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ゲームの王国



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【この小説が収録されている参考書籍】
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ゲームの王国の評価: 3.97/5点 レビュー 61件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.97pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全61件 21~40 2/4ページ
No.41:
(4pt)

ソリヤに悔い改めさせることができなかったムイタックと著者の負け

カンボジアの土着の呪術と農民の村、都市の革命運動の各々の下、二人の主人公・ムイタックとソリヤの成長と邂逅が興味深く語られる。クメールルージュの革命による恐怖の暮らしと虐殺の悪夢がリアルに描かれた後、崩壊後の新たな民主主義の元で政治家として頂点を目指すソリヤと脳波の研究から脳波を用いたゲームの開発に取り組むムイタックの再びの邂逅が語られる。

革命政権下でムイタックの村での虐殺を指揮せざるをえなかったソリヤの責任の問題と、ムイタックの脳波を通じて潜在意識を探り操るゲームの話が、後半(下巻)でどう関係し、どう決着するのかが焦点だと思った。ま、それを煽るような小説の展開なのだが。民主主義下でも、大義のためには陰謀や無垢の民の命の犠牲はやむを得ないとする、手前勝手なルールでゲームを行うソリヤを、如何に裁き、悔い改めさせるのか。ポルポトに通じるソリヤの「政治主義」の暴走をきちんと裁かないと、本小説の意味がないし、カンボジア人に失礼な気がした。しかし、本作では、この点で、ムイタックも著者も成功しておらず、最後はあいまいな決着で、ちょっと失望した。ゲームの対決で「さらに好きになって」どうするよ。大事な問題が放置されたままだ。それはないものねだりなのか?ま、期待は失望の母なのだが。
ゲームの王国 上Amazon書評・レビュー:ゲームの王国 上より
4152096799
No.40:
(3pt)

章単位ではおもしろいです

上下巻通してのレビューになります。

小さな章に分かれており、章ごとに異なる人物の視点で描かかれているので飽きません。著者は文章がうまく、ついつい作品の世界に引き込まれます。クメール・ルージュの残酷な行為など、目を覆いたくなるようなシーンもありますが、怖いもの見たさでけっきょくまたページを開いてしまいます。

上巻ではポル・ポトの半生に多くのページが割かれており、もちろん興味深く読むことができるのですが、ストーリーの本筋とはほとんど関係がありません。他にも、輪ゴムで人の死がわかる者、泥を操る者など、著者が創造した魅力的なキャラクターが多く登場しますが、ストーリーの本筋とはほとんど関係がありません。いや、もしかすると「ストーリーの本筋」など存在しないのかもしれません。

最後まで読んでもけっきょく何が言いたかったのかよくわからなかったのですが、章ごとの読書体験としてはとても楽しむことができました。そんな不思議な一冊です。ソリアとムイタックのからみはもっともっと読みたかったですね。
ゲームの王国 上Amazon書評・レビュー:ゲームの王国 上より
4152096799
No.39:
(5pt)

小川哲にハマった

ゲームの王国上下巻を読み終わって、完全に作者のファンになりました。
もともと全く知らない作者でしたが、SFマガジンに載っていた短編が面白かったので興味を持ち本書を取りました。

上巻で盛り上がったところを下巻でバッサリ切り替えたので、最初はちょっと納得いかなかったけど、読み進めていくうちに「あっこれはこれで面白い」となり、一気に読み終わりました。
ただ最後の展開は急に終わった感があったかも。
にしても、全体で見た感じすごく面白かったです。作者の後書きも柔らかい文体で好感度たかい。
この本に興味があって悩んでる人は、とりあえずKindle版の試し読みをおすすめします。自分はそれで続きが気になって結局買いました。
まだ読んでない作者の本がたくさんあるのでしばらく楽しめそうです。
ゲームの王国 下Amazon書評・レビュー:ゲームの王国 下より
4152097019
No.38:
(5pt)

あの頃のカンボジアのことが少しわかる

とっても面白かったです。
あの頃のカンボジアのことが少しわかったような気がします。
ゲームの王国 上Amazon書評・レビュー:ゲームの王国 上より
4152096799
No.37:
(5pt)

