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わらの女
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わらの女の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.10pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全41件 1~20 1/3ページ
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. 第二次大戦終結からしばらくして後、ドイツのハンブルクに暮らすヒルデガルトは、身内のいない34歳の独身女性だ。ある日、フランス在住の大資産家が出した新聞の求縁広告に目を留める。ハンブルク出身の女性を求めており、裕福な暮らしを約束すると書いてある。ヒルデガルトが思い切って手紙を出したところ、カンヌで面接を受けることになる。面接会場のホテルに到着したヒルデガルトを待ち受けていたのは、初老の紳士だった。そしてその紳士から奇妙な取り引きを持ちかけられるのだが……。 ------------------------ フランスの作家カトリーヌ・アルレーが1954年に発表したサスペンス小説『La femme de paille』の翻訳です。『 藁の女 』の邦題で安堂信也訳版が出版されていましたが、5年前の2019年に出た新訳版がこの『わらの女』です。 抜群に面白いサスペンス小説でした。 まずなんといってもプロットが秀逸です。初老の紳士であるアントン・コルフから持ちかけられた取り引きは、一筋縄では実現しません。ドイツどころかハンブルクからすら出たことのなかったヒルデガルトが異国の地で、しかも連続する不測の事態を、頭をフル回転させて必死に乗り越えていこうとします。 そもそもヒルデガルトの目指すゴールは、ひとつふたつの嘘の積み重ねが前提になってはいますが、法の裁きを受けるほどの犯罪とまでは――少なくとも計画段階では――言えないものです。難局にひとつまたひとつと対処していく彼女の勇気と逞しさに、読んでいて思わず心から応援したくなっていきます。 ところがこの物語は後段になると突然、取り返しのつかない凶悪犯罪へと姿を変えていきます。度胸を胸に新たな人生に乗り出そうとしていたヒルデガルト――そしてそれを応援していた読者――は、大きな罠にかかっていた事実を突き付けられて呆然とします。 今の時代のマッチングアプリに相当するのが新聞の求縁広告ですが、その胡散臭く、犯罪に直結する可能性がある点はいつの時代も同じということでしょう。 こうしたひねりの利いた展開に唸らされました。 もうひとつの魅力は、この新訳版の訳者・橘明美氏の見事な翻訳文にあります。ピエール・ルメートルの<カミーユ・ヴェルーベン警部シリーズ>3部作(『 その女アレックス 』『 悲しみのイレーヌ 』『 傷だらけのカミーユ 』)を読んだときにも橘氏の訳文にはほれぼれしたものです。その文章にはバタ臭さが一切感じらません。去年(2023年)読んだローラン・ビネの歴史改変SF『 文明交錯 』でもその思いは変わりませんでしたが、『わらの女』の翻訳文も本当に素晴らしい。 そして最大の魅力といえるのは、この物語がひとつの立派な戦争文学である点です。 あまりにもうますぎる話に、大人の分別があってしかるべき34歳の女性がやすやすと乗ってしまうのは、彼女が戦争によってすべてを失ってしまっているからです。 「どうやって家賃を払おうか、新しい靴はどうしたら買えるのかと頭を抱えずにすむ日は、月に十日くらいしかありません。配給に頼らず暮らせたらどんなにいいかと思う毎日です。【……】青春のすべてを犠牲にしたので、どうにかして埋め合わせをしたいんです。不平じゃありません。事実を言っているだけです」(28-29頁) 「爆撃の時代、女の人生が決定的に打ち砕かれた時代。廃墟と化した街をネズミのように這い回る日々、慢性化した恐怖、空腹、凍え、孤独。そんな状態に追い込まれてもなお人は生き続け、その時間その時間で習慣となっている行動を取る。擦り切れた毛布一枚しかなくても、それにくるまって眠るし、穴のあいた缶しかなくても、それを食器にして食事をする。隠れ家を求め、あるいはジャガイモ一キロ、乾いた薪一束を求めて何時間も歩き続ける。