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夜の記憶
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夜の記憶の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全19件 1~19 1/1ページ
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トマス・H・クックは癖になる作家ですが、この小説はファンの人も特にファンでない人も読まない方がいいと思います。読後感が最悪です。怖い、怖いというレビューがありますが、全然怖くありませんし、怖いのが好きな人を愉しませてくれるような作品でもありません。 人間性の闇の部分がどうこう言って感心するのはあまりにも“軽すぎ”でしょう。恐怖によって人を支配することは許されざる悪ですが、恐怖に支配されてしまったとしても仕方のないことで、声高にあげつらうような話ではないと思います。基本的に(たまには例外もいますが)人は拷問には耐えられないものであり、多くの冤罪事件が一見不合理な自白から産まれてきたのは知る人ぞ知る事実です。 解決を依頼された当面の事件についても、また主人公の過去の事件についても、決着の仕方が実に不愉快です。プロットの全体が、読者に対して、無用な嫌悪感を押し付けるものだというのが私の評価です。 『心の砕ける音』(正確には『Places in the dark』)が打ちふるえてしまうほど素晴らしい作品だったので、大いに期待して読んだものとしては、がっかりもいいところ。5作目にして初めて駄作に遭遇してしまったクックさんでした。 | ||||
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他の方が書かれている、主人公自身の過去の体験、その心理や真相がキモだというのは分かるのですが、過去の事件捜査部分は実にクラシック。 エルキュール・ポワロとかエラリー・クイーンが関係者に話を聞き周り、仮説を組み立て、それが崩れて、違う仮説を組み立てていくという、クラシックなパズラーそのもので嬉しくなりました。 地味な話なのだけど、ページをめくる手が止まらなくなる。 読み終えて、クイーンの「フォックス家の 殺人」を数十年ぶりに再読することにしました。 | ||||
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ジャンル分けすればミステリになるが、最後に謎が解けてもそれが忌まわしい結果を必然的に導くので、救いがなくて爽快感はゼロ、暗澹たる気分だけが残る。正直、読まなければよかったと思った。 文体はしっとりと落ち着いている。が、内容はかなりどぎつく衝撃がある。鬱傾向の人は読まない方がいいし、後味の悪いストーリーが好きな人以外にはお勧めしない。 話の造りは非常に巧い。終始、陰鬱なムードであるにもかかわらず、面白くてどんどん読める。 主人公の設定が特異。ポップな犯罪活劇シリーズを書いている人気作家だが、マンガ的なまでに古典的なスタイルで書くのは、子供の頃のある夜、異常者に目の前で姉を惨殺されたトラウマが深すぎるからだ。 彼は、邪悪でサディスティックな犯罪者と追いかける刑事を主役にすえてシリーズを書き続ける。フィクションによって「夜の記憶」を微妙にずらし、救われるためだ。それでも彼は、いずれはと予期して自殺の道具をロッカーに用意する(ミステリ小説にかつてこんな主人公がいただろうか)。 シリーズを読み、その背景を感じとった大富豪の娘の依頼で、作家は第二次世界大戦直後の50数年前、避暑地で起こった少女殺害事件の真相究明を引き受ける。 謎の追究は関係者の道徳的な腐敗と事件の暗然たる真実を次第に明らかにするが、それは同時に、作家が心の闇の奥底に隠した「夜の記憶」の真実をも照らし出し、戦慄の事実をえぐり出す。むごいとしか言いようのないプロットだ。 こうして、二つの殺人事件と小説に書いたフィクションの犯罪の数々が影響し合い、相乗効果で凄惨さが耐え難いほどに増幅していく。あまり類例のない構造を持つミステリで、クックの文学的な力量が窺える。 クックは最後に救いを用意しているが、とってつけたような扱いだから読後感は変わらない。主人公にとっても読者にとっても、これは珍しいほど残酷で、目を背けたくなるほどおぞましいミステリだ。 | ||||
