黒い本
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1990年ノーベル文学賞受賞作家オルハン・パムクによる最大の問題作。新聞コラムニストとして西欧諸国からも注目されている従兄弟ジェラールが突然の失踪、彼の書いたコラムを手がかりにその行方を探す弁護士ガーリップ。一応推理小説仕立てになってはいるが、80年代日本でも一時ブームとなった記号論を内部にとり込んだ、トルコ文明論といってもよいほどのアカデミックな読み物である。 古今東西の記号とその象徴するものがてんこ盛りの古都イスタンブール。深い見識に裏づけられたジェラールのコラム「信じるも信じないもあなた次第」は、アタテュルクとエルドアンぐらいしがトルコ人そのものを知らない私にとってはかなりハードルが高かった。というよりも、その記述(記号)が象徴するものまで実際たどり着けなかったというのが正直な感想である。この自分の無知を思い知らされるなんともいえない敗北感は.....そう、ナボコフを読んだ時と同じ感覚をおぼえたのである。 この小説、段落ないしチャプターの冒頭一文字を縦読み(日本語の場合は横読み)することによって、ある文章が浮かび上がるしかけになっているらしい。プロットというよりもむしろ、ジェラールが過去に認めた国内政治・文化・宗教に関する鋭い批評が主といえる構成も、詩そのものよりも膨大な注釈や言葉遊びに重点を置いたナボコフの『青白い炎』にとても似ている。パムクの本タイトルに色(黒、赤、白)が使われた著作が多い理由は、もしかしたらこのナボコフのこの超問題作に由来しているのかもしれない。 そこで語られるテーマは一貫して、「自分になることの難しさ」である。著名人であるジェラールに対する憧れが高じて、自分をジェラール自身であると思い込む主人公ガーリップやストーカー読者、そしてそんな世間の目をストレスに感じ夜の街を別人に変装して徘徊するジェラールの生態が、トルコ歴史上の人物とオーバーラップしながら綴られるのである。パムク自身がそうなりたいと願ったナボコフやウンベルト・エーコの体裁を真似て。 かつては世界征服も夢ではなかったほどの栄華に酔いしれたトルコも、欧米覇権国家の影に隠れいつのまにか歴史の隅に追いやられてしまった。世俗化政策によりアイデンティティを失ってしまったから?トルコ人の内面にくすぶり続けるそんな忸怩たる思いを炙り出すかのごとく、ジェラールという他者の筆を借りて、パムクは切れ味鋭く読者の前にその“証拠”をさらけ出すのである。アタテュルク公の悪口を書くといまだに罪に問われるというトルコ国内で、パムク自身も実際国粋主義者たちに睨まれながらの執筆活動だという。それが、売名を欲する“自己がなりすました他者”ではないことを祈るのだが。 | ||||
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本好きにはたまらない一冊です! 読み応えがあり、翻訳された鈴木氏に敬意を表します。 | ||||
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イスタンブールの街で失踪した妻リュヤーとその兄ジェラートを探すガーリップ。 新聞記者であるジェラートのコラムとガーリップのの行動が交互に綴られ、イスタンブールの描写が秀逸で読み進むうちに自分もこの街に紛れ込んだような錯覚に陥る。 一方ストーリーは解りにくく、この本を把握しようとするとストレスが溜まる。 理解、というよりは感じる本という感想です。 | ||||
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本書の殺人事件ミステリーでは、 夫ガーリップと、 「十九単語の離縁状」を残して突如行方をくらました妻リュヤーと、 同じ時に行方不明となったカラムニストのジェラールの三人が、 三つどもえで絡み合う。 本書の主軸は、ガーリップを主人公としたストーリーの章。 そして、主軸と交互にからむジェラールの新聞カラムの章。 これらの章が交互にストーリーを展開して、 闇の黒さの夢のような人生を描いてゆく。 580頁に及ぶ長編小説であるが、ジェラールの新聞コラムの各章は、 独立した短篇小説として読むことも可能である。 「何物も人生以上には驚異的でありえない。文章を除いて。文章を除いて」(末尾) 「万事は人生にまして、奇ならず。ただし書を除く」(エピグラフ) 「エピグラフを用いるな。文章に宿る神秘を殺してしまうから」 エピグラフを否定するエピグラフも出てくる。 エピグラフには、真逆の、相矛盾するエピグラフも存在する。 どちらも真実を言っているから、人生はややこしい。けど、面白い。 文中では、夜の暗闇の中でゴミ箱を漁る野良犬が何度も何度も執拗に、 僕に吠えかかる、襲いかかる。 三角関係のスキャンダルを好む読者のように。 | ||||
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