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榎本武揚



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【この小説が収録されている参考書籍】
榎本武揚 (中公文庫)

榎本武揚の評価: 4.10/5点 レビュー 10件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.10pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(3pt)

榎本武揚は壮大な狂言師?

安部公房にしてはめずらしいタイプの小説。
 著者は、北海道旅行の際、おもしろい話を聞く。明治まもないころ、船で護送中の囚人たちが反乱を起こし、北海道に上陸し、北海道原野に共和国を作ったが、その国はやがて消滅してしまったという。
 榎本武揚はそのころ箱館戦争に敗れて獄中にある。囚人たちの行動は榎本の心をそっくりそのまま実現したようにも見える。実際には囚人たちは原野には行かず、上陸した町を占領し、囚人たちが原野に消えたというわさを流したのではないか。そして全国から続々と有志があつまり、その勢いは増すばかり(でも政府に反抗する気はない)という噂も流れ、政府はそこで折れて、北海道開発に貢献してくれるのなら無罪放免でいいのではないかと考え、そうなると時代の敵であった榎本武揚も無罪になった?榎本武揚が獄中でそういう計画を囚人たちに授けたのではないか・・・という説が提示される。
 もしかしたら、奥州戦争から五稜郭敗走に至るまでの一大叙事詩は内戦の早期終結を目指した計画的敗走であり、世界史的にも例を見ない八百長戦争だったのではないか。土方歳三は榎本武揚をどこか疑っていたものの榎本は口がうまいのでなんとなく丸めこまれてしまった?
 箱館戦争のとき、榎本は選挙方式で仮政府を設立している。土方はなぜいままで通りの談合ではだめなのかと不思議に思ったが、いずれ徳川血統の者を主君として迎えるまでの暫定措置、政府としての体裁を整えねば列国と交渉できない、共和政体の方が西洋では信用してもらいやすい、陸軍諸隊は土方に心服しているのだから投票結果はあきらかではないか、と説得されると反論もできない。榎本は徐々に土方の力を削ぐ。
 士道などというものは住み手がいなくなったあばら屋のようなもので、それまで侍でなかった者(新撰組など)が引っ越してきて侍面をするようになった。でも所詮はあばら屋なので土台の腐れに変わりはない。士道に背いたとして土方に処分された新撰組隊員のほとんどは実は親の代からの侍だった。それほどまで夢見たあばら屋につかの間なりとも住むことができたのだからもって瞑すべし、と榎本に語らせている。
 榎本はなぜ囚人たちに北海道上陸・反乱という冒険を試みさせたのか。時代に裏切られた連中への同情かもしれない。あるいは、忠誠という無用の長物を抱える連中を本当に北海道の原野に厄介払いしたのかもしれない。
 最後は、汚名に甘んじる勇気もない者に、忠誠をもてあそんだりする資格はない・・・という旅館店主の批判的な言葉で結ばれている。
榎本武揚 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:榎本武揚 (中公文庫)より
4122016843

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