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これは好き嫌いというカテゴリーでくくれない作品だと思います。 読後に評価に困った作品は久しぶりでした。 嫌だと思いつつ引き込まれるという話でもない気がしますし、 強いて言えば怖いもの見たさで目が離せない感じでしょうか。 主人公の心の闇はどこからくるのか、それはある程度読み進めて いくと分かってしまうかもしれません。はっきりとではないけれど、 大体の人はうっすらと感じ取って読んでいるのではないでしょうか。 ただ、そうであって欲しくないという願望から、その事実から 目を逸らして読んでいたけれど、やっぱり最後はそうきたか・・というタイプの話です。 主人公が作家なのですが、彼の思いはよく想像の世界に飛びます。 そこが多少だれるところでもあります。50年前の少女殺しの方は、少し 強引で結末はあっけない感じがしますが、メインはやはり主人公側の方 なのでしょう。こちらはかなり良い感じで、終盤はラストに向かってぐいぐいと読ませます。 希望があるとも取れるラストシーンですが、自分には主人公が 幸せになるとは到底思えませんでした。少しだけ心を開ける相手を 得たのかもしれませんが、やはりこのまま苦しみ、もしくは戦いながら 闇の中を歩いていくことになるのではないでしょうか。 その程度で深すぎる心の傷は癒せるものではない、と思わせたところが 一番怖かったところかもしれません。 | ||||
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文庫本にして400ページを超える作品です。 最初から提示される謎は謎のまま、陰鬱な雰囲気に包まれた描写が続きます。 論理的な推理、それに挟まれる過去の描写、交わりだす過去と現在の事件の謎。 実は様々に張り巡らされた心理的な伏線の数々。 もう、秀逸に過ぎます。 恐怖に囚われた恐怖という人間心理を深く暗い場所で突きつけられる。 過去が顕わになる描写は、何度読んでも恐怖を感じずにはいられません。 読んで損は絶対にしない小説のひとつです。 | ||||
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この作家の並々ならぬ力量が存分に発揮された小説。 このシリーズの本の定番で、「現在から過去を振り返る」形の叙述。 ある小説家が過去の犯罪の再調査を依頼されるシーンから引き込まれました。 過去の事件の調査と同時に、主人公の作家の過去の恐怖体験が語られる。 実の姉が目の前で… 現在行っている「事件捜査」と「過去の恐怖体験」が織り込まれ、 縦糸と横糸が交差し、徐々に過去が暴かれていく。 同じ形式でこのシリーズは描かれてますが、著者の筆はいささかも鈍くならない。 「恐怖」を綴る作家にスティーブンキングがいます。 しかしキングはかなりの駄作もあります。それを考えるとこの作家には駄作は ないですね。この作家の力量のたまものです。 おかげで、キングが一気に色あせました。 最後の50ページほどは震えながら読みました。 こういう恐怖は描写が残酷なことが原因ではないので、かえって深く心に残ります。 恐怖は自分そのものなのか、強いられた体験が自分を恐怖の虜にしたのか… 過去の恐怖にいつまでも囚われる自分… とにかく一読を!! この作家が嫌いになっても、うんざりすることや お金の無駄となることはありません。 怖いです怖いです怖いです・・・・・・ | ||||
