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(短編集)

バビロン行きの夜行列車



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バビロン行きの夜行列車の評価: 4.63/5点 レビュー 8件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.62pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全8件 1~8 1/1ページ
No.8:
(4pt)

穏やかでしゃれた晩年の1冊

1997年、著者が77歳の時に発表された短編集です。

初めてブラッドベリを読んだのは確か中1の時だったか、「10月はたそがれの国」と「何かが道をやってくる」をほぼ同時に読んでガツンとやられました。以来、好きな海外ファンタジーSF作家では不動の1位をキープしています(ちなみにハードSFではアーサー・クラーク)。
当時の怪奇幻想色が強い作風を思うと、晩年のブラッドベリはとても穏やかになりました。ストーリーはむしろ一般小説に近く、ふんわりとした雰囲気です。
棘がなくなったところは正直ちょっと物足りなくはあります。けれど、あとがきに紹介されているトム・ウィッカムの書評を読んでまさにその通りだと思いました。長くなりますが引用すると

「スティーヴン・キングやクライヴ・パーカーなどの大作家は、きれいな床に便所の中身をあふれさせ、嫌悪感でもって読者の理性をぶっ飛ばすことを得意としている。ブラッドベリは読者を引き込むのにこういうあからさまな手は使わない。(中略)この本はありきたりの結末が好きな読者には向いていない。嫌悪感に身をよじらせ憂鬱な気分になりたい読者にも向いていない。
これは楽しみにあふれた本だ。時に不気味で、時に不思議な気分にさせられるが、人生、過去、現在、未来についての一口サイズのごちそうがずらりと並んでいる」

最初は強烈に惹きつけられたスティーヴン・キングの毒々しい作風に、ちょうど疲れてげんなりし始めていたところで、まさに自分の心境だったので笑ってしまいました。

心の中は少年のままに老年に達したブラッドベリが、思い出や過去の経験、そして心の中からひょっと飛び出してきたものを書き留めたかのような、どこか古き良きアメリカの香りがする作品がいっぱい詰まっています。
ブラッドベリは初出版時のあとがきで、運転免許を取ったこともなければコンピュータもインターネットも使わない、ずっとタイプライターで書き続けていると話していますが、そんなちょっと頑固で優しいおじいちゃんからお話をしてもらっているような気持ちになります。
まだブラッドベリを読んだことがない方には、初期の「10月はたそがれの国」や「何かが道をやってくる」「ウは宇宙船のウ」(萩尾望都の漫画化も見事な作品になっていておすすめ)「火星年代記」など、そしてこの作品のような晩年のものと両方読んでみることをおすすめします。
バビロン行きの夜行列車 (ハルキ文庫 フ 1-1)Amazon書評・レビュー:バビロン行きの夜行列車 (ハルキ文庫 フ 1-1)より
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No.7:
(5pt)

語り口を楽しむ珍談集

この短編集を一言で表すなら、珍妙という言葉がふさわしい。幻想や抒情の風味は薄い。
怪奇というほど怖くないが、日常から微妙にずれた感覚と変な読後感が特色だ。
特に気に入った話は、
『やあ、こんにちは、もういかないと』
死んだはずの友人が訪ねてきた。優しくて温かい筆致が印象深い。
『目かくし運転』ブラッドベリには少年と変人が友情をはぐくむ短編がいくつかある。
なんか好きだな、こういうの。
『くん、くん、くん、くん』逆転技が痛快な大人の童話である。
作者の描く婆ちゃんは、タフでかっこいい。

『土埃の中に寝そべっていた老犬』田舎廻りの小さなサーカス団を描いた掌編。
ほぼ事実どおりだそうだ。作者の原体験か。
『鏡』双子の美女の愛憎劇だ。本書で最も怖い一篇。
『夏の終わりに』
ひと夏のアバンチュール、なんて言葉を書くだけで蕁麻疹がでそうだが、ブラッドベリの手にかかるとかくも美しい物語になる。
『ミスター・ペイル』唯一のSF、と言っていいのか。宇宙船が出てくるし。
この後どうなるかを考えると、ホラーかもしれない。
秀作ぞろいというわけではないが、何度も読み返したい作が半分以上を占める。評価は最高点で。
バビロン行きの夜行列車 (ハルキ文庫 フ 1-1)Amazon書評・レビュー:バビロン行きの夜行列車 (ハルキ文庫 フ 1-1)より
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No.6:
(5pt)

素晴らしい語り手ですね

改めてブラッドベリの語りの上手さに納得しました。 キット、書こうと思って意匠をこらすのではなく次から次に物語が生まれて来てしまうのでしょうか?ウは上手い語り手のウです。
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No.5:
(5pt)

フィレンツェで、近所の肉屋に会ったなら

「人の気持ちは言わず、ずばり事の成り行きを書けばよい。」
ブラッドベリが自身の手法をそう語っていると訳者あとがきで紹介されています。

SFやラブストーリーなど多彩な題材の短編集ですが、特に「覚えているかい、おれのこと("Remember me?”)」というコメディが秀逸でした。

あるアメリカ人男性が近所の肉屋のオヤジと旅先のフィレンツェで偶然出くわし気まずい時間を過ごす、というだけのストーリーですが、共通の話題を持たない二人の関係が緊張したり緩和したり微妙に変化していく様子が、それぞれの些細な行動や発言の描写から伝わってきます。

