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(中編集)
魔王
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魔王の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.60pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全35件 21~35 2/2ページ
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「魔王」、「呼吸」の二作を収めた連作中編集。作者特有の「人の心を思い遣る」と言う優しさが溢れていて、読んでいて爽やかな気分になる。社会問題に正面から切り込んでいる点も特徴。 「魔王」では、主人公の安藤がフトした事から、自分が念じた言葉が他人の口から出る現象に気付くのが発端。それも、キッカケは"他人への思い遣り"に欠けた人間への反発心からである。主人公は何事も考え込むタイプで、眼の前の老人に50年後の自身を見て泣いたりする。そうかと思うと「アンダーソンと安藤さんは似ている」とジョークを飛ばす日本語が達者な英会話講師アンダーソンが出て来たりと自在な展開。作品の中で、ムッソリーニへの言及を初め、全体主義への危惧の念が露骨に出ているのも特徴で、今の時代を考えさせる。アメリカの自国本位主義への集団憎悪で、アンダーソンの家が放火されたりする。マザー・テレサの「愛の敵は憎悪ではなく、無関心」との言葉が本作の主旋律か。一方、主人公の弟潤也とのやり取りは「重力ピエロ」を思わせ、微笑ましい。また、「グラスホッパー」と言う酒も出て来る。作品間の繋がりを大事にする作者らしい。ファシズム(=無関心)と闘う安藤と宮沢賢治の詩が交錯するラストは印象的。「呼吸」は「魔王」の五年後と言う設定で、ヒロインは潤也の妻の詩織。舞台は作者のお膝元仙台。中身を読む前は"あらずもがな"の作品にならなければ良いなぁと言う想い。「魔王」は完結した作品だったので。案の定、作者の思想や昨今の社会問題が前面に出ていて、それなりに読ませる作品だが、「魔王」と分離した意図が不明。「魔王」中に書き込みを加えれば上質の長編になったと思う。 | ||||
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伊坂作品は、スト−リ−自体も良いのは当たり前だが、作中の台詞回しが絶品である。 この作品も、理屈っぽいともいえる会話部分に、かなり楽しませてもらった。 特に新聞紙を折ると・・・の部分は私達の一般会話のネタにも十分使えるのでおいしい!! ファシズムの始まりって、こんなものなんだろうな?という説得力のある展開。 いつもながらの個性的な登場人物。 伊坂カラ−満載で、彼の作品以外の何者でもないのだが、いかんせん消化不良の感は否めないように思う。 盛り上がりにももう一つ欠けているような・・・・。 収録2話分の分量で”魔王”を書いて欲しかった。 | ||||
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ナイフを持った男、銃を構えた兵士、 迫りくる炎、猛スピードで向かってくる車、 といったような、具体的に恐怖を感じられる ものではない、漠然とした恐怖が描かれている ように感じた。 ヒトラーは悪の化身に思えるかもしれない。 しかし、それは集団心理が生み出した、 自分たちの思いを代弁してくれるだけの マリオネットや象徴としての価値しかなかった のかもしれない。 もしそういった象徴がいなくなったとしても、 実際には集団心理という実態のないものが 存在し続ける限り、恐怖は存続する。 そういった流れが、今後の『モダン・タイムス』で 描かれる「システム」にもつながっているのかもしれない。 本書を読む上ではストーリの本筋には影響しないが、 『死神の精度』を事前に読むことが望ましい。 | ||||
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伊坂幸太郎のファンなので、この作品を手に取りましたが、いまいち・・・・ 政治色が強く、兄弟の超能力も物語の中でそんなに意味があるのか良くわからず・・・ 何か中途半端な感じが強かったな〜〜。 次の作品に期待します。 | ||||
