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(短編集)

あなたの人生の物語



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【この小説が収録されている参考書籍】
あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

あなたの人生の物語の評価: 3.90/5点 レビュー 131件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.90pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全131件 81~100 5/7ページ
No.51:
(5pt)

アイデアと哲学性とストーリーテリング(ネタバレあり)

アイデアとか世界観が秀逸だがそれだけではない。それぞれの話に哲学的テーマが含まれていてしかもそれを一気に読ませるだけの語りのうまさがある。「あなたの人生の物語」は異星人の言語を通して新しい視点や知覚を得る話だが、実は人生の意味とは何かを問うているように思える。人生には幸も不幸もあるが、なぜ不幸が起こるのかと言う問いを因果律的に突き詰めていけば、ユダヤ・キリスト教的には原罪と言うことに行き着くだろう。しかし変分原理的に解釈すれば、人生には意味があり、それはあらかじめ定められていて、その中で起こることはその最終目的に向かうための最小値あるいは最大値を取っていることになる。したがって不幸にさえ意味があることになる。ちなみに、外国語、たとえば英語をある程度習得した人なら、英語で考える時には思考そのものが英語的発想になることを体験していると思う。そういう人なら、言語の習得で世界観が変わるということは受け入れやすいのではないか。
同じテーマをややシニカルに扱ったのが「地獄とは神の不在なり」ではないだろうか?神や天使が実在する世界で、主人公は最愛の妻を天使の降臨の巻き添えで失う。妻は天国へ行ったことが目撃されているが自分はほぼ間違いなく地獄に落ちる。彼女と再会するには自分も天国に行くしかないが、これは啓示なのか?生まれながら脚のない体で生まれたジャニスは伝道に使命を見出すが、ある日突然天使の降臨によりすばらしい脚を与えられてしまう。そのために彼女が人生をささげた伝道師としての活動は収縮してしまう。これは救いなのか罰なのか?この話をヨブ記と比較するのは自然な事だと思うが、ヨブ記では神の意思も目的もはっきりしているのに対し、この話ではまったくそれが分からない。結局神の意思は人間にははかり知ることはできず、気まぐれにさえ見える。またこの世での出来事を罰とか啓示とか信仰に結び付けて考えるのは人間の方であって、神にとってはそれすら関係ないのかもしれない。しかし神が存在しなければそこは地獄であって、この世(この小説の世界)には神が存在しそれを信仰することができる。結局人を救うのは神ではなく、信仰という心の状態であると作者は言っているのかもしれない。
「七十二文字」の中の「名辞」はコンピューターのプログラムのアナロジーにも、DNAのアナロジーにも読めるが、最後の「人間はその名辞の表現型であると同時に、その名辞の器でもある」というのは、生物(人間)とは結局なんのために存在しているのかという問いに対する彼なりの答えかもしれない。
他の作品もみな含蓄のある作品ばかりなので、ぜひ読むことをお勧めする。
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No.50:
(5pt)

知性と想像力で飽和した短編集

荒唐無稽でファンタジックな異世界地球の上に築かれた話もある。
いつかは現実のものとなるかもしれない時代の上に築かれた話もある。
共通するのは、その世界について作者の科学的な知性が許す限りの合理性を骨として、限界まで展開された想像力の翼の広さだ。
たとえ作品世界が荒唐無稽であっても、その中で生きる人間は知的で合理的でどこまでも現代地球人的で、その世界で物を思い煩悶しながら生きている。
仮定の枠をピンホールカメラの穴のように使い、その向こうに広がる世界を想像し活写してみせる、そんなSFの真髄を備えた傑作集だ。
ただその想像力が余りに隙がないものであるがゆえに、読んでる私の想像力が作者の想像力より外に出て行けないような窮屈さも感じた。
各作品の舞台は作者の作り上げた箱庭であり、作者その中に生きた人間を放ってその言動を観察しているかのような、緻密な実験記録のような小説なのだ。
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No.49:
(5pt)

一気読み

SFにはなじみのない私ですが、一気に読んでしまいました。
とてもおもしろかったです。
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No.48:
(5pt)

計算された透明感が心地よい

表題作を真っ先に読み終えたばかり。
「あなた」への語りかけと、現実。
それらが交互に綴られるという奇妙な構成で進んでいくうちに、
「あれ、これって・・」ジワジワ気づきの種を蒔かれていく。
そして木製のサラダボウルのくだりで、交互に綴られてきたものが読み手の中で完全に融合する。
「・・ああ、やっぱり」と感じたその時、
頭頂の髪の毛を上に引っ張られているような寒気とともに、目頭が熱くなるほどの切なさを覚えた。

