デンマークに死す
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インドに生まれ、インドとアメリカで学び、シリコンヴァレーで働き、デンマーク人男性と結婚して14年間デンマークで暮らし、現在はカリフォルニアに住むデンマーク国籍の女性作家の初ミステリー。コペンハーゲンを舞台に元刑事の私立探偵がムスリム男性の冤罪を調査した結果、デンマークの黒い歴史に直面するという、一級品のハードボイルド作品である。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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主人公はデンマーク人(デーン人)の探偵でデンマークを舞台としたミステリーだが、著者はインド出身の女性でアメリカ在住、夫がデンマーク人とのこと。それゆえ、登場人物はイラン系の女性弁護士やトルコ人を夫に持つ財閥令嬢等と多彩である。 物語は冒頭、第二次世界大戦時のナチス支配下でユダヤ人家族がデンマークからスウェーデンに避難する場面が描かれる。こうしたユダヤ人救助はデンマークの人々の誇りというが、冒頭の物語ではナチス内通者の通報により、ユダヤ人家族は強制収容所に送られ、匿ったデンマーク人親子が射殺される悲劇となる。 一転して、舞台は現代のデンマークに移り、中東からの難民問題でタカ派的対応をとる女性政治家が惨殺された事件の調査を主人公が依頼される。犯人とされたイスラム教徒は、息子がイラク戦争でデンマークに協力しながら難民申請が認められずに強制送還され、ISに拷問されて殺されたことから、「イスラムの男+怒り=人殺しみたいな図式にはめられた」という。 このナチス支配時代の歴史の暗部と現代の難民問題の2つのテーマを絡ませてミステリーが構成されるが、謎解きよりも一人称で語る主人公のハードボイルドな活躍に焦点が当てられている。 それにしてもこの主人公は、元警察官にしてバンドのギタリスト、ブランド品で装い銘柄ワインを楽しみ、かつ多数の女性と関係を持つモテモテ男という設定で、著者は人間味のある探偵として設定したのかもしれないが、ちょっとできすぎである。服のブランド名や酒の銘柄が次々出てくるのも煩わしい。 北欧の社会派ミステリーを読むと、スウェーデンの刑事ヴァランダーシリーズにしても本作品にしても、移民・難民問題が重要なテーマとして繰り返し取り上げられており、かつ、過去のナチスとの関係が清算されずに残っている政財界の闇が照射される。 平和で住みやすい社会福祉国家のイメージの影の部分にある、デンマーク現代史をめぐるドラマとして興味深く読んだ。 | ||||
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デンマーク・スリラー。舞台はコペンハーゲン。主人公は私立探偵ゲーブリエル・プレスト。 或る5月の夜、ゲーブリエルのかつての恋人であり人権派弁護士のレイラが彼を訪ねてきます。彼は5年前、法務長官だったサネ・メルゴーをイラク系移民でもあるユセフ・アフメドが殺害したとされる事件について再調査してほしいと依頼されます。アフメドの息子はデンマークへの移民申請が認められずイラクへ強制送還され、ISISに捕らえられその処刑シーンがネット上で公開されてしまった後、サネ・メルゴーの殺害事件が起き、恨みによる犯行としてユセフ・アフメドが有罪を宣告されていました。ゲーブリエルが調査を進めるに従い新たな事実が判明し、実はサネ・メルゴーは本を執筆中であり、第二次大戦中のナチス占領下のデンマークがその主題だったことに辿り着きます。果たしてユセフ・アフメド事件は冤罪だったのか?いかなる歴史的背景がそこには潜んでいるのか? 元刑事でもある私立探偵ゲーブリエル・プレストはブランド物を身に着ける洒落者として描かれ、キルケゴールを語り、拘りの強い生活習慣と生来のウーマナイザーに見えなくもない類を見ないキャラクターであることは認められるものの好みが分かれるかもしれませんね。明らかに<米国西海岸私立探偵小説>のヒーローたちとは異なります(笑)。 特筆すべきは現在のデンマークという国家に内在するナチス・ドイツ占領下の闇の歴史に焦点をあてながらテーマ性の高いスリラーを構築しようと試みているところにあるのでしょう。それは成功しているのかどうか? デンマーク・ミステリと言えば、嫌でもユッシ・エーズラ・オールスンを引き合いに出さざるを得ませんが、少し「及ばない」というのが私の正直な感想になります。 □「デンマークに死す "A Death in Denmark"」(アムリヤ・マラディ ハーパーBOOKS) 2023/8/30。 | ||||
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