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(短編集)

特別料理



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特別料理の評価: 4.00/5点 レビュー 14件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(3pt)

後味の悪さを追求したエンタテイメント

このシリーズでフィニィやマシスンをまず読んだせいで、これは切れの良いオチのある洒落た短篇を書く作家を集めたシリーズ、という印象をもっていた。しかしエリンは傾向が違う(とても「異色」だから、シリーズコンセプトとずれてはいないのだが)。

 エリンは洒落たオチのある話も書けるし、ホラーも難なくこなす。
 例えば、「アプルビー氏の乱れなき世界」。実直な骨董店主アプルビーが金持ちのオールドミスと結婚し、過去6人の妻と同じ手法で7度目の殺害を実行しようとするが、その瞬間、新婦が意外な反応を・・・・という、オチが三重になった巧妙でとても面白いブラックなコメディだ。
 ごく普通のサラリーマンがチェスにはまり、日常がじわじわ狂気に侵されていく「好敵手」は、分裂した自分を相手にチェスを競い、その“好敵手”との会話で女房への憎悪を確認していく、巧くできたホラーだ。

 しかし、それ以外の短篇は、オチということでは何かヘンだ。
 ゴシック風味の「クリスマス・イブの凶事」は最後の2行でファイナルストライク的にオチが来るが、それがオチになっているのかどうか。「パーティーの夜」「専用列車」になると全体の雰囲気が重苦しくなり、オチがやはりオチになっていないという気がする。最後に載っている「決断の時」はさらに重苦しいストーリーのうえ、オチの直前でプツリと話が途切れ、読者は中途半端に放り出される。

 思うにエリンという人は、軽く洒脱なストーリーも書けるけれどそれには興味がなく、書きたいのはむしろ、重苦しくて不可解で救われない終わり方をするもの、つまり「後味の悪い」短篇ではないか。
 そう考えると、「特別料理」のトモグイに入り込みすぎた異様な感覚、「お先棒かつぎ」の、結末をとばしてその先を描き、それを疑似的なオチにするヘンな展開も理解できる。問題は、それがエンタメ小説で成り立つと作者本人が思っていることだ。

 エリンの思考論理とこちらのそれにはどうもずれがある ーー そんな読後感だったが、異様な作品を書く「異色作家」であるのは間違いない。
特別料理 (ハヤカワ・ミステリ文庫 36-6)Amazon書評・レビュー:特別料理 (ハヤカワ・ミステリ文庫 36-6)より
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