でも何より惹かれたのは作品のカラーとして感じられる透明感。それがとても心地よかった。
澄み渡る透明感が「あなた」への語りかけの優しさをさらに際立たせている。
柔らかな日差しが注がれる日向にいるような心地にさせる、澄み渡る透明感。
ヘプタポッド的ものの見方が備わり、人生のすべてを知り同時に見ているルイーズの感覚としては、
この透明感は正しいのでないか。これもギミックに次ぐ作者の計算なのではないか。そんな風に感じた。
因果の法則でものごとを見、時系列上にしか体験できない人類が持つ人間臭い感傷やジャッジを、
恐らくヘプタポッドは全く持たないであろうから。

訳者のセンスも大きいのでしょうが・・。
さて次はバビロンを読んでみよう・・。
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No.47:
(4pt)

訳者も作家

読みはじめから、和訳に違和感を感じながらも
作品の作り込みの緻密さに引き込まれ、一気に
読了した後に、その和訳の違和感に納得しました。
安易な意訳では、表現出来ない原書の真意が、ジワジワと伝わりました。
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No.46:
(4pt)

久々にSF翻訳物を読ませていただきました

面白いですが、翻訳がちょっと固いかな。あまり意訳過ぎなのも良くないと思いますが、難しいところですね。
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No.45:
(2pt)

多次元理解者じゃない私

人には3次元以上の多次元は理解できない。時間が一方向のベクトルしかない世界しか体験できないように。異世界の理解様式を得た主人公の精神はとても保てるものではないのではないか?
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No.44:
(4pt)

独創的な世界観を魅せる短編集

どの作品も独創的で面白い。評価が高い本書であるが、その期待に十分応えてくれるだろう。訳文も読みやすく、すらすらと読めてしまった。個人的に面白かったのは、「バビロンの塔」「理解」「七十二文字」「顔の美醜について」だ。なんだほとんどじゃないか。ただ一方で神と関わる話が多く、私を含む日本人には本当に内容を理解するのは難しいかもしれない。

以下、個別の作品の感想。

◎バビロンの塔
あのバビロンの塔の建設中に人間が世界の正体を知る。神話と哲学が混じった不思議な感覚が面白い。宇宙の形がどうなっているのかなど物理的な要素もあり、いくつものSF的要素が絡まって、楽しく読める。

◎理解
「アルジャーノンに花束を」に似た話になるのかなと思いながら読み進めたが、進む方向が違っていた。神を薬で創り上げるような物語だった。面白い。

◎ゼロで割る
1=2を証明してしまって苦悩する数学者を見守る学者の物語。“もしだったら”を想像したらこんなことが起こりそうというのがよく分かる。きっかけは面白いが、結末が少し物足りない。

◎あなたの人生の物語
異星人とのファーストコンタクトものというには大雑把過ぎるかな。ファーストコンタクトの難しさは分かるが、それと“あなた”、つまり異星人と“あなた”の関係がよく分からなかった。想像を膨らませると、“あなた”の父親が誰なのかを考えてしまう。独創的な物語である。

◎七十二文字
AIではなく生物学的に人工生物(オートマトン)を作り出そうとする。粘土ロボットに命を吹き込むというか、ゴーレムを作り出そうとする。現代の技術に近いものはDNA解析技術でクローン生物を作り出す試みであろうか。背景に人類が5世代のうちに滅んでしまうことがあるのだが、あまりうまく活用されていないのが残念なところか。

◎人類科学(ヒューマン・サイエンス)の進化
シンギュラリティを迎えた時の科学がどうなるのかを警告(想像)している。楽観論かな。

◎地獄とは神の不在なり
キリスト教徒ではない人(私を含む)にとって、この物語を理解するのは難しいのではないだろうか。知識としてキリストを含む神を知ってはいても、それをベースにされた時点で、きっと知るべきことが欠けていると思う。自分にとっては難解でした。

◎顔の美醜について――ドキュメンタリー
この作品は、読者が美男美女かそうでないかで印象が変わるのではないだろうか。そう思うと普通に面白い。人間が本来持っている生理的な反応に対して人工的な操作をするのは、文字通り不自然だと思うな。あらゆる差別を撲滅するのは賛成だけど、論理ではない感覚的なところの差別を撲滅するのは教育だけでは難しい。だから科学の力を使おうという発想はアリなのだけど、それも不自然なのかもしれない。

