ステラ・マリス
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天才と狂気の境界とは、そして、切ない兄への恋慕の情。 姉妹書「通り過ぎゆく者」と併せて、難解な思考過程や会話内容を通して、読者は圧倒されるだろう。 | ||||
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本書『ステラ・マリス』のタイトルの「ステラ・マリス」とは? 女主人公のアリシア・ウエスタンが自ら入院した精神科病棟の名前です。 米国ウィスコンシン州に実在する病院とのこと。 そこでの患者と医者の会話を創造して小説にしています。 時は、1972年(4頁) 舞台は、ステラ・マリス病院。 表紙カバーの写真のように、各窓に鉄格子がはまっていた精神病院。 登場人物は、患者アリシアと医師のドクター・コーエン。 本書には、この二人の質問と答えの会話が延々と交互に連なっています。 患者アリシアとドクター・コーエン、どちらの言葉なのか、明示がありません。 そのため、読者はときどきどちらの言葉なのか? わからなくなりました。 本書に目次はありません。起承転結のような筋書きもありません。 淡々とした診察記録です。 全部で七つの章からなるフィクションです。 第Ⅰ章 (5頁)、第Ⅱ章 (46頁)、第Ⅲ章 (82頁)、第Ⅳ章 (117頁)、 第V章 (165頁)、第Ⅵ章 (210頁)、第Ⅶ章 (227頁) 各章には、小見出しもありません。各章の番号だけです。 これでは目次になりません。 患者と医師との面談診察の時の会話がそのまま録音され、 テープ起こししただけの会話が記録された小説です。 全部で7回に渡る診察記録の形です。 その時々で、医師は「きみは何歳だったの」(14頁)などと問いかけています。 本書は彼女の半生の自叙伝のようでもあります。 ドクター自身も彼女から診察に関係ないようなプライベートな質問を受けています。 彼女の希望に沿って、ていねいに答えてやっています。 おそらく、答えてやったほうが、患者は安心するだろうと予想しているのでしょう。 例えば、医師は 「結婚している。子供が二人。妻は子供福祉プログラムの責任者だ。ぼくの年齢は四十三歳」(9頁) 医師にこんな答えかたをさせる患者は異常です。 「あなたの奥さんはどんな人?」(46頁)などと聞かれたら、 <あなたに関係ないでしょ!>と怒るのが普通の医師でしょう。 ドクターは患者の様子を見ながら慎重に問いを投げかけ、 患者の口から言葉が自然に出てくるまで根気強く待っています。 医師はあらかじめ決めた診察時間が近づくと、彼女に優しく知らせ、 診察を終わらせたいか、続けたいか希望を聞いています。 無理強いや、時間延長を極力避けています。 だから「時間切れ」(45頁)もあります。 単純な章立てです。 医師の質問は、彼女のこれまでの半生への質問だけでなく、 彼女が学ぶ数学、物理学、量子力学、哲学など広い学問領域に及びます。 精神分裂症の患者の心理状態に配慮しながら、 分裂してどこまでも広がるのにまかせた、ゆるい流れの筋立てになっています。 患者アリシアの当施設への入院は今度で三度目です。 病院には過去の診療記録もあるはずですが、初めての患者のように診察しています。 「きみの診療記録に、そう」(252頁)あったことまで聞いて確認しています。 今回の入院は、彼女の自発的な入院です。検査入院のようなつもりなのでしょう。 彼女の診断結果がまだ出ていないので、治療は未だ行われていません。 「どういう種類のセラピーも受けたくない」(6頁)という彼女の希望もあって。 ドクターに話を聞いてもらうだけでいいのでしょうか。変な患者です。 彼女の父親と母親は、第二次世界大戦の末期に、 あの有名なオッペンハイマー(47頁、88頁、91頁、154頁)たちと一緒に 原爆開発の現場で働いていました。 「父は彼の部下だった」(48頁) 「父の考えではオッペンハイマーの知性には抑制のきかないところもあった。悪い決定をしてしまう余地があった」(48頁) 父親は数学者。「南太平洋であちこち吹き飛ばしてた」(113頁) 試作した原爆の爆破実験でもしていたのでしょう。 母親はウランの濃縮(101頁)を「二年弱」(102頁)やっていた。 二人ともマンハッタン計画で働いていた科学者でした。 原爆の放射能のせいで「癌」(105頁、155頁)で亡くなっています、二人とも。 そして兄はカーレースの事故(189頁)で「昏睡状態」(8頁)。 精神は正常で、妹の病気に気付き、温かく見守っていました。 彼女は、この診察が終わったら自殺する気なのかなと心配になりました。 「自殺リスク」(254頁)があるように感じました。 「何に対してさよならを言おうとそれはさよならと返してはくれない」(73頁) 手を握ることは「何かの終わりを待っているときに人がすることだから」(257頁)とも。 《正誤表》 箇所: 101頁 誤: サイクロトン 正: サイクロトロン 《備考》 <アルカトロンについて> 彼女が十歳のとき見た幻視。 彼女は「それを〈支配者装置(アルカトロン)〉と呼んだ」(143頁) 「となるとわれわれが近づいている世界を支配するのは……なんだったかな。<アルカトロン>?」(200頁)と医師から問いかけられても、 「わからない。そんな顔しないで。本当にわからないの」(200頁)と現在の彼女は答えます。 「たとえばどんなもの。邪(よこしま)な風? 闇?」(200頁)と現在の彼女は考えます。 「<アルカトロン>」(200頁)と医師は昔の診察記録どうりに言ってみます。 医師は、十歳のときの彼女の診察記録に引きずられているようです。 <アルカトロン>「かもしれないわね」(200頁)と現在の彼女は答えます。 十歳のときの彼女と、現在の彼女は違っているようです。 「どうやらきみは〈アルカトロン〉を見たことはないようだね」(202頁)と医師。 〈アルカトロン〉は、 「カルトロン」(101頁)とか、サイクロトロンと関係あるのでしょうか? 読者も気になってインターネットで調べてみました。 なあんだ、〈アルカトロン〉とは、高齢者などが使う普通の車いすのことらしい。 原爆の「カルトロン」(101頁)やサイクロトロンとは関係ないようです。 「その表情から察するにあなたはあなたはとうとうわたしに狂気の胎胚を見出したようね」(202頁) と言ったのは、現在の「わたし」患者アリシアです。 第V章から先には、お兄さんとの関係が書かれていました。 読んでいて、頭が混乱してきました。 特に、数学に関する会話は、読者の理解力を超えていて、わかりませんでした。 | ||||
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兄の苦悩の源に遡る。表題は妹の入る精神病院。彼女と医者の徹底的対話。物理から数学の苦しみへ。二人の父の所業が明確に。 | ||||
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