名前の最初の一文字がアルファベットの「c」で始まる男の名前って、 こんなにもたくさん、あったんですね。おどろきました。 26頁: クラモワジ 27頁: クナウファ 27頁: カテクシス 27頁: シストグリアム 28頁: クレッサンジュ 29頁: クロード 29頁: クラレンス 29頁: クリータス 29頁: カート 29頁: サイリックス 30頁: シーライター 30頁: カイエタン 30頁: キュイエール 31頁: シプリアン 31頁: チンチー 31頁: チョアン 31頁: サイフェール 32頁: クルーニス 32頁: コイ 32頁: チャビアリ 32頁: コスモス 32頁: チェスター 32頁: コラード 32頁: コイロン 33頁: コリン 33頁: コンテュマス 33頁: コンプエスト 34頁: コラムキル 34頁: コグズワース 34頁: コンスエロ 35頁: クーリ 35頁: コーモラント 35頁: シャルルロア 36頁: セザイユ 36頁: クラフ 36頁: カルティエ 36頁: カリマカス 38頁: チャドウィック 39頁: シオ 39頁: コンキラタス 40頁: キーン 41頁: クリストフ 41頁: キアブラ 42頁: ツエラク 42頁: チェチェローネ 42頁: カルネフィチュ 43頁: コークエリコー 43頁: シャンドス 43頁: コーニュ 43頁: クイド 43頁: シトーシウム 44頁: クルドフ ああ、リストアップするだけでも、楽しかった。 ラファティ、ありがとう。楽しい暇つぶしの読書でした。 いま、裏表紙のラファティの顔写真を見ています。 キャップをかぶった、いたずらっぽい表情の爺さん。 長屋の裏通りで毎日、熊とヘボ将棋をさしてるご隠居みたい。 グレート、グレートを連発するわりに、フェイクな爺さん。 ズルしちゃあダメだぞ、許さんぞ、といった眼つき。 大魔術師を名乗る小男チャールズもきっと、ラファティのような顔だったのでは、 と想像しました。 大魔術師(チャールズ)の終始、助手をしてきた女子、ヴェロニカ。 彼女の言葉で、このグレートな短篇は終わります。 「下に隠れたあなたは、ほんとはいい人なんだって、私にはいつどんな時でもわかってましたから」(45頁) | ||||
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