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ネヴァー・ゲーム



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ネヴァー・ゲーム

ネヴァー・ゲームの評価: 3.85/5点 レビュー 13件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.85pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全7件 1~7 1/1ページ
No.7:
(4pt)

ワイルドな主人公がシリコンバレーに展開する捜査ゲーム

リンカーン・ライム・シリーズの幕開けとなる『ボーン・コレクター』は、思えばズキュンと胸を撃つ類いの作品であった。捜査官ライムの身体的設定にせよ、ただものではない悪党にせよ、絶妙なストーリーテリングにせよ!

 実はライム・シリーズの前から、ディーヴァー作品には、ぼくは少なからずこだわっていた。『眠れぬイヴのために』『静寂の叫び』など単発作品の強い印象である。そこに来てこの『ボーン・コレクター』。ディーヴァー作品は、どれもスリリングで先が読めない。出版された途端にすぐに手に取り読んでゆく時代が僕の中で続く。翻訳されたものはどんどん読んだ。初期作品であるジョン・ペラム・シリーズなどは、ディーヴァー作品としては地味で、粗削りながら、好感の持てるローカル探偵シリーズとして、映画のロケーション・ハンターという商売が羨ましく思ったものだ。

 どうしていつの頃からかディーヴァー作品から自分が背を向けてしまったのか、きっかけも理由も思い出せない。ライム・シリーズもキャサリン・ダンス・シリーズも好きだったはずなのだが、徐々に飽きて来てしまった、というのがきっと本当のところなのだろう。なので昨年『オクトーバー・リスト』で、ストーリーを逆行させるトリッキーな作品に再会し、相変わらずディーヴァーだなあと、苦笑しつつ楽しまされてしまった自分に、改めて驚いたものである。そこで旧ライム・シリーズを数作Amazonで注文。基本的に新作読みのぼくの、本の途切れ目にでも読もうかなあと。そんな意識で。

 しかしその矢先である昨秋、『魔の山』が登場。しかしこれはシリーズ第二作である。先行する本書『ネヴァー・ゲーム』と、結構シームレスな続編であることを知ったことが、今回の本作読書のきっかけとなった。

 正直、白黒判じ難い作品なのである。主人公は、失踪人探しを生業とする、私立探偵とは少し異なる、ひとひねりした職業の変わり者コルター・ショウ。バウンティ・ハンターとも異なる。法的に逃げている状態の犯罪者を捕まえてくる商売ではなく、あくまで一般の依頼を受けての失踪人探しである。賞金ではなく、報酬。公務ではなく民間。

 個性的なのはそれだけではない。その道のプロとして十分な変人であるところだ。謎の家族編成。生い立ち。失踪した兄のこと。伝説化した父から伝えられたサバイバル技術。冒険趣味としてのロック・クライミングやオフロードバイク。ほぼ移動生活のためキャンピングカー住まい。生活信条としての確率論。生きるための。自然や野生や人間行動に対する次の手を選択するための分析脳。とにかく、これは冒険小説の一端であり、なおかつハードボイルド的要素でもある。

 但し、違和感と言うべきか、このアナログでワイルドな主人公が、本書で行方不明となる少女を探す地平は、大自然ではなくネットゲームの電子的空間なのだ。シリコンバレーに展開する捜査ゲーム。まさしく現代の小説なのだ。

 ちなみに本書は三部構成である。それぞれ異なる行方不明者を同時多発的に追わねばならない我らがショウは、複数事件を扱うゆえに、事件捜査の順番を決める。それらの事件が連なることで、連作短編小説集的構成となっている。その構成にすら一筋縄ではゆかぬ工夫が凝らされ、それぞれの主要な事件現場の手書き地図なども添えられるところが楽しく感じられる。エンタメ王。

 ゲームの世界は、ぼくは苦手な領域なので、その世界に深入りするシーンは退屈させられるところも正直あるが、現実世界に繋がるネット盗賊的企業の存在にはぞぞぞと怖さを感じさせられる。概ね一気読みに近いページターナー本であるのは、ショウを取り巻く状況変化の多さだろう。多くの魅力的な人物、怪しげな男、意味深な女などなど、登場するキャラクターがネットゲームのように次々とショウの捜査眼に引っかかっては関わりを持って行く。デジタルとアナログを交差させる妙な奥行き感。

