■スポンサードリンク
吉里吉里人
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
吉里吉里人の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.95pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全51件 21~40 2/3ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
東北の村である吉里吉里村が突如日本国に対して独立を宣言する騒動の僅か2日間を描いた作品。 といえば聞こえは良いですが文庫で3冊分、1冊500ページくらいあります。読み終わるのにかなりの時間を要しました、もっと時間があればもう1度読み返したくなるくらいの充実した内容です。 ネタバレなしの感想としては、とにかく面白い思考実験みたいな小説ですが、その細やかな資料集めと知識の膨大さを考えると相当な下準備をされたのではないか?と思います。ここで終わって良かったのか?まだ続ける事も出来たのではないか?とも思います。 何と言いますか、総合小説というジャンルを作りたくなります(そういえば、村上春樹さんがティム・オブライエン著の「ニュークリア・エイジ」を評して総合小説っていう言葉を使ってましたね・・・)。SFであり、コメディであり、国家論であり、医学哲学人間論でもある小説、ちょっと類似した小説を読んだことが無いと思います。 井上ひさしを読んだことが無い方、ビクトル・ユゴーの小説が好きな方(一見軽めに見えて重い要素を含んでます)にオススメ致します。 アテンション・プリーズ! ここからネタバレありの感想になります。未読の方はご遠慮くださいませ。 まず、構想として、分離独立運動を描く、というのは劇的なものだと思いますが、そこにエロも、SFも、ギャグも、国際法も、医療も、哲学も、入れてしまうのが独特で凄いですね。構図てして記録係なる「わたし」という人物と作家古橋健二という数奇な運命をたどる三流作家の立ち位置からして入れ子構造になっていて面白くも示唆に富んでいると思います。何故ならこの長い様々なものを扱った小説は二項対立を主軸とした小説だと感じたからです。日本国と吉里吉里、標準語と方言、憲法と国際法、農業と工業、健忘症と記憶増進症、古橋と佐藤、国籍の血統主義と出生地主義、免許医と無免許医、きりがないくらいこの二項対立を軸にして、その越境の部分で面白さを出していると思います。 少々古橋健二に捉われ過ぎてしまっている感はありますし、上巻では割合引っ張り過ぎな感じ(古橋の生い立ち)もしましたが、やがて吉里吉里国の大統領になるわけですし、人柄を描いておく事は重要だったのかも知れませんね。しかもこの人柄の部分がナンセンスギャグに起因にていますし、恐らく、井上ひさしさんの自虐的な分身として描かれているのでしょうから、余計に描くのが楽しかったのかも。 私は少し古橋に同情的でして、イサム安部にまでバカ扱いですし、やること全てが裏目に出てしまうのも同情を誘います。物語が転がっていくにはこういうおっちょこちょいなキャラクターが必要なのだとしても、ちょっと人間としての良い部分をもう少し出してくれないとツライなぁ、と感じました。これだけ資料を読み込まないと作り出せない作品を書いている井上ひさしの(私の勝手な想像ですが)分身なわけですから、小市民的で、遅筆であるのは仕方ないにしても、何か良い部分を出して欲しかったです。あ、文学賞の受賞の中の「わ、わたしは午後に死にたくない」は唯一良かった作品でした! またこの古橋の付き人編集者佐藤の人物像がなかなか面白いです。編集者とは、こういう人なのかも、と思わせるに十分な説得力があります。ある意味実務に於いては権力にでも寄り添う変わり身の素早さもありますし、説得力も行動力もあります。もちろんだからこそ信用出来ない男でもあるんですが。古橋と佐藤の掛け合いは毎回重要な場面で起こりますし、なかなか見応えありました。 医学立国、タックス・ヘイブン、自給自足、国際卓球ワールドカップ、金本位制度、思いつくだけでも凄い事ですし、国際法の勉強までしないと言えない部分も多々ありますし、その辺が全てを検証出来る知識も無いんですが、自分の専門分野への発言もありまして、この部分は非常によく調べてあって素晴らしいと感じました。おそらく、国際法の部分もかなり正確に調べ尽くしたのではないか?と十分に想像出来ると思います。だからこそ、隣村である家とのやっかいな国籍問題も出したのだと思います。この部分のロミオとジュリエットのような部分の解決を見ても相当詳しく勉強されたんだろうと思います。本当に凄い。 