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あなたをずっと、さがしてた
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あなたをずっと、さがしてたの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点2.92pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全4件 1~4 1/1ページ
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この本『小説X』には、二つの小説が収録されています。 全191頁。その約四分の三は、中編小説「あなたをずっと、さがしてた」、後半の約50頁は、短編小説「四谷三丁目の幽霊」という構成です。 「あなたをずっと、さがしてた」が少し怖い話でしたので緊張しましたが、「四谷三丁目の幽霊」のほうがほのぼのとする笑える話でしたので、怖がりの読者としては救われました。 この本では、二つの話が一冊の本の中で微妙なバランスを保っていて、素敵な読後感を感じられました。 表題作「あなたをずっと、さがしてた」は、イラストが三枚も含まれる恋愛ミステリーです。ホラー小説に近い、少し怖い話です。 もう一つの「四谷三丁目の幽霊」のほうは、あわてんぼうで勘違いが多過ぎの若い二人が面白い短編です。右目を大きく腫らした「お岩さん風お化け」まで出てくる、漫画風の楽しい現在青春ラヴコメディです。イラストはありませんが、笑える「小ばなし」です。 どちらの作品も、男女の出会いは「偶然」風に見えますが、それが「必然」へと昇格し、最後には「運命」にまで至るという青春物語です。 「一度目の出逢いは偶然、二度目の出逢いは必然、三度目の出逢いは運命、という言葉を聞いたことがある」(171頁) 単なる偶然を、必然とか運命にまで誇大視し結びつけて考えてしまいがちな青春という時期。ある意味で本当に怖い時期だと言えます。もしも偶然の出会いが偶然ではなく、意図された計画的な行動であった場合には、・・・。考えるだけで恐ろしくなります。 青春の勘違いは、第三者には笑えるミス・コミュニケーションですが、当事者の若い二人にとっては死にたくなるほどの真剣な行き違いとなり、重大問題となります。 本書の表紙の帯に『「ラスト一行に、命を懸けました‼」蘇部健一』とあるように、青春の重大問題には作家の方も作家生命をかけています。 若者にとっても、中年にとっても、青春は一生の中で最も真剣度の高い勝負のときです。裏表紙の帯には「ラスト一行」に対する、読者からの驚きや称賛の言葉があふれています。反響の大きさが感じられます。 私は「スタートの一行」に引き付けられました。 「あなたをずっと、さがしてた」は、「はじめてのキスの余韻がまだ残っていた」という一行で始まります。 そして、117頁にも「はじめてのキスの余韻がまだ残っていた」 さらに、125頁にも「はじめてのキスの余韻がまだ残っていた」 はじめてのキスというのは、印象深いものです。 しかし、このキスが、偽りの、意図的な、悪意のある、下心のあるキスだったら、どうなるでしょう。 必然的な出会いとか運命の赤い糸で結ばれて、とは感じられなくなります。それだけでなく、怖くなります。恐ろしくなります。 しかも、根っからの悪人は少なく、ほとんどが根は善人なのだけれども、あのキスのときには悪人だった、としたら・・・。 主人公の名前は「奈子(なこ)」。めずらしい名前です。 この名前を見て、『万葉集』第五巻の大伴家持の歌を思い出しました。 歌詞: 宇豆都仁波 安布余志勿奈子 … 読み: うつつには、逢(あ)ふよしもなし、… 「逢(あ)ふよしもなし」の「なし(奈子)」を思い出したのです。 この歌の意味は 「実際には逢うことができません。夜の夢にいつも見えてください」 この歌は「あなたをずっと、さがしてた」にふさわしい内容の歌であり、奈子の「今日もあなたに会うことができなかった。夢の中でもいい、もう一度会いたい」という一途な気持ちが詠われているのではないかと思いました。 ―――――――――― もう一つの作品「四谷三丁目の幽霊」のほうは、ほのぼのとする笑えるカップルの話でした。 黄色の折り畳み傘の代わりに、間違って「たくあん」を持って出たあわてんぼうの女と、 白色の折り畳み傘の代わりに、間違って「ちくわぶ」を持って出たあわてんぼうの男の運命の出会いの話です。 確かに、黄色の折り畳み傘と「たくあん」は姿かたちはよく似ています。しかし、においが違います。なんかクサイぎゃぐです。 幽霊のような現代「お化け」の話なのに、ぜんぜん怖くない。文句なく笑える物語です。 そして、二人ともカレーがいちばん好きな食べ物です。 「よかった。夫婦にいちばんたいせつなものは、食べ物の相性だって、よく言いますもんね」(163頁) 似たもの夫婦とは言いますけどね。食べ物の相性が夫婦に「いちばんたいせつ」なのかなあ……。 とんかつ食べて、こんかつしよう。おあとがよろしいようで。 | ||||