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魔王は前衛的イメージを人に与えるようですが、この小説で用いられている曖昧さは、俗に純文学といわれる「退屈な文学」ではありきたりな方法であるのです。 そういった方法をエンターテイメントに用いたことには評価が出来ますが、やっぱ伊坂幸太郎にはミステリっていうか結末がしっかりとしたのが欲しい。 | ||||
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おもしろい小説の条件の一つとして、読み易さが上げられると思います。この本の取り上げているテーマとしては、その条件をうまく満たしていると思います。しかし、うーん、好き嫌いが分かれそうです。ファシズム、超能力、戦争、大衆、演説、洗脳、濃いテーマを村上龍的にごしごしと展開させないところはさすが小説巧者です。うまさを堪能すればそれでいいという気がしています。 | ||||
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「魔王」のパートはストーリーも構成も中途半端。「呼吸」に入ってから会話の面白さは出てきたが、超能力のことなど、習作として書いてみたという程度にしか思えません。結果としては星3つでしょう。 | ||||
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憲法改正やファシズムといった政治問題に煙にまかれているうち、 肝心の主人公たちの不思議な力は何だったのか、よくわからないまま 終わってしまう感じ。 消化不良ですね。 脈絡があるような、ないような、こういう感じが好きな読者にはたまらないのかもしれません。 わたしは中途半端なまま投げ出された気分です。 | ||||
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恥ずかしいことに伊坂さんのことをよく知らなかった私は,この本の帯文句を誤解して,伊坂さんが政治家なのだと思っていました。そして、政治家にしては理想論だなぁ、と勝手に呆れていました。馬鹿です。しかし例えば靖国問題について中国にきっぱり謝罪をすれば他の諸問題についても追及されますし、アメリカときっぱり縁を切れば食糧問題で日本は壊滅しますし、そんなことをした首相が若者を扇動できるとは思えないのですが…。エンターテイメント文学というのをよく理解していないので、伊坂さんなりの暗諭だとしたら読み込みが甘くて申し訳ないです。それしにても本作品,論文並にメッセージ性が強く,日本への固定観念を植え付けられているようで恐ろしかったです。 | ||||
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自分の思ったことを他人に話させる「腹話術」の能力を体得した主人公は、その能力の使い道を、独裁政権の阻止に求める。彼の言い分はしごくまともだ。しかし、伊坂幸太郎の小説において、エキセントリックな人物とまともな言動は対になることが多い。『陽気なギャング〜』の響野は行動が伴わないだけで、発言は筋が通っている。『チルドレン』の武藤も然りだ。民衆が個をなくして指導者にただ従うことを恐れ、なんとかしたいと思う主人公は正しい。が、彼がいるのは、正しいことも、正しさを保つために思考することも“異端”となる社会だった。シューベルトの「魔王」のダイナミックな旋律の裏に子どもの繊細な恐怖をみて、宮沢賢治のピュアな詩に血の匂いをかぐ。物事の真意に気づいてしまう主人公は、次第に現実に耐えられなくなる。正気を失う主人公と入れ替わるようにして、実は彼と最も似通った人物、犬飼が、淡々と独裁者としての存在感を増していく様が不気味だ。 | ||||
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先日の、自民党が大勝した衆院選で、 負けた民主党の若手の議員が、面白いことを言っていました。 「やり方は分かった」と。 つまり、自民党以外でも、カリスマのあるトップが一人いれば、 今の日本なら、政権は取れる可能性があるということです。 そしてカリスマ性は、戦術さえ確かなら容易に身に付けれる。 (10年前は、小泉さんは橋にも棒にも掛からない変人でしたからね) これは、怖い。 今までなら、党内でプロが選んだ人がトップになれたが、 これからは、国民が選ぶ可能性があるということです。 そして作者は、私たちに疑問をぶつけます。 「本当に、大衆は正しいのだろうか?」と。 閑話休題。 作品自体は、キング・クローネンバーグのコピーなので、 高い評価は出来ませんが、読んで損無しです。 蛇足として、この本で作者はある罠をしかけています。 つまり、この本に影響されて、宮沢賢治を読むかどうか?という罠です。 私は読んでしまいました。 →小泉ブームにも、私は乗ってしまいました。 今度は自分自身で、ちゃんと考えてみようと思います。 | ||||