医学関係も今では日本でも脳死判定からの臓器移植が可能になりましたが、当時はそういう知識を得ようとするのはなかなか大変だったと思います。それに実際の心停止と脳死関係も分かりやすく、しかもパワフルタローなる人物とゼンタザエモン沼袋の討論場面の説得力(医療は公的であるべきとか、ファミリードクター制度のような連携のなさとか、予防へのおろそかさとか)はとても強く同意せざる得ないです。ちょっと勉強した、という程度ではなく、ブレーンになった方がいるのだとしても、これほどまでに核心的な部分への言及は本当に凄いと思います。 医学面で唯一飲み込みにくかったのは、ゼンタザエモン沼袋氏の息子のくだりですね。自死権を認めるとしても、ちょっと動機としても飲み込みにくいですし、ここまでいろいろ調べて納得出来るレベルまで制度化している吉里吉里国でありながら、この部分だけはルールでさえ無かったのは当然としても、もう少し飲み込みやすい理屈があっても良かったと思います。 で、他にもいろいろ感想はありますし、あまりに広いトピックを扱っていますし、それは読書会みたいにみんなで話し合えば面白いだろうな~と思います。でちょっとあさはかではありますがまとめのような大きな話しになりますが、主題は「理想」と「現実」だったのではないか?と愚考しました。 輝かしい理想を掲げないといけない、が、苦い現実を知る事からしか始まらない。と言われているように読後は感じました。分離独立の、それも用意周到な計画性のある展開を描く事で、面白可笑しく現実を知る事が出来ます。農政の、医療制度の、経済政策の、それぞれの不備や志の低さなどを知る事で、現在置かれている見えにくい状況を知る事でもっと理想に近づける努力を、国という単位では難しいかも知れないけれど、もう少し努力しようよ、と言われているような。もちろん面白可笑しく読めて、それで良い部分もあるでしょう。でも、たとえば、本当に困った事が起こったときに、こういう道もあるんだよ、と冗談めいてはいるけれど、理想的な一面を見せる事が出来たら、それは力強く輝いて見えると思います。 東日本大震災という大きな出来事が起こった後だからこそこの本が読まれるんだと思います。私は今すぐ原発を止めろとは思いませんが、なくす方向を探るのがコストパフォーマンス的にも、どう考えても現状日本では無理なんだと思いますけれど、ここが日本的で動かしたモノを止める事が出来ない「空気」に支配されやすい国民性なんだと思います。感情的に吹き上がる事が合っても最後まで達成する事が出来ない事が多いと思うのです。なんだかんだ言っても政治的に、結果原発も動いてしまう気がします。 この本を読むと、吉里吉里人たちがいかに先を見越して、知識を得て、最終目的を達成する為の努力を惜しまなかったか?を学ぶ事が出来るんだと思うんです。だから今読まれる本ですし、読まれるべき本だと感じました。別に分離独立しなくとも、主権者である国民が国家をコントロールする努力を払え、という風にも読めますし。 私は吉里吉里人になりたいと思いますね、日本人よりも論理的で努力を払える、現状よりも理想を掲げる。でも現状を知って落胆しないで変えようとするチカラを継続する。なんだか変な話しですがユゴーの「レ・ミゼラブル」のアンジョーラ(もしくはアンジョルラスと表記される事も。革命を起こそうとする大学生グループabcの友のリーダー)を彷彿とさせる人物が多いのが、フランスにいて日本にはあまりいないタイプの人物だと思いますし、もう少しこういう人物がいたら良いのに、と思います。革命を起こすというと反権力的な人物に見えるかもしれませんが、結局アンジョーラの試みは失敗しますし、無惨な最後が待っているんですが、それも善し、この経験を、行動をする事が新たな同じような人物を生み出す事に繋がる、という信念を持っているのが潔いと思うのです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
Speedy shipping, good quality. Thanks. | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
Speedy shipping, good quality. Thanks. | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
内容はネタバレに繋がるので回避しますが、故郷が岩手の私には 方言が懐かしく暫く会っていない祖母を思い出しました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
