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女王国の城
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女王国の城の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.95pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全59件 21~40 2/3ページ
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山奥の宗教団体の聖地で起こったさつじんじけん。でも、絶海の孤島や、土砂崩れで寸断された山中の村が舞台となる殺人事件で、警察が来ないあいだに探偵がしたり顔で推理…というパターンではないところに好感をもちました。江神部長やアリスは、懸命に警察を呼ぼうとし、それをガンとして拒む団体。その意味も最後にはきちんと納得でき、アリスたちが脱出しようとするところは心から応援しました。動機の部分には、あ、そうなんや…という感が否めなかったので星4つですが、部長に関するもうひとつのエピソードも描かれていて、本当に最後は納得しました。 | ||||
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大げさな舞台設定の割には、事件・動機・犯人どれをとっても ショボイ感じが否めず、キモとなるべき学生たちも傍若無人な 振る舞いで感情移入できず。 「双頭の悪魔」同様、机上でパズルを構築しただけのストーリは、 この作家の限界を感じる。 | ||||
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月光ゲーム、孤島パズル、双頭の悪魔に惹かれて買ったのだが、 これが予想以上に面白くない・・ さすがに、三部作が終わってから十数年以上が経っているので、 取ってつけた感が否めない・ 「女王国の城」って言うネーミングもいまいちだし、 長年の有栖川有栖ファンにとっては読まない方が賢明でしょう・・ 過去の三部作のイメージを壊さないために・・ | ||||
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「女王国の城」(上・下)江神二郎シリーズは、火村シリーズには無い、アクションシーンが売り物である。この作品でも、「城」からの大脱走シーンが秀逸。マクリーンやイネス級(?)の冒険小説になっている。もちろん謎解きは、最後に関係者を一堂に集めて、犯人を指名すると言う「本格的」なもの。少し「密室物」も取り入れて、Who done it の傑作となっている。ただ最後の章は、伏線がささやか過ぎて、やや唐突の感が否めない。謎解きの本筋には、あまり関係が無いのだから、途中で少しネタを割っても良かったと思うが、いずれにしても、二巻一気に読んで十分満足できる作品。 | ||||
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有栖川有栖の文章は完結的だ。会話方式で物語をできるだけ進めたい又はヒューマニズムを表現したいのか知らないがそれだけじゃ会話の補助文もないし、ミステリーを表現する上でまったく完結的なところがすぐやってくる。まったくため息ばかり出る。文章の勢いが無く夢中で読ませるテクニックもない。本格推理をやるのはいいがもっと作品数を出してる作家のことを勉強してもらいたい。数多くの作家は悪い意味で有栖川有栖を勉強されてしまっているだろう。そんな事誰でも分かる。いつまでたっても2流だ! | ||||
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著者の江神シリーズが青春小説でもあることは、いろいろなところで指摘されている。主人公アリスの仄かな思いや行動、その仲間達との友情などなど、青春小説のガジェットが確かに満載だ。だから、多分、著者との年齢的な乖離が大きくなってきたためだと思うが、ほんシリーズはあと一作で終了するらしい。 本作も、その青春的雰囲気は十分なのだが、かつての「月光ゲーム」や「孤島パズル」の頃より、著者に無理がみえるようになっている。自然体でできたことが、段々と自然体では出来なくなっていく、というのが成長なのか衰えなのか。著者の他の作品を見れば、ミステリ作家として円熟していることは間違いない。ここまでの、いくつかの紆余曲折の過程を越えてである。それが、著者に本シリーズの執筆を難しくしている一因なのであれば、経験を積むことで失われてしまうものの、なんと儚く美しいことだろう。 だからこそ、私は本シリーズを偏愛したい。甘酸っぱい感情表現、驚愕するほどではないトリック、でも、本作にはロジックがあり、なにより若さの雰囲気に溢れているからである。 相変わらずのクローズド・サークルには、微笑ましい。アリスとその仲間が活躍するのも、終焉が近いと思うと、何故だかとても愛おしい。 | ||||