恋でさえそんな風に有り合わせで調達するしかなく、骨組みだけの建物の中で、火炎でひしゃげた鉄の梁のあいだで崩れた壁と穴だらけの水道管とガラスのない窓に囲まれて経験するしかなかった」(81―82頁) こうした敗戦国女性の置かれた厳しい現実の中で、求縁広告は一筋の光となった。そう言って何が悪いのかという気がします。 だからこそ、夢を実現させたかに思えたヒルデガルトが「それはこれまで身を置いたことのない環境であり、抗いようがないほど引き込まれる世界だった。彼女は、その世界を大いに堪能し、惜しげもなく金を注ぎ込み、人生は生きるに足るものだと知った」(116頁)と感じる心に寄り添いたくもなろうというものです。 だが、ニューヨーク到着後に転落したヒルデガルトのことをアメリカはサディストのドイツ人としかみなしません。1945年に終結したはずの戦争は、こんなふうにどこまでもヒルデガルトにつきまとい続けるのです。 表題である「わらの女」とは「わらの男」というフランス語の言い回しをもじったものだとか。この物語における「わらの女」の意味を知った時、わたしの背筋を冷たいものが走りました。 救いのない物語に拒否反応を示す若い読者がいるという話が巻末の解説で紹介されています。その気持ちはわからなくもありません。ですが、このエンディングだからこそ、戦争の痛ましさを強く読者に突き付ける作品になっている、そうわたしは信じたいのです。 ------------------------ ひとつ気になった点を記します。 *49頁と51頁の「時計」について :雇い主リッチモンドがジャマイカ人の使用人に対して傲慢な態度を取る場面が以下のとおり描かれます。 「そして金の懐中時計を取り出すと、大きく腕を振って壁に投げつけた」(49頁) フランス語の原文は以下のとおりです。 「Et dans un grand geste il jeta sa montre en or contre la cloison.」 和訳文にある「(金の)懐中時計」は原文では「(sa) montre (en or)」です。(原文には「取り出すと」に相当する言葉は見当たりません。) そして数ページ先に、実際に使用人に時計を与える場面が出てきます。 「そこでようやくリッチモンドは満足し、その犬に腕時計をやった」(51頁) フランス語原文は以下のとおり。 「Alors Karl Richmond, qui ne s’amusait plus, lui donna la montre.」 和訳文にある「腕時計」は「(la)montre」です。 つまり文庫本の49頁と51頁はどちらも原文では「montre」(=「時計」)としか書かれていませんが、訳者の橘氏は前者を「懐中時計」と訳しておきながら、後者をうっかり「腕時計」と訳し替えてしまったようです。リッチモンドがこの「montre」(=「時計」)を腕から外した様子はないので、橘氏が書き加えた「取り出すと」に照らして、これは「懐中時計」と見て間違いないでしょう。 . | ||||
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一気に読めました。 ストーリー構成、表現が素晴らしい。 映画を見てるような視覚的な表現がゾクッとしました。 | ||||
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古い本ですが、一読の価値はあり。 個人的には老人が死ぬまでが面白かったが、その後の裁判沙汰の会話劇は詰まらなかった。 最後は悪党が勝ちます。後味が悪いです。 私は大空真弓の主演TVドラマを見た事あります。 ハリウッド映画もあるらしくて、ジーナ・ロロブリジダとショーン・コネリーとなってます。 キャスティグを見ると、アントン・コルフの名前はなく、ショーン・コネリーがアンソニー・リッチモンドという役名で同名のチャールズ・リッチモンドという役名が別にいる。 多分リッチモンドの方が養子か何かでストーリーも大幅に変更されている事でしょう。 原作よりもむしろこっちの方が見たい。Amazonさん、配信よろしく。 | ||||
