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(短編集)
ダック・コール
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ダック・コールの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.38pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全26件 21~26 2/2ページ
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作者も知らず、タイトルも知らず、帯買いしました本書。その完成度にびっくりしてしまいました。帯のうたい文句は「誇り高き探偵たち We Loveハードボイルド」という企画シリーズです。でも本書には探偵が出てきません。プロローグに出てくる青年の「夢」の物語のような数編の物語。そしてその物語たちは静かな時を読者にプレゼントしてくれる。その静けさは登場人物達が作り上げている。現実と幻想のちょうど境目を辿るような物語たちが、僕たちに示してくれるのは「生きる」意味。めずらしい鳥を撮ってしまう男、絶滅したリョコウバトの話、狩りの上手な少年と生きる意味を見出したおじさん、脱獄囚を山中に追う日系二世とインディアンの末裔、鳥と亀に救われた少年、デコイと少年の話、この六篇の根底に流れているのは「生きる」ということである。静かな文体であればあるほど、読者に文章が迫ってくる。いい読書ができた。山本周五郎章は裏切らない、と読書好きの同僚が言ったことがあったが、本書を読めばその言葉が本当であったことを理解できる。 | ||||
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やたらキザだったり、減らず口をたたいて人を怒らせたり、意味もなくカーチェイスをしてみたり、強そうに見えないのに殴り合いに巻き込まれたり、女に関してはなぜかやせ我慢をしたり・・・そんなハードボイルドも勿論いいけど、この筆者の書く「ハードボイルド」はひと味違う。 登場人物は派手な活躍もしないし、暴力沙汰や恋愛沙汰も少ない。激しく自己主張はしないが、芯が強く、誰にも犯しがたい気高い魂を胸に抱いている。そんな男や、女や、子どもが、静かにたたずむ本なのです。 なにしろ、たとえば記録映画のカメラマンが珍しい鳥に心を奪われるという「望遠」の主人公は、<何もしない>ことでハードボイルドを成立させています。「デコイとブンタ」は、デコイ(カモ猟用のおとりの模型)と主人公の少年の奇妙な友情がテーマです。 大自然を舞台にした心にしみ入るハードボイルド。山本周五郎賞受賞の名に恥じない、大傑作です。 ミステリやハードボイルドのファンだけではなく、万人に読んでもらいたいと思います。 | ||||
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とにかく素晴らしい。ハードボイルド、ミステリー、冒険、ファンタジー、童話。どのジャンルにおいてもこれほど端麗、襟の正された文章やその舞台設定、人物造型の巧みさは他に例を見つけるのは難しい。 極めて読みやすく、明快なストーリーの連続でありながらいつまでも長引く心地よい余韻。傑作。 | ||||
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狩猟、あるいは自然、動物をとおして物語られる男の世界がここにある。抑制の効いた筋肉質の文体、壮大なスケールを感じさせる美しいストーリーはみごと。たしかにハードボイルド小説だ。久々に澄み切って、美しい短編集に出会った。 しかし作者はすでに故人。 あまりにも、惜しい。 | ||||
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随分前のことになりますが、関西に仕事で出かけたとき宝塚に住んでいる友達に薦められた本です。帰りの新幹線の中で読みました。最初のページを開いた瞬間から、他のことは全て頭の中から消え去りました。何時の間にか東京に着いていました。降りなければならない、この本を読むのを中断しなければならない、たったそれだけの事を、辛く、悲しく感じました。私が稲見一良さんを知ったのはこの時でした。そして、その時にはすでに稲見一良さんはこの世から旅立ってしまった後でした。一生かけても、私には稲見さんのお書きになった言葉の一言に匹敵する言葉を書くことはできないでしょう。この作品は、そんな言葉のカタマリです。 | ||||
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稲見一良が山本周五郎賞を受賞した作品。 ブラッドベリの「刺青の男」にヒントを得たという連作小説だが、全6編のどれもが美しく切ない。 思うに小説だけでなくすべての創作物がそうだが、価値観の提示にこそほかならないと考える。何が美しく、何が醜いか。世の中をどう判断し、どう行動するかを、その作者なりの角度で捉え、発表するのが創造だ。本書の中の1編「ホイッパーウィル」は、女性の1人もでないマンハントを描いたハードな中篇である。自分は稲見一良のもっとも濃い部分をこの中篇から感じる。彼が憧れ、美徳とし、また醜悪と感じた世の中の全てが凝縮されているような気がする。登場人物全てが真っ直ぐで、象徴的で衒いなく人生に切り込んでいく。そしてここには作者の価値観がハッキリと明示されている。 美しく厳しい自然。善悪の両面をそなえた人間。容赦ない社会の重圧。生ける物を襲う困苦。そして自尊心と誇りを失わない姿勢。別の短編「デコイとブンタ」でもそうだ。 「密猟志願」「パッセンジャー」においてもそうした作者独自の、しかし普遍的な価値観が提示されている。決して楽天的なロマンチストではない作者は、世の中の厳しさ不毛さを描いた上で、なおも輝きを失わない、理想や憧憬を描いている。作者、稲見一良が見続けた人生は経験に裏打ちされた確かな手ごたえがある。小説を読む醍醐味、豊かな人生を知る醍醐味。その両方を味わえる本書。あまりに再読しすぎて自分はすでに3冊目を持ち歩いている。 | ||||
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