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みかづき



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【この小説が収録されている参考書籍】
みかづき

みかづきの評価: 4.29/5点 レビュー 163件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.29pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全133件 101~120 6/7ページ
No.33:
(5pt)

教育の歴史が分かる

架空の塾ではあるが、実在の土佐塾や東進などの名前が出て来て、リアリティが感じられる。文科省の教育政策の変遷と、塾業界の歴史が主人公を中心に描かれている。
みかづきAmazon書評・レビュー:みかづきより
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No.32:
(5pt)

家族、塾、家族。

中学校教諭経験者かつ現在は自宅で夫の塾を手伝っている私にとって身近な題材であり、昭和からの教育会の変遷はリアルタイムで経験してきたものです。これに関しての作者の調査研究はどれだけの量だったのだろうと、呆然とするばかりです。そしてそれを背景として、ある家族が描かれていくのです。
特に後半が涙とともにテンポよく読めた気がします。
みかづきAmazon書評・レビュー:みかづきより
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No.31:
(5pt)

素晴らしい

大学で教育学専攻し、指導要領の変遷などを学んでいましたが、見事にそれを反映し、時代に翻弄された教育関係者のそれぞれの生き様が描かれています。
キャラクター一人一人も魅力的で、ストーリーも本当に面白い。
惹き込まれました。
中学生の頃から森絵都さんのファンですが、この作品は群を抜いて素晴らしいです。ますます好きになりました。
教育に関心のある身としては、何度も読み返したい作品です。
みかづきAmazon書評・レビュー:みかづきより
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No.30:
(5pt)

いあやー面白かった

いあやー面白かったです。久しぶりに速いテンポで読めました。ほかの方から「面白い」「一気に読んだ」と感想がありましたが、ほんとうにスピード感もあり、親子三代の塾物語ですが、傑作です。森さん児童文学出身だそうですが、これほど面白く展開できる能力は素晴らしい作家ですね。感心しました。
大島吾郎の良い点、悪い点、昔の人はこういうだらしない人がいました。じっくり学習意欲を増す技術は素晴らしい方です。赤坂千明(大島千明)のカミソリのような強引なヒステリックな性格。頭の良い女性にありがちです。3人の子供たち、そして孫たちも大なり、小なり、教育にかかわる展開も自然な感じでした。
私も中学生時代の英数塾で進路が変わり、指導いただいていた先生の私立高校へ進学しました。キリスト教の自由な雰囲気が人格形成に影響していると思います。私も母と親戚のおじさんたちが教師であり、日教組のメンバーだったので「学力テスト反対」運動を覚えています。
60代になり、目が悪くなり、読書がつらくなりましたが、こういう傑作をかける方がいるということは頼もしい感じがしました。
きっと映画かテレビドラマになるのでしょうね。
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No.29:
(5pt)

テーマは切り口だが、一家三世代の胸が温かくなる物語。

戦後から現代まで、一家3世代がそれぞれの方法で教育に携わる物語。とても良かった。

家族の血は争えず、三世代はそれぞれ教育関係者になって、でもそれぞれの異なる想いから段々わかり合えなくなり、喧嘩して、離別して。 長い時間を掛けて、最後には和解出来るんだけど、祖父や親の代を読んだ後に描かれる孫の話は、これまでの話と相まって素晴らしい。

登場人物の生き方から、人生には夢や希望の為に一生を掛けるだけの価値があるんだという事が伝わってくる素晴らしい本。
森絵都さんらしく、最後は誰も傷つかず、本当に良かった。
みかづきAmazon書評・レビュー:みかづきより
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No.28:
(5pt)

すべてが、あった。

すばらしい!