◎作品覚え書き
著者がどのような発想で収録されている作品を執筆したのか本人の解説が読める。こちらを先に読んでおいてもいいかもしれない。
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No.43:
(4pt)

光線は動き始める方向を選べるようになる前に、最終的に到達する地点を知っていなければならない

私にとっては思った以上に内容が学術的で、なるほどチャンがイーガンと並んで現役最高のSF作家と呼ばれているという、その意味が理解できました。
 言語学など結構難しい内容を扱っているにもかかわらず、これほど多くの読者に支持されているのは、読後になにやら重いものが残る独特な雰囲気を持ったテーマやストーリーテリングのせいかもしれません。
 表題作の「あなたの人生の物語」の物語展開も、勘のいい人だと中盤以降で気づくのでしょうが、私は読み終えた直後おやっ?と思って、もう一度最初に戻って読み直すことで、「うーん、なるほど、良くできている」と、この作品の「深さ」のようなものに気づきました。
 エイリアンとのコミュニケーションを成立させるべく「単一言語による正しい文法の発見」のため交渉にあたる主人公が言語学のプロで、言語学的考え方が紹介されたりするくだりは少々難しく、これにより目くらましにあったような気になったがため、ラストに至っても一瞬「?」と思ってしまったのですが、読み返すとエイリアンたちの考え方の発見が、文法の発見に大きく関わっていることがわかり、主人公がエイリアンとの接触により最終的に到達した心境を想像するに、実に深く考えさせられる内容であることに気づかされます。
 「地獄とは神の不在なり」における世界観も独特です。
 天使がたびたび降臨し、それにより奇跡をもたらすばかりか災厄をも引き起こし、人々が死後に向かう天国と地獄をもかいま見ることができるという世界。
 天使が災厄をもたらすという設定は、個人的にはエヴァの使徒を彷彿させられましたが、チャンならではのなんとも不思議な読後感が残る作品です。
 「バビロンの塔」「顔の美醜について」の2作は割と読みやすくかかれています。
 「理解」も前半部分はサスペンスフルな展開で非常に面白いのですが、後半に至るにつれて徐々に言語学的になり多少難しいと感じます。それでもこの作家ならではの雰囲気や世界観には独特なものがあり、今後どのような作品を発表してくれるのか期待がもてる作家だと思います。
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No.42:
(5pt)

多彩な作品集。素晴らしく楽しめました。

根っからのSFファンではありません。
小・中校生時代はブラッドベリにはまりましたが、彼のソフトなファンタジー性に強く惹かれていたのだと思います。
現在の読書傾向は雑食で、気ままに「面白そう」な物を楽しんでいます。
この作品も偶然平積みを手に取り、表題作の冒頭数行を流し読んで出会いました。
訳者の力量も左右すると思うのですが、このテッド・チャンのオムニバス作品はどれも私には素晴らしかったです。
バラエティに富んだ編集で、多彩な作品が楽しめました。
表題作は3度読み返す機会がありましたが、やっぱり深く感銘を受けます。
特に、ノスタルジックで、笑ましく、切ない親子関係の描写が大好きです。
総じてハードでドライな内容が支えているのですが、だからこそ、
人が決して数字のように割り切ることができない事柄が綾織られて、素晴らしい作品だと感じます。
この1冊で、すぐにテッド・チャンのファンになってしまいましたが、作品が少なく残念です。
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No.41:
(4pt)

あなたにもおすすめの物語

短編集です。まったく傾向の違ういろいろなお話が集められていて楽しめました。特に本のタイトルにもなっている「あなたの人生の物語」は、いわゆるファーストコンタクトもので、特に異星人の言語に焦点を当てた物語で、斬新な着想で面白かったです。別に物理法則をねじ曲げなくとも言語体系と世界の認識のしかたによってはあたかも時間を超越したかのような視点を得られるのかも、と。個人的には本書ではこれがベスト。
全8篇がすべてSFなのかというとなかなか微妙で、ハードSFと言えるものからファンタジィ仕立てのSFぽい物語までいろいろです。舞台・背景の設定と語り口が上手で、いずれの話もそれぞれいい雰囲気が感じられt印象に残ります。個人的には★4つの評価ですが、割と万人受けするわかりやすくて面白い話ばかりですので、気楽に読むにはおすすめです。
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No.40:
(3pt)

