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クォンタム・ファミリーズ
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クォンタム・ファミリーズの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.71pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全8件 1~8 1/1ページ
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【語りえぬものについては、沈黙しなければならない】byウィトゲンシュタイン しかし、それを語って聞かせようというのが、小説的試みになるのかと思う。 筆者は、現代思想批評で名を馳せる論者で、本作にもその豊富な知識が援用されていて、おもしろく、 パラレルワールドという陳腐なSF設定をアカデミックな理論構成で説明してやろうという企みは、通常の 作家にはないもので至極意欲的だが、恐らくそこは成功していないだろう。 それよりも性(倒錯的)や暴力、家族に関わる描写がよく、旧来的な作家的作文と思えるような部分が 引き立っているのが、不思議なくらいだが、なるほど文中に言及されるPKディックや村上春樹はもとより、 中上健次、村上龍、大江健三郎などの作例がそこここに感じられて、これは筆者の文学に対するオマージュにも 成っているようだ。 対して現代思想を用い、小説の大体を構成しているSF部分は、当初から破綻含みの結末を 覚悟の上で描かれたものかと思う。援用される現代思想は、既に自らの過ちを認め、その終焉を宣言されたとも 言われており、筆者は、正直にこの状況を反映させながら、小説自体も(不可避的に)躓かせてしまっている。 いずれにしても豊かな内容の作品で、本作の重要なモチーフのひとつにウィトゲンシュタインもあるかと思う。 その著書『哲学探究』のなかで、 「家族的類似」とは、ゲーム」(独: Spiel)という語をとりあげ、「ゲーム」と呼ばれている全ての外延(対象)を 特徴づけるような共通の内包(意義)は存在せず、実際には「勝敗が定まること」や「娯楽性」など部分的に 共通する特徴によって全体が緩くつながっているに過ぎないことを指摘し、これを【家族的類似】と名付けた wikiより では、【家族】というものは、畢竟、【家族的類似】なのだろうか?? _こんな問いが胸を突きます。 本作にこうして穿って伺えるよう、現在は、多くの意味で哲学思想の転換点に差し掛かっているようで、 西洋に於いて神学が科学へと成り代り、現代文明の成果をその思想より工学に見よう筆者には、共感したい。 人間存在が科学されて行ってしまう昨今、現代人の不安は尽きないのだけれども、しかしやはり家族とは、 唯一無二の現実であり、本作にも日常的な倫理感性を伝える終章にそのことが実感されるので、どうかご安心あれ。 哲学の終焉を越えて尚、語りえぬものについて語ってみせる行為(小説)とは、何よりもまず現実によく試練され ながら再び組み直されてゆく思想(創造)の機会であり、それは安易に権威化するような象牙の塔には成りえない。 そういうことを眼目としながら、筆者も小説という表現を試したような気がするし、それならそれで新しく、 賢明で果敢な対応であると思う。 本作評価は、☆三つでご勘弁。 探究(1) (講談社学術文庫) 論理哲学論考 (岩波文庫) 精神と物質―意識と科学的世界像をめぐる考察 | ||||
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性描写が言わば、大友克洋+筒井康隆だ。 葦船(葦原将軍、虚航船団)。 でも読み終わると結局、筒井康隆『文学部唯野教授』と同じく 柄谷行人コンプレックスかと思った。 (古くは浅田彰『構造と力』、栗本慎一郎『鉄の処女』と同様) 文学を辞める/批評を辞める 世界の未来を語る/世界の未来を語らない 柄谷行人を知った者ほど人生が狂う。 東浩紀『クォンタム・ファミリーズ』 いま世界の未来について語るやつは、自分探しくんか単なるバカかどっちかだ。 | ||||
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核家族から量子家族という変化、というのがタイトル。 でも、あまり気にすることはない。 東は娘ができたあと、その娘の未来ということを、すごく考えたんじゃないかな。あるいは、娘がいなかった未来も。 そうした可能性の中で、いなかったかもしれない娘への愛情が、父親が贈ってあげることのできる未来として、その可能性として示されたものなんだと思う。 そこには、テロのような暗澹たる現実も含まれているけれども。 ということは思う。 でもね、どうしてもこの作品に厳しくなってしまうのは、娘ができたっていう気持ちのストレートさに対して、東の切れ味が鈍っているんじゃないかって、少し甘いんじゃないかって、そんなことを感じてしまうから。 東の娘はまだ幼いからそうなのかもしれないけれども、もっと成長した娘と対峙していくのは、楽じゃないと思う。だいたい、別の人格なんだから、思い通りになるわけないし。 悪い作品じゃない、というか、けっこう楽しい読書だったので、星4つでもいいんだけど、同じ娘がいる身として、どうしても、ということで。 | ||||