帯の推薦文に6人も並んでいて煩わしい!?が、北上次郎の「この小説にはすべてがある」が、まさに言いえて妙。

章ごとにスライドしていく時間の運び、主観の切り替え、人物造形、全部がすばらしい。
戦後から21世紀までをたどるテーマを「教育」「塾」にあてたのも慧眼(豊田正子が最終章に出てくるとは意外だったが)。

1日で読んだが、60年の時間の流れを感じた。
まるでその60年間を著者は見てきたような、こんな小説を書けるなんて…本当にすごいと思う。
映画一本をたとえば500人でつくりあげていく作業を、著者ひとりでやっている感じ。
装丁は最初、抵抗があったが、読み終わるとなんだか愛おしい。

友人の教師に勧めておいたので、感想を言い合うのが楽しみ。
人生ベスト10に入る読了感。
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No.27:
(5pt)

教育問題を考えさせられる壮大な物語

若い世代から団塊の世代まで、いずれの年代も体験し、共感できるところが見つかる長〜い物語でした。いい話でした。
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No.26:
(5pt)

フィクションだとわかっていますが、一郎が不憫で不憫で。千明くそばばぁ。

私は半分ゆとりで塾が唯一の居場所だった暗記人間。
私の塾生活は正しかったのか?と思い返すために読書。

私が通っていた塾では基本よりも応用問題を重視し、短期的な結果を出す教育をしていたんだな、と懐古。
千葉進塾が近くにあれば。。。。もしあったとしても塾選択権は親が所持していたので無理ですが。

ネタバレになってしまいますが、千明のくそばばあっぷりについて。
千明の最後は泣きましたよ。私も祖母の死を経験してるので被った部分もありました。
ですが、一郎が可哀想で仕方が無いです。

菜々美が一郎に対して「いつも逃げてる」と指摘していますが、どうもそうとは思えません。
一郎自身の本意を引き出すためにもっとねほりはほり聞いてあげるべきす。
それに、千明の死を引きずってしまい本当に可哀想です。

千明のあんな短絡的な忠告では聞く耳持てずむかつきが優先されるのは当然です。
自信喪失マシーンこと就活において例に漏れず自信を徐々に無くしていく一郎。
その時千明の「頭の回転が遅い」と指摘されたところを就活が上手く行かない原因と合致させてさらに落ち込む。
「あーあの時おばあちゃんの言うこと聞いとけば良かったな。」と過去を掘り返し不可逆な時間を呪うんです。

読了された読者の皆さんはお分かりだと思いますが、一郎は人と人の和を正すことができ、様々な人からアドバイスを貰える人望もあります。
勉強もそこそこできるようで、同じ大学の友人が大手出版社に入社できるのであれば、彼も必ず就職できたはずです。
しかし、誰も手を伸ばさず放任主義、いや放置主義を極めます。
本人に任せる、まだ若いんだから、ってことでしょうか。

一郎が救われたのはアドバイスを貰うため訪れた吾郎じいちゃんのおかげです。
吾郎じいちゃんはマイナス部分ではなくてプラス部分に目を向けます。
マイナス部分をなくそうとする千明とマイナスはある面ではプラスになるんだと進言した吾郎。
人間個人の性格、性質も英語のように補修してやるわよ!という気概を感じます。

千明の忠告に対して「ちょっとお母さん!一郎には良いところの方がおおいわよ!」と蕗子お母さんが対決してくれれば救われたのかも。

一郎は婚約者ができるまで成長しよかった良かったとほっとしました。
千明ありがとうENDだったら体調壊すところでした。

それでも、凄く楽しい時間をありがとうございました!!
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No.25:
(5pt)

教育とは何かを考え抜いた物語

三世代にわたって奮闘を続ける学習塾を舞台にした物語。

塾の創設から拡大、衰退、統合など、昭和から平成にかけての塾の存在意義や、在り方がどのように変わっていったのかが丁寧に描かれていて読み応えがあった。

初代塾長の吾郎、吾郎の妻で教育に妥協を許さない千明、二人の孫の一郎と、3者の視点から物語が展開されていくのだが、単なる成功物語ではなく、さまざまな紆余曲折があり、教育とは何かを考え抜いていく。

塾以外にも、文部省、マスコミ、学校など、塾の敵ともいえる組織との攻防も楽しめた。

暗記のためだけの受験勉強、単なる詰め込み教育とは違った「自主性を育む」という吾郎が掲げた理念には非常に共感できるのだが、すぐに結果を求める保護者との壁をどう乗り越えていくのか、最後まで目が離せなかった。
みかづきAmazon書評・レビュー:みかづきより
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No.24:
(5pt)

