冷血

【この小説が収録されている参考書籍】

評判

冷血の評価:

3.76/5点 レビュー 109件。 B ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点3.76pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全144件 1〜20 1/8ページ
No.144
(5pt)

くねくねと考える

(上・下巻通してのレビューです)人間が人間のことを100%理解できるわけもなく、事件、取り調べ、起訴、裁判、判決という手続きの枠に収まらずこぼれ落ちるものがある。枠に収めたい(そうでないと安心できないし、そもそも世の中が回らない)人間と、枠からこぼれ落ちるものが気になってしまう人間と。くねくねと髙村式に考え続ける。正解は無い。
冷血(上) Amazon書評・レビュー: 冷血(上)より
4101347255
No.143
(5pt)

くねくねと考える

(上・下巻通してのレビューです)人間が人間のことを100%理解できるわけもなく、事件、取り調べ、起訴、裁判、判決という手続きの枠に収まらずこぼれ落ちるものがある。枠に収めたい(そうでないと安心できないし、そもそも世の中が回らない)人間と、枠からこぼれ落ちるものが気になってしまう人間と。くねくねと髙村式に考え続ける。正解は無い。
冷血(上) Amazon書評・レビュー: 冷血(上)より
4620107891
No.142
(4pt)

冷血なのは誰なのか

心ならずも犯人に寄り添うことになる刑事を狂言回しとして、複雑なストーリーが展開します。犯人たちの生育環境に同情的な描写が多く、一方で被害者家族の描写がきわめて少ないことに違和感を覚えたり、別の事件の詳細がまざりこんで来たりして、なかなか歯ごたえのある読了感でした。果たして、「冷血」というのは、犯人たちのことだったのか、それとも機械的に作業をすすめる刑事、検事、弁護士、犯人の親族、無関心なマスコミ、被害者の親族、著者の意図がなんであったのか、考えさせられますね。
冷血(下) Amazon書評・レビュー: 冷血(下)より
4101347263
No.141
(4pt)

冷血なのは誰なのか

心ならずも犯人に寄り添うことになる刑事を狂言回しとして、複雑なストーリーが展開します。犯人たちの生育環境に同情的な描写が多く、一方で被害者家族の描写がきわめて少ないことに違和感を覚えたり、別の事件の詳細がまざりこんで来たりして、なかなか歯ごたえのある読了感でした。果たして、「冷血」というのは、犯人たちのことだったのか、それとも機械的に作業をすすめる刑事、検事、弁護士、犯人の親族、無関心なマスコミ、被害者の親族、著者の意図がなんであったのか、考えさせられますね。
冷血(下) Amazon書評・レビュー: 冷血(下)より
4620107905
No.140
(4pt)

高村薫の文章力がすごい

いつもながら、高村薫の文章のうまさには脱帽。
まるでノンフィクションのような内容は、読み応えたっぷりで面白い。しかし卑劣な殺人鬼であるはずの犯人2人が、なんだか妙に子どもっぽくて憎めないという、不思議なお話。2人とも文章が非常に上手だったりするのは、さすがに少々ご都合主義っぽいが、それにしても何故か犯人に親しみを覚えてしまう謎。
ひとつ気になったのは、筑波大附属が誰もが知る有名校みたいに書かれていたこと。最近、天皇の甥が入学したことで少し有名になったけど、この本が書かれた頃はほぼ無名だったはず。私自身、筑波大附属の出身だけど、いつも「茨城から来たの?」とか「(私は女なのに)駒場?」とか、学校名を言ってもろくな反応が返ってきたことなかった。
なにはともあれ、カポーティのほうも読んでみようと思う。
冷血(上) Amazon書評・レビュー: 冷血(上)より
4101347255
No.139
(4pt)

