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坂の途中の家



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【この小説が収録されている参考書籍】
坂の途中の家
坂の途中の家 (朝日文庫)

坂の途中の家の評価: 3.73/5点 レビュー 140件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.73pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全95件 41~60 3/5ページ
No.55:
(5pt)

心理的圧迫の数々が。

初めての子育て。
その過程での繊細で微妙な心模様が手に取るようによく分かる。
補充裁判員となって審理が進められていく過程で熟考する。
同じような環境がある。
それはさりげない世間一般的な細かなことなのかもしれない。
どこが?という問いに明快な答えはない。
違和感があったものの、顧みると、見過ごすべきではない。
ベールに包まれた心理的圧迫の数々。
まわりの言葉は繊細な部分を徐々に傷つけていく。
結婚、出産、子育て。
身近なこと。
相手をおもんばかること。
たまには何気ない話でガス抜きをすること。
ぐちを言うなり、ばかげた話などで、きもちをやわらげる。
プレッシャーに押し潰されない。
ストレスを発散させることが大切。
坂の途中の家Amazon書評・レビュー:坂の途中の家より
4022513454
No.54:
(4pt)

苦しかった

なんとも苦しいというか不快というか…
よくここまで心理面を描いたと感心します。
同じ環境ではないのに、何度も自分も巻き込まれるような気持ちになりました。気持ち悪かったです。
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4022513454
No.53:
(5pt)

心理描写がスゴイ!!

読んでいるとまさしく主人公に自分を投影していってしまい息が詰まるようでした。特に夫の憎悪は実は愛情の裏返しだったのかもしれないという思いが私自身にも当てはまって息苦しくなりました。角田光代さんのこの心理描写、凄いです。地味に思える裁判ネタに関わらず、どんどん引き込んでいきます。
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4022513454
No.52:
(5pt)

息苦しくて、悲しくて、救いをくれる

主人公の里沙子と違い未婚で子供もいませんが、読み進めるにつれてまるで私ではないかと思うシーンが多々あり、それが辛く、読了までかなり時間がかかりました。
裁判員制度と育児、夫婦の問題を主軸に話は展開していきますが、本当のテーマはコミュニケーションの難しさと多様性だと感じました。
誰かに言われる言葉に覚える違和感、追い込まれる自分と、おかしいのは自分なのだろうと思うことでより混乱してしまうこと。里沙子や、里沙子が感じた水穂の姿は、私にとっては育児や夫婦の関係以外でもよくあることです。そしてやはり自分を強く責め、おかしいのではないか、自分が劣っているのではないかと感じ、必要以上に他人を疑ってしまいます。
角田光代さんという高名な小説家の方がそういう人を小説にしてくださったことで、そんな自分を1人ではないと思えました。そしてそれを理解できない人が多数いるということもまた、ただの現実として受け止めることができました。
うまく説明できませんが、読み終えた後、無性に誰かと話したくなりました。相手がどんな人であっても、何をどう感じ、考えるのか、そういうことにちゃんと向き合っていきたいという気持ちにさせてくれる一冊でした。
けしてわかりやすいハッピーエンドではありませんが、だからこそそう思えた気がします。
コミュニケーションで卑屈になりがちで、つい他人を攻撃的に感じたり、必要以上に落ち込んでしまう人には是非読んで欲しいです。
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4022513454
No.51:
(5pt)

グレーのまま留まれるか?

乳児虐待死事件の裁判員小説です。しかし犯人が誰とか、主人公がどんな決断をするかはあまり関係ありません。裁判だからいちおう判決は出ますが、白か黒かはこの小説の中で意味が無いと感じました。主婦の自分は働いている女性の気持ちを、完璧に皮膚感覚までわかることは無いと思います。逆に仕事を辞め自分の子を生むまで、そして実際抱っこするまでその重みや不安はわかりませんでした。他人の子を一瞬抱っこするのとも違いました。「すごく重い、すごく大変」と言葉を尽くされても、これは経験しないとわからなかったと思います。どちらが良い悪いでなく。
事件が起きる前に、決断せず曖昧なまま保つていられれば‥最後のほう、主人公も少しバランスを崩しているような感じがしますが、何とかグレーなまま保つてほしいです。坂の途中で立ち止まることの出来る、タメをもつことが出来たら。倒れずバランスがとれたら。自分の内にも、人との関係にも。
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4022513454
No.50:
(5pt)

