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火星年代記



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火星年代記の評価: 4.49/5点 レビュー 80件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.49pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全80件 41~60 3/4ページ
No.40:
(4pt)

辿りついた最後の章がシミジミとします。

あとがきに、星新一さんが「コンナ面白いものはめったにない」と日記にお書きになっていた事を紹介しています。
レイ・ブラッドベリィの敷居が低いのに奥の深い感触は、星新一さんの作品とも共通するかな、などと思いを馳せました。
それとこの本を読んですぐにイメージしたのは、手塚治虫さんの初期のSF作品でした。
『キャプテンKen』や『来るべき世界』。『火星博士』というのもありました。
特に『キャプテンKen』ですね。これは火星が舞台ですし、オブセッションというのでしょうか、頭からずっと離れませんでした。
『火星年代記』は、翻訳本という形式だけではなく、日本の小説家や漫画家たちの作品を通して、知らず知らずに私たちに届けられていたのではないかと思うのです。
日本のSFの原点に当たるのかもしれない、などとも想像を膨らませました。
そして、非常に難解な作品なのではないかと今は思っています。読みやすいのですけれども、意味を読みとるのが難しいといいますか。
幻想的といいますか、比喩やレトリックやパロディがふんだんに使われていて、しっかり読まないとふっとどこかに連れ去られてしまうような感じがしました。
作品全体が、一つのメタファーと言えるかと思います。
じっくりとお読みになるべき本だと思います。
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640
No.39:
(5pt)

とても懐かしい

昔読んだ本が現在このような形で読めるなんて感無量です。 SFジャンルを増やして下さい。
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640
No.38:
(5pt)

未来という過去からつづく永遠

色褪せてない、と思いました。 1950年4 月の初版(アメリカ)と記されています。 今回購入の日本での初版は1976年でしたが。 そして思ったのは、最後の最後まで物語は生きているということ。 終いのページまで、作者・ブラッドベリは語るのです。 未来という過去からつづく永遠を。
火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)より
4150401144
No.37:
(5pt)

一見堅苦しそうなタイトルだが、読み始めたら止まらない

自分は特にSF好きというわけではない。どちらかといえば、ファンタジーやミステリといわれるジャンルの方が好きだ。
なのでこの本も作者も名前だけは知っていたが、これまではなんとなく敬遠していた。

それがたまたま図書館で「これ面白かったよ」という高校生の会話を聞き、へえと思って手に取り、ちょいと読んでみたのだが。
最初の方の第二、第三探検隊の話辺りからぐいぐいひきこまれた。
「第二のアッシャー邸」はミステリ好きにはたまらない話で。
「沈黙の町」は昔読んだ「死の影の谷間」を思い出させた。でもあれとは違い、この作品はユーモアが勝っているので楽しい。ジェヌヴィエーヴの造形が・・・(笑)。

年代記というタイトルから大層な作品だろうと身構えていたのだが、ごくごく短い短編を年代順にオムニバス形式で連ねているだけなので、あっというまに読めた。後の方で、前の話に出てきた登場人物が出てきたりするので、何度かページをめくりかえすことになるのも楽しい。

火星という星を舞台にしながら、中心に描かれているのは地球人であり、にもかかわらず「火星年代記」というタイトルがしっくりくる作品。
60年以上前に書かれた作品とは思えないぐらい、今読んでも味わい深かった。

人間(および火星人)以外の動物が登場しないとか、電気やほかのライフラインが死滅した町でなぜ働くのかとか、いろいろと疑問は生じるものの、この作品に関してはそういう突っ込みは野暮なのだ。
リアルな設定の構築に腐心せず、人間のエゴを描く、まさにその一点に絞ったからこそ、この作品は魅力的なものになったのだから。
火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)より
4150401144
No.36:
(5pt)

SFとかファンタジーと云ったジャンルを超えた傑作集!