理屈がとおる日本に生まれた幸せを感じます。

通り魔に刺されたり、隣を走る車のドライバと喧嘩になっても、一般的には理屈が通る日本の幸せを感じます。この本の中のカンボジアでは、教師だと拷問。英語を喋る人を募集するアナウンスに名乗り出ると射殺。病院で入院していても、退去命令が出て、移動中に死亡。医学は勿論、常識レベルの知識もない子供の指示で開腹手術をされて失血死。
理屈はありません。
その中で主人公たちが求めるのは、規則があって、運営される社会。すなわちゲームのようにルールがある社会。ルールが支配権を持つ王国。
カンボジアのような社会に落ち込まないためには何をすればいいのだろう?今落ち込む途上じゃないかと思うととても心配になります。
ちなみにナチスに支配されたドイツも同じ感じです。社会の不安要因をナチスは、自演で強調していきます。その不安原因をナチスに反対または、少数グールプの責任と勝手に決めつける。ナチスは、不安要因と戦う正義の集団であると位置づけます。
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4152096799
No.36:
(4pt)

下巻はSFしてた。

上巻はカンボジアの近現代史の成分が大多数で すこしふしぎ が輪ゴム、泥食いなどだったので、
下巻はどうなるかと思ったら、ちゃんとSFになっていた。
脳波を使うゲームの設定で勝敗より満足度を重視する点が面白いな。
章によって時系列が前後したりするので、未来の章が出てくると伏線とか考えてしまった。
しかし、なぜカンボジアなのだろう。
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4152097019
No.35:
(2pt)

登場人物に魅力がない

あまり人物描写がうまくない。
作者としては魅力的に描きたかったのだろうと思われる人物に、全く魅力を感じなかった。
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4152096799
No.34:
(4pt)

カンボジアの近代史をなぞっているような。

クメール・ルージュの支配にいたる経過と実態が怖い。
中ほどから読むのがつらくなってきた。
下巻読むのはしばらく後にしよう。
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4152096799
No.33:
(2pt)

読書そのものがゲームのよう/”私の”好みには合わなかった

個人的なことを言えば、物語としては少々枝葉はあるが大きな幹に沿って伸びて行き、次第に一点に収束
して行く「杉の木」タイプを好む。熱帯雨林のジャングルの様に四方八方に手を広げたり、本筋に無関係な
寄生木が取り巻いたりで何の木なのか何を言いたいのか不明なものはどうも好かない。

 ようやく最近になって気付いたことがあり、その本が面白いのか否かの判断に奥付の重版数を参考にする
というもの。いくらレビューの評価が高くても或いは帯の惹句が扇情的であっても、発行年が古いわりに
「初版第1刷発行」のままだったらハズレである。但しネット通販では確認できないのが欠点。

 玉石混交の中から時々これは!と思う玉を発見する。それこそが読書の醍醐味であり、またゲーム(とい
うか賭け)でもある。常に負けてばかりは勿論のこと、勝ってばかりでも面白くないかもしれない。
ゲームの王国 下Amazon書評・レビュー:ゲームの王国 下より
4152097019
No.32:
(4pt)

ゲームも革命もルールの中か外かの違い?

偶然にも巡り会った天才少年・少女。ゲームという決められたルールの中で、いかにして勝つかを模索す
る。一方クメール・ルージュはルールの外からルールを破壊する「革命」に命をかける。ルールの内と外と
という両極端の対比を大きな柱とし、混沌としたカンボジアの情勢やファンタジー色の濃い超能力児の挿話
を織り交ぜている。
 大量虐殺を伴うクーデターや革命を「ゲーム」というブラック・ジョークとも言うべき視点でとらえ、
ゲームの王国の不条理な世界を描き切っている。その技巧は広大な熱帯雨林のごとく繁茂で、かつ鮮やかで
さえある。
ゲームの王国 上Amazon書評・レビュー:ゲームの王国 上より
4152096799
No.31:
(5pt)