教育関係の本という枠に捉われず本好きのすべての方にオススメ

森絵都さんの作風はいつもどこかほっこりとした温もりがあります。
が、この本の登場人物の中には千秋や蘭という、誰がなんと言っても
頑として自分の主張や行いを曲げない者達が作品に緊張感を生み出して
います。小気味良いやらおかしいやら…キャラが立っていて凄く面白いです。
祖母の人柄や孫の一郎の気質や伸びしろまで見事に描ききっています。
登場人物たちのセリフまわしがとにかく秀逸です。勿論ストーリー構成も。
最初の1行から引き込まれて、最後の1文に至るまで一気読み。
笑ったり泣いたりで、読書の楽しみを深く味わえました。
ひとつ気になるのは、吾郎が家族を離れて体験してきたことが
読者には詳しく知らされないことです。吾郎本人もひどく寡黙に
なってしまいます。そこも枯れててまたいいのですが
『みかづき』の続編も読みたいものです。
みかづきAmazon書評・レビュー:みかづきより
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No.23:
(5pt)

全ての塾経営者、教員に読んでほしい本

感動しました。仕事をして「生きる」とは何なのか、夫婦のあり方とは、家族のあり方とは、教育とは
そういった、社会の構造、諸々を含んでいながら、三日月を眺める描写の美しさ。
素晴らしい運びの文体は一気に読ませる力を持っています。
塾の経営者、全国の教員にぜひ、読んでほしい現代的な課題を含んだ超オススメの本です。
みかづきAmazon書評・レビュー:みかづきより
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No.22:
(5pt)

感想

20世紀から21世紀、教育の在り方が変わったのかがテーマ。
教育の重要性は全く変わっていないし、子どもも変わっていない。
変わったのは大人だと感じた。
みかづきAmazon書評・レビュー:みかづきより
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No.21:
(4pt)

教育問題というよりは、それぞれに懸命なある家族の大河小説

教育関係者です。時代とともに塾の立ち位置が変わるさまは、背景として面白く読めますが、教育問題を読むというよりは、やはり中心はこの家族たちの大河ドラマです。揉めに揉めて、一時崩壊した家族達も、過ぎてみれば。。と読後感は悪くありません。主人公は、駄洒落好きなのんびり屋なのに、生徒にも女にもモテる、得過ぎる性格。最も心に残ったことは、教育に対し、ものすごく教育に情熱を持っていた千明さんが、早々に自分はそんなに教師には向いてない、と言う所。良かったのは、その烈し過ぎる千明さんが、最後の方では、母親や祖母としての感慨に浸れる場面があったことです。
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No.20:
(5pt)

読み終わった後の感動

何だろう、この作品を読み終わった後の感動は?
多くの小説のように人生の一部分だけにスポットライトを浴びせれば眩いばかりの
感動を描くのは簡単だ。吾郎が塾経営で成功したところまで描けばそれも可能だったろう。
しかし、実際の人生は紆余曲折、浮き沈みの繰り返し。それをいろんな人物にスポットライトを
浴びせつつ、日本の危うさや教育行政の危なさまでストーリーの足をひっぱる事なしに表現してみせた。
筆者の力量に完敗です。
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No.19:
(5pt)

涙がとまらない。

別に哀しい話じゃないのに、読み進めると、なぜか涙がとまらない。親子と血のつながりについて、そして子どもの成長について、深く考えさせられる一冊。
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No.18:
(4pt)