著者の出世作となった連作短編集。 人類が火星に到達するが、色々あって三回目迄の探検隊はいずれも火星人に殺されてしまう。 だが、三回目の探検隊に依って病気をうつされた火星人は全滅、第四次探検隊に依り植民地化が始まるが地球は世界大戦が勃発し、滅亡してしまい・・・ SFとファンタジーが融合し微妙に入り混じる幻想味豊かな名作!
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640
No.35:
(5pt)

怖い側面も表現されてて、面白いです。

作品は忘れましたが、村上春樹さんがこの本を読んだことがあるみたいで、

興味を持って読みました。

(グレートギャッツビーも同じ理由で読みましたが、こちらは合わなかったですが。)

年代記というのは、古い順に、火星で起きるエピソードが語られる感じです。

〜があった。その数年後、〜があった。さらに数十年後〜があった。という感じです。

〜は、数十ページ分です。

各年代のエピソードは、関連のあるものが多いですが、年月が経ちすぎると、

関連性が土地や場所であったりします。

火星人とそこを訪れる人間の間の、色々なやり取りが、お互いの意図や感情を交えて、

面白く、ときには怖く感じるような内容でした。

近未来的は面白さは全く無いですが、異文化、異人種の交わりの中で、おこる現象が、

いかにもありそうな感じで、でも火星チックな感じで、面白く感じました。

読んでも、損はしない名作だと思います。
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640
No.34:
(5pt)

火星という幻想

2007年に、書店でいちばん新しい版を買ったつもりでいたら、現在、既に「新版」が出ている。
本書のカバー絵は、個人的に、とても気に入っているのだけれど、これから読まれる方は「新版」が良さそう。

買ってから五年間も読みあぐねていたのは、SFは世界観や設定をこそ楽しむもので、『火星年代記』はその代表作である、という先入観のせい。もっと小難しい小説だと勘違いしていたので、気合いが入るまで、手を出しにくかった。
が、このたび、作者の追悼のため改めて手に取ってみると、堅苦しい小説ではなく、どちらかというと、詩的な群像劇だった。
描かれているのは、未来社会や見知らぬ星のことではなく、いつの時代もどこにいても、愚かしくて優しい人間たち。
争いをやめられず、死んだ家族をあきらめきれず、変化を好まず、正しいのは自分だと思いたがり、乱暴で性急で、ほんとうにどうしようもない、と重たい溜息がでそう、なのだが、皮肉が可笑しくもある。また、暗い諷刺のなかにも、心があたたかくなる一言がある。
「動物は生に疑問をもったりしません。ただ生きています。生きている理由が、生そのものです」
「何も訊かないで。神様がやさしくして下さるわ。わたしたちは幸せになればいいんだよ」

個人的に、もっともパワフルだと感じられたのが、「第二のアッシャー邸」。
『華氏451度』的な検閲が行われた後の世界なのだが、すべては「漫画の本の統制から」始まった、と書かれているのが、どこかの条例を思い出させて、暗くニヤっと笑ってしまう。
私自身、家族から漫画を禁じられた時期があって、長い間、友達や親戚の家でしか漫画は読んだことがなかった。両親にしてみれば、真面目な教育方針、だったと思うが、権力で禁止することはほんとうに無意味で、私は虎視眈々とチャンスを狙い隙あらば他人の漫画を読み耽り、おかげで十代の頃に読んだ漫画の内容は、恐いくらい、よく覚えている。大人になっても漫画が大好きで、いやなことがあると長編のコミックスを一気読みして痛快になるが、このとき感じる「痛快さ」には、子供の頃に禁じられていた「禁書」を読んでいるのだ!という甘い味が少なからず混じっている筈で、禁止することで余計に熱狂するのが人間なのだ。
「第二のアッシャー邸」は、そうした人間の、愚かさと可笑しさがたっぷり。
短篇の連作で成り立っている『火星年代記』だが、これは単独で読んでも面白いだろう、と思う。

インタビュー集『ブラッドベリ、自作を語る』を読んでいると、九歳のブラッドベリ少年は『バック・ロジャース』の漫画に夢中、切り抜きを集めていて、他の子供たちにからかわれる。ロケットの宇宙船なんかできない。月にも火星にも行けるわけがない。バカだな。
少年は切り抜きを破り捨てるが、後日後悔して泣きわめく。そして、「なぜ泣いてるんだ、誰が死んだんだ」と自問する。
「おまえだ、おまえが死んだんだ。未来を殺してしまった。あんなバカどもの言うことをきいてしまった」
少年はもういちど切り抜きを始める。
「以来、バカの言うことなんかには耳を貸さなかった」
・・・このくだり、読みながら大笑いしてしまった。実に痛快なエピソード。

好きな書籍を禁止されたら、素知らぬ顔でもとの棚に入れておけばよい、注意されたら、おや、そうでしたか、という顔をして、また素知らぬ顔でもとの棚に入れておけばよいのだ、と、ブラッドベリは云う。
長い目でみれば、検閲なんてあり得ない。
否定され、踏みつけられ、ついには滅亡させられても、また甦る。
「優しく雨ぞ降りしきる」のあとには、「百万年ピクニック」が続くのだ。必ず。
火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)より
4150401144
No.33:
(5pt)