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新興宗教集団「人類協会」の本部内で発生した連続殺人、その中で軟禁状態に置かれたアリスたち。果たして犯人は誰か、また警察を呼ばずに自分たちで犯人を突き止めようという「人類協会」の背後に隠された秘密は何か。そしてそもそも、江神部長は何のために「人類協会」を訪れたのか。 江神部長シリーズ、あるいは学生アリスシリーズの第4作である本書、前・後編合わせて800ページ強という大長編だが、読んでて長さが苦にならない。前半はゆったりとした展開だが退屈せず読み続けられた。それも作者の語り口の上手さ所以か。 本書は、3つの「読者への挑戦状」を差し挟んだ前作「双頭の悪魔」の凄さや、その前の「孤島パズル」の論理の精緻さと比べると、やや劣ると思う。例えば、11年前の密室殺人の謎解きは謎解きと言うには苦しいと思うし、3つの殺人のうち第1の殺人だけなら、江神部長の推理とは別の論理的な解決を考えることもできた。(ただ、その場合その犯人は後の2つの殺人ではアリバイがあり、共犯者がいない限り成り立たない推理ではあったが) しかし、本書には上記に掲げた他にも盛りだくさんな謎がちりばめられ、それらが完全に論理の道筋の中に当てはめられていくのが面白い。 私はとくに、事件解決後にそれまで未解決だった謎が明かされるエピローグが面白いと思った。 | ||||
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江神次郎シリーズ(学生アリスシリーズともいう)の第4弾である。文庫で上下巻の2分冊。このシリーズの長編は前作発表から10年以上たっていて、なかなかスゴイ状態ではある。 時代はバブル崩壊前夜ごろ。岐阜の山奥の新興宗教本拠地にそびえる「城」を巡って、謎また謎の連打、殺人につぐ殺人が巻き起こるのを、江神さんがばっさり!と解き明かすのだ。 物語のかなり冒頭から、とある事情で警察が事件に介入できない状況が発生、やむを得ず江神さんほかミステリ研の面々が謎に挑むのだが、、、と、この設定自体について当初、ありゃりゃそんな安直な「嵐の孤島」状況ですかぁ、と思ってしまった私は相当浅はかでした。うぅ、そんな伏線でしたかー、完全にやられました。そういわれれば確かに○○の言動とか、やたらめったら不自然なんですよねー。 バブル崩壊前夜という時代設定も巧みだ。作中でもチラッと触れられるが、そう、アレが普及してしまっているとこの話はほとんど成り立たないのだ。(言い方を変えると、その時代を経験したことのない若い読者だと、この作品の世界に没入できないかも知れない。それはそれである意味不幸なのかも。) そもそもミステリ研が事件に絡むきっかけとなった江神さんの謎の行動についても、最後にはその理由が明らかになる。有栖川(の長編)作品は、徹底してロジックを埋めてくるので、読んでいてとても安心だ。作中に大量にちりばめられた謎の数々が、最後の最後にすべて綺麗にクリアーになる、という構成自体、ミステリの王道とも言えるでしょう。あー読んでよかった・・・と心から思える出来ですね。 | ||||
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からくも城を脱出した織田とマリア、そして望月。しかし健闘むなくし織田と望月はつかまる。ひとり逃げ続けながらも打開策をさぐり、闘い続けることを決意するマリア。 一方城の中でも江神たちの真相を追う闘いが繰り広げられる。捨て身かつ起死回生を期した行動に出た江神とアリス。 城のうちそとに分かれ闘いつづけた彼ら3人が、想像もしないところで再会する。 江神先輩のことば、アリスの握手に思わず涙。。。 | ||||
