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ランドマーク
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ランドマークの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.53pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全17件 1~17 1/1ページ
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兎も角、文章で読む者を引っ張っていきます。それがわからない人には愚作に思えるかもしれません。確かに内容は何が何だかわからない顛末ですから、ある意味で現代のカミユ作「異邦人」と言えるかもしれません。どの登場人物も不可解で、展開も不条理と言えば誠に不条理です。各人物が一体何をよりどころに生きているのか、その行為の一つ一つが理解できませんし、最後の自殺者の死ぬ理由もわからない。読者はホッタラカシにされてしまいます。しかし、引き付けられ読まされる、最後まで読まずにはいられないでしょう。これが、本格的小説、言い方を変えれば、純文学の恐ろしさと言えるのではないでしょうか?投げ出された様な、優れた作品の持つ、考えずにはいられない余韻が残ります。もっとも、建築学の知識を晒した蘊蓄は余計ですが・・・。 | ||||
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大宮にそびえ立つ、ねじれた独特のフォルムの35階建て超高層ビル。建築に関わった鉄筋工と建築士、二人の男性の暗澹とした日常が描かれている。 鉄筋工は貞操帯を装着するという奇矯な行動を続け、建築士は愛人との倦怠感に活路を見出そうともがいている。まるで接点のない二人が、巨大建造物を挟んでやじろべいの如く、ふらふらと不安定な状態を演じる。 現状にさしたる不満がないものの、それでも得体の知れない何かを渇望してしまう。本作品のテーマをそのように受け止めた。 ええ、もちろん、共感してしまったよ。 | ||||
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二人の男性の違った視点から交互に描いて行くという作品で、じつに吉田修一らしい、若干、「ゲイ」テイストもある小説だった。 敢えて、文句をつけるとしたら、数日に渡って貞操帯を装着していた主役がいきなり、それをはずし、女性と性交を持つと言うシーンだ。 肉体労働に従事し、そうでなくても汗臭い若者が、それまで押さえつけていた貞操帯をはずした瞬間の性器を想像して欲しい。 どんな状態になっている事か。 恥垢にまみれ異臭を放つ性器を見て、すぐさま、性交を持つ女性がいるだろうか? 『なんなのこの匂い?』とか『汚い』と言った場面を挿入する事がよりリアルな情景を醸し出して行くのではないか。 これは、作品そのものの質とは関係ない重箱の隅をつつくような寸評だか、やけにそこが気になったので、良い作品ゆえに、あえて文句をつけて、星は四つにした。 | ||||
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牛乳瓶の底のような分厚い眼鏡をかけた無表情な人にじっと観察されているような気味悪さ、を吉田修一の本を読むたびに感じる。どーも生理的に合わないのだが、それ故のリアルさは否定しがたい魅力で、新しい本が出るとなんだかんだとつい読んでしまいます。ひたすら読みやすい文章だし。 『悪人』もそうだったけど、本作も現場労働者の雰囲気がひじょーにリアル。この描写だけで読む価値あり。 自分、物語の舞台である大宮に住んでいたことあるのですが、大宮の雰囲気もこれまたリアル。実際の大宮の描写も多いからあああそこねって思えるのは当然として、それ以上に、大宮の空気感がリアルなんすよ。パチンコ屋とかレーザーライトとかピロリロリンの中華料理屋とか建築途中のビルとか、場所や人物を象徴するものを捉える感覚が鋭いんだろうなー。 ストーリーは中途半端(この作者、わりとそういう傾向ありますな)。だけど帯で村上龍は絶賛「倒壊の陰にある希望、裏切りと同意語の救済、閉塞と共存する解放、虚構に身を隠す現実」。???なんのこっちゃ。さっぱり分からん。きっと作者にも分からないのでは。 ま、龍さんは置いといて。でも、それでもなんか癖になる一冊。 | ||||