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クックの本は何冊か読んでいますが、これはちょっと重かったです。怖さという点でも、人間の暗闇をのぞいてしまったという視点においても。13歳の少年が姉の惨殺現場にいたという残酷な経験から救ったのは、そのまま受け入れてくれたミセス・フレクスナーだし、ミステリ作家としての彼と向き合ってくれたのも脚本家のエレナー。二人の女性の存在が救いです。ストリーは、彼グレイブスが、50年前の少女殺人事件の解明を依頼されたところから始まり、豪邸で暮らす依頼主一族の平和な楽園のはずの内側が、ボロボロ崩れていくありさまがグレイブスの過去と重なって、どうしようもない暗黒の世界です。彼の苦しみと引き換えのように、事件は解決しますが、人間がここまでするのかという恐怖を抱えて、生きてきたグレイブスが最後に選んだ結末はせつないほどです。ナチの時代が絡んできたり、一緒に事件を調べるエレナーの存在がちょっと都合よく出来すぎの感がありますが、登場人物のかきわけも見事で、ぐいぐい引っ張るストーリーは上級で星5つです。 | ||||
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闇、黒、夜に包まれた物語である。作家である主人公は、幼い頃眼の前で姉を惨殺された陰惨な過去を持つ。彼が書くスリラーにも、その体験が色濃く反映される。かなり危ない精神状態である。そんな主人公がある館に招かれるが、館の女主人の目的は、50年前に起きた少女殺人事件の絵解きである。その少女フェイは使用人の娘で女主人とは親友だった。しかし、女主人の依頼は事件の解決ではなく、フェイの老母が満足するストーリーを紡ぎ出す事だった。容疑者は挙がっていたのだが、自殺してしまい真相は藪の中。無茶な申し出だが、亡姉の事件とフェイの事件が闇の中で交錯し、主人公は引き受けてしまう。主人公が、そして作者がどのような物語を紡ぎ出すか期待を持たせる出だしである。 捜査中にも、亡姉の幻想や自作中の登場人物が主人公の頭をよぎり、まさに暗中模索の進行。そして、主人公が背負う重荷を執拗に描く姿勢は、真相の解明と共に館の一家が崩壊する暗い予感を漂わせる。ここで、主人公を助けるように、招待客の女流戯曲家エリナーが捜査に加わる。エリナーは頭脳明晰、冷静沈着で行動力もあり、一歩々々真相に迫って行く。何故、女主人は初めからエリナーに絵解きを頼まなかったのか疑問である。 そして、結末で明かされる着想外の過酷な歴史の真実。確かに着想外の真実なのだが、重いテーマだけに、本作をミステリと考えると浮き上がっているのではないか。このテーマを追求する事が作者の目的なら、途中の無駄な捜査は削って、この点に焦点を絞るべきだったろう。ミステリと歴史の真実のバランスが中途半端になってしまった感のある残念な作品。 | ||||
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「怖い」「恐い」とのことだったので、読むかどうか迷った末に覚悟して読みだした。外国小説にある精緻な文体と構成に手応えを得ながらも、肝心の「恐怖」がなかなか味わえない。主人公の回想と依頼された過去の殺人事件がオーバーラップして行ったり来たりするのにも慣れ、犯人探しの興味が続くが、結局結末に至るまで自分はさしたる恐怖を味わえませんでした。もし、単純に「恐がりたい」 という動機で選ぶなら他を当たる方が無難かと思われます。 | ||||
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クックの「記憶」シリーズは、どれも読みごたえがあり、優劣つけがたいが、衝撃度の強さではこれが一番。 怖い。 ものすごく。 50年前に死んだ少女・フェイ。みんなに愛されていた天使のような彼女を、いったい誰が殺したのか。ミステリー作家のポールは事件の究明にのりだす。 錯綜しリンクするフェイの事件とポールの過去、そして彼のつむぐ虚構の世界。 物語は、からみあいながら衝撃の結末へ導かれ、ポールのかかえる恐ろしい夜の記憶をもむき出しにする。それは、目をそむけずにはいられない、呆然とするほど残酷な記憶。 陰惨な暴力シーンの、エグいグロい描写が怖いのではない。クックのつきつけるメッセージが、あまりに容赦ないのだ。 人間、ひいては生物が持つ自己防衛本能。