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血と暴力の国



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【この小説が収録されている参考書籍】
血と暴力の国 (扶桑社ミステリー)

血と暴力の国の評価: 4.05/5点 レビュー 42件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.05pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全31件 21~31 2/2ページ
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No.11:
(4pt)

理由無き暴力に畏怖する

暴力に立ち向かいつつそれを食い止めきれなかった1人の老保安官。
時代の移り変わりの中で犯罪の理由は中身を失い、その理由無き不条理な犯罪を体現する謎の殺人者から救うべき者を救えず、ただ身を引くことしか出来なかった彼。
各章始めの彼の言葉は単なる愚痴ではなく悲しみと悔しさと怒りと困惑に満ちており、物語全体が単なる追走劇に終わらない、ある意味では彼自身の回顧録の様にも読めます。
そして時に殺人を悪運と定義付けるシュガーの言葉と行為は正に現代社会の病巣が垣間見える瞬間と言えるのでは。
人間的な感情の爆発ではなく、自己の法で他者の運命に決定を下す。
これは私達が生きる社会で起こる「ただ○○したかったから。」という加害理由に通ずるものがあると思い、同時にこれは憂うべき現代社会を描いた作品と思います。
血と暴力の国 (扶桑社ミステリー)Amazon書評・レビュー:血と暴力の国 (扶桑社ミステリー)より
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No.10:
(5pt)

悪における仮説的存在

村上春樹がチャンドラーの「ロング・グッバイ」あとがきにおいて、主人公のマーロウを「純粋に仮説的な存在」と定義していたが、その伝で言えば本書のメーンキャラクターのアントン・シュガーこそは悪の純粋仮説的な存在といえるだろう。「自分を信じる」という言葉は世の中にあふれかえっている。
しかし一個の悪が己の内にある戒律だけを信じて従順するという恐怖がどれだけのものであるかをこの作品は読者に差し出している。通奏低音のように漂う荒涼感、寂寞感を醸し出しながらも、往々にしてこの手の作品が陥りがちな単なる暴力、単なる破壊をうまく回避している。文章のスタイルも見事だ。コーエン兄弟による映画にしても、作品の世界を忠実に活かしており、こちらも鑑賞されたい。
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No.9:
(5pt)

細かいことは抜きにして、

とにかくかっこいい、の一言。全ての登場人物のあらゆるせりふに、自分でもこんな風に考えたり喋ったりしてみたいと思わずにいられない。ベル、モス、シュガー、この三人の世界/人生に対する姿勢、態度はそれぞれに少しづつ異なっているが、誰のものも非常に説得力があり魅力的。しかし作品全体を貫いているのはおそらくは作者本人の、運命論的な謙虚さと潔さ(といっていいものかどうか)。そこにこの作品の深い感動があります。
映画版を見て「よくわからない」と感じた方はぜひ原作を読んで欲しい!映画ではベルの独白が端折られてたり、モスのヒッチハイカーの女の子とのやりとりが丸々カットされてたりして、そういったシーンを抜きに評価をするのはものすごく残念で勿体ない!と思います。
(もちろん映画もあの形以外考えられないと思わせるような仕上がりで何度見ても飽きませんね。映像、配役、演出、そしてコーエン・ジョーク。またメアリー・ゾフレス氏による衣装も素晴らしい!原作を読むと何倍にも楽しめます)
マッカーシー氏の独特な文体のニュアンスを見事に掬い取った黒原氏の翻訳も完璧。ただこの邦題は、、、怖すぎませんか、これ。
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No.8:
(5pt)