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前作「双頭の悪魔」から15年ぶりの江神二郎シリーズ。 私は前作を読んだのは5年くらい前ですが、其れでもなお魅力的な登場人物に魅せられ、文庫化を非常に待ち焦がれていた。 待ち焦がれているうちに、江神さんより私の方が先に大学を卒業してしまった(滅)。 先ず、最初に注目するのはこの本の分厚さである。物凄い力の入れようであり、文庫化して上下巻に分かれても凄い分厚さを誇る。。 そしてその長大な全編の中に、一つのパズルの如く「真実」へのピースが方々にちりばめられており、その一つ一つを拾いながら、推論を重ねて行く事によって唯一人の真犯人へと辿り着く事が出来る構成になっている。その為、パズラー系ミステリ小説の一つの極致ともいえる作品とも言えるだろう。 本書は、犯人に辿り着くまでの推論過程に目立った理論の飛躍は無く、間違いなくフェアネスに則った作品であるが、その話の長大さに比例して導き出される「真実」への壁は厚くその道のりは辛く険しい。「読者への挑戦状」を受け真摯に推理しようと思ったら、おそらく普通の読者は出口も見えずにこの知の迷宮に永遠に閉じ込めらるだろう。 その為、推理部分に関しては、良くも悪くも、エラリー・クイーンを愛する著者が、著者と同じ志を持つ自身の往年のファン向け(即ち偏執的な……否、変態的なパズラー向け)に創られた作品だと感じた。 その為、この部分に関して本書は決して万人向けの小説では無く、好みは分かれるかも知れない。 シリーズを通した物語面では、著者は後書きとして、残りは短編となる過去編を挟み、(何時なるか分からないし、確約できないが)最終作となる長編をあと一作描き上げるそうです。 また今回、本編で江神部長が何故大学に残り続けるかが明らかになり、その結果凄まじい「死亡フラグ」を立ててしまったので、早々に最終巻が気になってしまった(汗)。 | ||||
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3作目から実に15年7ヶ月ぶりに書かれた本作。 そして待望の文庫化。 とても面白く読むことが出来ました。 しかし、問題は作品が長編のあまり文庫化では2巻になってしまったこと。 なぜなら、1巻目は比較的ゆっくりと話(時間)が過ぎて行くからです。 なので1巻で読むのを止められてしまう可能性もあるかも? まあ、ファンならそんなことはないか! とにかく、2巻続けて一気読みしてください。 物語のラストに垣間見れる○○(あえて伏せます。)が良い。 次回作への伏線?と勘ぐってしまうぐらいです。 ちなみに、次回作が長編では最終巻になる予定だそうです。 待った甲斐があった。 個人的には星5つです。 | ||||
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江神シリーズの最高傑作。 過去同じ村で起こった事件と現在の事件が並行して 描かれていく。 ネタバレになるので詳しく書けないが、それらが解決 されたときに事件の構図が明らかになり、 同時に犯人限定につながっていくプロットは 本当にスリリングで見事としか言いようがない。 私はすれっからしのミステリ読者だが久しぶりに少し身震いした。 その構図の妙は全3作をはるかに凌いでいる。 新本格を引っ張ってきた著者の底力を感じる大傑作。 | ||||
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なーるほど!そうだったのか!やられた〜!という場面なし。 散々引っ張った女王様に会えない理由って・・・え?そんな理由?と思ったし。 11年前の迷宮入り?した事件の真相も、そりゃ無茶だろっていう内容。 有栖川さんの本はこれが初めてだったけど、ちょっと期待はずれに終わりました。 量が多かったから読むのに時間がかかったが、報われなかった。残念。 | ||||
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11年前の事件で使われた拳銃を媒介に、過去 と現在が鮮やかに結びつく趣向が美しい本作。 不明だった犯行時刻を絞り込むことで、容疑者のアリバイを崩すのではなく、 凶器の入手経路を特定するというロジックの展開の強度と切れ味は抜群です。 また、犯人が死体にほどこした偽装が、アリバイ工作のためではなく、 切実ながら歪な動機に基づくものであったところなども見逃せません。 真相究明後、〈人類協会〉が事件を警察に通報しなかった理由 や江神が〈城〉を訪れた目的などもきちんと明かされ、大団円へ。 個人的には大満足でしたが、次作の発表が何年後になるのかだけが気がかりですねw | ||||