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戦争で色々失った女性が新聞広告で自分の様な人物を求めた広告を見て募集するが・・・というお話。 読み終わって、自分の持っているミステリのベストテン表や名作表や名作事典等を色々めくってみたら殆どの本に本書が挙げられていたので驚きました。流石に1位になっているのはありませんでしたが、殆どの作品が英米の作品を占める中でのフランスの作品はこれ以外はあまりない事を考えると、史上最高の評価を得たフランスミステリ選ばれた作品といっても過言ではないと思いました。ジャプリゾと並んでフランスミステリの頂点を極めた作品だと言える作品かもしれません。 内容は殆どの方が仰っている事と同じ事を書く事になるので省略しますが、有名な非情さは流石だと私も思います。この辺はハードボイルドも好きだったという著者の好みの反映かもしれません。個人的にはハメットよりも非情に感じました。 瀬戸川猛資氏によると書かれた当時はドイツの占領から解放された直後で主人公のドイツの女性が嫌な目に会うのが、フランスの読者には快感だったかもしれないと仰ってられましたが、確かにそういう時代状況もあったかもしれませんね。 切れ目なく長く続く文章は少し読み難かったですが、それ以外は現代の古典の風格を備えた作品に思えました。ただ、なんとなく5つ☆にする気になれずに4つにしときました。うまく理由は言えませんが・・・すいません。 非情に徹したフランスサスペンス秀作。機会があったら是非。 上記はこの小説の新版を読んだ際の感想ですが、今回新訳で読み返してみて、改めて色々思いました。解説にある様に整合性に問題があったりもするそうですが、それでも中盤の緊張感等、今読んでも迫真的で一気に読み終わりました。やはり史上最強のフランス・ミステリと言っても過言ではないとも思いました。 前は☆4つでしたが、今回は気が変わり、5つにしました。いい加減ですいません。アルレーさんは他の著作も面白いそうなので、機会があったら新訳にして頂きたいです。 何とも冷酷非情なサスペンスの問題作。必読。 | ||||
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あまりの面白さに一気読みしました。 勧善懲悪でないラストをめぐっては賛否両論あるようで、 確かに読者の倫理観には引っかかるだろうな、という気がしました。 作者としては工夫して、ヒロインはじめ主要人物をドイツ人、 つまりついこの間まで戦争相手・敵だった人々、 憎むべきよそ者たち、に設定することでフランス人読者へのインパクトを 和らげたんだろうな、にもかかわらず当初フランスの出版社からは断られて (中立国の)スイスから出版したんだな…等々、いろんなことを 読みながら考えさせられました。 巻末の解説で紹介されている、英訳版や映画版での勧善懲悪への改変も 興味深く、どっちのラストが好きか、読む人によってはっきり分かれる、 その意味でいつまでも生命を持ち続ける古典ですね。 訳文も、さすがこの訳者さん、翻訳でなくはじめからこの方が 日本語で書いた小説かと思うくらい、すいすい読めました。 | ||||
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傑作です、傑作だと思うけど…、やっぱりラストがなあ。あと、完全犯罪を謳うわりには、綱渡り過ぎるような。(もちろん犯人はどの展開になっても周到な用意をしているのでしょうが) まぁどなたかも申されていたように、題名が結末を物語っていますけど。 そうは言っても、文章のうまさで読ませる大変面白い本でした。 | ||||
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10数年振りに再読。とにかく読みやすい。テンポよく話が進むので殆ど中だるみがない。半ばくらいから一気に読んでしまった。久しぶりに「時間を忘れて」本を読んだ。主人公の緊張感がこちらまで伝わってくる。残りのページ数から段々結末が読めてくる。けれどさらなるどんでん返しを期待してしまう、しかし…。主人公は前半に仕掛人から賢いと称賛される。読者もそう思い込んで主人公に感情移入してしまう感があるが、彼女は「賢い女」ではなかった。確かに新聞の求縁広告に人生を賭けている時点で「賢い女」ではない事は鋭い読者なら気付くだろう。そして不思議なくらい主人公は仕掛人を信用する。これも彼女が彼に心を寄せていたせいで、この時点でも彼女は賢い女ではなかった、彼に負けていた。前半はやや彼女のペースで進んでいたところもあるが、それも仕掛人の計算のうちだったのだろうか。小説なので事が仕掛人の計画通りに進み過ぎなのは否めない。だから最後の最後でどんでん返しを期待するのだが、タイトル通りになってしまう。それでも読んでいる時のハラハラ・ドキドキ感は体感すべき、名著である。 | ||||
