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傷だらけのカミーユ
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傷だらけのカミーユの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.30pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全52件 21~40 2/3ページ
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まずはこの作品でカミーユヴェルーヴェン警部シリーズが幕となり 「カミーユ警部、本当にお疲れ様でした・・・」と声を掛けてあげたくなった。 出来ることなら自分が馴染みの横丁のモツヤキ屋さんにでもお連れして パリのビストロ料理にも通じるレバ焼きとチューハイを奢りたいぐらいですよ。 とにかく、それくらい彼はルメートルにこのシリーズで散々な目にあわされて きたのだ。もう悲しくて悲しくてやりきれない「イレーヌ」を読み終えて やっと「アレックス」で立ち直り現場に復帰を果たし、本作でようやく奇跡的に 新たな恋人と出会えて精神的にも傷が塞がりかけたところを狙いすましたように 運命と小説家の魔の手が襲い掛かる。 最愛の恋人が宝石店強盗の現場に運悪く居合わせてしまってズタボロの大怪我を 負わされてしまうのだから。しかも彼女は強奪犯人に口封じのため命を狙われる。 カミーユは彼女を守り、仇を討つ(かつてのイレーヌの時の運命への仇も含めて) かの如く捜査の指揮を執る。例によって警察内部とか判事とか検事とかは 全て彼の犯人逮捕への足枷にしかならない。文字通り傷だらけ、ヘトヘトに なってしまうのです。原題はSacrifices 犠牲、犠牲者の複数形。 この意味するところがラストが近づくによって徐々にわかってくる。 この辺はルメートル節健在!ってところです。 読者にとってはカミーユ・ヴェルーヴェンもルイも他の人物達もすっかりこの三部作で フィクションの登場人物ではなく、冒頭で僕がモツヤキ屋のくだりを妄想したように 実在し、ともに人生の苦悩を分かち合う愛おしき存在になってしまっているようです。 ですので、なおのこと彼の大変な苦労だらけのヴェルーヴェンシリーズはこれにて幕と していただき、今後はルメートルによる別のミステリーにちょい役としてだけ現れ 相変わらずパリ警察で苦労しているのか、さもなければ無事引退してルイ・マリアーニ警部 の相談役としておいしい所を持っていく、とかそんな消息を読んでみたいもんだと思いました。 「よう、ルイ、相変わらず忙しそうだな、それに、いい服を着ている。今日はどうしたんだ?」 「カミーユ、いつもすみませんね。またヒドイ事件に当たっちゃいましてね。 ちょっとこの写真で感じるところをお聞かせねがえませんか・・?」 なんてね | ||||
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本作品は、「悲しみのイレーヌ」、「その女アレクッス」と続いてきた、カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの第3作にして、三部作の最後を飾る作品です。 このシリーズの特徴である、騙し絵が積み重ねられていくような、意外性に満ちた展開を満喫できる佳作と感じました。 物語は、パリの宝石店を襲う強盗事件が発生し、この事件の巻き添えを喰らった格好で、カミーユの恋人、アンヌが、犯人から殴る、蹴るの暴行を加えられるという、衝撃的な出来事で幕を開ける。 カミーユ警部は、恋人が傷つけられたという、ダメージを胸に、必死の捜査を開始するが…。 題名の「傷だらけのカミーユ」というのは、本作品に限ったことではなく、本シリーズ全体の特徴のひとつでしょう。 「傷」といっても、「心の傷」という意味で、3作を通じて、カミーユ警部の心は痛んでいきます。 それほど悲痛な運命を乗り越えて、事件を解決していくのが、この三部作なのです。 また、これはシリーズもの全体に言えることですが、発表順に読んでいってほしい作品群です。 このことを特に強調したのは、カミーユの心理描写などが、前の作品での出来事を引きずっているからです。 これは、逆の言い方をすると、例えば、本作品を最初に読んでしまうと、第1作、第2作の真相に関わる部分が分かってしまいますので、ご注意ください。 本作品は、宝石強盗事件で始まりますが、これが、見かけの様相と異なるものとなっていくであろうということは、このシリーズを読んできた方なら想像がつくと思います。 私もそうでしたが、それでも、真相は見抜けませんでした。 本作品は、「一日目」「二日目」「三日目」の3章で構成されていますが、最後の「三日目」で明かされる真相には、巧みに張られた伏線に、思わず唸らされました。 このシリーズ最終作、第1作、第2作と読んできたなら、必読です。 シリーズというよりも、長い3分冊の長編を読んできたような、余韻を味わうことができるのではないでしょうか。 | ||||
