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雪
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雪の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.03pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全26件 21~26 2/2ページ
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あまり小説を読まない方ですし、特にこのような厚い本は読まないのですが、これだけは吸い込まれるような感じで一気に読んでしまいました。遠い世界なのにどこか身近な感じのする不思議な小説でした。 | ||||
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良質な文学作品は、きめの細かい炭酸飲料のように私の心の隅々にしみわたる。しみわたったあと小さな気泡をたくさんうみだす快感にしばらく身をゆだねていたいと望んだ。特に男の恋愛に対する率直な文章は、読んでいて恥ずかしいという感情が実は自分の心のどこかに触れているからだということを理解したあとは、なるべく恥ずかしさという壁を張り巡らさず、そのままの感情を自らに問うべきだと思い直した。恋愛感情によって極度なまでに盲目になりながらも、それゆえに繊細な心の状態を引き起こし、霊的ともいえる「詩がやってくる」という感覚は、自らの人生においても起きたのではないか。自動筆記のように言葉があふれ、それをなんとか書きとめていくだけが精一杯だったということがあったのではないか。しかしながら、それをこのような小説の形に完成させられるオルハン・パムクの力量に読後は感嘆するしかない。真実があいまいな形で過去に消え去ろうとするぎりぎりのところで、ミステリー小説としても読める解がキーピースとして与えられ展開の妙に引き込まれる。私たちが恋愛を考えるとき、宗教を考えるとき、幸福を考えるとき、故郷を考えるとき、芸術を考えるときに、複雑に折りたたまれた細かな感情の襞にこの作品の気泡は質の高い刺激を与えてくれるのである。 | ||||
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以前、『わたしの名は紅』を読んだ時にも、 隅々まで計算し尽くされた構成の巧みさが印象に残ったが、 本書『雪』の構成は、おそらくそれ以上に緻密だと感じた。 いちおう純文学のカテゴリに入る作品ではあるが、 本格推理系の作品が好きな人は、大いに楽しめるのではないかと思う。 主人公の詩人Kaが、雪の降り続く地方都市カルスに閉じ込められ、 一種のクーデタに遭遇するという設定自体は、 どこかカフカの『城』を思わせるが、 本書は同時に、現代における最大の主題の一つとしての イスラーム急進主義と暴力を扱った政治小説でもあり、 読者の意表を衝く筋運びの面白さで読ませるような、 骨太のエンタメ系の魅力をもたっぷりとそなえている。 数日間の出来事を、単に経過順に整理して記述するのではなく、 「心的リアリティ」とでも言うべきものに沿って描いていく文章は、 決して読みやすいものではないが(ちなみに、設定や主人公の名前以上に、 文章の拠って立つ論理そのものが、カフカによく似ていると感じられる)、 全篇を貫く緊張感がダレることは一度もなく、 いちど読み始めれば、むしろ中断するのが惜しく思えるはずだ。 (といいつつ、私自身は何度も短い休憩を入れながら、2日間で読んだ。) 他のレビューを見ると、訳文にはいろいろと注文もあるようだが、 今年刊行予定という『イスタンブル』や、その他の作品が早く読めるよう、 訳者の和久井氏には今後も頑張っていただきたいと思う。 | ||||
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小説とはいずれも交差点や「際」で紡がれなければならない。それがその運命というものであり、その存在意義でもある。 2006年のノーベル文学賞を受賞したオルハン・パムクは、本書『雪』によって、その命題を見事に達成している。小説とは、「中心」で歌ったり、叫んだりするものではなく、世界の片隅、周縁、際で呟かれるものなのだ。雪に閉ざされたトルコのいまや田舎町。しかしそこは隣接するアルメニアなどとの交通の場所でもある。パムク自身、アルメニア問題での発言で社会的制裁を受けたようだが、どこぞの島国の太平楽な作家たちとは違うよなあ。テレビに出て暢気に社会問題とやらについて発言したり、寺めぐりの旅行記でお手盛りの気散じをしたりといった奴ばらとは根本的に違う。 『テヘランでロリータを読む』という今年話題になった小説について、高橋源一郎はこういう社会・国家における作家はシアワセだといった類の発言をしていたが、これなどお気楽作家の 典型的なものだろう。少し説明するなら、社会的な危機状況のなかで、小説がその存在意義を高めている社会においては、作品は真剣に読まれる。この事態が作家にとってシアワセだというのだ。ほんとにゲンちゃんもシアワセなのね! 世のなかを見ろよ! 飢えない時代というが、そんなことないぞ! 人が死なないというが、どこに目をつけとるねん! ノーベル賞などというものが、あらゆる賞について回る愚劣さ、汚らしさから免れているわけではないが、逆に、この作品の意義がこの賞を受けたことで減じることはない。 | ||||
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トルコという国を見つめて来た私にとって、この小説の舞台がトルコの東の「カルス」という小さな地方都市、降りしきる雪の中で進められていく静かなロマンスや、この国で繰り広げられてきた思いがけない政治や宗教の切実な話が重い説得力を持って迫ってくる優れた本だと思う。 トルコの抱えてきた「クルド」の問題、トルコが掲げてきた「政教分離」、何気なく受け止めてきたそれらの事が実はその中で思いがけない矛盾を孕んでいたことなど・・・。 つい先日その「カルス」を歩いて来たばかり、あの美しい並木道や優しいパン売りの少年が目に浮かぶ。 旅先で知り合ったイギリス人女性は「カルスは何も無いくすんだ町だった」といったが、私も2,3度のカルスの認識は彼女と同じ感想しか持てなかった。 ところが今回のカルスの印象は歴史の残る美しい村だった。そこで展開される詩情漂う物語は只の物語ではなく、後ろに流れる歴史が切ない重さを与えている。 星1つ足りない評価は「翻訳」。文の流れが滞る。 | ||||
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オルハンパムックがついに日本語訳!この本は「唯一の政治小説」だそうで、彼のその他の本とはかなり毛色が違います。評価は賛否大きく分かれるようですが、単純に他の作品より読みやすかった・・・ミステリー的要素のためでしょうか。 結末は切ないです。「オリエンタル」な歴史上のトルコではなく、今のトルコの息吹が感じられます。 | ||||
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