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有栖川を代表する江神シリーズと火村シリーズ。共に読者の人気を二分するシリーズだが、私は俄然、江神シリーズを推す。孤高の部長、少し毒舌なワトソン、漫才コンビ、そして、紅一点。このシュールなサークルが何といっても好きで堪らないのだ。 ミステリ本来の面白さに加えて、知的な文体ながらも、アリスに皮肉交じりに語らせるというのも、本シリーズの魅力の一つ(火村シリーズでもそれは同様だが、こちらの方が、キャラクターが若い分、より顕著なのだ)。 本作は前作「双頭の悪魔」より実に15年振りとなった、有栖川ファン一同、待ちに待ち焦がれた一作である。同じクローズドサークルでも、舞台が剣呑な宗教団体という、これまでにないシチュエーションになっている為、スリルも倍増。 協会内で相次ぐ殺人、何故か警察の介入を阻んでEMCを「城」に軟禁する協会といったきな臭さといい、EMCの掛け合いのコミカルさといい、シリーズの持ち味は相変わらずで、全く歳月の間断を感じさせない。それどころか、むしろ、過去作よりも格段にグレードアップを遂げている。 作中での一人称をアリスとマリアとの輪番にした構成もよい。マリアの「城」からの出奔劇の際の、アリスサイド、マリアサイド双方の心模様を余さず熟読玩味することができた。 冒険小説としては誠に快作。犯人の人物造形や動機の説得力にページがもっと割かれていれば、純然たるミステリとしても一級だった。これだけが悔やまれる点だ。 本格ファンでも、とりわけ、トリックよりはキャラクターとの一体感を味わいたいという人。本作はまさに、そんな読者にこそお誂え向きだろう。 | ||||
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待ちに待った、というよりは半ばあきらめていたシリーズ4作目です。 15年ぶりということで、その間に流れた時間を作中では流れていないことにするための記述がちょっと不自然に感じられてしまいました。 あちこちで「これは15年前の設定ですよ」と念押しされているようで…。 あとは、UFOや宇宙人の話が私には多すぎました。大脱走とかくれんぼも長いような。 このあたり、筆がのりすぎているように思いました。 トリックに関してはいろいろ指摘もありそうですが、容疑者を並べて犯人をあぶりだすシーンはシリーズ初で(月光ゲームとは探偵のスタンスが違います)、どきどきしながら楽しめました。 また、クローズドサークルになった理由がかなり新しくて驚かされました。異論もありましょうが、「理由」としてはすっきりと気持ちいいほど直球だと思います。 | ||||
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世の中には、おびただしい数の長編ミステリが溢れており、読む時間が限られている身としては、凡作に時間を費やす気にはなれないので、「本格ミステリ大賞受賞」、「本格ミステリ・ベスト10第1位」という、この作品に対する専門家筋の極めて高い評価には、どうしても、気を引かれてしまう。 しかし、自宅に届いた上下2段組みで503ページにも及ぶ分厚い本を目にして、嫌な予感に襲われてしまった。というのも、私は、有栖川有栖の作品を読むのは初めてなのだが、私のこれまでの経験からすると、これだけのボリュームの長編ミステリは、作者によほどの筆力がないと、作品がどうしても途中でだれてしまい、読む方の集中力が削がれ、ラストまで読み進めるのに苦痛を感じてしまうからなのだ。 結論からいうと、残念ながら、その予感は当たってしまった。まず、最初の事件が起きるまでに何と166ページも掛けたり、本筋から外れた城からの脱出劇に50ページ以上掛けたりといった間延びした展開がいただけない。後から読み返してみると、そうした展開の中にも、幾つかの伏線が張ってあったことはわかるのだが、それにしても、全編を通した、緊迫感のない、だらだらとした凡庸な筆致は、何とかならないものだろうか。作中で、しばしば作者が披露している無用なうんちくの数々も、冗長さに、一層、輪を掛けている。 また、この作品を読んでいると、どうも、「最初にトリックありき」で、「人類協会」という特異な団体とその城や、11年前のある事件など、全てがこのトリックを成立せしめるために、作者が無理矢理あつらえた設定という不自然さ、わざとらしさを感じてならないのだ。肝心のトリック自体についても、これだけの高評価の本格派ミステリなら、読者としては、当然、アッと驚くレベルのものを期待してしまうのだが、11年前の事件の真相を含め、拍子抜けするようなレベルのものに終わってしまっている。 | ||||