湘南ダディは読みました。

コーマック・マッカーシーは90年代のアメリカ文学を代表すると言われている「すべての美しい馬」の作者で、本作が最初のクライムノベルというのには驚愕です。
 ベトナム帰還兵であるモスは猟に出かけた折に麻薬取引のもつれた後の凄まじい殺人現場を見つけてしまいます。何人も無残に殺されているのですが、瀕死のメキシコ人に水をやりに戻ったところ残された大金を見つけ、これを持ち帰ったばかりに名うての殺し屋アントン・シュガーの執拗な追跡を受けることになります。このシュガーが大変に印象的なキャラクターで、彼のセリフはこの手の小説では決してお目にかかれないような哲学的で暗示にとんだものとなり、この作品の魅力の一つになっています。
 立ち寄ったガソリンスタンドの主人にシュガーがコイン投げを強要する場面、主人は既にすっかりシュガーを気味悪く思っています。(原作は引用符がありません)
「裏か表か」
「あたしゃ何も賭けちゃいないですよ」
「いや賭けたんだ。おまえは生まれたときから賭け続けてきたんだ。自分で知らなかっただけだ」

冷酷無比のシュガーの対極として登場するのが老保安官ベル、古きよきアメリカの保守精神を代表するように描かれ、各章の冒頭にある彼の独白も味があります。
「真実ってやつはいつだって単純なんだろうと思う。絶対そうに違いない。子供にも単純にわかるほど単純でなくちゃならないんだ。子供の時分に覚えないと手遅れだからね。理屈で考えるようになるともう遅すぎるんだ」
全編、モスとシュガー、シュガーとベルの緊迫した追跡劇が展開されるなかで、シュガーの殺人哲学とベルの正義哲学が含蓄のあるセリフで語られ、これら三人がそれぞれまことにハードボイルドな幕切れを迎えるまで、文字通り息もつかせず読ませられます。
この原作による映画「ノーカントリー」は本年度のアカデミー賞作品賞、監督賞などをとった、これもなかなかの作品とのことです。
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No.7:
(5pt)

翻訳!

独特の文体を見事に日本語化している黒原敏行の翻訳が素晴らしい。William Givson / 黒丸尚に匹敵する。
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No.6:
(4pt)

人は自分の運命を変えられない

本書は、08年のアカデミー賞4部門を獲得した映画「NO COUNTORY」の原作だが、レビュアーは、映画を見てどうしてもラストが腑に落ちなかったので、やはり原点に当たるべしと思って読んだ。
やはり映画では難しかったが(英語なので余計かもしれないが)、本書はそれなりに理会できた。
簡単に言えば、人は自分の運命を選ぶことはできない、したがって、変えることもできない。だからといって、いい加減に生きるのではなく、キチンと摂理をもって生きろ、いわんや殺し屋をや、といったところか。
これを踏まえると、さすがコーエン兄弟の映画である。賞を与えたアメリカの映画芸術科学アカデミーも立派だ。
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No.5:
(4pt)

「血と暴力の国」の象徴、圧倒的な殺人者シュガー

今年のアカデミー賞で、作品賞、監督賞など4部門を受賞した映画『ノーカントリー』の原作である。’07年、「このミステリーがすごい!」海外編第12位にランクインしている。

時は1980年、舞台はテキサス州南西部。メキシコとの国境付近で、麻薬取引をめぐり殺し合いがあった現場をたまたま通りかかったモスは、240万ドルもの大金を持ち逃げする。そこに一切の人間的な感情から切り離された行動力で、執拗にモスを追う殺し屋シュガーがあらわれる。そしてこの事件に、引退を考えている地元の初老の保安官ベルが巻き込まれてゆく。

本書の読みどころは、ひとつは、“絶対悪”として描かれる殺し屋シュガーの強烈な存在感だろう。彼の行動は、事件にかかわった全員を絶望の淵へと追い込んでゆく。
もうひとつは、各章の冒頭での保安官ベルの独白であるが、次第にその調子も、この事件に影響され、哲学的なものになってくる。

とにかく本書からは、「心理描写がほとんどなく、会話に引用符をつけず、コンマを最小限に切り詰めた」マッカーシーの独特の文章から異様に乾いた空気が漂い、もはや普通のミステリーを超越したものを感じる。
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No.4:
(4pt)