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生物から肉にされる弱者の心境は案外こんなかもしれない。プロットに重大な穴があり左程乗れなかったが、タイトル自体ネタバレな気もする。 | ||||
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”完全犯罪”とされています。 しかし、本当にそうでしょうか? 実は、途中、分岐点が幾つもあります。計画通りに、全部が全部、都合よく うまくいく訳がありません。小説だからうまくいきました。 警察だけに訴えていますが、何と弁護士が出てきません! ですから、小説としても完全とはいえないです。 私は、この作品の終わりは、冷酷すぎるので嫌いです。不快感が半端ないです。 (読んで、つまらない小説ではなかったので、★一つではありません) | ||||
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完全犯罪。面白くないことはないのですが、フランスミステリーなら「太陽がいっぱい」レベルのどんでん返しがあったら少しは胸がすいたものを…と感じてしまいました。戦争を生き抜いた人間同士が捕食し合うという展開が、ある意味リアルすぎて読み手の自分が、平衡感覚を失ってしまったのかも。そこら辺が名作の所以かも。 | ||||
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ラストが最悪でした。読後感が悪かったです。二度と読みたくないです。 | ||||
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偶然にも生まれる前の小説を続けざまに読んでいる。こちらはピエール・ルメートルの訳者・橘明美による新訳がこのたび登場。古い作品ほど、新鮮に見えてくるこの感覚は何なのだろう? 1960年代にフレンチ・ノワールが日本の劇場を席巻したのも、下地としてこのように優れた原作があったからなのだろう。少年の頃に劇場や白黒テレビで触れたそれらの映画を、大人になって改めて映画、小説などでノワール三昧の一時期を送ったものだ。本書はノワールでありながら、それだけではない。言わばノワール・プラス・アルファな作品なのである。ノワールの特徴である「救いなき結末」を描き切るのか? という行き止まり感に加え、見事に構成される完全犯罪の機微をも小説の題材としている故である。 ページを開いた瞬間から、読者はヒルデガルト・メーナーというヒロインの視点で、救い亡き現実からの脱出願望にとことん付き合うことになる。ぱっとしない日常から脱出するために、大富豪の妻の座を夢見て、新聞の求縁広告を日々探す女性の視点で。知的に。微に入り細を穿って。 とある広告主をヒルデガルトは捕捉する。相手も乗ってくる。しかし面談にこぎつけたはずの相手は、当の大富豪本人ではなく、結婚候補者を見極めるタスクを背負った秘書であった。二枚目で紳士然としたアントン・コルフである。 様々な事情を、知らされてゆく。大富豪の扱いづらい性格。秘書の真の目論見。罠をしかける側なのか仕掛けられる側なのか、見極めのつけにくい複雑なコンゲームが展開する舞台は、大富豪の乗る航海中の豪華客船。 地中海から大西洋へ彼らの野望を乗せて船は進む。そしてニューヨークへの上陸。大富豪の夢のような屋敷に足を踏み入れるヒルデガルト。その直後のあまりに思いがけぬ急展開。運命に翻弄されるヒロイン。謎にさらに謎が重なる。罠にさらに罠が重なる。それぞれの運命が転がる。警察の介入。追及者たち。 現代でも十分に通用するであろう、見事な仕掛けだらけのプロット。全編を貫くヒルデガルトとアントンの野望と絶望。この物語はどこへ行き着くのか? 救済は? 命は? 日常に転がるちょっとした欲望から、こんなにも遠いところまで連れてゆかれるストーリーテリングを含めて、まさに時代を超えてきた名編と言えるスリラーが本作である。 この作品は、ジーナ・ロロブリジータとショーン・コネリーが主演で映画化されている。ぼく自身は、ずっとこの二人の役者をイメージして読んでゆくことができた。誂えたようにぴったりの役柄であったと思う。フレンチ・ミステリのある意味、完成形ともいうべき本作に、是非触れて頂きたい。 | ||||