高村薫の文章力がすごい

いつもながら、高村薫の文章のうまさには脱帽。
まるでノンフィクションのような内容は、読み応えたっぷりで面白い。しかし卑劣な殺人鬼であるはずの犯人2人が、なんだか妙に子どもっぽくて憎めないという、不思議なお話。2人とも文章が非常に上手だったりするのは、さすがに少々ご都合主義っぽいが、それにしても何故か犯人に親しみを覚えてしまう謎。
ひとつ気になったのは、筑波大附属が誰もが知る有名校みたいに書かれていたこと。最近、天皇の甥が入学したことで少し有名になったけど、この本が書かれた頃はほぼ無名だったはず。私自身、筑波大附属の出身だけど、いつも「茨城から来たの?」とか「(私は女なのに)駒場?」とか、学校名を言ってもろくな反応が返ってきたことなかった。
なにはともあれ、カポーティのほうも読んでみようと思う。
冷血(上) Amazon書評・レビュー: 冷血(上)より
4620107891
No.138
(4pt)

犯人たちの動機や背景に迫ろうとした合田たちの苦闘

残忍な一家殺しの場面を避けたくて読み続けるのが苦痛だった。けれどそこはさらっと事件後にワープされていて、殺人の動機の解明に重点は絞られていた。被害にあった家族への思いの比重が重くならないように、犯人たちの内側や捜査をする合田たちの思いの方に導入された。読後に残るものがあった。
冷血(上) Amazon書評・レビュー: 冷血(上)より
4101347255
No.137
(4pt)

犯人たちの動機や背景に迫ろうとした合田たちの苦闘

残忍な一家殺しの場面を避けたくて読み続けるのが苦痛だった。けれどそこはさらっと事件後にワープされていて、殺人の動機の解明に重点は絞られていた。被害にあった家族への思いの比重が重くならないように、犯人たちの内側や捜査をする合田たちの思いの方に導入された。読後に残るものがあった。
冷血(上) Amazon書評・レビュー: 冷血(上)より
4620107891
No.136
(4pt)

資質か、環境か

被害者家族、犯人たち、警察、それぞれのサイドから事件の状況が描かれます。高学歴、高収入、由緒ある家柄、申し分のない幸せな家族と、生まれ育った環境により、社会を転げ堕ちていった人間たちの生活圏が偶然交錯したことで生じた事件をどのように読み解いていくのでしょうか? 次巻が楽しみですね。
冷血(上) Amazon書評・レビュー: 冷血(上)より
4101347255
No.135
(4pt)

資質か、環境か

被害者家族、犯人たち、警察、それぞれのサイドから事件の状況が描かれます。高学歴、高収入、由緒ある家柄、申し分のない幸せな家族と、生まれ育った環境により、社会を転げ堕ちていった人間たちの生活圏が偶然交錯したことで生じた事件をどのように読み解いていくのでしょうか? 次巻が楽しみですね。
冷血(上) Amazon書評・レビュー: 冷血(上)より
4620107891
No.134
(5pt)

考えさせる結末!

①歯科医師四人家族を殺害した犯人二人のうち、一人は病死、もう一人は死刑。罪状からして四人殺害は死刑執行は当然である。
②死刑になった井上には、躁鬱病があったが、躁状態での殺害は考慮されなかった。過去の犯罪歴も、暴力的傾向の持ち主と鑑定され、躁鬱病の病歴は殺害に至った動機としては考慮されなかった。しかし、それで片付けて良いのだろうか?
③二人とも仕事を続け、学校時代の成績は良く、頭も良かった。何が二人を犯罪へと駆り立てたのだろうか?
共通するのは生育歴の悪さである。戸田は教育ママから見捨てられた。井上は薬物中毒の両親に、見捨てられた。両親の愛情を十分に受けて育てられていない子供は、情緒不安定になりやすい。二人とも結婚せず、家族もいない。この家庭環境は考慮されるべきであった。
④二人とも過去に前科を持つが、出所後の本人たちのケアはどのように為されたのであろうか?
その記述はこの小説には欠けている。少し残念である。
恵まれない生育歴を持つ若者であるからこそ、出所後のケアが大切であったと思う。
本当にいろいろ考えさせる小説だ。
お勧めの一冊だ。
冷血(下) Amazon書評・レビュー: 冷血(下)より
4101347263
No.133
(5pt)

考えさせる結末!