「私は私が大事」だということ。それは平和に裕福に、愛につつまれて生きていれば普通に受けとめられる何と言うことのない、あたりまえのこと。 それが、恐怖にさらされたときにどんなふうに働くのか。 どんなふうに利用されてしまうのか。 そしてそれを平気で利用できる人間がいるということ。 グレタの話も恐ろしいが、424ページの衝撃は半端ではない。本当に本当に、怖い。 ミステリーを読んで、こんなに考えさせられたことはない。深い。その深さは真っ暗で一筋の光も見えない。が、だからこそ強く強く心をとらえる。 世界の誰もが、なかでも私が、こんな経験をすることのないようにと願ってしまう。 深く重いテーマに怖気立つが、そこにいたるまでの物語も、みごとに構成されている。ラストもいい。傑作だと思う。 | ||||
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恐怖の深淵には底がない。 だから人はどこまでも堕ちていく。 主人公の中年作家ポールはニューヨークで孤独な逼塞生活を送っていたが、とある裕福な老婦人の招きに応じ訪れた別荘地で数十年前に起きた殺人事件の真相を暴くことになる。 しかしその行為はポールの少年時代を永遠に終わらせてしまった忌まわしい惨劇、美しく快活な姉がポールの眼前で惨たらしく嬲り殺された夜の記憶を掘り出すことでもあった。 「死の記憶」全編を取り返しのつかない悲哀が包んでいるとしたら、「夜の記憶」全編には拭いがたい陰惨さが影を落としている。 どちらも事件を機に少年時代が終わりその後主人公に生涯癒えぬ苦悩をもたらすが、前者が過ぎ去りし少年時代への郷愁の色合いが濃いのと比べ本作は実際に身内が残虐に嬲り殺される過程を一部始終目撃した主人公の視点で語られるため、郷愁の一言では片付けられない何とも陰惨な後味が残る。 しかも主人公は姉を見殺しにした、間接的に姉を殺したのは自分だという強烈な罪悪感に苦しみ今なお自責の念に苛まれている。 老婦人が依頼した事件の真相よりも哀しい衝撃をもたらすのはむしろポールの姉殺害事件の真相だ。 人の狂気を示す例としてナチスが行なった残虐な実験が挙がる。 母子の被験者にスイッチを握らせ徐徐に刺激を強め電気ショックを与えた上で「助かりたければ母親を身代わりにしろ」と強要すれば、子供は自分が助かりたいあまりスイッチを押さざるえなくなる。 夜の深淵には怪物が潜んでいる。 利己的で他罰的、自分の身を守るためなら手段を選ばずどんな残虐な行為すら厭わぬ怪物が誰の中にも潜んでいるのだ。 濃密な心理描写が一層サスペンスを盛り上げる佳作。 | ||||
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「このミステリーがすごい!」’00年海外編第7位にランクインされた、トマス・H・クック『記憶』シリーズ第4弾。 ミステリー作家ポールには、30数年前、両親を交通事故で亡くし、さらにその直後、最愛の姉を目の前で惨殺されるという悲劇的な過去があった。そのため、彼は、いまや人と付き合うことも、町に出ることもなく、半ば死んでしまった人のように、その時の恐怖体験をもとに、19世紀のニューヨークを舞台に、殺人鬼ケスラーと、ライバルの刑事を主人公にしたミステリーをタイプし続けるという陰鬱な生活を送っていた。 そんな時、彼の本の愛読者であるニューヨーク郊外のお屋敷の女主人から、想像力を見込まれ、50年前、親友の少女が殺された事件を解決してほしいと依頼される。 ポールは屋敷に赴き、たまたまゲストとして居合わせた女性劇作家の協力を仰いで、当時の捜査官の残した資料を基に、事件の真相に迫ってゆく・・・。 ポールがさまざまな仮説を組み立てて、50年前の事件のベールを一枚ずつはがしてゆくたびに、自分自身の過去の悲劇が、残酷でショッキングな「夜の記憶」のフラッシュバックとなって彼を苦しめる。さらにポールの作品中の殺人鬼ケスラーのシーンまでもが加わる。 現在と過去が入れ代わり、現実と回想と虚構の作品世界が交錯して物語が展開してゆくのは、エドガー賞受賞作、『緋色の記憶』以上に複雑で、ミステリアスである。 50年前の事件の真相自体はあっけないものだったが、そこに至る過程でつぎつぎに明らかになる当時の関係者たちの暗い秘密、終盤で明らかになるポール自身の暗い闇。そしてニューヨークに帰ったポールの結末。 著者は本書で、あくまでも執拗に、人の心に巣食う闇の部分を抉り出そうとしている。 | ||||