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若い頃読んだ時は傑作として感銘を受けた記憶があったので期待して再読したがそれほどの評価とはならなかった。車椅子生活の傲慢な老富豪リッチモンドと主人公ヒルデガルデが対決する前半はサスペンスに富むが中盤からは展開が遅くなりくどい会話の繰返しで冗長であった。 男性陣の人物描写も女流作家にしては迫力を感じさせるものがあるが、やはり表面的で深みという点では物足りなかった。特にリッチモンドは創業者としてこれだけの財を成した人物なのでどこかに器の大きさがあるはずで、ここまで矮小に描かれてしまうのは残念であった。クールな秘書コルフもヒステリックにしゃべりすぎて安っぽい感じがあるのは否めなかった。 また他のレビュワーも指摘されているように本作のトリックは基本的な見落としがあり現実的な犯罪計画としては無理がある。むしろ普通の方法の方が確実であるがそれではあまりに平凡であり作品にはならないので、本作は作者のひねり過ぎとも思えて来る。 | ||||
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最後の最後に逆転ではなく、わらの女で終わったところがいい。なんとなく胡散臭を感じながらもそれを帳消しにする後半。久しぶりのヒットです。 | ||||
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ここには金の魔力に取り付かれた3人の人間が登場する。 ひとりはお金で人の心までも買えると思っている傲慢で支配欲の強い富豪の老人。 もうひとりは労することなくその財産のおこぼれに預かろうとする若い女。 そして女が手にしたソレを根こそぎ取り上げようとする男。 貧乏と孤独な自分の生活に不満をもちながら生活の為に翻訳の仕事を細々続けていたドイツ人女性ヒルデガルド。 彼女の唯一の楽しみは自分に幸運をもたらすやも知れぬ新聞の求縁広告を見ることだった。 何年もの間、彼女は毎週欠かさず、これを見続け待っていた。 対象になる相手の男はただ一人。資産家の男だった。 とうとう待ちに待った男が現れた。 彼女が見つけたのは「当方莫大な資産あり、良縁求む。なるべくハンブルク出身の未婚の方で家族係累無く」というものだった。 だがコレが彼女を絶望のどん底に突き落とす巧妙な罠の始まりで、後々男が広告に出した条件のもつ意味がはっきりしてくる。 しかしねえ、単に欲が深く軽率だったというだけでこのような結末を背負い込むことになるなんてねえ。 まあ、自分が選択した結果だからしょうがないが。 しかし計画を持ち込んだ、このアントン・コルフという男はどこまでも計算づくのゾっとするような冷血な男ね。 一時は身をまかせても良いと思い信じた男は「なぜわたしを信じたのか。わたしは世界で最大の財産のひとつをお皿に持ってさしあげようと申し出た。そしてあなたはよく考えもせず。満面に笑みをたたえ、大きなお菓子に飛びついた。その下には鼠取りがしかけてあったのに。」と眉一つ動かさず平然と言ってのける。 金の為ならば人の一人や二人殺してもへとも思わぬ男。 この男に比べればヒルデガルドの方がまだ人間らしいわ。 でもまあ、財産を横取りしたこのアントン・コルフという男ももう老人であるし、彼が望む女は若く美しい同伴者ということなので、やがて資産家の老人と同じ運命を辿るんじゃないの。 先が楽しみね。(^_-)-☆ | ||||
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戦争で色々失った女性が新聞広告で自分の様な人物を求めた広告を見て募集するが・・・というお話。 読み終わって、自分の持っているミステリのベストテン表や名作表や名作事典等を色々めくってみたら殆どの本に本書が挙げられていたので驚きました。流石に1位になっているのはありませんでしたが、殆どの作品が英米の作品を占める中でのフランスの作品はこれ以外はあまりない事を考えると、史上最高の評価を得たフランスミステリ選ばれた作品といっても過言ではないと思いました。ジャプリゾと並んでフランスミステリの頂点を極めた作品だと言える作品かもしれません。 内容は殆どの方が仰っている事と同じ事を書く事になるので省略しますが、有名な非情さは流石だと私も思います。