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「月光ゲーム」、「孤島パズル」、そして「双頭の悪魔」に続く江上シリーズ長編である。なんと前作から15年ぶりとのこと。 UFOを信じる新興宗教団体の本部が舞台ということで、読み始める前はちょっと嫌な感じもしていた。宗教団体が反社会的な陰謀を企てていて、なんていう、ありがちなストーリじゃないだろうなっていう。 しかし、それは杞憂だった。 11年前に同じ村で発生した拳銃自殺事件と‘現在’の新興宗教の本部で連続殺人、事件を警察に連絡せず、あまつさえ江上たちを軟禁する教団の意図は…? クライマックスでは本格推理小説の顰にならった読者への挑戦の後、数々の謎が名探偵江上二郎の推理によって合理的に解明されていく。著者らしい精緻なロジックの組み立てにより生み出される「カオス」が「秩序」へと収束していくカタルシス…。そういうものを十分に感じることが出来た。 全ての謎が明らかになると、宗教団体の本部が舞台ということさえも作者の周到な計算であったことが納得できる。 後書きによると、江上シリーズは後1本長編を発表する予定との事。楽しみだが、また15年待つのは勘弁して欲しい、いや、ホントに。 | ||||
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大学に姿を見せない江神の後を追って「神倉」にやってきたアリス、麻里亜、織田、望月の英都大学推理小説研究会の面々。そこは、宇宙人との邂逅を信じる新興宗教「人類協会」の本拠地であり、苦労の末、4人は江神と協会総本部で再会を果たす。ところが、そこで思いがけず殺人事件に遭遇。しかし、なぜか協会は警察への連絡を拒否、江神らを半ば幽閉してしまう。決死の脱出と真相解明を試みる5人だが、続いて第2、第3の殺人が…。 推理の中心は一種のアリバイ崩しなのだが、ポイントはむしろ犯行手段のそれにあり、作者がこの作品を書くまでに前作から15年の歳月が経過したことは無意味ではなかったと思わせるもの。ただし、この「トリック」以外は、本格ずれした人たちには平凡若しくは無理があると映るかもしれない。 さらに、教団が自らをクローズドサークル化した理由も別の謎解きとなっているが、その種明かしと結末にはややご都合主義の感も否めない。 学生アリスシリーズ特徴の青春小説的味わいについては、作者がなんら違和感なく登場人物を造形したそうだが、前作「双頭の悪魔」と比べても、一層現実感が薄まってしまったような気がする。青春の孤独や、社会に出ることへの不安らしきものを描こうという意欲はわかるのだが、文章の巧みさや用語の難解さが増した分、作者の感性がそろそろアリス達のそれから遠ざかってきている感じがしなくもない。 しかし、この小説の白眉は何といっても、帯にも引用されている読者への挑戦のこの科白、 「本格ミステリとは〈最善を尽くした探偵〉の記録だ。江神二郎の推理こそ、この物語を完結させる唯一の解答である。……論理の糸の一端は読者の眼前にあり、それを手繰った先に、犯人は独りで立っている。作者が求める解答は、その名前と推理の過程だ。」 これにはしびれた。 | ||||
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15年ぶりに書かれた江神シリーズの4作目。 サークルのメンバーに何も言わずに新興宗教「人類協会」の聖地である神倉に行ってしまった江神を案じたアリスたちは神倉を訪れるが、そこで発生した殺人事件で人類協会の「城」に閉じ込められてしまう。 警察への連絡も、外界との接触も閉ざされてしまうアリス達。人類協会はどうして「犯罪の露見」を恐れるのか? まずは、火村シリーズよりも江神シリーズの方が好きなので、この新作は本当に嬉しかったです。宗教都市と、その本部である城をつかった閉鎖空間という舞台設定は魅力的で、どうして「警察への連絡を拒むのか」という謎の中で起こった殺人事件を論理的に解決していきます。 その大きな謎は最後に解決するのですが、ちょっとあっさりと書かれていてもったいないなぁと思ってしまいました。この仕組みは結構好きなんですけどね。 江神さんがどうして神倉を訪れたのかといった小さな謎まできちんと解決して、甘酸っぱいマリアとの恋も描かれており、やっぱり魅力的なシリーズです。 | ||||
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