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ネットの掲示板で知ったのだが、今まで外国のミステリーはほとんど読んだことのない自分はどうせありふれたミステリーものだろうなと大した期待もせず買って、すぐには読まずに本棚にしまっといた。で、ある日の夜眠くならないので何となくこれを手にとってみた。出だしは退屈で、設定とか人物名を何度か確認したりしたけど、そろそろ眠くなってきたところでジワジワ面白くなってきた。後半は眠気も抑えて一気に読んだ。謎と一緒に「人間の奥底」も紐解かれていく感じ。読了後、人間の中の狂気や恐怖に心底怖くなって、こういう人間が世界中にたくさんいる事実と、いつ、誰でも簡単にこんな風になれるもんなのかと思うと鳥肌が立った。極端かも知れないが自分が人間でいることにすら恐怖を感じた。背景としてはよく洋画や絵画にありそうな風景を想像した。これって映画化したら面白いんじゃ?あとがきにもあるけど「この作品は気の弱い読者には勧められない」。 | ||||
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この作品は、クックの他の作品に共通する中弛みのかったるさが余り無く、中盤も少女殺しの犯人を追っている過程が描かれているので、最後まで面白く読めました。ただ、複数のストーリーが同時に進行し、しかも現在の出来事、過去の出来事、主人公の回想的な出来事、と言った具合に進行するので、注意深く読んでいかないと、途中で訳が分からなくなり易いです。しかし文章は美しく詩的で極めて印象深いセリフが所々に散りばめられていて(例えばエレナが主人公の内面を直感で感じ取って言う「それは、あなたなのね」など)、クックの本領が発揮された長編ミステリー小説です。またこれは一種の恐怖小説でもあります。色んな方が指摘されていますが、本当に恐い・・・。 | ||||
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この小説を読んだとき、ちょうど新聞にはいままでになかった犯罪があふれていた。いったいどうして人はこんなに簡単に人を殺せるのだろうと毎日のように悩んでいた。そういうときにこの作家の小説を何冊か読み、すっかりファンになってしまった。つまり、新聞で読むときのような理不尽なもの、恐怖、おぞましい嫌悪感、許し難いという気持ち、こちらも暴力を受けたような恐怖、といったモノを先にかんじてしまうのだが、クックの小説は決してそうように犯罪者をあつかっていない。彼の小説を読みと犯罪者には犯罪をする理由があるのだという気がしてくる。それくらい普通の家族や兄弟愛がでてくるのだ。それがにんげんの不思議というほかない、非常にリアルで雰囲気のあるストリーとなっている。これは普通の犯人探しのミステリーではなく、人間のミステリーなのだ。この本を読んで新しいミステリーの可能性を感じた。 | ||||
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スピルバーグが車を激突させた時も怖いと思ったし、変なビデオを見たら1週間で死ぬと言われた時も怖いと思ったけど、この作品は本当に怖い。主人公の小説家は幼い頃姉を殺されて、いまだにそのトラウマに悩まされている。それが彼の作品の根源でもあり、繰り返し書くことで自分を救おうとしている。こんなもろい主人公に、ある少女の死についての物語を書くように頼まれる。これがきっかけで、彼はトラウマにつぶされ、重い告白をしてしまう。しかしラストは希望が見え隠れしていて、ささやかな救いがあるのがいい。トラウマ、という安っぽい過去の事実をここまで深く表現できるのは、クックが他の作家に比べて桁違いに人間を深刻に捕らえているからであろうと思う。 | ||||