①歯科医師四人家族を殺害した犯人二人のうち、一人は病死、もう一人は死刑。罪状からして四人殺害は死刑執行は当然である。
②死刑になった井上には、躁鬱病があったが、躁状態での殺害は考慮されなかった。過去の犯罪歴も、暴力的傾向の持ち主と鑑定され、躁鬱病の病歴は殺害に至った動機としては考慮されなかった。しかし、それで片付けて良いのだろうか?
③二人とも仕事を続け、学校時代の成績は良く、頭も良かった。何が二人を犯罪へと駆り立てたのだろうか?
共通するのは生育歴の悪さである。戸田は教育ママから見捨てられた。井上は薬物中毒の両親に、見捨てられた。両親の愛情を十分に受けて育てられていない子供は、情緒不安定になりやすい。二人とも結婚せず、家族もいない。この家庭環境は考慮されるべきであった。
④二人とも過去に前科を持つが、出所後の本人たちのケアはどのように為されたのであろうか?
その記述はこの小説には欠けている。少し残念である。
恵まれない生育歴を持つ若者であるからこそ、出所後のケアが大切であったと思う。
本当にいろいろ考えさせる小説だ。
お勧めの一冊だ。
冷血(下) Amazon書評・レビュー: 冷血(下)より
4620107905
No.132
(5pt)

前科歴ある二人の若者の犯罪!

①前科のある若者二人の犯罪。SNSで知り合い、コンビニのATMを壊しまくる。そして歯科医家族四人を殺害し、キャッシュカード等金目の物を奪う。
②しかし、これだけなら小説のネタになはならない。この若者二人は本当に歯科医家族四人を殺害したのか?ここからが本当のミステリーの始まりだ。
③前科を繰り返し、反省もなく暴力を繰り返す男。器用な手先を持ちながら窃盗·障害を繰り返す男。二人とも仕事を持ち、普通に働いていた。しかし、生きる張合いや目標がない。無気力=虚無感に満ちた日常生活を生きていた。「何か面白いこと、ワクワクすること、スカッとすること」がATM破壊と窃盗なのが虚しい。
現代若者気質を見事に描いている。
お勧めの一冊だ。
冷血(上) Amazon書評・レビュー: 冷血(上)より
4101347255
No.131
(5pt)

前科歴ある二人の若者の犯罪!

①前科のある若者二人の犯罪。SNSで知り合い、コンビニのATMを壊しまくる。そして歯科医家族四人を殺害し、キャッシュカード等金目の物を奪う。
②しかし、これだけなら小説のネタになはならない。この若者二人は本当に歯科医家族四人を殺害したのか?ここからが本当のミステリーの始まりだ。
③前科を繰り返し、反省もなく暴力を繰り返す男。器用な手先を持ちながら窃盗·障害を繰り返す男。二人とも仕事を持ち、普通に働いていた。しかし、生きる張合いや目標がない。無気力=虚無感に満ちた日常生活を生きていた。「何か面白いこと、ワクワクすること、スカッとすること」がATM破壊と窃盗なのが虚しい。
現代若者気質を見事に描いている。
お勧めの一冊だ。
冷血(上) Amazon書評・レビュー: 冷血(上)より
4620107891
No.130
(4pt)

Too much thinking is not for your ,,,

単行本2012年11月30日初版にて読了、
個々の生、または死と題された第三章だけを収録し、全編が調書作成のため奔走する合田の物語であり、上巻よりも少ないページ数だが読了に時間がかかった、
一部の同僚・同業者たちから冷ややかに見られるレベルで合田が犯人たちに肩入れしてしまうのはお約束だろうか、
本作が参考にしたと思われる事件の一つである市川の連続殺人事件犯人のようにまったく同情できないキャラクタと異なり、本作の犯人二人を作者は同情的なり読者がシンパシーを抱きやすいように造形していると思う、
著者の筆力によって脳裏どころか眼前に浮かび上がる場所場所が立ち上がらせる喜怒哀楽の広がりは素晴らしいが、本作には”レディジョーカー”のような大作・大河感はなく、結果読後感は意外に軽く、これはここに着地するしかないとわずかな嘆息とともに読了した、
私的に”レディジョーカー””我らが少女A”は愛おしい小説だが、本作にそこまでの愛着はわかない、