近代文学を専門とする、大学教授から勧められて読んだ本です。 純文学と比較して「つまらない」とおっしゃる方もいるようですが、そもそも 目的が違うのですから、SF、娯楽として読めばこれほどオモシロイものは無い。 扱う題材の特性上、科学や医学、国際情勢や経済の知識が古く感じたりもするでしょうが、 そこはそれ、文豪夏目漱石の作品だって今や古臭いのですから、時代を加味して読めば いいのです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
この作品は、一度挫折しております。しかし、今回(前回は黙読)は、音読で再チャレンジしたところ、まぁ面白いなんの、吉里吉里語(東北弁?)の持つ味が、良く堪能出来ました。…井上先生の凄さを改めて実感した次第です。…黙読で挫折した貴方、是非とも音読・朗読してください。これぞ、文学!を実感出来ます。大傑作太鼓判!! | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
吉里吉里人の綺麗な初版はなかなか無かったので嬉しいです。 読んだ跡が感じられないほどの美本です! 今後、高齢者などが様々な本を市場に提供するでしょう。 それらが愛書家の手に渡って永く保存されることを願います。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
娘のために購入しました。絶版になっていたものなので、助かりました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
東北のある町が日本国に対して決別し独立宣言をするという SF ドラマ。井上ひさしの面目躍如。 冒頭に置かれている歴史的および物語の架空設定に関する論及は圧巻ものである。 (A + B + C) - (X + Y) = ? という数式が経済的(ロジスティックな)裏付けに使われている。ん? なんのこっちゃ? 「おらだは吉里吉里人(ちりちりずん)なのす」 ニュース速報で、今朝六時すぎ、東北本線赤壁付近で... これはどういう叛乱の勃発なのか。Red Cliff で何が起こったのか? 炎上したのか? 俺達(おらだ)の国語は可愛(めんご)かれ。それを合言葉にして、「あずさ2号」ならぬ「十和田3号」を吉里吉里人たち(総人口: 4087人)は不法侵入とみなす。自給自足(ずきゅうずそく)で、国語は吉里吉里語なのだ。 吉里吉里人は眼(まんなご)はァ静(すんず)がで。吉里吉里語に関する問題や解答が飛び出してきて度肝を抜かれる。このあたりの論考は詳細を極め、さらに吉里吉里国家の演奏が少年鼓笛隊によって奏でられ、国立ヌード劇場まで開帳をおこなう。爆笑、また爆笑。 これ以上ストーリーの流れを追ってレビューをおこなう必要もないであろう。安野光雅氏の装幀画は、ご親切にも、国会議事堂、迎賓閣、国立劇場、吉里吉里郵便局、銭湯、よろずや、吉里吉里小学校などを描いている。双頭の犬(なんだろう)も町を徘徊しており、何やらリアルな不思議なコミュニティーである。 この国がどういう結末を向かえるのか。水滸伝とまた違った卓抜な国家論であり、文化論であり、内容的にはトンデモナイことを言っております。 深読みすると、いくらでも楽しめるコンテンツ満載の奇想文学。これは何度読み返してもスゴイ。井上ひさしの最高傑作としても異論はない。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
「もっきんぽっと」に次ぐおもしろさです。大変読みごたえがありました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
井上ひさしは天才です。おもしろおかしく書きながら、世界の仕組みや人の情を教えてくれる。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
探していた本だったので嬉しいです。有難うございました。また利用したいです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
探していた本だったので嬉しいです。有難うございました。また利用したいです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
探していた本だったので嬉しいです。有難うございました。また利用したいです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