この辺はハードボイルドも好きだったという著者の好みの反映かもしれません。個人的にはハメットよりも非情に感じました。 瀬戸川猛資氏によると書かれた当時はドイツの占領から解放された直後で主人公のドイツの女性が嫌な目に会うのが、フランスの読者には快感だったかもしれないと仰ってられましたが、確かにそういう時代状況もあったかもしれませんね。 切れ目なく長く続く文章は少し読み難かったですが、それ以外は現代の古典の風格を備えた作品に思えました。ただ、なんとなく5つ☆にする気になれずに4つにしときました。うまく理由は言えませんが・・・すいません。 非情に徹したフランスサスペンス秀作。機会があったら是非。 | ||||
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打算的な独身女性ヒルデガルデ34歳。 毎日、新聞の求縁広告を見ては、金持ち男を捜している。 この時点この女、終わってます。 この後、どんな悲劇が待っていようとも、彼女が今まで何の努力もせず、楽してお金を手に入れようとした結果なのでしょう。 世の中はシビアです。 犯人にうまく騙されるところも、教養のなさがうかがえます。 ま、そうでなくては物語が成立しませんが。 昔の女性はこういうものだったのでしょうか。 ミステリーとしては特に驚きはありません。 むしろ犯人が登場したときから、なんとなく結末が分かります。 サスペンスですね。 さらっと読めて、ちょっと怖い気分を味わえる王道サスペンスです。 | ||||
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タイトルも印象的だし、ドラマや映画化もされていてずっと読みたかった原作。 たまたま風邪で仕事を休んだときに一気よみ。熱でうなされていても読めるくらい、読みやすい小説だったというわけです。 完全犯罪成立、という触れ込みだけど、ヒロインが最初に刑事に何もかも話してしまえばよかっただけの話で、彼女の多少錯乱気味な性格におおいかぶさった犯罪なので「完全」犯罪とまでは思わない。だから、アンソニーの立場に立つと、彼女が刑事にどんな証言をするかハラハラドキドキだったと思うのです。 そのアンソニーの視点から描いたほうが面白かったんじゃないかなー、と思ったのですが、映画バージョンのほうはアンソニーにショーン・コネリーを大抜擢、彼を主人公にしたみたいですね。映画バージョンのあらすじのほうが小説版より自然かもしれません。 とはいえ、トム・リプリーシリーズといい、シャブリゾのシンデレラの罠といい、理屈がかったイギリスミステリやオカルト趣味か社会派のどちらかに偏りがちな日本ミステリより、フレンチミステリはクールで好き。これもフレンチミステリならではの味わいです。 | ||||
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この世にうまい話はないということを最も端的に示した小説であります。 多少矛盾はありますがいつまでも広く読みつがれていくことでしょう。 | ||||
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レビューや解説等から受ける誤解 1.決して悪女ものではありません。 主人公の女性は確かにいい女ではありませんが、悪女というのは可哀そうです。 2.意外でもありません。 その結末は、当時は衝撃的な意外性のあるものだったかもしれませんが、今となれば何のひねりもないと感じます。 その通りだなあと思ったこと 1.主犯はサディスティックです。 アルレーの小説の特徴は悪女・サディスティック・完全犯罪ということですが、後ろの二つはこの小説にいかんなく発揮されています。 特にサディスティックな会話はものすごい迫力です。 2.サスペンスとして一級品です。 サディスティックな会話から導き出されるサスペンス性は一級品です。ページをめくる手を止めることが出来ませんでした。 どこに重きを置くかで、古いと感じるか、古くないと感じるかが違ってくるのだと思います。 自分は、その結末にやや物足りなさを感じた方でした。 オールタイムベストとはいかないものの、 勧善懲悪という不文律を破った先駆者としての敬意をはらい、星4つとさせていただきました。 | ||||
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