ひとつ驚いたことがある、
調査の行き届いた物語を書くのが常の作者だからいちおう地図を確認しながらの読書だったが、なんと犯人二人の出身地も出身学校も実在の名称がそのまま使われているのである、
舞台となる土地土地、そして人人の間に固有で毒々しくトグロを巻く地縛霊のような悪意や狂気は実在すると本書全体で宣言しているようにも感じた、
その悪意や狂気がある日、最も遠いと思われていた場所と家族を相手に暴発してしまったことになる、
誰でもできうる限り交際はおろか接触することも避けたいと思わせる犯人たちがまるで狙いすましたように襲ってきたのだから、本作もカポーティの冷血も物語は特に主張していないが、個人の自警はいかにあるべきかと永遠に問い続けることになると思う、

”レディジョーカー”を経た合田は犯人に過剰にコミットしてしまう性癖はそのままだが、かつてのように腹の底に重い屈託を抱えていないようだ、
すでに二十年以上警視庁勤務だから(つまりその年月だけ厚生年金が積まれているから)、この辺で退職して別な道を探してもよかったろうと余計なことも考えてしまう、
合田ほど生真面目で優秀な人物なら再就職先を探すのは容易だろうし、そもそも少しも”遊ばない”らしい合田の口座には人並み以上の桁数の金が貯めこまれているに違いないのである、
だから本作後、司法試験受験に失敗し警視庁に奉職した考えすぎる男を教官にしたのは作者の中で整合性がとれているからだと思う、
さて、合田が退職前に小説として語るに相応しい事件を解決し、晴耕雨読の暮らしに無事たどりつけることを期待したい、

読書中からずっと?なのがスキの実物を見たことがないので凶器の実感がわかないこと、
近所の中サイズのホームセンターでは扱いなし、
はて、家の中で振り回せる大きさなのか?

以下メモ:

P.250
雄一郎は何かひどく大事な部分が抜け落ちてゆくのを感じ、それを止められない胸苦しさを覚えては、ああ、おまえは絶望しているのか、と自問してみたことだった。
→本書の結論のように感じた、

272-273
被告人は極めて豊かな感性と知能に恵まれていたにもかかわらず、劣悪な家庭事情によって、こころの安定や成長を阻害された結果、家族や人間への関心が希薄な反面、孤独を埋め合わせるために他人に甘える狡猾さを身に着け、人のこころを巧みに弄ぶに長けた子供であったとのことである。人の痛みを理解せず、表面的な善悪しか学ばず、他社と自分と双方への無関心によって自他の人生を軽んじ、表向きは地道な暮らしぶりながら、その内実はすかすかの海綿のごとき空洞であって、人並みの人生の充実を求めるこころもなければ、向上心もない。
→最大級に辛辣な評価かもしれず、読んでいていたたまれなくなる、と同時に読者それぞれの人生観が作者によって試されているようにも感じる、

282
出口のない自意識の迷路
→警察組織で迷子になっている合田のことでもあり、人生の迷子でもある読者にも向けられている、

合田が犯人に差し入れする地誌方面の書籍:
ゲーテ イタリア紀行
ジイド コンゴ紀行
ルナール 博物誌
串田孫一 博物誌
柳田国男 野草雑記・野鳥雑記・蝸牛考
長塚節 土
寺田寅彦 随筆 蓑虫と蜘蛛
冷血(下) Amazon書評・レビュー: 冷血(下)より
4101347263
No.129
(4pt)

Too much thinking is not for your ,,,

単行本2012年11月30日初版にて読了、
個々の生、または死と題された第三章だけを収録し、全編が調書作成のため奔走する合田の物語であり、上巻よりも少ないページ数だが読了に時間がかかった、
一部の同僚・同業者たちから冷ややかに見られるレベルで合田が犯人たちに肩入れしてしまうのはお約束だろうか、
本作が参考にしたと思われる事件の一つである市川の連続殺人事件犯人のようにまったく同情できないキャラクタと異なり、本作の犯人二人を作者は同情的なり読者がシンパシーを抱きやすいように造形していると思う、
著者の筆力によって脳裏どころか眼前に浮かび上がる場所場所が立ち上がらせる喜怒哀楽の広がりは素晴らしいが、本作には”レディジョーカー”のような大作・大河感はなく、結果読後感は意外に軽く、これはここに着地するしかないとわずかな嘆息とともに読了した、
私的に”レディジョーカー””我らが少女A”は愛おしい小説だが、本作にそこまでの愛着はわかない、