井上ひさし「吉里吉里人」を読了。年末からゆっくり読み進め、約1ヶ月で読了。ボリュームタップリの書でした。特出すべきは東北弁を駆使し、文化の違いまでに高めた使用法であろう。日本語にルビをふってまで東北弁(吉里吉里語)を前面に押し出した井上の覚悟に頭が下がる。またギャグは下品なものから、ハイブロウなものまで各種盛り込まれており、下ネタありのドタバタな面も多々あります。ですからなんとなく古臭く感じてしまう読者も多いのかもしれません。 ですが、東北のある地域が日本国から独立するなんて、同じ東北人として夢を感じてしまう。そうなのです、東北のアイデンティティはあるのです。ですから他地域と比較なんてすべきではありません。東北の気候や風土、そして言葉を愛すればいいのです。そこにきっと幸せがあるのです。 そんなことを、震災と絡めて、本書を読み感じたことです。 東北人は必読かもしれませんね。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
この作品が出版されたころ自分はまだ小学生でした。 「日本からの独立」という言葉に刺激され、年嵩の兄弟が購入したものを読もうとしたのですが、当時はさっぱり理解できなかったことを覚えています。 今回、ふとしたきっかけで検索に古本がひっかかり、「ああ、そういえば」と思い再読です。 一部、ギャグや不真面目と評価なさる方もいると思います。 ですが、人間にとってなにが本質なのか、再考する機会になると思います。 ちょうど大阪W選挙が維新の会の大勝で終わったときです。独立、再構築も主題としている本作品は関係があるかと思います。 子供が高校生になったら読むことを薦めようと考えています。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
上・中・下、1500ページを読み上げた時に、頭に浮かんだ言葉は<比類ない小説!>の一言だった。本当に、日本(いや、世界でもか?)のフィクション(作り話)として比類ない作品だった。今は、「読んで良かった」という達成感と満足感に浸ることができている。すごく多彩で楽しい遊園地で思う存分に遊ばせてもらったような、山にたとえれば剱岳に登ったあとの「よく登れたものだなあ、でも楽しかった!」という感じの気分だ。巻末の由良君美(って誰?)の「これだけ、ふんだんに言葉遊びを野放図に展開しながら、これだけ生真面目な法律論、国家論、単一民族日本という迷信批判―ひいては標準語とか正しい日本語とかいう愚かな文学圧殺的思考批判を一方において主張しえた作品は、戦後日本に、この作品以外に見当たらないのも事実である。」という解説は適切な評価だと思う。何か文学的冒険、サーカスを二流・三流作家が人寄せのためにするのでなく、そんな必要のない、大御所作家が必要もないのに何故か読者のために最高難度のぎりぎりの試みと業(わざ)、サーカスを披露してくれているのを感じて有難さを覚えた。閑話休題、下巻の話。当初、話の内容も気のせいか、いまいち盛り上がらない。上巻や中巻ほどのテンションの高さはなかった。「ちょっとネタ切れなのかな?」と思っていたら、とんでもない!、終盤から「寝た子を起こす」ように日本国家権力側からの攻勢が強まり、風雲急を告げ、ただでさえ奇想天外な物語なのに、その上にとんでもない荒唐無稽な展開を重ねて、話が一気にグローバルな<志(こころざし)>をもって展開し始める。目を話せない状態で読者を引付けるだけ引付けておいて、最後はこの吉里吉里国という<ユートピア>の独立が如何に薄氷を踏むような状況の中で推し進められていたのかを、日本国家権力及び少数民族の独立問題を抱える列強大国のザラリとした触感とともに急転直下、読者に思い知らせる形で終わる。長鼻(ボンネット)型の国会議事堂車バスがのんびりと国内(村内)を走るファンタジーは、実は命懸けと表裏一体だったのだ。 ※ちなみに1500ページ読み終わって、経過した時間は2日間のみである。でも、不自然さは感じなかった。というより、感じるヒマが無かった。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
豊かな言葉の海に漂いながら、いろんな文学的仕掛けや試み・実験に満ち満ちた楽しいミュージカルか、コメディを堪能している気分になった。変化に富む話の展開の中で、げたげたとちょっと下品に、下世話に、繰り返して何度も腹を抱えて笑わせられた。吉里吉里国では、ストリッパーが重要無形文化財となり、売春行為も女性の自立した意志を前提に合法化される。本作品の狂言回し役であり、偶然吉里吉里国に迷い込んだ憎めない俗物三文文士の古橋健二50歳は、裁判にかけられ、有罪となる一方で、出稼ぎに出た夫に逃げられた色っぽい美人妻ケイコ木下(きおろし)27歳の婿養子として結婚することになり、完全に舞い上がてしまい、吉里吉里国への移民第一号となる。