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伊坂ワールドが大好きである。軽妙な会話の中にふっと人生の機微を垣間見させるような独特の小説世界が彼にはある。読み終わったとき,静かな感動に包まれて思わず涙がほほを伝うということがしばしばあった。しかし彼も初期の作品から一つ階段を上ろうとしているのか,最近の作品は、少々メッセージ性が前に出すぎているような感がある。この「魔王」は特にそう感じた。彼の感性はもちろん失われてはいないのだが、「考えろ,考えろ,考えろ!」という強い作者の声がやや作為的に耳に響く。私にとっての伊坂ワールドは、暗喩に満ちていて、行間から香りたつ人生の哀感がベースにあったのだが、作者は確実にもう一段階成長を試みているのだろう,少し寂しいが彼の持つ世界観にエールは送りつづけたい。 | ||||
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最近世の中に出回る小説の8-9割は、暴力か愛をモチーフとしている。もしかすると、小説という表現形式が発生した当初から、そうなのかもしれない。時代時代で流行り廃れはあるけど。たとえば、現在の日本では、「愛」分野ででは、「家族愛」(リリー・フランキー『東京タワー』)「中年愛」(渡辺純一)「奇跡的な愛」(『電車男』)が流行りだ。 さて、伊坂幸太郎だ。この人の小説にはこの二大モチーフの色が薄いように思う。今回の『魔王』は超能力と、ファシズムをモチーフにした作品であり、ファシズムというのは暴力エリアに近いが、それでも超能力の非現実性がファシズムの暴力性をぼやけさせている。超能力ってなんだかアニメの世界だしね。たとえば、本書のふたつの中篇のうち表題作の「魔王」はファシスト的な政治家と、超能力者の語り手との対決シーンでクライマックスを迎えるが、そこで使われようとする超能力はしょーもないものである(「女子高生」と「巨乳」がキーワード)。 重くなりがちなテーマを、うまく中和する才能がこの作家には存在している。その意味で、伊坂幸太郎はすがすがしい。そういえば、作品中にも「清清しい」という単語が頻出する。正直言って少しもの足りない気もするが、安心して読める作家の一人だろうと思う。作品名である「魔王」は名高い幻の芋焼酎の名前でもあるが、どちらかというと伊坂作品は焼酎よりは烏龍茶である。中毒性はないが、飲み心地はいつもすがすがしい。 | ||||
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伊坂が社会物をあらわしました。 若い作家がファシズムへの嫌悪を表すのは素敵なことです。 拍手。 今までの作品にない政治へのメッセージがこめられていた物語です。 でもその分,絡み合う伏線やさわやかな読後のまとまりは残念ながら薄まっています。 でも,書かずにはいられなかった率直さにうたれました。 | ||||
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「重力ピエロ」「ラッシュライフ」など過去の作品には今までにない斬新さは感じたものの、この作品に関し、斬新さを感じることはできなかった。過去の作品においても一貫して作者の物事の考え方が反映されており、共感や感銘を受ける部分もあったが、この作品に関しては、「ファシズム」という言葉がしつこいくらいに出てくることからもわかるように、政治的なメッセージ性が強すぎて、違和感を覚えずにはいられなかった。このあたり、賛否が分かれるところかと思う。このためだろうか、雑誌「エソラ」に連載された際は、政治家・犬飼の発言はもっと長く、強いものであったが、今回の出版に当たり削除されている(ついでにスイカがどうのこうのというダジャレも削除されている)。おそらく編集者の意向が強く働いたのであろうが、(だじゃれはどうでもよいが)信念を持って書いたのであれば、犬飼の人物像は、そのまま削除せずに出版して頂きたかった。2005年に出版された伊坂氏の新作としては、「死神の精度」のほうが万人受けする作品であると思うし、伊坂氏らしい秀作だと思う。未読の方がいたらむしろこちらをお薦めしたい。 | ||||
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