残念だった三つの理由

表題の短編「あなたの人生の」は残念ながらあまりよくできているとは思えませんでしたのでその理由を書きます。
まず日本語訳の方がこの作品はギミックがうまく作用します。私は日本語版の前に英語で読んだのですが、英語では娘に対する言葉が未来時制になっているので、題名とSF作品という知識から、勘のいい読者にはオチがだいたいわかってしまいます。日本語ではうまく隠されます。
二番目にまずかったのが、理系の人にはわかるのですが、著者の書いている科学というかギミックが大きな誤解に基づいてる点です。フェルマーの光の原理を、いわゆる「argument from design」を使って理解するのは初歩的な誤解で、Intelligent designと同じ幻想であり錯覚です。この幻想と近代科学を同じ宇宙を見る等価な見方とし、そこから理論発展して主人公が未来を予知というか既知できるというのは、アイデアというより愚考に感じられました。
三番目はSF部分以外のドラマ部分の質が低いこと。娘との思い出や、夫との月明かりの下での場面とかの描写が、まるでアメリカの安物のテレビドラマやコマーシャルで何度もみたような場面ばかりです。特にゲリーと結ばれる場面など、これほどロマンチックでないロマンチックな描写もなく気分がぶち壊しでした。人間同士のケミストリーが描けてない。
ただ、映画メメントなどにも影響を与えた、時制の違うふたつの話の同時進行というナレーティブの構造は斬新で面白かった。
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No.39:
(4pt)

数式を文章に変換したような感覚

本集に収載された中短篇8作品がその時点での全作品で、粒ぞろい。どの作品も哲学的ファンタジーの色合いが濃い。アイディアは本質的で面白く、プロットの展開も納得がいくもの。読後にいろいろと考えさせるような強さもある。

 著者は人間が持つ「自然存在を認識・理解する能力」の限界を常に問題にしている。プロットは数学的、論理学的な構造が明らかで、数式(あるいは不等式)を文章に変えているような感覚がある。
 「地獄とは神の不在なり」などは集合論の不等式を使い、条件を変えながら物語を作っているのではないかとさえ思わせる。原案の段階ではあらすじを数式で書いている、と言われても驚かないだろう。 

 自然科学(数学、物理学、生理学、数理哲学)をメタファにして人間の物語を語るというのが著者のスタイルだ。
 本作品集の中でそれがいちばん成功しているのは、もっとも高い評価を獲得したという表題作「あなたの人生の物語」だと思う。因果律を否定するような、合目的的な「フェルマーの最小時間の原理」を媒介に、時制を否定して母娘の心情をつづるという構成は(はじめは何のことかよくわからないだけに)面白くできている。

 残念なのは、本作品集でいちばんオチを強調することができるプロットなのに、著者がそれを拒否しているように見えること。私のような大衆小説好きからすると問題は、全体に展開のメリハリと、どんでん返し的なオチが不足していることだろうか。

 気に入った作品にふれると、
 「理解」。“人工解脱”の意味が問われ、スリルがある。
 「ゼロで割る」。数学はどこまで完全か、人はプラトン主義の否定に耐えられるか。
 「地獄とは神の不在なり」。天使の降臨が災厄でもあり得るというアイディアは新鮮秀逸。
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No.38:
(4pt)

言語SF?

表題作に圧倒されました。ディレイニー「バベル17」、伊藤計劃「虐殺器官」などと共に、言語SFとでも呼んでもいいのではないかと思っています。
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No.37:
(3pt)

SF小説はSF小説愛好家のもの

「あなたの人生の物語」「地獄とは神の不在なり」「バビロンの塔」のみを読了。

最高に独創的で著者の才能の豊かさを十二分に堪能出来るが読後にモヤモヤしたものが残る、というのが、特にSF小説ファンではない者の三編に対する共通した感想。
有り体に言うと、物語の展開が娯楽からはやや離れていて、かつ後味があまりよろしくない。
結局、残りの話は読む気が喪失してしまい、遺憾ながら未読のままです。

今まで読んだ海外の有名なSF小説も似たような感想になるものが多く、良かったのは「星を継ぐもの」「フラッシュフォワード」など数冊のみ。
文学作品とは異なり、別の世界を舞台としているSFではその中に入り込めない場合、娯楽性が少ないと面白いと感じる事はなかなか難しいです。

どうもSF小説というものには、一般うけするような娯楽性を優先すると、SF小説ファンから無視され、SF小説ファンが喜ぶような知的で独創的な要素を優先すると、一般読者にはうけにくいという、あまり幸せとは言えない現状があるような気がします。(もしかしたら、それでいいと思われているのかも知れないけど)