教育とはかくも難しいものである

教育とは難しいものだとつくづく思う。赤坂千明は文部省(現在の文部科学省)とその影響下で活動が大きく制約されている公教育を全く信用していない。大島吾郎は事情があって高校を中退し、千明の娘、蕗子が通う小学校で用務員(現在は技能員)の仕事をしているが、授業についていけない子供に放課後勉強を教え、わかりやすいと評判になっている。千明は吾郎を説き伏せ、結婚した後、昭和37年、東京のベッドタウン千葉県八千代町(現在の八千代市)で塾を開く。千明は言う。
 「….私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです。太陽の光を十分に吸収できない子どもたちを、暗がりの中で静かに照らす月….」
 こうして千明と吾郎は「八千代塾」を起ち上げる。「塾」と言っても「ジュク?」と聞き返される程度の認知度だった塾は、塾に通っていることがなにやら後ろめたかった時期を経て、現在のように通うのが当たり前の存在になった。そうした流れの中で、当初の理想や理念は時代にもまれて、いつのまにか変質していく。物語は、千明と吾郎を中心に、二人の3人の娘、その娘の息子・娘、千明の母頼子という、四世代の目を通して、教育とは何かを問いかけながら進行する。
 教育に関して確固たる信念を持つ千明、ところがその3人娘は思うように「教育」されてくれない。長女蕗子は千明が敵視する公立小学校の教員となり、次女の蘭は教育よりビジネスを優先、三女の菜々美は遊び歩いて高校に進学する気すらない。全く人間は思うようにはならないが、一方で、ばらばらな家族はまたひとつになったり、最も教育とは無縁だった一郎(長女蕗子の子、千明の孫)が教育について深く考えることになるなど、思いがけない偶然が予想外の結果を呼んだりする。誰による、いつの、どんな教育が、どう影響を与え、人間をつくっていくのか、それは結果からたどって考えていくしかない。教育のそんな難しさが、四世代を通して移り変わる時代背景とともに描かれていく。
 作者は、教育課程審議会の本音「できん者はできんままで結構,,,,,非才、無才にはせめて実直な精神だけを養ってもらればいいんです」(曽野綾子の夫である三浦朱門の言葉)を引用して、この国の「教育」観を否定する。私もこうした考えは本当に醜悪だと思う。では本当の教育とは何か、人間を教え、育てるとはどういうことか。
 冒頭でも述べたが、全く教育とは難しい。だからこそ、この本をきっかけに読者一人一人に考えていってほしい、私はそれを作者からのメッセージとして受け取った。八千代台、大和田、勝田台、津田沼、こうした地名に反応する人は、更に感慨を持って読めるだろう。
みかづきAmazon書評・レビュー:みかづきより
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No.17:
(4pt)

教育に携わる大島家の物語

用務員室で、学校の生徒に勉強を教える吾郎。
そして、のちに妻となる千明に引っ張られるように塾をはじめ、
家庭を持ち、塾を経営し、、、、

妻の千明、こどもである蕗子、蘭、七海、そして孫の一郎。
大島家の、それぞれが、教育という大きなものに取り組み、
当時の社会のいろいろを描きながら、主に塾の現状を伝える。

自分の生まれたころに始まり、ゆとり教育の真っただ中に子育てをし、
教育の在り方に疑問に思うことも多いながら、塾の恩恵にあずかり、
こどもたちを進学させ、
と、自分のこれまでをも振り返りながら、一気に読めた。

学校が太陽なら、塾は月のようなもの、
というはじめから語られることが、このタイトルになったと思いきや
それよりも深いおもいが込められたことを、終わりには知らされる。

それぞれの登場人物が
何かにぶつかりながら、それぞれに良いことに気付き、素直に良き方向に進む。
そこが安心して物語を追っていける。
そこがいいのだが、そこが物足りなくもあるのかもしれない。
それでも、それだからこそ、読後感が明るいものとなっているのかな。
みかづきAmazon書評・レビュー:みかづきより
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No.16:
(5pt)

理想の教育を追い続けた塾の物語

著者の森絵都(もり えと)氏(1968-)は、早大卒業後の90年にデビューし、06年には直木賞を受賞しました。
本書は戦後から現代にかけての日本社会の変遷を、「教育」というフィルターを通して描いた作品です。

主人公は大島吾郎、物語は昭和36年から出発します。
吾郎は小学校の用務員、教員免許はありませんが教えるのが抜群にうまく、用務員室で生徒の補習を行なっていました。
補習に来ていた女生徒の「赤坂蕗子」とその母、「千明」に「教える才能」を見込まれ、塾を手伝って欲しいと懇願されます。
当初はあまり気が進まず、一旦は断ります。
しかし、蕗子、千明、祖母の「頼子」の女3人に絡め執られるようにして塾の経営を引き受け、後には千明と結ばれて家族の一員にもなりました。
吾郎たちの塾は千葉で小さな一軒家から始めますが、戦後の復興と経済成長に合わせて順調に拡大します。
この頃、酒を酌み交わして理想の教育を熱く語り、泣きたくなるような愛おしさと焦げ付くような毎日を過ごしました。