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私が著者の小説を読んだのは本書が最初なのですが、中々に癖が強い作風(芸風)で気に入りましたのでボチボチと他のも探して読み始めようと思っています。本書には中編と短編の2編が収録されていますが、見事に「陰と陽」に書き分けられていて、それは「悲劇と喜劇」と呼んでも良さそうで、どちらも著者のそれぞれの内面や性格(悲観的と楽天的)が出ていて興味深かったですね。それから私は著者と同じ「さ行」の歌手「さだまさし」の大ファンなのですが、この小説がさださんの名曲「天までとどけ」の冒頭の歌詞「出逢いはいつでも 偶然の風の中きらめく君 僕の前にゆるやかに立ち止まる」を連想させるのと大ヒット曲「雨やどり」の2番の歌詞「五月のとある水曜日に」が思い浮かびましたので、もしかしたら「さだまさし」を意識されているのかな?とも思いましたが、まあこれは希望的な思い込みか又は単なる考え過ぎかも知れませんね。 『あなたをずっと、さがしてた』:河村奈子は朝霞台にある女子大に通う大学二年生だったが毎週水曜日に通学路の水道橋ですれ違う素敵な男性に恋をするが、話しかける事も出来ないままいたずらに日々が過ぎ、やがて遂に彼と会えなくなってしまうのだった。「ラスト一行の衝撃の結末」は十分に鮮やかで、もちろんそれまで用意周到に著者が仕掛けて来た騙しの技巧が実を結ぶ訳で、このトリックは推理作家として相当の実力がなければ書けない「はなれわざ」でしょうね。それは後から振り返れば「雨の歩道橋での目撃」シーンと「大学の工房を訪ねる」シーンに張られた伏線が特に素晴らしいと思いますね。さて、ここからは私の感想ですが、本書にはホラー小説系の作りとして警察を介入させない事情があるのだと思います。それと関連してヒロインの奈子がもっとしっかりとした人間だったらばこの物語は成立しなかっただろうと思えますね。それは何事も鵜呑みにして信じないですべての事実を確認してみる事、それともっと大事なのは、悪気はなかったにせよ犯してしまった不幸な過ちから唯逃げるのではなく勇気を出して真剣に向き合って人として謝罪すべき所は誠実に対処する事でしょうね。そしてこれからでも決して遅くはなくこの事件を警察に通報すれば事情が明らかになり全てが良い方向に向かうでしょうね。私のレビュー・タイトルの意味は以上です。この小説は客観的にミステリーとして見れば素晴らしい出来栄えなのですが、この物語の持つ暗い性質からどうしても好きになれずに強い嫌悪感を抱かれる方がきっと多いだろうなと思える事は致し方ないだろうなと思います。だからこの小説を未来に向けて少しでも有意義にする為に、もし可能であればせめてヒロインの奈子にこの「小説X」を読んで全ての事実を知った上で心から深く反省して今後の人生を歩んで欲しいなと思うのですね。最後にあまりにも生真面目な事を書きましてすみません。何分にも私の性格ですのでどうかお許しくださいね。 『四谷三丁目の幽霊』:こちらは見知らぬ同士の男と女がほとんどそっくりのシチュエーションの下に出逢ってうまく行きそうでバッチリとは行かずに、途中で思わず「結局はどっちなの?」と突っ込みたくなるコミカルなラブ・ストーリーですね。「こんな不自然な名前があってたまるか!」と絶叫したくなる様な荒業も2つブチかましていますが、まあ「いいじゃないの、幸せならば(古いですが)」要するに「終わり良ければ全てよし」ですよね。こういうふざけたお話は東京の落語家さんの語りによって新作落語として高座で聞いてみたいですね。そして余計な事ですが最初の方に書いたさだまさしの「天までとどけ」は決して「あの世の幽霊」とは関係ありませんからくれぐれも誤解されませんようにね。 | ||||
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期間限定無料公開版で読みました。最後の最後に驚きの結末が用意されていて、設定に結構無理はありますが、ミステリとしてはよくできていると思います。未読の人にとっては購入して読むだけの価値はあるでしょう。 しかし、この作品の最大のセールスポイントはやはり結末で明らかにされる衝撃的な事実であり、無料公開版で一度読んで結末を知っていれば、有料版を購入して繰り返し読もうという気になるほどではありません。 どうせなら、有料版には本編の後日談か短い続編をつけて、そこで本編の結末をさらにもう一度ひっくり返すような再どんでん返しの結末かなにかを用意すれば、無料公開版で読んだ人たちも有料版を購入して読んでみようという気になったのではないかと思います。 | ||||
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「六枚のとんかつ」で華々しくデビューされ、今は牛丼屋のバイトの傍ら、小説への情熱の火が消えることなくご執筆されてるとのこと。 蘇部作品は、いつも賛否両論ですが、これは間違いなく最高傑作です。多くを書くとネタバレになるので、とりあえず読んでほしい。 | ||||
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