"If We Hold on Together”と歌う一方で、"We're All Alone"と呟く

Amazonで購入させていただきました。

 上下巻合わせてのレビューです。それぞれの粗筋は本書カバーの説明が簡にして要を得ているので引用します。

「サロト・サルーー後にポル・ポトと呼ばれたクメール・ルージュ首魁の隠し子、ソリヤ。貧村ロベーブレンソンに生まれた、天賦の「識」を持つ神童のムイタック。運命と偶然に導かれたふたりは、軍靴と砲声に震える1975年のカンボジア、バタンバンで邂逅した。秘密警察、恐怖政治、テロ、強制労働、虐殺ーー百万人以上の生命を奪い去ったあらゆる不条理の物語は、少女と少年を見つめながら粛々と進行する……まるで、ゲームのように」(本書上巻カバーより)
「「君を殺す」ーー復讐の誓いと決別から、半世紀。政治家となったソリヤは、理想とする<ゲームの王国>を実現すべく最高権力を目指す。一方のムイタックは渇望を遂げるため、脳波を用いたゲーム《チャンドゥク》の開発を進めていた。過去の物語に呪縛されながら、光ある未来を乞い願って彷徨うソリヤとムイタックが、ゲームの終わりに手にしたものとは……(後略)」(本書下巻カバーより)

 本書のタイトルは『ゲームの王国』です。
 上巻はクメール・ルージュによる国家の制度設計の失敗=「失敗したゲームの王国」を描いています。
 下巻は主人公=ムイタックとヒロイン=ソリヤがクメール・ルージュの失敗を踏まえた上で、正当なルールで治められた国家=「ゲームの王国」の設計に挑む話を描いていると思われます。

 ぼくはよく"if we hold on together"(=もし私たちが手を取り合えたなら)と考えるのですが、なかなかそうはいかないのが人生で、結局のところ"we're all alone”(=私たちはみな、ひとりぼっち)ではあるまいか、というのがいまの時点での暫定的結論です。
 
 とても考えさせられる良質なエンターテイメント作品です(その意味で、笠井潔さんの作品に通じるものを感じました)。
 思想性がありつつ一気読みも出来る懐の深さ(ハヤカワ文庫は硬派なSFをたくさん出しているので躊躇される方がいらっしゃるかもしれませんが、ガチガチのSFではなくとてもリーダブルです)。
 
 オススメです。
ゲームの王国 上Amazon書評・レビュー:ゲームの王国 上より
4152096799
No.30:
(3pt)

一回読んだだけじゃ分からないかも

カンボジアを舞台にポル・ポトやクメールルージュなど実在した人や団体、史実をベースにした壮大かつ難解な物語。上下巻の上巻は史実をベースにあの時代に翻弄される人々が入れ替わる時系列のもとで語られ、下巻は数十年を経た現代から2025年までを舞台にかつての時代を生き延びて理想のために戦う人々の物語です。
下巻は正直途中で読むのをやめようかと思うほどに難解と言うか「なんでそんな事やってんの?」って思うほど関係ないように感じる事にスポットを当てて進みます。
それでも辞めずに読み切ったのは「この壮大な虚実入り混じった物語の最後がどうなるか知りたい」からでした。
人によるでしょうがハッピーエンドではないのに満足感のある終わり方です。
出来るだけ近いうちにもう一度読み返したいと思っています。
ゲームの王国 上Amazon書評・レビュー:ゲームの王国 上より
4152096799
No.29:
(5pt)

どれだけ強度のある記憶を持っているか。どれだけ象徴的な思いでがあるか。

とてつもなく面白かった上巻については、上巻のレビューに熱く書かせていただきました。
 下巻では、ラストの展開に唐突感があり、少し残念な感じがしないでもありませんが、全体といては大満足であり、星の数を減じるまではありません。
 
 田舎の農村は宗教と呪術の世界で生活していて識字率も低い。彼らに政策を説明しても無駄だ。デマをつかって相手の評価を下げ、自分たちだけが正しいと主張する。選挙も正しく実施されているか疑わしい。国政は汚職と不正と矛盾にまみれている。
 そんなカンボジアを良くするには、正しい人間がトップになり、正しい政治をしなければならない。ただ、正しいやり方では選挙に勝てない。正しいことを実現するためには、権力を持たなければならない。権力を持つためには、正しくないことをしないといけない。
 大義のため上記のとおり考え実行していく政治家となったソリヤ。
 彼女は、人生を、そしてこの世界を一種のゲームだと考えていたのかもしれない。

 一方、脳波を利用したゲームを開発する大学教授となったムイタック。
 どれだけ強度のある記憶を持っているか。どれだけ象徴的な思いでがあるか。
 彼の開発したゲームの勝敗を分けるのは、その部分だ。
 ムイタックにとって、ゲームのもっとも崇高なところは、勝利以外に何も求めない点にある。
 それゆえ、人生や世界をゲームだと考えるのはゲームの価値を落とす行為だと思っていた。
 「権力を得る」という目的のためにゲームに勝とうとするのなら、それはゲームではなく、ゲームを侮辱する何かだ。
 ソリヤとムイタックといった二人の天才はなぜ対立しなければならないのか。
 傑作。
ゲームの王国 下Amazon書評・レビュー:ゲームの王国 下より
4152097019
No.28:
(5pt)