入り込んで読みました。

私自身、子供を産んで1ヶ月ぐらいに裁判員の通知が届いたこともあり(選ばれなかったが)、また現在1歳になる娘を育てていることもあり、この本に出てくる二人の女性と自分を重ね合わせて読まざるをえませんでした。
自分が出産後に感じている違和感のようなものが何なのか、この主人公の女性と一緒に自分も考えることができました。
少しずつ変化する心理描写の巧みさがさすがだと思いました。
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4022513454
No.49:
(4pt)

面白かった

女性の細やかな心理描写をうまく表現できていました。自分と誰かを重ね合わせて、その人の心を推測する内に自分とその人が入り混じってしまい、自分が誰か見失ってしまう。あるかもしれません。
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4022513454
No.48:
(5pt)

共感者

二歳の女の子の母親である里沙子が主人公。
物語全体が里沙子の心の中のつぶやきで進められていくかのようだ。里沙子の心の細かな動きが手に取るように伝わってくる。
子育てや夫との関係に疲れ切って、もうどうにもならなくなり子供に手を上げたり無視したりして、なおかつそれを夫や他人に知られることを恐れて取り繕う。
これは何も育児の場面だけのことではないだろう。介護の場面でも、あるいはもっと深刻な形で出ている問題かもしれない。
私自身は、育児はとうの昔に終えており、今は老齢の母を介護している。だからこのシーンは身につまされる。

育児や介護という坂を登り切るためには何が必要なのか?
たったひとりでは坂の途中で道に迷い倒れてしまうかもしれない。
そんな自分を迷い道から引き戻し上へと押してくれるのは共感者なのではないか。

里沙子は公判に通ううちに自分と被告人の水穂の姿がしだいに重なって見えてくる。
水穂の疲労や心の痛みと自分のそれとの区別がわからなくなってくる。
水穂の中に自分自身を見る。
子供を浴槽に落とす感覚まで里沙子にははっきりとわかる。

ただ最後のところで里沙子は水穂にはならないだろうという確信のようなものが残ったのではないだろうか?
里沙子は水穂に救われたのだと思う。
里沙子にとっては苦しい10日間だったが、その間水穂は里沙子にとって共感者でもあり併走者でもあったのだ。
これから里沙子の家庭はどうなるのだろう。里沙子はどう生きるのだろう。
きっと坂の上を目指して強く一歩を踏み出すだろう。
苦いけれども、私には納得のいく結末だった。

里沙子の義母の描写は面白かった。思いやりのある気のいい人柄。神経ピリピリの里沙子の言動にオロオロする姿は可愛らしくも気の毒だ。
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4022513454
No.47:
(5pt)

痛いほどよくわかるのは母親との記憶の方

未婚で子供なしの女です。両親とも他界し身内は世帯を持った弟のみです
そういう女の人生の王道?から外れた女の感想としては正直、子どもに対しての感情は他人事として冷静に読めました
徹底的に冷めた目で見ても興味深く面白かったです

我が身にひきつけて切実さを感じたのは残りわずか数ページに書いてあった理沙子の母親への記憶。。まさに私と同じでした
母は表向きは私を応援してるふりをしましたが自分の不本意きわまりない結婚生活のうさを晴らしたいのかそれとも自分より若い同性への単なる嫉妬なのかわかりませんが、私をことあるごとにけなしまくり私が友人と遊ぶのを嫌い自分と違う自由で幸福な人生を選ぶのを全力で阻止しました
自分のような男に依存するだけの人生を選んで苦しんでほしくないという純粋な母心と、一人の女としては自分とは違ってあらゆる選択肢を選べる時代に生まれた娘に対する羨望と嫉妬でおそらく母親自身も切り裂かれていたんでしょう
母の私に対する態度と弟(母にとっては息子)に対する態度の違いは死ぬまで変わりませんでした
よくあることですけど娘は奴隷扱い、息子は王子様→夫で満たされなかった男性からの愛を代替的に満たしたんでしょうね
女の人は思春期をすぎたら母親を冷静に見たほうがいいですよ。母親なんてそんなきれいなもんじゃないです
母親といえど人間、一人の人間の一つの属性にすぎないです(世間はそう見てないようですけどね)
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4022513454
No.46:
(4pt)