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ディックと、もう一人グレッグ・イーガンを思わせる作風。 それらを超える出来ではないが。 この二人の先達への入門編として若い人に読んで欲しいような。 イーガンは「ひとりっ子」がおすすめ。 | ||||
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人間性原理。宇宙がこのように人間の誕生に都合よく出来ているのは、人間がいるからである。人間が観測できるものだけが存在する。人間が存在しなければ、この宇宙はない。別な宇宙があるかも知れない。 量子コンピュータの持つ特性から、理論上無限の結果が生まれうる。これがネットワークによりある臨界点を超え、様々な並行世界が誕生、したのかもしれない。主人公はある日、その並行世界の向こう側から、生まれなかったはずの娘からのメールを受信する。その名も風子!風子は30年の時空を超えてメールを送信してきた。どうも向こうの世界に穴が開いたらしい。T大学の准教授である主人公の教え子には渚! ある世界では、渚の子供の名前が汐子! CLANNAD臭漂う命名の登場人物達。 複数の世界があり、タイムパラドクスが絡む展開は、東氏が入れ込んだ舞城王太郎の九十九十九 (講談社ノベルス)の影響か。 新自由主義が極限まで追求されてGPSチップを埋め込まれた人間がいる世界は、東氏のポストモダン論で出てくる環境情報世界の究極系か。 物語1というプロローグ、物語2というエピローグが同一世界でありながら、途中の話の展開で微妙なズレを生んでいる。これは量子が観測された事による状態の変化・確定なのか。そんな思いに耽溺しながらあずまんテイストを楽しめる人には楽しめる。 | ||||
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あたりまえのことかもしれないですけど、小説は小説としての形式をとることが最善の「何」かを伝えるために書かれるものであり、批評も同様であると思います。 批評家であるか筆者が、あえて小説としての形式を取って「何」を伝えたかったのか私にはわかりませんでした。内容は、量子力学を初めとする物理学、SF、哲学についての知識を前提に書かれており、また筋書きも複雑に錯綜しているため読みにくいかもしれませんが、それは本質的な問題ではないでしょう。用語も少し調べればわかるようなもので、またわからなくても、前後関係から理解できると思います。 文体的には村上春樹とフィリップ・K・ディックを足して二で割ったような感じです。面白くはあったのですが、それは「物語」としての面白さであり、そのようなものは筆者が目指すものではないと思うし、あの「東浩紀」が書くべきほどのものではないと思います 私は何か勘違いしているのでしょうか? | ||||
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批評家・東浩紀の処女小説ということだけで興味を持ち、買おうとしたところ、近所の某大手古書店において半額強の値段で出ていたので(出版後わずか1ヶ月とは!)、複雑な思いで買ってみた。 小説の体裁はSF小説なので、筒井康隆風を期待したのだが、意に反してP・K・ディック的な構成であった。 ネタバレ厳禁なので、中々説明がしづらいのだが、至るところに「哲学・科学用語」が出てくる。例えば「人間原理」というように、意味を知らない人は間違いなくここで止まってしまうだろう。 全体として、そういう専門的なターム(用語)がいきなりポンポンっと出てくるので、私自身もそのたびに読書の流れを中断させられてしまった。 こういう手法は、東浩紀の読者層を考えれば、それほど唐突なことではないかもしれないが、いかんせん小説に集中出来ないし、作為的過ぎて興ざめしてしまう。 そして、ストーリー上におけるそれぞれのシーンも継ぎ接ぎ状態なので、尚更のこと全体としての完成度が低く感じられる。 本作における狙いは悪くないと思う。東浩紀の「何か新しい事をやってやろう」という気概が感じられるからだ。 しかし、実際問題としては、「小説作品」として成功してはいないと思う。 今まで批評するだけの側から、批評される側への挑戦は、勇気のある行為だと思うし大いに結構であるが、公平に感想を言うと中途半端のように思う。 こういう思い切った処女小説を書くのだから、次作にこそ大いに期待したいと思うのは、私だけではあるまい・・・。 | ||||
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装丁の美しさで手にとり、冒頭のエピソードに引き込まれて購入しました。 中盤までは心踊るSFでとても楽しかったのですが、途中からだんだん複雑な展開に頭がついてゆかなくなり、最後などは字を追うだけでほとんど理解できなかった気がします。 教養のある方や明晰な方が読むと非常に楽しい小説なのかもしれないな、メモをとりながら読めば少しは楽しめるかな、という予感はするものの、やはり一般の読者には敷居が高いと思います。 | ||||
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