ひとつ驚いたことがある、
調査の行き届いた物語を書くのが常の作者だからいちおう地図を確認しながらの読書だったが、なんと犯人二人の出身地も出身学校も実在の名称がそのまま使われているのである、
舞台となる土地土地、そして人人の間に固有で毒々しくトグロを巻く地縛霊のような悪意や狂気は実在すると本書全体で宣言しているようにも感じた、
その悪意や狂気がある日、最も遠いと思われていた場所と家族を相手に暴発してしまったことになる、
誰でもできうる限り交際はおろか接触することも避けたいと思わせる犯人たちがまるで狙いすましたように襲ってきたのだから、本作もカポーティの冷血も物語は特に主張していないが、個人の自警はいかにあるべきかと永遠に問い続けることになると思う、

”レディジョーカー”を経た合田は犯人に過剰にコミットしてしまう性癖はそのままだが、かつてのように腹の底に重い屈託を抱えていないようだ、
すでに二十年以上警視庁勤務だから(つまりその年月だけ厚生年金が積まれているから)、この辺で退職して別な道を探してもよかったろうと余計なことも考えてしまう、
合田ほど生真面目で優秀な人物なら再就職先を探すのは容易だろうし、そもそも少しも”遊ばない”らしい合田の口座には人並み以上の桁数の金が貯めこまれているに違いないのである、
だから本作後、司法試験受験に失敗し警視庁に奉職した考えすぎる男を教官にしたのは作者の中で整合性がとれているからだと思う、
さて、合田が退職前に小説として語るに相応しい事件を解決し、晴耕雨読の暮らしに無事たどりつけることを期待したい、

読書中からずっと?なのがスキの実物を見たことがないので凶器の実感がわかないこと、
近所の中サイズのホームセンターでは扱いなし、
はて、家の中で振り回せる大きさなのか?

以下メモ:

P.250
雄一郎は何かひどく大事な部分が抜け落ちてゆくのを感じ、それを止められない胸苦しさを覚えては、ああ、おまえは絶望しているのか、と自問してみたことだった。
→本書の結論のように感じた、

272-273
被告人は極めて豊かな感性と知能に恵まれていたにもかかわらず、劣悪な家庭事情によって、こころの安定や成長を阻害された結果、家族や人間への関心が希薄な反面、孤独を埋め合わせるために他人に甘える狡猾さを身に着け、人のこころを巧みに弄ぶに長けた子供であったとのことである。人の痛みを理解せず、表面的な善悪しか学ばず、他社と自分と双方への無関心によって自他の人生を軽んじ、表向きは地道な暮らしぶりながら、その内実はすかすかの海綿のごとき空洞であって、人並みの人生の充実を求めるこころもなければ、向上心もない。
→最大級に辛辣な評価かもしれず、読んでいていたたまれなくなる、と同時に読者それぞれの人生観が作者によって試されているようにも感じる、

282
出口のない自意識の迷路
→警察組織で迷子になっている合田のことでもあり、人生の迷子でもある読者にも向けられている、

合田が犯人に差し入れする地誌方面の書籍:
ゲーテ イタリア紀行
ジイド コンゴ紀行
ルナール 博物誌
串田孫一 博物誌
柳田国男 野草雑記・野鳥雑記・蝸牛考
長塚節 土
寺田寅彦 随筆 蓑虫と蜘蛛
冷血(下) Amazon書評・レビュー: 冷血(下)より
4620107905
No.128
(4pt)

考えすぎはなんとも

単行本2012年11月30日初版にて読了、
個々の生、または死と題された第三章だけを収録し、全編が調書作成のため奔走する合田の物語であり、上巻よりも少ないページ数だが読了に時間がかかった、
一部の同僚・同業者たちから冷ややかに見られるレベルで合田が犯人たちに肩入れしてしまうのはお約束だろうか、
本作が参考にしたと思われる事件の一つである市川の連続殺人事件犯人のようにまったく同情できないキャラクタと異なり、本作の犯人二人を作者は同情的なり読者がシンパシーを抱きやすいように造形していると思う、
著者の筆力によって脳裏どころか眼前に浮かび上がる場所場所が立ち上がらせる喜怒哀楽の広がりは素晴らしいが、本作には”レディジョーカー”のような大作・大河感はなく、結果読後感は意外に軽く、これはここに着地するしかないとわずかな嘆息とともに読了した、
私的に”レディジョーカー””我らが少女A”は愛おしい小説だが、本作にそこまでの愛着はわかない、