現代社会の持つ病根

原題は、“NO COUNTRY FOR OLD MEN”(老人の住む国にあらず)と言うことで、現代社会への作者の懐疑が「クライム小説」として結実しているという感があります。

物語は、1980年のアメリカ南部です。溶接工のモスが、麻薬取引のトラブルに出会い240万ドルを手に入れます。そのため、殺人のプロであるシュガーに追われる身になります。

小説は、このモスを追う保安官ベルの懐古の文章が、各賞の冒頭にあり、その後に壮絶なモスの逃亡劇が書かれています。

ところが、この文章には地の文と会話の文等、一切の区別が無く、ちょっととまどいを感じます。でも慣れてくれば、心地よいテンポを感じられるようになります。

シュガーの独特の哲学のようなものが、異常な感覚を与えてくれ、魅力的な物語になっています。

全体的には、タイトル通り、現代社会の持つ病根を感じさせてくれる作品でした。
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No.3:
(5pt)

アメリカ文学の異端にして先端

「すべての美しき馬」のマッカーシーが、こんなクライムノベルを、しかも七十歳を越えて書くとは。
感情描写を完全に排して、魅力的な人物像を造り、そして「切る」。
アメリカという国のあり方に、深い懐疑と逃れられない「愛」を溢れさせた、アンチ純文学の傑作であり、アンチ・ミステリの傑作。
コーエン兄弟の映画化、日本公開が待たれる。
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No.2:
(4pt)

禁欲的で力強い神話的バイオレンス・ノベル

人がゴミクズみたいに簡単に死ぬし、セリフが「」に入ってないし、登場人物の気持ちや行動を起こした理由について書いてないし、中心人物の殺し屋は意味不明なことばっかり言うし本当変わってる小説。

そのあたりを好きになれるかどうかが、この本を楽しめるかどうかのポイントだと思う。

勧善懲悪、センチ、トリック、泣き、劇的ビックリ要素なしで、っていうか、そーゆー不純物を取っ払って逃亡劇、追跡劇、人の生き死にを力強く書けるのが恐ろしく凄い。物語は調子が狂うほどのの書き手の禁欲的態度で書かれており、読者の心を深くエグってケムに巻く。読後感は科学の時間に宇宙もいつか消滅して全て無になると知った時の気持ちに近かった。
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No.1:
(4pt)

表か裏のどっちかだ。おまえはどっちか当てなくちゃいけない。さあ言え。

テキサスの国境地帯を舞台に血なまぐさい場面が連鎖反応的に展開される。一つの行動をきっかけに物語は動きだす。寓話・神話的な理不尽な運命が紡ぎだされる。追う者がいて追われる者がいて巻き込まれる者もいれば弾き出されてしまった本来の語り部もいる。

状況説明や心理描写が徹底的に刈り込まれた乾いた文体が全てを制圧します。会話はあっても会話ではないのです。会話は何も導きだしはしないから。音楽も聞こえないし銃声すら聞こえないでしょう。表面的な悲哀や刹那の恐怖は無意味だから。ひたすら語りと対峙しなければならないのです。その緊張感の中でどんな寓話が見えてくるのでしょうか。残虐シーンの連続にもかかわらず冒頭から一貫する静謐さの先に見つけるのはただのコインだけなのでしょうか。表か裏かの。
追う者(運命)は言います、

「共通の行き先を持つものには共通の道がある。それは容易に見つかるとは限らない。だがちゃんとあるんだ。」

いったい何の話をしてるんだ?と思った人はすでに『血と暴力の国』に入ってます。ただそこは追う者の言葉とは裏腹に因果を超えた諸事象が語りでえぐられ無秩序が曝けだされた蓋然性の世界です。ですから読後に残るのは不穏と戸惑いと鳥肌かもしれません。DEAL or NO DEAL?と攻められてるようです。
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