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家族持ちの都会出身の建築家と、独身で地方出身の鉄筋工 二人の関わる、大宮のランドマークビルの建設 小さな捻れの積み重ねが、不安感を呼び、 悲劇がカウントダウンされていく・・・ うーん。 あんまり気持ちのいい本ではないです。 後味良くない。 ちなみに、ランドマークとは、 ある特定地域の景観を特徴づける目印。 山や高層建築物など、視覚的に目立つもの。 という、意味だそうです。 | ||||
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全編を通して、ずっと不安を感じながら読んだ。とくになにが起こるわけでもない、ただ先の見えない日常が、やがて…。 | ||||
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大宮に建設中の螺旋状のビル『omiyaスパイラル』の設計士・犬飼と鉄筋工・隼人の二人のゆがんだ日常が描かれています。 続きが気になりどんどん読み進めて行く事が出来たんですが、最後の終わり方がイマイチだったように思います。 建設中の『omiyaスパイラル』で起きた首吊り自殺事件のあと 『omiyaスパイラル』や犬飼がどうなったのか、隼人はその後どういう人生を送るのか(こずえとの関わり)など気になってしまいました。 ちょっと尻すぼみな感が否めないなと思いました。 ぜひ、続編を希望します。 | ||||
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吉田修一はパークライフが一冊目。サラリとした肌ざわりが心地よくて読み進めて後半、“彼女”が秋田の角館出身と知り俄然興味倍増。そして数冊を経て今日このランドマークを読んでたらまたまた秋田が出てきた。この方言は北だなって思ったら、比内町…やっぱり県北だった。彼の本、秋田は重要なキーワードか?でも最後、良さんだったのは切なかった。てっきり政和だと思った。 | ||||
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大宮と東京の距離感ってどのくらいなのでしょうか。 舞台は大宮に建設されるランドマーク。 斬新とも取れるデザインは空に向かってねじれている建物。 そのランドマークに携わる人間たちの関係。直接的、間接的を問わずに影響しあう。 その舞台を読者に上手に提示しながら、物語は進んでいく。 最後まで止まりません。 | ||||
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人間が永遠に理解できないものは人の気持ちだ。 相手の気持ちを確かめようとし、自分の気持ちを確かめようとする。 もしくは、思い込むことで分かったふりをする。 人は何かを証明をするために、目に見える形で表さなければならなくなる。 心に歪みを持った人間達が、ねじれた塔を作り上げる。 ランドマークはそんな歪んだ心の象徴的な存在。 | ||||
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ねじれ構造を持つ「スパイラル」。 そんな象徴的な建物を建設するために働く二人を中心に、 物語はカウントダウンと共に展開する。 10、唇にキスして。9、私の髪を撫でて。 8、私に触れて。ゆっくりと。ゆっくりと。 7、そのまま!そして、まっすぐにナンバー1に向かいましょう。ナンバー1に。 6、唇。5、指。4、プレイ。 3、……ナンバー1に。ナンバー1に。 キスして。髪を撫でて。私に触れて。 まっすぐに。ナンバー1に。 ゆっくりと。ナンバー1に……。 序盤に提示されるこの歌によって、物語の結末は“予感”させられる。 ナンバー1で果たして何が起こるのか。 この物語はねじれから導かれる解放と崩壊を描いている。 なかなか楽しく読めた。 | ||||
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最近吉田さんの作品を何冊も続けて読んでいますが、わざと言いたいことを隠して書いてあるように感じます。この本も何が言いたいのかあとちょっとでわかりそうなんだけどわからないところが魅力的。 | ||||
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中途半端で終わることが多い吉田さんですが・・・なんか良い・・ やっぱり・・でも勧める・・と言うと、「つまんない」と言われてしまう事があるので、吉田修一ファンならやっぱ読んだほうがいいと思います。読んだことのない人も、吉田さんはこんな小説書くんだ~ と思ってもらえればいいと思います。ちなみに私はというと、何回も繰り返し読みました。5,6回・・かな??好きです。この本。 表紙にも惹かれました。 | ||||