 知的楽しみとワイルドな主人公の今後への期待。連続する事件群の本書はごく一部の地平を切り取った一作なのだろうが、家族の過去へのミステリアスな暗示なども効いていて、本作のみならず続く作品群も含めてショウをめぐる一大長編小説のようにも見える。なので、次の作品への食指が伸びる。その種の媚薬的要素はこの作品にふんだんにあるということだけはお伝えしておきたい。聞くところによるとコルター・ショウ・シリーズは三部作であるようだ。
ネヴァー・ゲームAmazon書評・レビュー:ネヴァー・ゲームより
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No.6:
(4pt)

バーチャルリアリティに例えた事件

<コルター・ショウ>シリーズ1弾。
仮想世界でのことを現実に置き換えて暴行や殺人を犯す――。
40年以上前に『13日の金曜日』などのホラー映画が及ぼす悪影響が問題になった。30年以上前にはわが国で宮崎勤が連続幼女殺人事件を犯し、自宅の部屋の膨大なビデオテープが彼の人間形成に影響を及ぼしたのではないかと議論された(当時この世代を一緒くたにして問題視された!自分が含まれたのでよく憶えている)。その後も神戸の少年Aなど…。
昨今はゲームに留まらず、ネット配信によりさまざまな映像が際限なく拡散されている。子供に限らず大人がおかしいのだから、阻止できる手段はないのだろう。

さて、いい面に目を向ければ、ここでは脱出+戦闘ゲームとのことだがRPGのような地図(主人公ショウ記)が適所に記載されていてわかりやすかった(かわいらしくもある)。
終盤の、からくりの解き明かしは見事!
次作『魔の山』(先に読んでしまった)といい、特殊領域に潜入するところが独特だ。
シリーズ通して主題と並行して語られるショウの父の謎は、今後どう展開していくのか…、楽しみだ。
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No.5:
(4pt)

さすがです。翻訳も素晴らしい!

行方不明になった人間をさがすために懸賞金をかける、というのが、アメリカでは昔からポピュラーな方法だ。
シリコンバレーで行方不明になった若い女性に父親が懸賞金をかけ、本作の主人公コルター・ショウは決して高くないし、払われるか不確実なこの案件を引き受けることにする。
コルター・ショウは、行方不明になった人間を探し出すことを生業としている、要するに金目当ての懸賞金ハンターなのか?・・・と思って読み始めると、徐々に読者はそうではなさそうなことに気づきはじめる。
どんどん読み始めていくにつれて、コルターの生い立ち、家族、考え方などが少しずつわかるようになって、それにつれて、なんでコルターのような「まっとうな」人間が懸賞金ハンターに?という疑問は徐々に強くなっていき、そして作者は「待ってました!」と言わんばかりに、少しずつ答えてくれながら、話が進んでいくのだ。
さすがディーヴァー。プロの手による高等技術です。ほんとに巧いなあ、としみじみ思いながら読み進めました。

リンカーン・ライムシリーズを始め、大都市でのサスペンスや警察ものには、テレビドラマや映画のせいもあってか、住んだことがなくても、例えば行ったことがなくても、何か馴染みがあり、違和感がなく読んでいたことに気づかされました。
ディーヴァーも、読者のためか、または本人もそうなのか、アメリカの地方都市または田舎町には全くちがう生活があるということを、とても丁寧に感じさせてくれた気もした。

昨今、特に北欧ミステリーで大流行の、理解や常識を超える残酷な犯罪とかではなく、本当にありそうな事件なのに、普段の生活から遥か遠くに連れていってくれた素晴らしい作品です。

作者の本は、今までは英語のまま読むことが多かったのですが、今回は日本語版で大正解。素晴らしい翻訳に最大の敬意を表します。
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No.4:
(5pt)

本の状態

装丁やカバーもしっかりとしていた
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No.3:
(5pt)

最高に面白かった。

自作のリリースが待ち遠しいです。
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No.2:
(5pt)