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カミーユシリーズの三部作の完結編。「悲しみのイレーヌ」や「その女アレックス」より酸鼻な描写は少なくなったが、まあそこそこ目を背けたくなるシーンは随所に出てくる。その分といったら変だが、プロットは非常に練られており、その隙のなさは驚くべきものだ。ルメートルの作品はあらすじを紹介しようとするとネタバレになってしまうので、詳しく書けないのが残念だ。翻訳も読みやすく、ページを繰る指が止まらない感覚を味わえる。はっきり言おう。面白いと。精神的に追い詰められたカミーユであるが、それに懲りずカミーユには様々な作中に登場してほしいと思う。 | ||||
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カミーユが担当する事件はどれもあまりに激しすぎて、苦しくなる。 カミーユがもっと普通の殺人事件を解決してくれる作品を渇望する。 | ||||
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今や飛ぶ鳥を落とす勢いで世界中から熱い注目を浴びるフランスの猟奇サイコ・サスペンスの巨匠ルメートルのカミーユ・ヴェルーベン警部シリーズ3部作の最終作(現時点での)です。本書の訳題が前2作のパターンと打って変わってヒロインの名前ではなくどうしてカミーユ警部の名前が入れられたのか?という謎の理由は、私が思いますに偶には気分を変えてみようという意味とやっぱりこれがシリーズ最終作だからと言う事で編集者様が選択されたのでしょうね。(そう言えば同じフランスの作家シムノンの創造したメグレ警部の場合はタイトルに「メグレ」が頻繁に使われていましたね。)でも本書を読み終えられた方はそのままの題名ではなく寧ろ「(心が)傷だらけのカミーユ」という言い方が相応しいだろうという意見に同意して頂けるんじゃないかと思いますね。 最愛の妻イレーヌを喪ってから5年後にカミーユ警部は新たな恋人アンヌと知り合い恋に落ちるが、その彼女が不運にも二人組の強盗に襲われて殴る蹴るの暴行を受け瀕死の重傷を負う。その日同僚刑事のアルマンの葬儀に出ていたカミーユ警部は事件の知らせを受けて自分が捜査から外されるのを恐れ彼女との関係を隠して自ら必死に犯人の行方を追うのだった。 本書を読んで思ったのは少し大雑把ですが、前2作を足して2で割った様な内容だったなという感想でしたね。もちろんストーリーは全く別物なのですが、例えば第一作にはカミーユ警部の妻イレーヌが登場し第二作では赤の他人アレックスの物語にして、第三作で再び彼の恋人アンヌが出て来るのですが・・・・既読の方はきっとその関連性にお気づきと思いますがもうこれ以上は書かない方がよさそうですね。事件の驚くべき真相と見事に練られた欺瞞トリックの全貌が明らかになると著者が3部作を用意周到に準備されていた事に気づかされますね。本書では前2作の残酷な猟奇性という要素は幾分希薄になっているとは思いますが、犯罪計画の構築という部分では絵空事でなく十分リアリティーがありますし、アンヌを執拗につけ狙う凶悪な犯人という場面の迫真のスリルとサスペンスが素晴らしく、全体的に手堅い現代ミステリーに仕上がっていると思います。でもミステリーを読み慣れた厳しい通のファンの中には本書のトリックを早い段階で見破る方も多数おられるだろうと思います。現代ミステリー作家はこれまで書かれて来た名作のトリックをアレンジして使わざるを得ず、まあそれだけ真の意味での独創というのはますます望むのが難しくなっているのが実情でしょう。著者も注目を浴びて作品が増えるにつれてトリックを考え出すのがどんどん大変になって来てご苦労されている事だと思います。