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いきなり冒頭から始まるカウントダウンに、まず驚きました。一体何が起こるのか?と、緊張感が走ります。 建築中のスパイラルビル。この捻れたビルが、視覚的にも、こちらに不安感を抱かせるように思います。二人の主人公、隼人と犬飼は、このスパイラルビルの建築に携わる人物ですが、隼人はビルの内側で働く鉄筋工であり、犬飼は設計士としてビルの全体像を把握し俯瞰する立場にある者です。二人は僅かに、冒頭近くで、ちらりと目線を絡ませるくらいで、直接の交わりはないまま物語が進んでいきます。読む方は、じりじりしたような、一体どこでこの二人が接するのか、いつか何かが起こるに違いないという焦燥感めいたものを感じます。 隼人、犬飼それぞれの女性関係や、日々の鬱屈、仕事にまつわることなどが描かれるうちにもビルは、上へ上へ捻れながら立ち上がっていく。その際に、途中の階から、隼人がコンクリに埋め込む、ある物の小さな鍵と、その行為が何か呪術めいていて、いっそう不安感を掻き立てられるようでした。最終章へのカウントダウンは、章がすすむにつれてスピードをあげていくかのようです。ビルの捻れが、隼人、犬飼それぞれの内的世界と重なるようで、こちらの気持ちも捻れがかかったようで、建設中のビルを駆け上がっていくような気分にさせられました。特に、ラストに向けてのシーンでは、犬飼の独白調の言葉が 畳みかけるような圧力でこちらに押しよせてきます。うまい。見えないはずのスパイラルビルが、まるで、3Dの絵がある瞬間、目前に立ち上がってくるようでした。 吉田氏自身が、ようやく本当の意味での小説を書くことができた、ということを表明していたと思うのですが、『ランドマーク』は、彼自身のそれになり得るかもしれないと感じました。 | ||||
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『パーク・ライフ』では微かに感じたが、『長崎乱楽坂』から変貌し この作品に至って癖が吉田修一から出てきた。 それは、作風とも言えるのだが、読者を選びそうだ。 その癖は、人が歪むのを人知れず描いてゆく旨さにある。 その根底に優しさや愛が感じられないので 読後だるい気分になる場合がある。 出かける日に雨が振り出して不快感を感じる時のように・・・・ とても些細なことなのだが、表出しない意地悪を感じてしまう 無柱空間の建物を舞台に、建築士と作業員の人生が交差する 対照的な二人はカウントダウンするように結末に導かれる | ||||
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吉田修一作品の一番の魅力は、絶妙な描写によって登場人物の性質を深く知ることができることだと思う。 作品の後半に差し掛かるころには、主人公や気になる登場人物への感情移入は済んでいて、彼らが楽しければ一緒に喜べ、息詰まっていれば同じように閉塞感を感じられる。 切り取られる日常の場面、そこにいるひと、それら一つ一つは取り留めないこと。でも吉田修一がつなぎ合わせると心の動きが現われ、強く僕を引きつける。 「ランドマーク」を読んだ後、途方に暮れた。うまくいかない人間模様に切なくなった。 吉田修一作品の読後はいつもこうだ。 | ||||
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吉田修一ファンの人、これはやばいです。 パークライフを読んでから、吉田修一の手の内の鮮やかさに本当にしてやられてしまい、全ての作品を読みましたが、中でもこの作品はもう一度芥川賞を与えられてもいいんじゃないかと思うぐらいの力作だと思います。 物語はさいたま新都心に建設されるランドマーク的ビル、「スパイラルビル」に関わる人間模様を通して描かれています。 内容は敢えて詳しく書きません。その方がきっといいから。 ただ最後の20ページで、バラバラの方向性であったベクトルは一定方向を指し始めます。ページを繰る手の早まること早まること。まるで無作為に書かれているかのような言葉一つ一つが、作者の確固たる意志を伝える為に、実は計算し尽くされていることに気付き興奮してしまいます。それが吉田作品の醍醐味だと私は思っていますが。 読み終えた後、作者が何故この題名を付けたのか、深く心に余韻として残る事でしょう。 すばらしい。ただただ、ブラボー!! | ||||
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