流浪蒼穹
- SF (392)
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私がこの小説を読んで感じたのは、「なんか既に起こったことについての歴史小説読んでるみたいだな〜」です。とても丁寧に書かれているので、フィクションではないような気がしてきます。 作品内の設定で、火星の都市の建築が、その素材が、現地調達可能な素材ということで、ガラス建築主体になる・・ということになっているんですけれど、、そういう発想ができるって、すごくないですか!? ふつうの作家の発想だと、火星の環境に耐えられる建築のデザインと仕様ということに考察に集中するだけと思うし、読者もそれに満足だけれど、、この作品では、、「火星でもケイ素は調達できるだろ」っいう考察しておられる。 こういうのが、一時が万事で、いちいち行き届いている。 今、日本で、中国SFの金字塔といえば、三体ですけれど・・ 三体が金ならば、この小説は銀かもしれない。 日本の室町時代の建築でいえば、金閣が三体ならば、銀閣寺が流浪蒼穹。 | ||||
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特に何も考えずジャケ買いした。 火星を舞台にした長編というので、壮大な展開を予想していたが、そういう作品ではなかった。しかし、読み進めていくうちに人物の戸惑い、葛藤が明らかになり、それが独特のドラマを作り出していく。「何を問題としているのか」それを考えて読書するとこの作品で描かれる人物の葛藤や置かれた状況、ドラマがわかり面白い。 読むのに辛抱強さは必要とされるが、読んでよかったと思う。 SF好きというより文学好きという人向けだろう。 『三体読んだ!他に面白い小説ない?』という人に勧めるのはある種の犯罪だと思う。 | ||||
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作者の作品を読むのは初めて。予想とはまったく違う物語だった。 タイトルと簡単な紹介文を読んで、これはどうしても読まなければと思って購入したが、結局丸々1か月かかってしまった。 長くSFを読んできたが、これほど予想が外れるのは初めて。好きな本を見つける直感には自信があったのだが・・・。 中国SFに対する基礎的知識の不足を実感する。せめて「折りたたみ北京」ぐらい読んでから手に取るべきだったのかもしれない。 しかし、そのおかげで予想外の読書体験ができた。 本書は、約660ページ、1300枚強の大作。3部構成で、もともと全1冊の『流浪蒼穹』として完成していたが、最初、約500枚の第一部『流浪のアマース』と、第二部、第三部『カロンへの帰還』という別の名前の2冊として出版され、再版の際に本来の形にまとめて、タイトルもオリジナルに戻したという。日本語版は再版をベースにしているらしい。 第一部を読み始めるが、紹介文と印象が違う。第二部、第三部の主人公は間違いなくロレインだが、第一部の主人公はエーコではないのか?紹介文はエーコのことにはまったく触れていなかったのでとまどう。 エーコというのは火星に帰るヒロインのロレインらと共に宇宙船〈アマース〉で火星に向かう地球人使節団の若い映像作家。彼は火星と地球の使節団を記録する係だったが、公務の他に、かつて火星で暮らしていた自分の恩師の足跡を追うという目的を持っており、第一部の半分以上が彼の行動や思索に関することで占められている。 ロレインに対するエーコの態度がストーカーかパパラッチみたいでちょっとキモイと思うのは評者の過剰反応か? ロレインがまったく気にしていないのが逆に気になるが、考えてみると20年前ならそれが当たり前と思っていたような気もする。 第二部以降は、読みにくいながらも文章も物語も味わい深く、時間はかかったが、過去に経験したことが無いような豊かな読書体験をしていると思いながら読了した。 読み始める前はベルヌかハインラインのようなジュブナイルか、それとも、もしかしたらル・グインのような思想小説かもしれないと思っていたのだけれど、読了した今は21世紀の『火星年代記』かもしれないと思う。 ただ、読み終わって作者のあとがきや解説を読み、前書きを読み返すうちに、本書は、兼業作家である作者が、小説を書き始めてまだあまり間がない20代前半に書かれたものであること。また、作者は本書を自らの魂の安らぎのために書いていたというのを読んで、本書に対する印象と評価が少し変わってきた。 年若い登場人物が多数登場するが作者の執筆時の年齢を考えると納得できる。一方で、複数登場する高齢のキャラクターもそれぞれが深く描かれているのは作者の才能だろう。 解説では作者の多才ぶりが紹介されている。評者は作者の幅広い知識には感心したものの、ところどころ納得できない部分もあり、どうしてだろうかと思っていたが、作者の年齢と執筆時の状況を知って納得できたような気がする。