追悼 レイ・ブラッドベリ

2030年、人類初の火星探検隊は地球へ帰還することがなく消息を絶つ。2度目の探検隊もやはり帰ることはなかった。しかし人間は諦めることなく陸続と火星へ渡る。地球人たちはやがて、長年その惑星に住み続けた火星人たちにとって代わる存在となっていく。

 1940年代から50年代にかけて書き継がれた連作短編をまとめた一冊です。
 巻末の解説によれば、1997年にブラッドベリが新たに編み直した原本に基づいて、日本で以前出た版とは収録短編をたがえた新版とのことです。

 ブラッドベリは今月(2012年6月)に91歳で大往生を遂げた作家です。その訃報に接してかの有名な『火星年代記』を手にした次第です。火星に関する40〜50年代当時の素朴で限られた情報に基づいた、大変温もりのある移民編年史といった物語です。 
 そのほとんどはコロンブスのアメリカ大陸到達、先住民族との邂逅、その友好と征服、西部開拓史といった、新世界における歴史を想起させるものです。

 「第二のアッシャー邸」は『華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)』同様、焚書をめぐる怪異に満ちた物語ですが、実にブラッドベリらしいといえます。
 
 「火の玉」と題した短編は、新大陸でのカトリック布教に邁進した宣教師たちの姿に重ねて描かれた物語でしょうが、その結末は史実における先住民族たちがたどった末路とは異なります。地球の宣教師たちが最後に出会う存在は、彼らに思わぬ心の安寧をもたらします。クリスチャンではない私のような読者にも、心にそっと添う思いがします。
 
 掉尾を飾る短編「百万年ピクニック」の主人公たちのように今から数百年後、開拓地・火星に暮らす人々が、このブラッドベリの物語をひもとく日が来るかもしれない。そんな淡い空想を胸にこの書を閉じました。
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640
No.32:
(4pt)

常に「少しの恐怖」が根底に流れている

これは、私が子供のころにTVでやってたSF。なので、私はTVの映像作品の方が馴染みがあります。
原作を読んだのはつい何年か前で、最近また読み返しました。何回読んでも新鮮さがある作品です。

私が幼いころから抱いているSFに対するイメージは「未知との遭遇」「未知への恐怖」「バッドエンド」で、その源流はこの作品だと思ってます。それほど強烈に印象に残る話が多いです。
この作品はオムニバスなのですが、どの作品も根底にうっすらと恐怖が流れています。それはやはり、自分の知る現実とは異なる世界が描かれていて、そしてそれらが、読み進めながら結末が予想できないゆえの恐怖なんだと思います。

世界観の描き方も素晴らしいですが、人物描写もすごいです。人間の心の闇を覗くような描写が多いと感じます。
火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)より
4150401144
No.31:
(4pt)

60年前に描かれた未来

ここに描かれているのは、今から60年前の宇宙移民イメージだ。 星新一や手塚治虫が共有した未来世界である。 ジェット機の延長のようなロケットで惑星間を行き来し、必要とあらば人間と見分けの付かないロボットも登場する。 「火星」は、開拓するべき新大陸の象徴だ。 従って、現代文明に対する批判が盛り込まれる。 生物学や物理学とは無縁の「空想未来物語」だ。 文明や人間についての寓話集である。  火星人にしろ地球人にしろ、「よくわからない相手は、とりあえず銃で撃ち殺せ」という行動原理がアメリカっぽい。
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640
No.30:
(5pt)

火星人たちは,生き残るために,なぜ生きるのかというあのひとつの疑問を忘れることにしました。

本書はまさに火星のクロニクルを描いています。
 地球から第一探検隊が火星を訪れる。
 火星には火星人が住んでおり,地球から訪れた地球人はすんなりとは受け入れられない。
 そして第2,第3の探検隊が失敗に終わり,第4探検隊のメンバーの一人スペンダーが,火星人たちのたどり着いた「生きること」に対する思いに気づく。
 「生とは,さらに多くの生を生み出すことであり,よりよい生を生きることことです。」
 その後大量の地球人が火星にやってくる。
 幸福だから来た人,不幸だから来た人,何かを見つけるために来た人,何かを見捨てるために来た人,大きな夢を持って,あるいは全く夢を持たずに,人それぞれの理由でやってきます。
 それでもやはり人間は愚かな行為を繰り返してしまう。
 そして作品全体には「寂しさ」のようなものが漂う。
 新たなクロニクルの始まりという希望を残して・・・。
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640
No.29:
(4pt)

何かが星からやってくる

火星人との邂逅。 それだけでわくわくした作品だ。 年代記に描かれた時代に入ってしまったけれども、いささかも色あせることがないのだ。 ブラッドベリの普遍性は、個々でしっかりと発揮されている。 100万年ピクニック。 生きていくということは、こういうことなのだと思う。
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640
No.28:
(5pt)

ブラッドベリの名作!