(まあ勿論同業者は誰もが同じですが)要するに私は作家に対して今回のトリックが前と比較して意外性の面では劣るから評価を下げるといった単純な冷たい見方をしたくはないと思っていまして、本書も大満足して読み終えましたし私が考える著者の最大の魅力は陰鬱だけど作品に漂うどうにも胸を締めつけられる様な遣る瀬ない哀感にあるのだと思うのですね。本当にラスト2頁のカミーユ警部のじっと涙を堪える心中を察するに読んでいる私も自然に目頭にウルウルと来る物がありますし何よりも愛する人との最後の会話が全て上辺だけの嘘っぱちだったのが一番堪らなかっただろうなと思いますよね。そろそろまとめに入りますが、本書のラストで辞表を書く事を部下のルイ刑事に告げたカミーユ警部はこのまま引退してしまうのか?それとも辞表は突き返されるのか?はたまたカミーユが私立探偵に転身するという幾つかの道も残されていて、何時か復帰する可能性はゼロではなくまだあるのですが、意志が強そうな著者の事ですから何となくかなり困難にも思えるのですね。著者は前述のシムノン氏とは明らかにタイプが違っていて一人の主人公に拘らずに一作一作じっくりと推敲して書き上げる寡作家に見えますので、とにかく要はルメートル氏の胸の内次第なのですが、私としては著者にもう一度書く決意をして頂いて、カミーユ警部の一日も早い復帰と彼が女運の悪さを克服して幸せを掴む事を祈念したいですね。それからカミーユ警部の未訳の中編2つはぜひとも早く紹介して頂くのは当然としまして、「どんな内容であれ著者の作ならば間違いない!」と信じて次の新作長編が紹介される日を心待ちにしたいと思いますね。 | ||||
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3部作目になって、ちょっと同じパターンかな?でも、最後までドキドキハラハラは変わらずでした。続編はないのかな? | ||||
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『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』と比べての読み心地については、意見を同にする方が見事なレビューを書かれていたので割愛。愛する女性が強盗事件に巻き込まれ、重傷を負った上に犯人から命を狙われるという大ピンチが発生、「なんとか(警官である)自分が解決しよう、否、解決できるのは自分しかない――」そう信じてコマネズミのように動き回り、あちらに嘘つきこちらをごまかし、ドツボにハマっていく主人公に共感する人は多いだろう。「ここは俺が!俺しかいない!」そう思ったのに全然うまくいかない。むしろ悪化していく。それが大切な人のためだからこそ、男性である主人公が「傷だらけ」になっていくさまには、心をえぐられるものがある。時間と共に憔悴していくカミーユのため息やうつろな視線、再び立ち上がる時目に宿る炎や、不安にかられてウロウロする様子が目に浮かんでくるような見事な筆は、さすがルメートル。ラストの締め方は、「フランスっぽい」。フランス映画を観たような読後感であった。主人公の大切な女性、アンナ役は、マリオン・コティヤールでどうだろうか。 | ||||
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3部作最後の作品と言う事で冒頭からショッキングな展開有り、 ある人物との別れありとカミーユは文字通り傷だらけになります。 しかし、物語の展開はそれだけに留まらず読了後は 続きを渇望する自分が居ました。 3部作だからこそ収まりが良いのもあるが、 このまま続編を出し続けて凡庸な作品に 成り下がるのは避けて欲しいのも正直な気持ち。 | ||||
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息詰まる展開ですが、あまりに凄惨なため、★一つ減らしています。グロテスクなのが苦手な人はトラウマになりそうな感じです。 最後は本当にいたたまれない気持ちです。 | ||||
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カミーユに同調してしまい カミーユの喜怒哀楽が乗り移り 正直読みながら苦しかったです カミーユにここまでつらい思いをさせるのだろうと 作者が憎くてしかたなく カミーユが幸せになる続編を切望しています ・・・三部作で終わるのが一番ってのはわかってますよ・・・ | ||||