こちらのそんな認識を裏切ってくれる事を期待して本書を読んだのですが、残念ながら、海外SF小説は一般読者である自分の肌には合わないのだなと、改めて確認する結果となってしまいました。
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4150114587
No.36:
(5pt)

傑作です

テッド・チャンのSFが傑作揃いであることはつとに定評があるところであるが、本短編賞も期待を裏切らなかった。最高はなんといっても表題作になっている「あなたの人生の物語」、前年度の芥川賞作品「爪と目」と同様、二人称で書かれているが、こっちのほうが完成度は高い。また「バビロンの塔」もいい。いずれも本格的な科学は使われておらず、新しいSFの誕生を思わせる。
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No.35:
(4pt)

非常に思索的な作品

全部で8編の物語が収められている短編集。

個人的に面白いと思ったのは,①「あなたの人生の物語」②「地獄とは神の不在なり」③「顔の美醜について」の3篇。

あらゆる事象を同時に経験し知覚するという「同時的認識」が想像を絶する①,神や愛について考えさせられる②,テクノロジーの発達に伴う認知や差別といった問題を提起する③。いずれも単なるSF小説の範疇を超えた深みをもっていると思う。特に③はリアリティをもっており,フィクションだと割り切れない刺激を含んでいる。
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4150114587
No.34:
(4pt)

数学や物理の理論から想像を膨らませた

何の予備知識もなく読み始めた。

本のタイトルとなっている「あなたの物語」だけでなく、「バビロンの塔」や「地獄とは神の不在なり」も面白い。
「理解」については、いまいちオチが分かりにくくて難儀した。

「あなたの物語」は言語学者の主人公から見た宇宙人とのコンタクトと娘(あなた)への語りかけで出来ていて、最後に2つの物語が始まる形式が不思議で、人を引きつけるのだろう。

「バビロンの塔」は天まで届くバベルの塔ができあがった世界の物語。「地獄とは神の不在なり」は天使の後輪が自然現象と同じように発生する世界の物語。「七十二文字」は呪文でゴーレムが動く世界。

読みながら、世の中の基本原理が違うみたいだぞと気づくわくわく感がたまりません。

楽しいひとときを過ごせるのは間違いないですね。
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No.33:
(4pt)

知的理解のギリギリを突くような酩酊感と覚醒感

酩酊感と覚醒感を同時に強烈に味わわせてくれるような魅力のある作品集です。
表題作における時間の俯瞰のしかたは、タイムトラベルものがあまり好みでない私にとっては、目から鱗という印象でした。

その他の作品も、感覚的には決して心地よいとはいえないのに、頭では共感せずにいられない内容で、読んだのは何年も前ですが、短編集でありながら収録作をどれも細部までかなり記憶できています。つまりそれだけ個々の作品が際立っているのだと思います。

「地獄」や「神」といった宗教的な概念も、人間としての知的理解のギリギリの部分を突くと、こういう観点に至るのは自然だろうなと、特に違和感もなく受け入れることができました。

上に書いたように感覚的には好きとは言いにくい作品も含まれるのですが、傑作揃いであることは間違いありません。
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No.32:
(4pt)

文章が重い塊となって響く

短編集ではりますが、冒頭に収録される「バビロンの塔」が心に与える衝撃=質量がとても大きい、インパクトのある文章を書く作家ですね。

ライトノベルというジャンルがありますが、それに反して「ヘヴィ・ノベル」と言ってもいいんじゃないか、というほどの重量級だと思います。

やや宗教色が強くはありますが、宗教に救いを求めているわけではないので、おそらく宗教は「万人=読む人にわかりやすいモノサシ」として使用しているのだと、ぼくは考えています。

描写が正確かつリアルで容易に光景を想像できますし、その光景が読み終わった後もしばらくは心を離れない、という稀有な文章力とストーリー展開が特徴。

ここで重要なのは「ストーリーテラー」としても非常に優秀だということで、このあたりはリチャード・マシソン、ポール・ギャリコにも通じる部分があるかもしれません。

文章力とストーリーテリングというのはバランスが重要で、どちらかが主張しすぎてもバランスが悪いものですが、彼の場合は非常にバランスが良いですね。

SFマガジン50周年記念のコンピレーション文庫「ここがウイネトカなら、きみはジュディ」にも短編「商人と錬金術師の門」が収録されており、ほか多数収録される作家の中でもひときわ輝きを放つのがテッド・チャンであります。
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