家族や恋人といった親密な関係を通じて描く人間愛ではなく、気まずいオッサン二人の成り行きからじわじわとにじんでくる慈しみ。簡潔で無駄のない描写をするブラッドベリ作品ならではの情景が味わえます。

個人的には、バナナマンのコントを観ているような気分になった短編でした。
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No.4:
(4pt)

洗練性と少年性が不思議なバランスで同居する

【収録作品】
バビロン行きの夜行列車
MGMが殺られたら、だれがライオンを手に入れる?
やあ、こんにちは、もういかないと
分かれたる家
窃盗犯
覚えてるかい?おれのこと
くん、くん、くん、くん
目かくし運転
いとしのサリー
なにも変わらず
土埃のなかに寝そべっていた老犬
だれかが雨のなかで
似合いのカップル

夏の終わりに
夜明けの雷鳴
木のてっぺんの枝
女はつかのまの悦楽
処女復活
ミスター・ペイル
時計のなかから出てくる小鳥

原題 Driving Blind 原著1997年刊行
ブラッドベリが77歳の時に発表した短編集だが、その詩情の瑞々しさはあくまで健在。流麗な洗練性と残酷な少年性が不思議なバランスで同居する作風は晩年になっても不変だったと痛感する。
スケッチ風の作品が大半を占めるため、個々の作品の優劣を論じるよりも、そのきらめくような世界を慈しむべきだが、表題作と「ミスター・ペイル」の突き放されるような唐突な無常さもまたブラッドベリの真骨頂。
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No.3:
(5pt)

瑞々しく、鮮やかに読み手の心を揺さぶる短編集

人種、年齢、時間、国を超えてとにかく心を揺さぶられる作品です。

短編小説集ですが、そのどれもがまったく異なるお話です。
私は中でも『覚えているかい?おれのこと』『木のてっぺんの枝』が印象に残りました。

◆『覚えているかい?おれのこと』
見知った程度の間柄のアメリカ人男性二人が、異国の地フィレンツェでばったり出会い、食事の約束をすることから始まるストーリーですが、結末を想像することすらできず、しかし、読み終えてみるとすごく共感する自分がいて、不思議な感覚に包み込まれます。

◆『木のてっぺんの枝』
いじめる子供、いじめられる子供が大人になって再会し、そしてというお話ですが、読み進むうちに、いじめ/いじめられるという概念さえも変化していくのです。

作者はとても素敵な感性の持ち主で、発表から20年近く経った今でもずっと色褪せません。
女性にお勧めの作品です。
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No.2:
(4pt)

espio999さんのレビューどおりの一冊。

全二十一編が収められた短編集。

ほとんどが、いわゆるオチのないお話。
不思議な余韻というか、置き去りにされたような寂しさが残ります。

わたしはブラッドベリはじめて読みました。
ブラッドベリファンってこの余韻がクセになってるんでしょうかね。わたしもクセになりそう。

本作の基調は、アメリカのグッドオールドデイズな、懐かしいような雰囲気です。
オールディーズが聞こえてきそうな作品があったり、ビッグバンドジャズが聞こえてきそうなのがあったり。
だけど、だけど。
不思議なコードが混ざってる。
オールディーズやビッグバンドジャズとは似て非なる音楽なんです。

ぜひ。
読んでくんなはれ。
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No.1:
(5pt)

醸し出す雰囲気を味わう短編集。

実話やブラッドベリ自身の経験を元に脚色された21編のストーリーは、興味を引くテーマや話題を扱っているわけではなく、また、後を引く謎かけや伏線が仕掛けられているわけでもない。そのストーリーはブラッドベリ自身の経験に基づいて脚色されているように、その内容は、少し突飛な出来事のある日常、の程度を大きく逸脱することはない。しかし、それでも読者を先のページへと進める気にさせる何かがそこにはある。ソレはきっとブラッドベリ自身の語り口やテクニック(もしくは翻訳のうまさ)によるものなのかもしれないし、そのストーリーや文章の醸し出す雰囲気がそうさせるのかもしれない。

その雰囲気と言うのは、涙を誘うようなものではなく、また心温まるような、俗に言う良い話、と言うものでもない。説明するのが難しいけれども、かすかに心情の機微、変化が感じられるのだけれども、ソレが大きく揺さぶられることはない程度には落ち着いた気分にさせてくれるような雰囲気。

例えば、なんとなく日常の風景や出来事を傍観しているときに偶然感じるおかしさだったり、心地よさだったり、あるいはちょっとした不快感だったり。

そういう雰囲気のストーリが詰まった本なので、どっぷりストーリーに浸って読みふけるのではなく、例えば就寝前にベッドで、日常持ち歩いてお茶の休憩時に、ストーリーを一つ読んでみる、と言うようなスタイルで読むと良いかもしれない。
バビロン行きの夜行列車 (ハルキ文庫 フ 1-1)Amazon書評・レビュー:バビロン行きの夜行列車 (ハルキ文庫 フ 1-1)より
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