前進するということは、暗闇の向こうに何かがあると知ることだ。

今上巻を読み終えたところですが、これはとてつもなく面白いです!
 普段は上下巻に分冊された作品の場合、まとめて上巻にレビューしているのですが、本書に関しては、上巻と下巻が舞台としている時代設定に約40年という大きな違いがあることから区切りとして整理しやすいこと、また、あまりも上巻が面白かったため、現時点での感動を残しておきたいとの気持ちから、上巻にしぼったレビューとしております。
 上巻が舞台としているのは、1950年代から1970年代のカンボジア。
 シハヌークによりフランス領から独立したものの、隣の国でのベトナム戦争が飛び火し、軍事独裁政権とポル・ポトらが指揮する共産主義勢力クメールルージュとの内戦、その後の極端な政策により国内が大混乱した、国民にとっては理不尽な時代が舞台となっています。
 このような歴史的背景を舞台としていることから、えらいシリアスな展開を予想しそうですが、ところがどっこい、まったく想像もしていなかったぶっ飛んだ場面が描かれ、何度も大笑いさせられました。
 例えば、「泥」と呼ばれる農民が登場しますが、彼は、二週間泥のみを食べ続ける修行を経て泥と会話をし、泥を自由に操る能力を手に入れます。その能力を持って銃部隊の兵士と素手で戦い、兵士をせん滅していくのですが、敵を倒すことを「耕す」と表現し、兵士に「こんにちは」と声をかけてから慎重に耕していくというぶっ飛んだ設定。これがもうとてつもなく面白い。
 田舎の農民らのかみ合わない会話など、本書全体として会話場面は生き生きといて非常に楽しい。
 そんなユーモアを交えつつも本書には、一本太くて強い芯が通っていることを感じさせます。
 理不尽な時代を生き抜く人々をユーモアを交えて描く作品としては、中国の文化大革命の時代を舞台とした余華(ユイホア)の「兄弟」や莫言(モウイエン)の「転生夢現」などを彷彿させます。
 
 本書のタイトル「ゲームの王国」とはどういう意味なのか。
 本書の主人公の一人ムイタックは言う。
「ゲームは俺にとって薬なんだ。ゲームという薬を摂取している間だけ俺は自由に生きることができる。世の中がうまくゲームみたいになってればいいのだけど、そういうわけにはいかなくて。ルールには矛盾がたくさんあるし、誰が勝者なのかも分からない。ルール違反が放置されたりルールを守るものが損をしたり。」
 そしてゲームそのものよりも、そもそもゲームとは何なのか、何がゲームを面白くするのかを考えることが面白いと感じる。
 一方ムイタックの叔父フオンは考える。
「政治とは正しい考えを競うゲームではなくて正しい結果を導くゲームだ。」
 さて、下巻では一気に時代が2000年代へと進みます。
 どのような展開を見せるのか非常に楽しみです。
ゲームの王国 上Amazon書評・レビュー:ゲームの王国 上より
4152096799
No.27:
(3pt)

タイトル倒れもいいとこだ

やっと読み終わった。じっくり精読するタイプの小説なので時間がかかった。

上巻は1950年から70年代のカンボジアが舞台だ。ロン・ノル軍事政権の陰惨な共産主義者狩りから、
ポル・ポトの人類史上に残る大虐殺までを市井の人々の視点で描く。
中心になるのは天才少年ムイタックと千里眼少女ソリヤだ。
この二人のゲームやクイズは知的センスに富んでいて、なかなか面白い。
他にも土と会話できる「泥」や輪ゴムで未来を占うクワンなど、
超能力者か単なる奇人かわからない(たぶんその両方)が登場して、起伏の激しいストーリーが展開する。
が、終盤は期待外れだ。架空歴史小説として、主人公たちがカンボジアを経済大国に押し上げるような大ボラを読ませてくれるのかと思った。東南アジアの貧困国に成長なんてありえないって?そんなことはない。
シンガポールを見よ。貧乏国から出発して、今や平均GDPは日本より上だぞ。

