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(短編集)

人もいない春



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【この小説が収録されている参考書籍】
人もいない春 (角川文庫)

人もいない春の評価: 4.19/5点 レビュー 32件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.19pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全26件 21~26 2/2ページ
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No.6:
(5pt)

赤い脳漿

収録されている作品の水準にばらつきが少なく、どれも楽しめる。なかでも「赤い脳漿」は笑いという点において絶品である。作中の主人公と同棲する秋恵とのリズムのある会話も楽しく、ある予感をはらんだ緊張感のある終わり方も良い。主人公の狂気に笑いを求める方には必読の一篇。
人もいない春 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:人もいない春 (角川文庫)より
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No.5:
(5pt)

怪物作家の純粋さ

西村賢太を車谷長吉と比較して貶める人がいるが、とんでもないことである。車谷長吉は、タブーというと殺人しか思いつかない平凡な人である。反時代的毒虫などと悪ぶっているが、所詮は単なる秀才である。だから一般大衆に受けるのである。発想がすべて平均的社会人の良識の範囲内なので、巧みなストーリーを安心して読めるからである。しかし私は、車谷が「生き恥を晒している」と言いながら、自分の恥よりもむしろ他人の恥を晒しているところに疑問を感じる。一方で西村賢太は、徹底的に自分の生き恥を晒し、平均的日本人の良識の限界を軽く乗り越えてしまう。だから純文学なのだ。
『人もいない春』の中では、『悪夢―或いは「閉鎖されたレストランの話」』が傑作である。『一私小説作家の弁』(212ページ)には、この短編が「収録に値せぬ」とある雑誌に断られたことが書かれているが、収録を断った人の見る目のなさに驚いてしまう。これは天才の書いた小説である。

「その婦人がスプーンを放り投げ、怪鳥じみた絶叫をあげたのは、そこだけ煮崩れることなく原型をとどめていた、あの特有の規則的な線の走る尾っぽの一部が、ライスの上にどろりととぐろを巻いた為であった。混入したクマネズミをまるまる煮込んだ上で客に出したとあっては、もう救われない。このレストランはたちまち閉業に追い込まれた。」(72ページ)

怪物が書いたと思われるこんなにグロテスクな美しい文章を見たのは、佐川一政の『霧の中』以来である。
『赤い脳漿』では、悲惨な交通事故の話が出てきたのでどんな展開になるかと思ってその後を読んだら、食っていた飯を吹きだしてしまったではないか。

この作家が小説中に用いる「はな」「あきたりない」「〜なあ」「どうで」などの特殊な語法は、すべて彼が尊敬する藤澤清造の小説中に見られるものである。「いやったらしい」という表現は、岡本太郎以外では見たことがない。藤澤清造の『根津権現裏』は、一人の友人の自殺をテーマとした地味な小説である。そこから誕生した西村賢太という小説家は、人間から怪物が生まれた感じがする。
人もいない春 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:人もいない春 (角川文庫)より
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No.4:
(5pt)

クレイジー

激情に駆られて「てめぇ!」と怒鳴れば、一人称は「おれ」だろう。しかしこの西村君は徹底して「ぼく」。そのコントラストがクレイジーだ。
身辺の些末な事柄を題材に出来るのは偉大な小説家。感情の起伏を見事な文章に乗せて我々の前に露呈してくれる。やみつきになる。毒のない小説には何の価値もない。西村、頼むぜ、激情を放出せよ。
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4041001269
No.3:
(5pt)

味わい

私小説で成功した者の常かもしないが、どんどん角が取れて丸くなっていくのは、果たしていいのか悪いのか。
それでも不思議と個人的には著者の作品中、これが最も味わい深かった。
大きなネタはもはや底を尽きたのか、どの編も事件らしい出来事は起きず、奥の細道的な些末な日常の事象の取り上げに終始している。結果、主人公の短気さと神経質さがより明確に浮き上がることとなり、そこにますます自分に近いモノを感じるからであろうか。
これは小説の優劣といった話ではなく、単に好みの問題であるかと思う。
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4041001269
No.2:
(4pt)

兆し

おおむね収録されているのは貫多を主人公に取る私小説に属するものですが、その中で異彩を放つのが『悪夢――或いは閉鎖されたレストランの話』です。
あるレストランに棲み着いたねずみの一族と、レストランで働く人間の暗闘をねずみの視点から書き綴ったものですが、簡潔な表現の中に妙な生臭さが横溢してます。
その生臭さは、おそらくは作者が物するところの私小説の作品群の中に立ちのぼる臭いと同じものに思えます。いつもの西村賢太と片付けてしまうにはちょっと惜しい佳品です。
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4041001269
No.1:
(4pt)

様式美

僕はもう、同じ設定で毎回同じ失敗をやらかす、この人の話が好きでたまらない。
嫌な人は一冊読んだらもうウンザリなのかもしれないが、僕は新刊が出ると読まずにいられない。
おまけに今回は、くるぞくるぞとわくわくしてるところを、肩透かしするなんて話も。いやそんなつもりかは知らないけど。

暗渠の宿、過去作に比べれば迫力不足ですが楽しめました。
人もいない春 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:人もいない春 (角川文庫)より
4041001269

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