(短編集)
バビロン行きの夜行列車
- SF (392)
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1997年、著者が77歳の時に発表された短編集です。 初めてブラッドベリを読んだのは確か中1の時だったか、「10月はたそがれの国」と「何かが道をやってくる」をほぼ同時に読んでガツンとやられました。以来、好きな海外ファンタジーSF作家では不動の1位をキープしています(ちなみにハードSFではアーサー・クラーク)。 当時の怪奇幻想色が強い作風を思うと、晩年のブラッドベリはとても穏やかになりました。ストーリーはむしろ一般小説に近く、ふんわりとした雰囲気です。 棘がなくなったところは正直ちょっと物足りなくはあります。けれど、あとがきに紹介されているトム・ウィッカムの書評を読んでまさにその通りだと思いました。長くなりますが引用すると 「スティーヴン・キングやクライヴ・パーカーなどの大作家は、きれいな床に便所の中身をあふれさせ、嫌悪感でもって読者の理性をぶっ飛ばすことを得意としている。ブラッドベリは読者を引き込むのにこういうあからさまな手は使わない。(中略)この本はありきたりの結末が好きな読者には向いていない。嫌悪感に身をよじらせ憂鬱な気分になりたい読者にも向いていない。 これは楽しみにあふれた本だ。時に不気味で、時に不思議な気分にさせられるが、人生、過去、現在、未来についての一口サイズのごちそうがずらりと並んでいる」 最初は強烈に惹きつけられたスティーヴン・キングの毒々しい作風に、ちょうど疲れてげんなりし始めていたところで、まさに自分の心境だったので笑ってしまいました。 心の中は少年のままに老年に達したブラッドベリが、思い出や過去の経験、そして心の中からひょっと飛び出してきたものを書き留めたかのような、どこか古き良きアメリカの香りがする作品がいっぱい詰まっています。 ブラッドベリは初出版時のあとがきで、運転免許を取ったこともなければコンピュータもインターネットも使わない、ずっとタイプライターで書き続けていると話していますが、そんなちょっと頑固で優しいおじいちゃんからお話をしてもらっているような気持ちになります。 まだブラッドベリを読んだことがない方には、初期の「10月はたそがれの国」や「何かが道をやってくる」「ウは宇宙船のウ」(萩尾望都の漫画化も見事な作品になっていておすすめ)「火星年代記」など、そしてこの作品のような晩年のものと両方読んでみることをおすすめします。 | ||||
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この短編集を一言で表すなら、珍妙という言葉がふさわしい。幻想や抒情の風味は薄い。 怪奇というほど怖くないが、日常から微妙にずれた感覚と変な読後感が特色だ。 特に気に入った話は、 『やあ、こんにちは、もういかないと』 死んだはずの友人が訪ねてきた。優しくて温かい筆致が印象深い。 『目かくし運転』ブラッドベリには少年と変人が友情をはぐくむ短編がいくつかある。 なんか好きだな、こういうの。 『くん、くん、くん、くん』逆転技が痛快な大人の童話である。 作者の描く婆ちゃんは、タフでかっこいい。 『土埃の中に寝そべっていた老犬』田舎廻りの小さなサーカス団を描いた掌編。 ほぼ事実どおりだそうだ。作者の原体験か。 『鏡』双子の美女の愛憎劇だ。本書で最も怖い一篇。 『夏の終わりに』 ひと夏のアバンチュール、なんて言葉を書くだけで蕁麻疹がでそうだが、ブラッドベリの手にかかるとかくも美しい物語になる。 『ミスター・ペイル』唯一のSF、と言っていいのか。宇宙船が出てくるし。 この後どうなるかを考えると、ホラーかもしれない。 秀作ぞろいというわけではないが、何度も読み返したい作が半分以上を占める。評価は最高点で。 | ||||
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改めてブラッドベリの語りの上手さに納得しました。 キット、書こうと思って意匠をこらすのではなく次から次に物語が生まれて来てしまうのでしょうか?ウは上手い語り手のウです。 | ||||
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「人の気持ちは言わず、ずばり事の成り行きを書けばよい。」 ブラッドベリが自身の手法をそう語っていると訳者あとがきで紹介されています。 SFやラブストーリーなど多彩な題材の短編集ですが、特に「覚えているかい、おれのこと("Remember me?”)」というコメディが秀逸でした。 あるアメリカ人男性が近所の肉屋のオヤジと旅先のフィレンツェで偶然出くわし気まずい時間を過ごす、というだけのストーリーですが、共通の話題を持たない二人の関係が緊張したり緩和したり微妙に変化していく様子が、それぞれの些細な行動や発言の描写から伝わってきます。 家族や恋人といった親密な関係を通じて描く人間愛ではなく、気まずいオッサン二人の成り行きからじわじわとにじんでくる慈しみ。簡潔で無駄のない描写をするブラッドベリ作品ならではの情景が味わえます。 個人的には、バナナマンのコントを観ているような気分になった短編でした。 | ||||
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【収録作品】 バビロン行きの夜行列車 MGMが殺られたら、だれがライオンを手に入れる? やあ、こんにちは、もういかないと 分かれたる家 窃盗犯 覚えてるかい?おれのこと くん、くん、くん、くん 目かくし運転 いとしのサリー なにも変わらず 土埃のなかに寝そべっていた老犬 だれかが雨のなかで 似合いのカップル 鏡 夏の終わりに 夜明けの雷鳴 木のてっぺんの枝 女はつかのまの悦楽 処女復活 ミスター・ペイル 時計のなかから出てくる小鳥 原題 Driving Blind 原著1997年刊行 ブラッドベリが77歳の時に発表した短編集だが、その詩情の瑞々しさはあくまで健在。流麗な洗練性と残酷な少年性が不思議なバランスで同居する作風は晩年になっても不変だったと痛感する。 スケッチ風の作品が大半を占めるため、個々の作品の優劣を論じるよりも、そのきらめくような世界を慈しむべきだが、表題作と「ミスター・ペイル」の突き放されるような唐突な無常さもまたブラッドベリの真骨頂。 | ||||
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