しつけと虐待は紙一重の怖さ

我が子が小さい頃のことを思い出しつつ読みました。
叩いてしまうとか、落としてしまうとか、そういう経験の無い私でも、積み重なっていく疲労や、泣き止まない時のストレスやイライラはよくわかるので、ほんの紙一重の差で、もしかしたら自分にもありえたのかと思うと怖く感じる部分がたくさんありました。本当に結構怖かったのでマイナス1です(笑)
いつも側にいてくれる旦那に感謝の念が湧きました(笑)
また、偶然にも裁判員に選ばれそうになった事があり、(選ばれませんでしたが)、もし選ばれていたらこんなに大変だったんだな、と思いました。
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No.45:
(5pt)

共感ばかりでした!

4歳と1歳の子供を持つ母です。
読み始めると夢中で一気に読み終えてしまいました。
子供を持つ母として、寒気を覚えるほど主人公に共感するばかりでした。
夫婦間の微妙な関係、保健師とのやりとり、様々な友人との関係、義母と夫の関係、そして子供に対する想い…虐待する母、しない母に関わらず、こういったことはあると思います。
そして、子供が産まれる前と産まれた後で、良くも悪くも夫婦の関係は変わると思います。
私だけが感じていた訳ではなかったのですね…
こんなにも微妙な心情を絶妙に描かれた角田さんの素晴らしさに改めて驚きました。
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No.44:
(5pt)

読み応えあり

裁判員裁判の裁判員に選ばれ、担当事件と自分の子育て、家族との関係を書いたものである。
私は、角田光代は大好きで、ほとんどの作品を読んでいる。
いつもその心理描写に引き込まれるが、この作品も主人公の気持ちが伝わってきて、あっという間に読み終えてしまった。
作者には子供はいないはずだが、子供の描写、母親の心理、みごとにリアリティーがある。
読み応えのある一冊である。
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No.43:
(5pt)

「心理的暴力による支配」の恐怖がジワジワ伝わってきた

暴力と言うと、殴る・蹴るといった物理的な暴力を連想しがちだが、
相手の人格や能力を「非常識」「他の人より劣っている」などと否定し続けて、本人に
その通りだと思うように仕向けるという心理的な暴力もある。
 しかも、それによって、被害者自身が、加害者を嫌うどころか逆に『自分は間違っている』
『自分が悪い』と思い込み、加害者の言いなりになって(加害者に支配されて)しまうようになる。
 こうした心理的暴力は、親子間・夫婦間・兄弟間といった家族内でも、国や社会全体でも
行われうるし、現に行われていると思う。これは、一種の洗脳であり、物理的的暴力よりも恐ろしい。
 この本では、その恐ろしさがジワジワと伝わってきて怖くなった。
 なお、この本はフィクション小説なのだから、現実を正確に表していなくてもいいと思う。なので、
「こんな乳幼児はいない」「乳幼児検診の仕組みが現実と違う」「栽培員制度の仕組みや運営が現実と
違う」等の批判は、この小説の本旨ではなく枝葉末節を批判したもので、あまり当を得ていないのではないだろうか。
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4022513454
No.42:
(4pt)

ジワジワくる怖さ

じわじわくる、何とも怖いお話。
途中までは、里沙子の夫の言動に憤りを感じつつ読み進めていたが、終盤は、夫婦という関係のみならず、親密な他人との関係すべてにおいてありえる、深層でのパワハラ、あるいはマインドコントロールへの恐れにシフトしていくのでした。
そして、こういう感想をもつに至った根拠が里沙子の主観のみ、というところもまた怖い。