それがテレビ中継を通して日本中に知れ渡り、日本国政府に衝撃を与え、一日に5回も閣議が開かれるほどに慌てさせる。一方、世界最高の医療体制を整えた吉里吉里国立病院の全貌が明かされ、医療立国を切り札とする吉里吉里国の独立戦略も明らかになる。内容豊富、アイデア・下ネタ満載、メッセージ性(やや政治的?)、人情味、言葉遊び、有り余るサービス精神。全体を通して決して重くならずに軽やかさが維持されている。とにかく、読書を通してこんなに笑わされた経験は、久しぶりだ。<哄笑文学>とでも呼びたくなる。但し、この小説の間口の広さや奥行き・深さを、翻訳によって表現することはほとんど不可能だろう。日本の最高の作品が、その表現の多彩さと質の高さゆえに外国の人々に知ってもらえない。村上春樹は、世界に知ってもらえるが、井上ひさしのすごさは、なかなか知ってもらえない。ちょっと残念だが、仕方の無いことだろう。ちなみに、上巻・中巻、合わせて1000ページだが、作品中では、まだ一日半しか時間は経っていないのである。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
東北地方の一寒村が日本国から独立。「吉里吉里国」を宣言。 国民である吉里吉里人は、吉里吉里語(日本語の東北訛りによく似た言語)を公用語とする4,200人弱。 稲作、畑作の重視を国是とし、全国民の自給自足を実現。 牧場では1,500頭の牛が放し飼いにされており、肉のほかにバター、チーズも自給。 これは、食料自給率40%足らずの日本国(当時)からの独立の、いち要因でもあった。 また、吉里吉里国内には地熱発電所があり、エネルギーの供給にも支障はない。 国民に対しては、手厚い保護を約束しており、自国の産業による収入で国政をまかなうので、税金の徴収はしない。 国内には木炭バスが巡回していて、石油を使う自動車もない。 石油の使用をなるべく減らすという方針から得られた結論です。 そしてこの木炭バスこそ、国会議事堂車とも呼ばれ、国政の殆どを担っている重要機関なのですが… その仕組み、見事でありますが、詳しくは本文に譲ります。 日本国からの独立承認を得る為の、吉里吉里国の持つ切り札は数多く、実に多才です。 一枚も二枚も先を読んだ政策には驚くばかり… 日本国がまともに相手にしないのであれば、政治的に相手にする他国との関係を強める手法を選びます。 吉里吉里国通過<イエン>は、金本位制の兌換銀行券。 いつでも「金」との交換が可能。 さらには、タックスヘイブン、無税国家を標榜し、他国からのマネーの流入を促します。 また世界中から優秀な医者を集め、医療立国を目指す。 高度な医療技術と金本位制。 この2本を軸に進められた独立国家騒動。 そこには、国際社会や国内問題の軋轢に疲弊している日本国政府への批判を、 ユーモアをもって指摘する著者の姿勢が垣間見られました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
井上ひさしは仙台で育った作家ということもあり、仙台出身の私にとってずっと気になる存在ではあったのだが、これまで氏の作品を読む機会は不思議と無かった。だが、昨年、氏が他界したことを受けて、読んでみようと本書を手にとった。私の氏に対するイメージは、氏の政治的な言論から来ているもので、反戦リベラルの知識人というものだった。ただ、本書を読むと、確かに氏が強固な反戦リベラルのイデオロギーの持ち主であることが分かったが、氏のパーソナリティーはそれだけで説明できないほど奥が深いということ、氏が好きな言葉を使うと「面妖」とでも表現するしかないものであることがよく分かった。主人公である古橋健二には明らかに筆者が投影されている。吉里吉里人の奇想天外な発想も面白いが、古橋の言動もまた奇抜である。本書を読んで、筆者の溢れ出るような創作力、想像力に圧倒された感がある。 本書の最大の特徴は、かなりの部分が吉里吉里語、要は東北地方のズーズー弁によって書かれていることであろう。東京生活が長くなり、ズーズー弁をほとんど話さなくなった私だが、本書を読んで、そうそう、こういう言い方をする、と思わされた箇所がいくつもあった。井上氏はズーズー弁に関わる仕事もしていたと記憶するが、さすがによく研究しているなと思った。ただし、筆者は本書を通して何も東北地方の農村を描写したかったわけではあるまい。筆者は吉里吉里国を通して東北に限らない日本の農村の実態を明らかにし、経済大国と化した戦後日本の様々な問題をえぐり出すことに主眼を置いていたのだろう。本書は一見ドタバタ劇に見えるが、その実、シリアスな作品なのである。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!