【概要】
1950年発売のレイ・ブラッドベリの最高傑作。
内容はSF×幻想×ホラー×風刺など色んな要素が混ぜこぜの連作短編集。

第一章「ロケットの夏」、第二章「イラ」などを読むと「すごい詩的な幻想小説だなあ・・」ときっと思うでしょう。
しかし次の章の「地球の人々」ではガラっと印象が変わって「なんだこのブラックユーモア小説はww」ときっと思うでしょう。
んでもってその後の「月は今でも明るいが」になると「なんだ・・このガチンコ小説は・・・」と、どんどん目まぐるしく内容が変わっていきます。

タイトルや表紙だけじゃ内容が想像しにくい小説。
ほとんどの章が30ページ以下で読みやすいので、とりあえず読んで欲しい。

【注意】
解説には「26のオムニバス短編」と書いてますが話がちゃんと最初から最後までつながってますので、順番に最初から読んでいったほうがいいです。初めて読む人は短編集というより長編を読むという心づもりの方がいいかも。
(ただ長編よりは全然読みやすく構成されている)

【新版になって変わったところ】
収録作が若干変更されています。「空のあなたの道へ」が「荒野」と差し替えられて、「火の玉」が新たに加えられています。
しかし荒野も火の玉も既刊の「太陽の黄金の林檎」「刺青の男」から持ってきたモノです。

他のすべての収録作も「新訳」と言うわけではなく、旧版を所有してる人はそんなに新鮮味はないかもしれません。
あとは年代が1999年から2030年に変更されたのと、ブラッドベリの序文が追加されたぐらい。
(もちろんすべてブラッドベリの意向)。旧版を持ってる人はそこらへん注意。
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640
No.27:
(3pt)

星新一好きの人に

爆笑問題の太田さんが進めていたのを、なんとなく思い出して購入。 一気に読んでしまいました。 時代を感じさせない文章で、そして設定が秀逸。 短編集ということ、文体、そしてオチのつけ方など、星新一を思い出しました。 (全体としてはつながっている話ですが)。 この時代設定が、すでに現実としてもう目の前(1999年から2026年の間の設定)だと思うと、 その間の時代の変化なども想像してしまって、それもまた、面白いです。 宇宙への進出は、予想していたよりも、ゆっくりなようですが…。 夢があって、そして苦い現実も。 お子さんが読むのにもおススメだと思います。
火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)より
4150401144
No.26:
(5pt)

奇跡的にあふれる情感

およそ空想科学小説と名のつくもので、これほど叙事詩的な魅力をそなえた作品が他にあるのだろうか。伝統的なSFのアイデアを
かりながらも、まったく違う世界観をブラッドベリは構築してみせた。
主題となるのは、タイトルにも冠してある通りで年代記。地球から火星へのアプローチを短編や、さらに短いショートショート形式で
連鎖させ、火星を植民地化していく過程を年表として読ませる。めくるめく好奇心の底流に、優れた文明批評を織り交ぜた珠玉の作品だ。

私的に「二〇〇五年四月 第二のアッシャー邸」の件は、考えさせられると同時に面白いなア。この精神は全然現代にも通じる。むしろ
今なんかジャストフィットしてるのかも。無味乾燥なぐらい合理的に生きているようでいて、まったく合理的じゃない感覚に共感できる。
理性的な〈逃避〉を《過激》としてしまう。創造力の源ともなる〈空想〉を、いやその空想することさえ《危険》とみなしてしまう。
この感覚。。便利この上ない社会において、強迫観念とも呼べるもどかしさが出てくるのはなんなのか。。もちろん本質は常に二律背反
で、今ほど創造性に満ちた時代も珍しく、めまぐるしく創造している。一方で、それらにまったく新しさを感じないのは何故か?もはや
ミーハーになろうにもなれやしない。暴走するのは危険だ。だから抑圧して規制するのは当然の流れではあるが、一歩間違うと〈正直〉で
あることさえ《剥奪》している。この、おどろおどろしいけど愉快なエピソードに一流の風刺を感じてしまう。正直なんだよな。