それにしても角田光代のうまいこと。大きな事件によることなく、食卓での会話など、小さなエピソードで、自分と他者との異質性を感じさせたり、褒め言葉として読んでてしんどくなります。

里沙子を待ち受ける今後のことを思うとラストは物足りなく、読後感はよろしくないけれど、読後感の良い本ばかり読んでも仕方ない、ということで、子どもを含めてパートナーがいない方にもオススメできる本です。
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No.41:
(5pt)

重たい話だが、傑作

我が子は成人し、子育ては遥か昔になったが、理沙子の気持ちは手に取るように分かる。おそらく、多くのお母さんが、似たような経験があると思う。そして多くのお母さんは、運よく、子育てを終えている。運よく、夫や、家族や、友人やらに恵まれて。しかし、格差の広がる社会の中で、人のつながりが得られない母親は、どんどん増えてきているのではないか。母親だけでなく、自己肯定感を持てない人も増えているのではないか。空恐ろしくなる小説である。
 裁判員となり、裁判に参加する中で、自分を深く見つめてしまう、この小説の手法は面白かった。途中で、もしや、真犯人は夫だったというどんでん返しが用意されているのかとも思った。しかし、理沙子が自分の主張をきっちり述べるというこの小説の方が、いい結末だったと思う。
 住む家は、まだ人生の途中。まだまだ、坂は続く。重たい小説だが、子育て中の人にも、結婚を考えている人にも、読んでほしい一冊。
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4022513454
No.40:
(5pt)

不安になっても良いんだよ

主人公、里沙子の気持ちがとても良くわかる。
子供がいるか否か全く関係なく。
夫からの目に見えない重圧。
日に日に自信を無くしていき、心身ともに消耗していく里沙子。
「不安になっても良いんだよ」と言ってあげたい。
それでも主人公の里沙子は真面目でよくやっている妻、母であると思った。
いろんな問題が生じたのは夫婦の相性ではないか?と最終的に思った。
里沙子が悪いのでもなく、だからと言って夫だけの責任でもないと思うので。
里沙子が自信をもって元気に生きていくことことを願った。
角田さんは女性の気持ちを正直に掘り起こし、それを丁寧に描写する。
なので、どんどん引き込まれ、自分も救われる気持ちになれる。
角田さんの次の作品を早く読みたいです♪
坂の途中の家 (朝日文庫)Amazon書評・レビュー:坂の途中の家 (朝日文庫)より
4022649089
No.39:
(4pt)

好きなテーマですがストーリーはひたすら平坦でした。

私も主人公に似たようなパーソナリティを持っているので凄く感情移入できるんですが、ストーリー自体は平坦です。真面目で不器用で不安だらけの主人公が、日常(イヤイヤ期の子育て)と非日常(裁判員裁判)を2週間両立させることになり、どう乗り切っていくのか…心の動きに焦点を当てたストーリーです。この二つの題材を組み合わせたのは主人公のパーソナリティーを浮き彫りにする材料として面白いと思います。私はカウンセラーなのでまるで主人公のセラピーをひたすら聴いてるような感じがしました。そのリアリティーには好き嫌いがあると思うので他人には勧めにくいというか、全部読んでもらえなさそうな本です。
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4022513454
No.38:
(4pt)

主婦が「自分」を見つめる時

主人公と同じく2歳の女の子を育てる主婦です。子育てや夫との関係という日常ありふれた卑近な話題を丁寧になぞっている本は意外に少なく(そういったごくごく普通の日常生活が一般人と作家さんではだいぶかけ離れているから?)、苦しくなると心情の同調はひたすらネットの相談サイトに頼っていましたが、この本は珍しく主婦の心に肉薄していると思います。

「裁判員制度」という見目新しい制度を主婦の日常に切り込ませ、たった一週間ぽっちりのその裁判の中で、裁判員となった主人公自身が人生観を変えていく、外見上、客観的にはほぼ分からない、とてもスローな展開なのですが、主婦の内面の中で、それこそ天変地異のような変化をもたらしている、そこを詳しく丁寧に追っている作品です。