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怖い。あまりに怖いので、読み終わった後、二度と目に触れないように箱の中にしまったが、部屋の中にその箱があると思うだけで恐ろしく、眠ろうと目を閉じても、気づくと鳥肌が立っている。 英語の原題は「夜の道具」である。何のことやら分からないタイトルだが、読み終わると「夜の道具」のことを考えるだけで、体に冷や汗がにじんでくる。 クックの他の「記憶」シリーズと同様、ラストシーンには希望がそっと挿入されているが、本作のラストシーンには、これまでにない力強い優しさが満ちあふれている。だけどそれでも怖さが勝つ。 | ||||
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読み終えた後、心の中に何かがオリとなって沈んでいった。読後2,3日たった今日でも、それはまだ消えない。私がニブイのか、ラストで明かされる主人公の心の闇に最後まで気が付かなかった。推理小説は、言葉は悪いがそのほとんどは読み捨てだ。読んでる瞬間の自分とは違った人生を楽しみ、それで終わり。しかしめずらしいことに、もう一度最初から読み直している。主人公の心の動きをよーく追ってみたくなったからだ。 なにげなく手にとり、暇つぶしに読み始めた出だし部分は退屈といってもいいくらいだった。ひっそり暮らす、心に重しを抱えた作家が富豪の女主人の屋敷に招かれ、過去の少女殺人事件の謎解きを依頼される。しかしそれを紐解きながら、常に作家の心を占める<夜の記憶>と、幸せに包まれていたはずの屋敷の影の部分が浮かび上がるにつれ、目が離せなくなる。一晩で読み込んでしまう。 女性劇作家という協力者がいる。救いというもののない作家の人生を、このまま終わらせないで欲しいと思う、善良な一市民読者の私の気持ちを代弁する彼女に、ほっとさせられる最後ではあった。かたや殺人事件の方は、いささか謎が違う方向に流れ過ぎな気がした。それくらいでないと推理ファンを納得させられないのかもしれないが、そこまで流れたのならもっと掘り下げて欲しいとも思う。それにしても考えてしまう。私だったら、私が作家の少年だったら、どうできるだろう・・・ | ||||
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1946年8月27日。50年前に大富豪の私有地「リヴァーウッド」で起きた少女殺害事件の真相解明を依頼されたミステリー作家グレーヴズ。しかしそれは同時に封印した彼の少年時代のある「夜の記憶」を甦らせる作業に他ならなかった・・・。 物語は静謐かつ詩的な文章で淡々と進行する。「過去」・「現実」・「虚構」のフラッシュバックが随所に散りばめられそれぞれ別の展開を見せながら、最終章に至って相互に作用しあい、まるで手品の種が明かされるかのように「残酷な真相」を暴き出す。この構成力の見事さには誰もがこの作者の卓越した才能を感じるだろう。特に、地上の楽園と形容された「リヴァーウッド」の真実。グレーヴズが執拗なまでに幸福に背を向ける理由。これらの謎が紐解かれる中盤から後半にかけては、加速度的に面白さが増し読み応え十分だ。 また、グレーヴズの謎解きのパートナーとしてエレナーという女流脚本家の登場も物語に深みを持たせている。エレナーは機知に富み、鋭い洞察力を持つがゆえに人間がいかに罪深い生き物であるか知っている女性だ。長年自らに孤独を課してきたグレーヴズでさえ必然的ではあるが彼女との関わりを望むようになる。私的解釈をさせてもらえるなら、これは作者が「女」に求める「母性(適切な言葉ではないかもしれないが・・・)」なのではないだろうか?彼女の存在が、物語の唯一の救いとなるのは偶然ではないだろう。 最後に、星4つ評価となったのは事件の真相に物足りなさを感じたことと、この作家ならばこれ以上の作品を今後も発表し続けるだろうという期待の現われと理解していただきたい。星5つに十分値する秀作である。 | ||||
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