「青春-ずっと後になって吾郎がその頃のことを回顧し、これしかないという二文字をあてがった時、もはやそれはそこになかった。」

しかし時代の流れは想像以上に早く、思い描いたような理想の教育は中々実現できませんでした。
当初は「子供の好奇心を促す自主的な学び」や「自分の頭で考えられること」に重きを置いていましたが、過熱化する受験競争にも対応せざるをえませんでした。
時代も爆発的な成長から間もなくバブルが崩壊し、低成長の時代に入りました。
吾郎たち家族にも時は流れ、新しい子供に恵まれ、子供たちはやがて親となり、悲しい別れも経験しました。

「理想の教育はどこにあるのか」

吾郎たち家族はそれぞれが、この問いの答えを求め続けました。
終章で物語の「時」は現代に追いつきます。
日本は衰退の時代に入り、かつては見られなかった「教育を受けられない貧困家庭」も現れました。
そんな中で、「理想の教育」という答えには到達できなくても、そこに近づくべく懸命に努力する姿がありました。
エピローグでは次の世代へとその役割を引き継ぐような象徴的シーンで結ばれ、万感の思いでページを閉じました。

本書は学習塾を経営する家族を切り口にして、教育の変遷や時代の流れを丁寧に追った作品でした。
ページ数は多いものの読み始めると本を置くことができず、所々に挿入された誌的な言葉の数々には胸打たれました。
気軽に手に取ったのですが読み応えがあり、読後も余韻が心に残りました。
みかづきAmazon書評・レビュー:みかづきより
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No.15:
(5pt)

読み終えてすがすがしい

あるネット記事での「今年あと1冊だけ読むならこの小説」という紹介(松本大介)に引かれて読み始めた。自分自身の「教育」への関わりと重ね合わせながら、登場人物と共に生きたような気分で読み終えた。

それぞれ同じ「教育」という任務を担いつつ、相容れるには互いにためらい合うかのような「塾」と「学校」、最終章にあった言葉がこの小説全体が含む課題を象徴している。
《私は、この教育現場における官民連携の動きに賛同する者です。学校教員への負荷がここへ来てその限度をこえているのは無論のこと、この連携は塾側にとっても大いに益するものであると考えます。期待するのはかならずしも経営上の利益だけではありません。業界の皆さんには言わずもがなでしょうが、我々塾の人間というのは、すべての子どもに等しく勉強を教えられない現実に、絶えずある種の鬱屈を抱いているものです。商売であることの限界が、喉に剌さった小骨……いや、ナイフのようにつきまとう。故に、塾の看板を負ったまますべての子どもと等しくむきあう場を与えてくれる官民連携のとりくみに、私は新たな可能性を見る思いがするのです。》(462p)

教育機会の均等が基盤の「学校」と金を払ってくれる人のみを対象にひとつの商売として存在する「塾」、しかしそのスタートにおいて、「塾」は商売ではなかった。本書において「塾」は「学校』から漏れ落ちるところを補完する役割を担ったものとしてスタートした。「学校」においても「塾」においても、「教育」という営みにおいて、「教える者」と「教えられる者」の関係はあくまでピュアであるはずであって、そこにおいて「商売(カネ)」の介在は不純である。「 喉に剌さった小骨」のゆえんである。その小骨を抜き去っての大団円、読み終えてすがすがしい。
みかづきAmazon書評・レビュー:みかづきより
408771005X
No.14:
(4pt)

「教育」がテーマですが、堅苦しい作品ではないのでご安心ください♪

昭和から平成にかけて塾経営に携わる家族を描く長編。
実話をもとに書かれた作品なのかな?と勘違いしちゃうようなリアリティがあり、なんだか朝ドラっぽいお話でした。

戦時中の極端な教育の末に戦後~高度経済成長期~と時代は流れ、
現代は収入格差による貧困により教育にも格差が出てきている時代です。
時代の流れがわかりやすく、どの時代の教育の現実もリアルに描かれており、
児童文学の作家だった森さんがこんな作品を書くようになったことにただただ驚いています。

教育への姿勢を曲げないことと、経営して利益を得ること。
どちらの面でも妥協することなく成り立たせるのは並大抵のことではなく、そこに塾生の保護者や文部省まで絡んでくるから大変。
「教育がテーマ」なんて聞くと堅苦しい小説なのかな?と思いがちですが、
最初から最後までハラハラドキドキで意外にもスイスイと読める作品でした。
みかづきAmazon書評・レビュー:みかづきより
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