男女平等、1億総活躍社会が叫ばれるようになった日本でも、彼女のように夫から大変分かりにくいモラハラを受けている、所謂「下に見られている」女性はとても多いと思います。それに甘んじてしまって、それに気づけていない主人公のような女性もかなりいるでしょう。私もモラハラとは行かないまでも、時折感じる夫からの違和感や、姑との関係、主婦の日常の不自由感に、形や言葉を与えられたような感じで、ある意味本を読みながらうさを晴らしていくような解放感を感じました。しかし開けてはいけないパンドラの箱を開けているような、ホラーを読むような恐怖を味わいました。事実、普通に日常を営んでいた本の主人公は、終盤に至るにつれその日常を狂わせていきます。人によっては見て見ぬふりをしていた違和感に気づかされ、周りとの関係を変えてしまいたくなるようなきっかけとなるかもしれませんので、注意が必要です。
結婚している女性にとって、夫、子ども、親戚といった日常的に周りにいる人物に対する違和感というのは、たとえ小さくても、つもり積もれば本当に自分の性格を変えてしまい、人生を変えてしまい、果ては「自分」が何だったのか分からなくさせる、「自分」が何をしたかったのか分からなくさせる、本当に恐ろしい力を持っていると思います。
忙しい日常生活の中でも、つかの間、自分取戻しの時間を、是非持ちたい、持つことが大事だと、心から思わせてくれた作品でした。
坂の途中の家Amazon書評・レビュー:坂の途中の家より
4022513454
No.37:
(4pt)

裁判員裁判を題材として、「家族のあり方」及び「身近な他人の気持ちの受け止め方(特に受け手が感じる<悪意>)」を問い掛けた身につまされる秀作

裁判員裁判の補充裁判員に選ばれたヒロインの眼を通して「家族のあり方」を問い掛けた作品で、読んでいて身につまされた。事件はヒロインと同世代の女性による乳幼児の虐待死。作者の工夫は、ヒロインと被告人の家族構成を同一にしている点(両者が元キャリア・ウーマンという設定も同一)で、子育て中の被告人の心理過程及び苦労がヒロインのそれと重層的に読者及びヒロインに対して押し寄せて来る。

実際、ヒロインは裁判員になったせいで、自身の苦い子育て体験を思い出し(まだ子育て中だが)、夫の無理解及び自身の神経過敏によって、夫との関係がギクシャクしてしまう。また、定番ではあるが、嫁姑問題も自然と浮かび上がる。何より、「自分に子育てをする資格があるのか」というヒロインの自責(多分、被告人の自責でもある)の問い掛けが重い。家庭、特に子供、を持つ読者にとっては惹き付けられずにはおられない内容である。作者が裁判員裁判を採り上げた上手さの一つは、公判が進むに伴い、状況証拠が次第に明らかになると共に、ヒロインの苦い子育て(結婚)体験の記憶も鮮明となり、ヒロインの心の揺れも次第に増幅する点である。読んでいて、本作の意匠が「身近な他人の気持ちの受け止め方(特に受け手が感じる<悪意>)」の追求にあるのではないかとも思った。

表題の「坂の途中の家」とは、被告人が住む家の形容でもあるが、"子育て期間"が家庭を築くまだ途中段階との比喩でもあるのだろう。その「坂の途中」を緻密な心理描写で描いた秀作だと思った。
坂の途中の家Amazon書評・レビュー:坂の途中の家より
4022513454
No.36:
(4pt)

衝撃。

角田光代さんの本は大好きでいつも読んでいますが、こちらは本当になんというか共感出来たり、自分を振り返る本になりました。私はまだ20代で結婚、子供もいません。しかし、こちらで描かれている表面化しない大切だと思っている相手への言葉の攻撃。なんだか思い当たる部分が多いなと感じました。角田光代さんの中では序盤は単調だなと感じましたが、読了後の喪失感は断トツであると思います。いつか自分が結婚し、子を持つときに備えて勉強させられ振り返るべき点が見えてためになったと心から思います。
坂の途中の家Amazon書評・レビュー:坂の途中の家より
4022513454

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