場面によっては物語に集中できない状況で書いていたのかもしれない。 本書の物語は作者が生きてきた現実の社会とは関係ないと書かれているが、やはりどこかに見え隠れしているような気がするのは否めない。10年も経てば状況が変わってしまう現代社会だが、底流にあるのは変わらないのかもしれない。 火星からの留学生グループを“水星団”と呼び、火星(マース)と地球(アース)の間を往復する旅客宇宙船に“マアース”と名付けるネーミング・センスに驚いた。 2か所、文章で気になった点を記す。 P513 上段9行目 “地球に帰って来た時”は、“地球から帰って来た時”の誤りだろう。 P561 下段10行目 ピエールは後ろから2列目に座っているが、次のページでは最後列に座っている。 以下、ネタバレになるかもしれない細かい疑問。 作者は物理学専攻らしいのである程度の水準は期待していたのだけれど、実際のところどうなのだろう? 作者自身は宇宙開発についてはタイムスケールをあまり考えていないとのことなので、意識して書いているのだろうけれど・・・ ケレスについて 小説前半で、火星に水を補給するためにケレスを引っ張ってきたことが語られるが、ケレスを移動させて火星軌道に置くために必要なエネルギーはどれぐらいだろうか? ケレスは小惑星でありながら準惑星に分類されており、直径945kmといわれている。 それほどの天体を移動させることは相当なオーバーテクノロジーではないか? 小説後半では、火星に必要な水資源を分離した後のケレスが恒星間移動体として複数の住人(火星人)を乗せて太陽系外に送り出されたと書かれている。これもまた相当にオーバーテクノロジーではないか。本筋にあまり関係がなく、物語の時点では実現困難な恒星間航行のアイデアを取り入れたのは何故だろう。 小説前半には、ロレインが夜半に父親の書斎で月光を浴びる場面が描かれている。フォボスとダイモスでは輝度が不足しているので、この月光はケレスの反射光だと思っていたが、ケレス本体がなくなっているのであれば、これは残された氷床の輝きだったのだろうか?質量、サイズ的に光量は十分か? 終盤の火星移転計画の検討会において、ケレスの水源は今この時でなければ使えないと説明されているが、ケレス本体から分離して火星の衛星軌道を周回させているのであれば急ぐ必要はなく、任意の時点まで周回させておけば良いのではないだろうか? クライマックスではケレスから採取した天水が軌道上からクレーター内に落下する情景が描かれている。新時代の夜明けを告げる壮大な情景だが、それだけの大質量が軌道上から落下した時、周囲の地殻構造に与える衝撃は問題ないのか。豪雨ぐらいなら問題ないだろうが、十分に溶けきらず岩石が混ざった氷塊状態だったら相当な衝撃ではないだろうか。ブルース・スターリングの短編「火星の神の庭」と映画『さよならジュピター』の火星の極冠溶解作戦を思い出した。 | ||||
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『折りたたみ北京』作者の長編小説ということで期待して買ったのですが、文学的なものを描きたかったのかな?すごく冗長で途中で投げ出しました。最近「いまの若者はTikTok的な音楽が好きで、ギターソロは早送りする」という言説がありました。『折りたたみ北京』は北京が折り畳まれるという、もうタイトルで出オチ的なネタだったけど、短編だからこそ勢いよく突っ走って出オチのまま面白く読み終えれた。まさにTikTokみたいな感じ。しかしこの作品はレッドツェッペリンの「天国への階段」みたいな感じ。美しくて繊細だけど冗長すぎて、私は途中で飽きて読むのやめました。ギターソロまで辿り着けなかった感じ。「天国への階段」はこのあと盛り上がるのがわかってるから序盤も聴いてられる。むしろ静かな序盤があるからこそギターソロからの爆発的なカタルシスがある。でもこの本には読み続けてもカタルシスがあるか分からなかった、匂わせる雰囲気もなかった。なので読み続ける根気が湧かなかったです… | ||||
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資源が少ないが技術的に優れた火星と地球の対比を通じて、結局のところどのような社会体制を築こうとも、権力と名声を求めて人間は不満を持ち、社会改革という名の体制変革を求めようとする普遍的な人間テーマ(問題)が、深い人間理解のもと描かれている。その人間ドラマの中で自分の職責をしっかり果たすべく静かに勇気を持って立ち向かう魅力的な登場人物が何人も書かれており、生き方を問われる、考えさせられるSF小説。サン=テグジュペリの戦う操縦士や人間の土地を思い起こさせる(何度も引用されている)。読後は静かな感動がある。 決して派手なドラマがあるわけではないが。 | ||||
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