ハードボイルドの傑作

アメリカ西海岸。私立探偵。といえば、誰でもフィリップ・マーロウを連想するだろう。しかし、この小説の主人公・コルター・ショウは私立探偵ではない。懸賞金ハンターという耳慣れない職業だ。懸賞金のかかった行方不明者を捜し出し、あとは警察にまかせる。自分では決して危険な場所には行かない、はずなのだが、必ず危険な目に遭う。この辺りがハードボイルドに必須の要素だ。
 ただ、フィリップ・マーロウはギムレットを飲むがコルターはビールを飲む。それも、訪れた土地の名産ビールを。暴力を避けビールを飲む男は軟弱に思えるが、コルターは父親に鍛えられたサバイバル技術と鍛錬によって、かなりタフだ。そして望んでいないのに、行方不明女子大生捜索案件は、シリコンバレー特有のゲーム業界の闇が絡んでどんどん暴力的になる。
 「ノックスの十戒」では、犯人は物語の早い段階に登場していなければならないが、読者は気づかないだけでしっかりと出てきている。そして、味方だと思った者が敵に、敵だと思った者が味方に、また敵に。めまぐるしく変わる人間関係が問題を複雑にする。コルターは事件の推理をするのに確率を使う。「○○が犯人である確率は□パーセント」という具合に。ただ、あくまでも確率なので外れることもある。その結果、コルターはピンチに陥る。最後に絶体絶命のピンチを救うのは意外な人物だ。なるほど、適材適所というのは大切なのだねえ。
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No.1:
(5pt)

コルター・ショーへの「喝采」が聞こえる

毎年、この時期の<儀式>のように、昨年の「カッティング・エッジ」以来になりますが「ネヴァー・ゲーム "The Never Game"」(ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋)を一気読みしました。
 今回の主人公はリンカーン・ライムでもなければ、キャサリン・ダンスでもありません。懸賞金ハンター、コルター・ショー・シリーズの第一作。既に本国では、二作目("The Goodbye Man")も刊行されています。
 「チャイルド・ファインダー 雪の少女」(レネ・デンフェルド)のナオミは文字通り逃亡した、あるいは失踪した、あるいは連れ去られた子供たちを探し出しますが、コルターは、米国中の「行方不明者」全般を探し出そうとします。
 舞台は、シリコン・ヴァレー。19歳の女子大生・ソフィーが消息不明となり、コルターは決して裕福とは言えないその父から彼女の捜索を依頼されます。そして、土地柄からか彼女の失踪は、サイバー空間に於ける配信ゲームに関連していることが判明します。(早々とですが、)今回もスリラーですから、ストーリーに触れるのはこのぐらいにしておきたいと思います。 
 このところのディーヴァーは、毎回メイン・テーマを前面に置いて物語を構築していますが(前作では、<ダイヤモンド>)、今回は「ゲーム業界」がその主戦場です。また、いつものように事件に於ける「未詳」は、コルターと重大犯罪合同対策チーム刑事・スタンディッシュとの間で便宜上"ゲーマー”と呼ばれています。それに纏わるいくつかの仕掛けは新シリーズとは言え、「リンカーン・ライム」を愛する読者をも裏切らない調査とディテールに裏打ちされていると思います。小説の面白さは、細部に宿る。
 いつものように小さい反転と大きな反転を繰り返し、(省略を効かしながら)シャープな場面展開でシーンを切り返すディーヴァーのテクニックは、古臭い言い方をすれば、ヒッチコック・タッチを彷彿とさせますね。
 そして、今回の最大の収穫は、懸賞金ハンター、コルターのキャラクタリゼーションにあると思います。キャンピングカーで米国中を移動し、ロック・クライミングとオフロード・バイクを愛するコルター。映画「脱出」みたいな家族に生まれたコールター。私は、彼の姿にヨセミテ国立公園内にある巨岩エル・キャピタン(975M)(この小説の中でもその巨岩は言及されています)に臨む、フリーソロ・クライマー、アレックス・オノルドの姿を重ね合わせるように読むことになりました。自力で生き延びようとするコルターを思い描くとき、「自分が万全であれば平然としていられるはずだ」というオノルドの言葉が蘇ります。万全とは、限りなく100%に近い状態を表します(笑)
 厳密に言えば、米国の「私立探偵小説」とは異なる味わいを持ちながらも、失踪した悲しき人々を探し出そうとするコルターの姿は、伝統的な「西海岸・私立探偵小説」の系譜の中でもその重みを増していく存在になるのかもしれません。そのことは、次作のタイトルが良く暗示しているように思います。
 マイクル・コナリーが女性刑事・レネイ・バラードを登場させたようにディーヴァーがコルター・ショーを置いた。スリラーを造形する作者たちの「新しい挑戦」に世界中の読者からのそれぞれの喝采が聞こえるような気がします。
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