”レディジョーカー”を経た合田は犯人に過剰にコミットしてしまう性癖はそのままだが、かつてのように腹の底に重い屈託を抱えていないようだ、
すでに二十年以上警視庁勤務だから(つまりその年月だけ厚生年金が積まれているから)、この辺で退職して別な道を探してもよかったろうと余計なことも考えてしまう、
合田ほど生真面目で優秀な人物なら再就職先を探すのは容易だろうし、そもそも少しも”遊ばない”らしい合田の口座には人並み以上の桁数の金が貯めこまれているに違いないのである、
だから本作後、司法試験受験に失敗し警視庁に奉職した考えすぎる男を教官にしたのは作者の中で整合性がとれているからだと思う、
さて、合田が退職前に小説として語るに相応しい事件を解決し、晴耕雨読の暮らしに無事たどりつけることを期待したい、
冷血(下) Amazon書評・レビュー: 冷血(下)より
4620107905
No.127
(5pt)

My God!  It's full of emptiness

2012年11月30日単行本初版にて読了、
二年前に”新リア王”を上巻途中で棄権して以来、高村作品に距離を置いてきたがやはり合田シリーズだけは全巻読もうと先ずまったく内容を知らない本作を手にした、
上下二段の文字量に一瞬ひるんだが、読み始めるとじつにハイスピードで読み進み三日で読了、
近過去を詳細に語り当時を彷彿とさせる作風は”我らが少女A”の前にここで完成されていたのだった、

物語はタイトル通り、カポーティ”冷血”の最上質パロディ、
上巻は、第一章事件として犯人二人の出会いと犯行、そして合間に少しではあるが彼らの履歴が語られ、続く第二章警察で合田雄一郎が登場、係長となった合田はいわゆる次長の立場で総勢57名の捜査チームの実質運営責任者、不可解な犯行だが地道な総当たり捜査は徐々に成果を上げてゆき、ほどなく逮捕に至る経過を語る、
”マークスの山”や”レディジョーカー”のようなサスペンスもスリルもないが、近過去風俗小説としての娯楽性は読者の嗜好によってはたまらない面白さである、
特に国道16号線の沿線や登場する場所に土地勘のある人にとってはご当地作品の性格も帯び、作者の取材力並びに取材から得たデータを文字化する能力の高さは言葉通り恐れ入るのレベルである、
主犯が逮捕される場所はわりと馴染みがあったので、確かに作者は現地を訪れ調査していると推測できる取材力にはやはり恐れ入ってしまう、

後半で合田の捜査過程に関するコメントが書き込まれ始めると、犯人二人ともに家族崩壊による情緒障害者であり、主犯は双極性障害、従犯は骨髄炎による鎮痛剤の過剰摂取により正常な思考・判断能力が瞬間的に消失する人物のように見えてくる、
さて下巻は、調書を完成させるために考えすぎる性格の合田による試行錯誤が長々と語られるに違いない、
カポーティ”冷血”のように対象との距離を間違えると合田の精神が破壊される可能性がありそうだが、その後、無事に”我らが少女A”で活躍できたので、ほどほどの場所に落ち着くのだと思われる、

下巻で書き続くか不明だが、警視庁幹部のスキャンダルも登場する、
ただのトッピング・エピソードの可能性もあるが、警察小説らしい魑魅魍魎跋扈に合田がいかに対処してゆくかも書かれているほうが面白そうに思いながら下巻を読もうと思う、
冷血(上) Amazon書評・レビュー: 冷血(上)より
4101347255
No.126
(5pt)