そして、なんだかんだひっくるめて最後は感動的なんです。人間ほど愚かな行為をする存在もいないが、人間ほど諦めない存在もいないの。
常に、いまから ここから の精神。透徹したブラッドベリの眼差しが何より最高だ。
火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)より
4150401144
No.25:
(5pt)

レイ・ブラッドベリの最高傑作

ブラッドベリといえば、「華氏451度」を思い浮かべるかもしれないが、面白さではこちらが断然上。

精神的成熟を欠いた物質文明の発達、科学万能主義への痛烈な批判を、抒情豊かな文体と哀愁漂う優れた物語によって表現した、「SFの詩人」レイ・ブラッドベリの最高傑作だと私は思っている。

「1999 年1月 ロケットの夏」から「2026年10月 百万年ピクニック」まで、火星を主題にした26の短篇が収められた連作短編集。

ブラッドベリにはほかにも素敵な短篇がいくつもあるけれど、たった一冊だけと言われたら、わたしは迷わず持ってくるだろう。

きらきらと輝く詩情の美しさ、みずみずしさ、透明感がもうほんとに綺麗。ダークなムードの作品もありますが、それもひっくるめてその宝石のような幻想の煌めきにうっとりさせられてしまうほどだ。

小笠原豊樹氏の訳文も、「名訳とはこういうのを言うのだろう」てなくらい見事なもの。素晴らしい読みごたえを堪能させられた一冊。
火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)より
4150401144
No.24:
(5pt)

ただ美しい、一つの作品

美しい文章とは、何だろうか。加藤典洋は『言語表現法講義』の中で、「人の美しさ」というものはない、ただ「美しい人」がいるだけだ、とプルーストの言葉を引用し、美しい文章というものも同じで、「文章の美しさ」などというものはなく、ただ「美しい文章」があって、一人ひとりが自らの感性で「よい」と感じるようなものなのだ、と言っているのだが、この『火星年代記』は、まさしく、ただ「美しい文章」である。
 本のレビューというものは、私の感性が感じた何かを、誰かに伝えるためにあるものなのだが、私の感性が「よい」と感じた「美しい文章」というものを伝えるのは、ことさら難しい。例えばここで、「詩的で、透き通っていて、優さが滲み出しているような文章で、美しい」と評したとしても、詩的であるとか、透き通っているだとか、優しいだとか、そういった凡庸な言葉に落とし込んだ瞬間に、ただそこにあった「美しい文章」も、私が感じた「誰かに伝えたかった何か」も、決定的に損なわれてしまう。『火星年代記』は、読みにくい箇所を多分に含んだ訳も含めて、そのような「美しい文章」である。
火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)より
4150401144
No.23:
(5pt)

人間の宿命を叙情的に描きあげた傑作SF

人間は決して完成品ではない。 大昔にできた旧式の本能を用いて未来という未知の世界を生きていかなくてはならいのだ。 人間の宿命をSFという形で語る本書は、そのリリシズムあふれる文体と鮮烈なラストシーンとによって、今後も長く語り継がれることになるだろう。
火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)より
4150401144
No.22:
(5pt)

示唆に富んだ作品

高校生の頃、定石どおりに有名なSFだけを読み、それでこの手の本を卒業した私だが、この作品だけは手元に置いてある。一つ一つの話が示唆に富み、考えさせられる。特に、せっかく移住してきた人々が、地球で核戦争が始まったと聞いて我先にと帰っていくのが面白い。その後の、だれもいなくなった家で、機械だけが同じように時を告げ、食事をつくり、それを下げ、また翌日も同じことが延々と繰り返される話には、まいった。全員が引き上げられたのではなく、男女1名ずつが残され、最初はあちこちに電話をかけてはお互いに会おうと試みるが、会ってみて幻滅し、その後は会わないように逃げ回るという話も、なかなかだ。
 人間の愚かさ、悲しさを見事に描き切った作品、ぜひ読み継がれていってほしい。
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4150401144
No.21:
(5pt)

心に染みる警世の書。

本書のテーマを一言で言えば、《科学の発達による、人間の精神的荒廃への警告》という所だろう。 若い頃は古臭い作品だと思っていたのだが、今読むと、ブラッドベリの警告の正しさに、思わず慄然としてしまう。 20世紀の後半ぐらいから、私たちが忘れてしまった大切な《何か》が、ぎっしりと詰まった作品である。 単なるノスタルジーでは終わらない、21世紀を越えた今だからこそ、広く読まれるべき、あまりにも重要な名著だと思います。
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4150401144

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