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「その女アレックス」→「悲しみのイレーヌ」と読んできて、いよいよカミーユ警部3部作の完結編の本書に取りかかる。邦訳版はこの順序だが、本国フランスでは、「悲しみのイレーヌ」→「その女アレックス」→「傷だらけのカミーユ」である。何故こうなったかと云えば、「その女」があまりに面白く、こちらを優先してしまった。案の定、「その女」は絶大な支持を受けたが、順序が逆になった事で、「悲しみ」の核心部分が判り、興味が半減してしまった。だから、本書が完結編という事もあり、どう締め括るのか、大いに期待してしまうのである。 やはり冒頭、強盗事件の掴みは目を見張るものがあり、一気に本の世界に引き込まれる。これはミステリーであるが、それ以上にスリルとサスペンス満載で行く展開で、しかも犯人側の一人称語りと、カミーユ側の三人称語りとの対比が際立ち、特に一人称の部分は、犯人は誰かの興味も加味され、最後まで突っ走るかと思いきや、徐々に様相が変わってくる。 いやこれは、表面上はスリルとサスペンスだけれど、やはりどんでん返し有りのミステリーの王道だ。しかも、これだけ有名になったシリーズなので、3部作では勿体ないと、当初思ったものだが、ルメートルの言うように、読み終わった今、カミーユに特異な身体的特徴を造形した事。自尊心。犠牲・・・・・・。そんな事を考えると、書き切った感があるのも事実だ。それにしても何ともはや、ルメートルも罪な作家だ。 | ||||
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物語の展開が早く、飽きさせません。 ミステリーというよりも、カミーユ始め登場人物の人間性を描いてます。 カミーユも優秀な刑事であると同時に、弱さを併せ持つ男ですね。 その弱さを利用する犯人。 とにかく面白さは抜群です。 あっという間に読み終わりました。 | ||||
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二度と女を愛せないだろうと思っていたカミーユに愛する女ができてしまいました。 しかし、喜んではいられません。作者はまたしても女でカミーユを苦しめるのです。 本当にひどい。かわいそうなカミーユ。 惚れた女の弱みでカミーユは物語の中でさんざん引きずり回され、すべてを失います。 一緒になって読者である我々も引きずり回されるわけです。 男、人間のサガせいでしょうか?なぜこんな目に合うのでしょう。 真犯人なんでここまでカミーユを痛めつけるのか?酷い 一番ひどいのは作者なんだろうけど。 カミーユに幸あれ。 | ||||
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三部作の前二作を一気に読んでしまった。本作品は途中で話の流れが推測できてもおもしろみが減ずることがなく、一気に読み終えるのが惜しくて、ゆっくり少しずつ読んだ。カミーユという人物の魅力というと適切ではないかもしれないが、読者が自然に彼と同化して小説に描かれた場面にいるような気持ちになれる。どこにも存在しないカミーユだが、人間のどこかにカミーユがいるような気がする。桐野夏生の描く人物像を思い出してしまった。 | ||||
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ヴェルーヴエン警部シリーズ三部作の完結編。今回は、事件発生から解決までが僅か三日間。愛する人アンナを守るべく、自身の職を賭けてヴェルーヴエンが孤軍奮闘する、シリーズ最後に相応しい内容である。 全二作のような重苦しさや残酷なシーンの描写はないが、読み応えは十分。一気に読破した。 | ||||
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ルメートルはやっぱりすごい作家さんです。 「その女アレックス」「悲しみのイレーヌ」「死のドレスを花婿に」 そしてこの「傷だらけのカミーユ」を読みましたがどれも面白かったです。 アレックスは特に、ひゃ~~~!という感じでした。 ほかの方がおっしゃっていた通り、できたら順番通りに 「悲しみの店」「その女…」「傷だらけの…」の順番で読んだ方がいいと思いますが 「その女アレックス」がなければこんな面白本には出合えなかったのですから いたしかえしです。 おかげでルメートルという作家に出会えて幸せです。 残酷なシーンは大嫌いな私ですが、そこは本です。 読み飛ばす?あまり想像しないなどなどいくらでも対処法あります。 ルメートルのいいところは その登場人物の描き方とプロットだと。 特に女性の描き方は秀逸だと。 どの女性も魅力的です。 たぶんしっかり考えれば こんな事件ないし、こんな殺人者いない だってこれほど殺すことにこれほど手間かけるやつ 今の世の中いないでしょ。 年末年始にストレス解消にお勧めです。 | ||||