下巻はいきなり2023年に飛んで、お馴染みの人物が政治家や大学教授として活躍する。
個々のアイデアはユニークで感心する。特に人生ゲームが印象に残る。
が、結局なにも起こらず尻切れトンボに終わる。
ゲームと社会というテーマなら、アメリカSFに映画化された傑作があるし、別に斬新な設定でもない。
おまけに本作は最後まで具体的なアクションは起こらなかった。何のためのタイトルだったのか。

上巻はおまけして星四個、下巻は星二個。平均して星三個で。
ゲームの王国 下Amazon書評・レビュー:ゲームの王国 下より
4152097019
No.26:
(5pt)

上巻・下巻のレビュー

上巻は万人向けですが、下巻はSFである事を承知の上での購読をオススメします。

小川哲は文章を書くのが上手い。
複雑な事を単純にせず複雑なままで読者に理解させる技量が抜群に高いと思います。

個人的には、SFというジャンルを取り払った著者の作品(エッセイでも小説でも何であれ)を読んでみたいです。
ゲームの王国 下Amazon書評・レビュー:ゲームの王国 下より
4152097019
No.25:
(5pt)

脳科学の先端トリビアが上手く生かされた下巻

ルールがあいまいで、しかもそのルールさえ守らない者が多いカンボジア社会で、ソニアとムイトックは別々な道を進む。ソニアはルールを正しく決め直す力の獲得を目指し政治家へ。ムイトックは社会から縁を切って自分だけの世界でルールを守ろうと脳科学研究者へ。ムイトックの研究は、実際五年ほど前に話題になったものだ。人は、行動する前に(といっても数百分の一秒とかなのだが)、すでに結果を予想し終えているというものだ。バスケットのシュートを打つとき、その直前に結果判定に関わるホルモンが分泌され、脳波が観測できるというのだ。つまり、人はシュートを打つ前にガッカリしたり喜んだりしているというのだ(ただし、実際の結果とは必ずしも一致しないらしい)。
 この不思議な脳のふるまいを素材にして、下巻は近未来SFらしい展開を見せる。序盤でNPO日本人職員の視点から描かれた章があり、カンボジア社会の現状を提示して見せた工夫が、うまい。
 物語の終わりに完結らしいもの、結論めいたものが一切ない。この先の物語は日本人が書くべきではないからだ。この先のストーリーは、カンボジア人民が作っていくものだ。
ゲームの王国 下Amazon書評・レビュー:ゲームの王国 下より
4152097019
No.24:
(5pt)

上巻はカンボジアの史実を背景にした一般文学の傑作

日本SF大賞、山本周五郎賞を受賞。個人的に山本周五郎賞は、直木賞以上に面白いと思っているので、期待して読んだ。作者の第二長編の文庫化。
 上巻は、史実をもとに描いたクメール・ルージュ編。カンボジア内戦と、悪名高きポル・ポト大虐殺時代の物語である。上巻の背景資料はほぼ事実ばかり。プノンペン住民一斉強制退去も、知識人全滅政策も、子ども医者も密告合戦もすべて事実に基づいている。当時のカンボジアは絶望の国だった。
 SFらしい部分は、「泥」の土共感能力、「クワン」の輪ゴム未来予知力、「ソリア」の嘘限定読心術などだ。これらの特殊能力はまるきりフィクションというよりは誇張の延長上にあるもので、ガルシア・マルケスらラテンアメリカ文学に見られるマジック・リアリズムの手法に近い。この点、単行本への先行レビューに異議なし。
 上巻はSFではなく、一般文学のジャンルとして傑作である。
ゲームの王国 上Amazon書評・レビュー:ゲームの王国 上より
4152096799
No.23:
(4pt)

現代人は歴史に翻弄されているか。。。

カンボジアの歴史と人間の業を知る小説です。

さまざまな登場人物が錯綜し、悩み、飲み込まれていく姿が混沌としています。

全ての事象には”context(文脈)”がある、と教えてくれた恩師の言葉を思い出しました。
ゲームの王国 上Amazon書評・レビュー:ゲームの王国 上より
4152096799
No.22:
(4pt)

ポルポト派の暗黒時代

まだ上巻しか読んでいないが、面白かった。
SF?という感じはあまりしないが、読みごたえがあった。
ゲームの王国 上Amazon書評・レビュー:ゲームの王国 上より
4152096799

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