My God!  It's full of emptiness

2012年11月30日単行本初版にて読了、
二年前に”新リア王”を上巻途中で棄権して以来、高村作品に距離を置いてきたがやはり合田シリーズだけは全巻読もうと先ずまったく内容を知らない本作を手にした、
上下二段の文字量に一瞬ひるんだが、読み始めるとじつにハイスピードで読み進み三日で読了、
近過去を詳細に語り当時を彷彿とさせる作風は”我らが少女A”の前にここで完成されていたのだった、

物語はタイトル通り、カポーティ”冷血”の最上質パロディ、
上巻は、第一章事件として犯人二人の出会いと犯行、そして合間に少しではあるが彼らの履歴が語られ、続く第二章警察で合田雄一郎が登場、係長となった合田はいわゆる次長の立場で総勢57名の捜査チームの実質運営責任者、不可解な犯行だが地道な総当たり捜査は徐々に成果を上げてゆき、ほどなく逮捕に至る経過を語る、
”マークスの山”や”レディジョーカー”のようなサスペンスもスリルもないが、近過去風俗小説としての娯楽性は読者の嗜好によってはたまらない面白さである、
特に国道16号線の沿線や登場する場所に土地勘のある人にとってはご当地作品の性格も帯び、作者の取材力並びに取材から得たデータを文字化する能力の高さは言葉通り恐れ入るのレベルである、
主犯が逮捕される場所はわりと馴染みがあったので、確かに作者は現地を訪れ調査していると推測できる取材力にはやはり恐れ入ってしまう、

後半で合田の捜査過程に関するコメントが書き込まれ始めると、犯人二人ともに家族崩壊による情緒障害者であり、主犯は双極性障害、従犯は骨髄炎による鎮痛剤の過剰摂取により正常な思考・判断能力が瞬間的に消失する人物のように見えてくる、
さて下巻は、調書を完成させるために考えすぎる性格の合田による試行錯誤が長々と語られるに違いない、
カポーティ”冷血”のように対象との距離を間違えると合田の精神が破壊される可能性がありそうだが、その後、無事に”我らが少女A”で活躍できたので、ほどほどの場所に落ち着くのだと思われる、

下巻で書き続くか不明だが、警視庁幹部のスキャンダルも登場する、
ただのトッピング・エピソードの可能性もあるが、警察小説らしい魑魅魍魎跋扈に合田がいかに対処してゆくかも書かれているほうが面白そうに思いながら下巻を読もうと思う、
冷血(上) Amazon書評・レビュー: 冷血(上)より
4620107891
No.125
(4pt)

犯罪とは常にこのように不条理なものかもしれない

「マークスの山」「レディ・ジョーカー」で高村薫の大ファンになった私にとって、その後の「照柿」「晴子情歌」
あたりから、彼女の小説の方向性がより内省的、観念的(という表現でいいかどうか)になっていく
中、なかなか寡作の彼女の作品を手に取ることが憚れてきた。この「冷血」も書かれてから10年ほど
経ってから手に取ることになった。この小説もかなり重いものだと書評等で知らされていたので
覚悟しながらじっくりと読むことにした。ネットの裏掲示板で知り合った若い男二人が、年末資産家の
歯医者一家宅に侵入、留守だと思っていた家人4人を殺害、キャッシュカードと貴金属類を奪って逃走する。
高村らしくディーテイルに拘り、彼らが知り合い、犯行に及び、逮捕され、警察の聴取を受け、
起訴される様子が、まるで法律関係書類を読むが如くに淡々と語られる。別に金欲しさの犯行でも
なく、まして4人を殺害する妥当性もなく、行き当たりばったりの犯行。犯人二人から得られる供述からも
皆が納得できる動機は出てこない。二人にとってこの凶行は何だったのか。巻末には、遺族たち
自身が亡くなった4人の人間たちへの思いが複雑であったことも述べられる。犯罪という一般人に
取っては最も非日常的な行為は決して教科書のように皆が納得できる理由付けや、ストーリーを常に
持っているものではないということを高村は言っているのか。人生経験を積み、成熟した刑事合田
雄一郎とともにこの犯罪を考えていくという読者の立場を楽しみながら読了した。考えさせられる
作品だが、決して退屈ではない。高村薫の筆力を見せつけられた気がした。
冷血(上) Amazon書評・レビュー: 冷血(上)より
4101347255