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早い展開。主人公のひとがらが中盤になって突然ものすごく魅力的にかんじてくる | ||||
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あまりにも、酷で、悲しくて、寂し過ぎる!が感想。 それなのに、一気に読ませる構成の凄さに、拍手! 「悲しみのイレーヌ」は、好きな作風ではなく、この作品を読むべきか? 悩んだが、カミーユの内面に迫った本作を読んで良かった。 ラスト、犯人の頭に銃弾を撃ち込んでもいいのに、それを自制したカミーユ。 愛すべき人のために、亡き妻の殺害犯とコンタクトしたカミーユ。 それを思うと、、、、、 最後のページ、ひとり、アトリエで、ストーブに薪をくべるカミーユの姿を 思うと胸にグッとくるものがあります。 | ||||
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妻のイレーヌを巻き込んだあの事件から5年。2010年、パリ警視庁のカミーユ・ヴェルーベン警部はアンヌという女性と恋仲になっていた。そのアンヌが、宝石店を銃撃しようとする直前の強盗団と出くわしてしまう。犯人に顔を激しく殴打されたアンヌは瀕死の重傷を負って入院してしまう。カミーユは警察機構の手続きを無視して、犯人を独自に追い始める。だが犯人はなぜか執拗にアンヌを狙って病院に侵入してくる…。 ------------------- 『』、『』と続いてきたフランス・ミステリー<カミーユ・ヴェルーベン警部シリーズ>の最終第3編です。フランス本国の発表順とは異なり、日本では『その女アレックス』、『悲しみのイレーヌ』という順番で翻訳されてきました。この『傷だらけのカミーユ』で描かれる事件は確かに『その女アレックス』の次に起こったものですが、物語はむしろ『悲しみのイレーヌ』の姉妹編といってよいかもしれません。 犯人は一体誰なのか。なぜ犯人はアンヌの命を狙い続けるのか。ヴェルーベン警部は愛する女性を再び失うことになるのか――。 そうした謎の解を求めて頁を繰り続ける読者を、ピエール・ルメートルはこれまでの二編同様、驚愕の真相へと見事なまでに突き落としてくれます。読者の先入見を逆手にとったどんでん返しが眼前に広がります。それを目にしたとき、私は自らの浅はかさを心地よくも思い知らされました。 優れたミステリー小説は、読者を推理に誘う作品ではなく、むしろ読者をあざ笑うかのようにダマしてくれる作品であるという思いを強くします。 フランスのミステリーを読むことはほぼ皆無の私ですが、今回あらためて目についたのは、フランス社会が移民社会であるという現実です。ヴェルーベン警部が行方を追うのはセルビア出身の男ですし、強盗団にはトルコ系の男たちがかかわっている様子が見てとれます。アンヌの入院先にはマルティネック生まれのスタッフがいて、パリの街なかの食料品店にはアラブ人の従業員の姿が見えます。そうした民族のサラダボウルと化したパリを、複雑怪奇な事件が覆うのです。 前二作と同じく今回も橘明美氏がフランス語を見事で無駄のない日本語に移し替えてくれました。大変読みやすい文章で、この極上のミステリー小説を堪能することができました。 | ||||
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三部作完結編の今作は、「その男、カミーユ」とも題すべき、カミーユ・ヴェルーヴェンという一人の男の物語。前2作に比べて衝撃度や猟奇性は抑えられ、シンプルな構成(と言ってもルメートル節は健在)で、カミーユとある男との対決が描かれる。彼が何度も引き返すことができたのに、自ら退路を断っていったのは、すべてを失うことが、同じく過去にすべてを失い、帰ってきた放蕩息子に対する「けじめ」だったからだろうか。二人の対決の場面、犯人の「わかっていたことだが、おれはこいつがずっと好きだった」の一行が腹にドスンときた。 | ||||
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