(短編集)
火星の笛吹き
- SF (392)
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「火星の笛吹き」(ちくま文庫)へのレビュー。出版経緯は以下のようだった。ブラッドベリの既成の短編集に収録されていなかった作品を、仁賀克雄氏が原掲載誌のバック・ナンバーを渉猟・翻訳して、『奇想天外』誌に掲載した。後の1979年に徳間書店から「火星の笛吹き」(仁賀克雄=訳、日本オリジナル編集)と題して出版された(84年にとくま文庫化)。 これに新たに4編を追加・再編集したものが、このちくま文庫の「火星の笛吹き」(1991年発行)。計20篇収録。この追加4篇には初訳2編・既成2編が含まれる。1938~53年の作品を年代順に配列。何らかの形で宇宙を扱ったものが12篇。 ホラーボッケンのジレンマ(1938、初訳、初めて活字になったブラッドベリ作品) 振子 生きているルアナ 青い蝋燭 火星の笛吹き 偽装大作戦(1943、既訳、本邦初出は不明) 死体回収ロケット よみがえるラザルス 海中の監視者(1944、既訳。『機械仕掛けの神』朝日ソノラマ1984年5月25日刊・所収) 防衛機能 宇宙のヒッチハイカー ロケット・サマー 未来を救った男 苛立った人々 木星行きの予言者 地球のはぐれ者 火星の足跡 草の葉 天国への短い旅 名前のついた弾丸(1953、初訳) 個人的に気に入った作品は、 〇「火星の笛吹き」 主人公は火星人であり、木星人と火星の「闇の種族」が登場する不気味かつ荒涼とした1篇。寂寥と恐怖が漂い、忘れがたい。「火星もの」の嚆矢か。 〇「よみがえるラザルス」 「死体回収ロケット」と同じく、星間戦争の死体回収船を舞台にしたものだが、メアリー・シェリーの「フランケンシュタイン」を思わせる。 〇「宇宙のヒッチハイカー」 太陽系を行き来する船にへばりつき、放浪する人々を描いた作品。登場人物たちはヒッチハイカーというより、20世初頭のアメリカのホーボーや季節労働者を思わせ、彼らを未来世界に持ち込んだ作品と思う。 〇「未来を救った男」 本文を引用すれば「いつも負け犬のような表情をした灰色の男だった。いくらかけてもゼロにしかならない、いつの時代にもいる駄目人間」が未来を救う話。舞台は50年代。売れない作家志望の男に時空を超えてタイプライターが送られてくる。それを通して未来の独裁世界で幽閉された女性学者とタイプを使い交信を行うのだが、その女性の依頼は驚くべきもので・・。映画「ターミネーター」の原型ともいえ、キングの「デッド・ゾーン」に影響を与えたのではないか・・といえばおおかたの察しはつくと思う。かつ逢ったことのない女性への切実な感情、人生に絶望した男の尊厳の復活を描いた点で抒情が溢れて胸を打つ。そしてこの次元を超えたタイプライターは、現在の電子メール、チャットを予見したような設定であることに驚かされる。 〇「地球のはぐれ者」 狂気を扱った作品。マイノリティ、病んだ者への奇妙な優しさが感じられる。そして現代の依存の病理、多様性の必要にも触れた作品で、ラストは不思議でユートピア的だが悲しい高揚感がある。 〇「火星の足跡」 最も詩情を感じさせる好編。1万年の時を超える邂逅。過ぎ去った年月の儚い移ろいが沁みる。 〇「草の葉」 朽ちる運命にあるすべての生命への畏敬に満ち、反面、傲慢・頑迷も愚かさを伝える。「はかなさゆえ価値があり、消え去るからこそ味わいがあるのです。夏の日の美しさは、それが季節のひとときであるからです」。 〇「天国への短い旅」 ちょっとあの名編「万華鏡」を思わせる作品。人の信仰と老い。 総評: 本短編集にはいくつかの作品を除いて、重たくて死を扱ったものが多い。未来や超常事象に材をとったという意味でSFともいえるが、やはりペシミスティックな空気が漂う。同時に消えゆく者、滅びゆく物へのシンパシーも感じられる好短編集。ブラッドベリ作品には、このような惜別とともに、故郷(や地球)から遠く離れた者の強いノスタルジーも感じられる。 執筆年代が15年にわたることもあり、出来にバラつきがややあるが、1日1篇読めば20日間、初期ブラッドベリ世界を味わうことができる。原文はもちろん読んでいないが仁賀氏の訳は読みやすい印象。実質星4つ半。高名な他の代表作品集には全体としては及ばないかも知れないが、ブラッドベリ・ファンは読むべき本と思う。そうでない方にも是非。 | ||||
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仁賀克夫氏がウィアード・テイルズなどの古いパルプマガジンから選んで訳出したアンソロジー。 表題作は木星人に支配された火星を舞台にしたラヴクラフト風の作品だが、ホラーと云うよりは何処か失われた故郷への郷愁の様なものが感じられる。 「火星の足跡」はリリカルな、「防衛機能」はコミカルなSF。 「宇宙のヒッチハイカー」「ロケット・サマー」「死体回収ロケット」などを読むと、矢張り著者は従来の娯楽SFとは相いれない・・・と想ってしまう。 「輝くフェニックス」は華氏451度と同根ながらファンタジーとして処理したもの。 | ||||
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1938年〜1951年までブラッドベリ初期の作品集。デビュー作「ホラーボッケンのジレンマ」(初訳)が収録されている。 収録されている作品は、宇宙を舞台としたものが大部分をしめる。異星人、宇宙戦争など往年のスペースオペラの要素はあるんだが、そのものを描いているわけではなくて、それを背景として、人々の悲哀がつづられている。全編を通して、ハッピーエンドではなく、ラストは、ほろ苦い余韻を残す。どの作品もよいけれど、特に面白かったのは、「死体回収ロケット」、「宇宙のヒッチハイカー」。 ■死体回収ロケット サム・バーネットは、宇宙戦争で死亡した兵士たちを回収する仕事を終えようとしていた。あと残り2体となったとき、敵将のルスラを回収してしまう。しかしルスラは生きていた・・・ ■宇宙のヒッチハイカー ジョージ・ヴァニングは、軍事機密をもったスパイを探索するため、ヒッチハイカーに紛れ込んだ。宇宙空間でのヒッチハイクは、航行するロケットにしがみつく過酷なものだった。目的地に辿りつけず脱落する人々・・・ ブラットベリは、どの年代で読んでも、その時々の味わいがあるんだよなぁ。 | ||||
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