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われらが背きし者



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【この小説が収録されている参考書籍】
われらが背きし者
われらが背きし者 (岩波現代文庫)

われらが背きし者の評価: 4.10/5点 レビュー 10件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.10pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(3pt)

う〜ん。これは〜。

ル・カレ氏及び彼の作品は基本的に大好きなので、あまり悪く言いたくはないのだが、ちとこのラストはいくら何でもないんじゃないかと。
彼の作風として、完全には「謎解き」をせず、読者の想像に任せる、というところは従来からあった。しかし、ある程度、想像のよすがは描かれており、だから、多少突き放したラストであっても、そう心地は悪くない「余韻」として受け止められたのだ。
しかし、この作品では、「余韻」を感じようにも、結末の出来事に至る原因関係への手掛かりが少なすぎる。終末が描かれる登場人物以外の人々がどうなるかについても、情報がなさすぎて、読者の想像にそこまで任せるのは酷ではないか。読者は作家じゃないんだから。そして「余韻」ではなく、尻切れトンボ感が残った。
ラスト以外の部分でも、今までに読んだル・カレ作品は、彼の多岐にわたる知識、教養や、人生や人間に対する深い洞察などが各所ににじみ出ていて、フィクションにもかかわらず、マーカーペンで本が真っ黄色になるまで線を引いて読んできたものだが、この作品ではそうした箇所はあまりなかった。(冷戦後の英情報機関の混迷が、9.11で振り払われたことを登場人物の諜報機関員が語った記述だけは「へ〜。やっぱりそうだったのか」と興味深く読んだが、その部分は本筋とはあまり関係ない)。
ル・カレ作品独特の、ある程度人生の悲喜こもごもを味わった人により強く響くと思われる「じわ〜っ」とした感慨もあまり感じられなかった。
全体として書き込みが足りない気がする。
逆にそのメリットとして、彼の作品にしては割とスイスイと読め、その気になれば1日は無理でも、2日ぐらいあれば読了可能。従って、週末読書には向いているかもしれない。

あまりにも後味が悪かったので、その後、どうしてあのような結末が起こり得るのか、自分なりに整理してみた。
まず、スイス当局の関与がなければ起こり得ないことではある。そういう意味では、宿泊先に現れた謎のアラブ系警官、はぐれた少女と合流したゲイルが受けた職務質問、果ては隠れ家に現れた尾行者と見られる男女など、いくつかの「スイス当局の情報網」とみられるものとの遭遇は描かれている。
また、「スイスは自国の銀行を守ることに必死だ」(読み返した訳ではないので表現は正確ではない)というような記述もあるので、英国有力者等を通じてロシアの犯罪集団の意向を受けたスイス政府が情報の収集、提供を行い、ラストの犯罪行為を黙認した、という可能性は示唆されている。
しかし、いくらスイス政府が銀行を守りたいとはいえ、「大英帝国」の情報機関の作戦を、犯罪行為に明確に加担する形で妨害するか?その辺は、英情報「機関」による「正式な」作戦とみなされなかったと考えられたような示唆もあるが、いくら表沙汰にできない秘密情報の世界とはいえ、一般人を含めた関係者が多数いる中で、英国内で対立する2つの勢力のうち、常識的に見て正当な行為を行おうとしている方に、犯罪行為に加担して致命的ダメージを与える、なんてことは、あり得るだろうか?
また、もしも、そのようなことが起こり得るような状況があるのであれば、やはり「書き込み」が足りない。ル・カルの小説は、緻密な描写や伏線で、「秘密情報の世界ではこんなこともあるかもしれないな」と思わせるのが真骨頂なのだか、この作品に関しては、「反権力のための反権力者」が表明する荒唐無稽な謀略論とあまり変わらなく見える。ル・カレは元々そういうキャラクターではないと考えられるので、書き込みが足りなかった、としか言いようがない。
われらが背きし者Amazon書評・レビュー:われらが背きし者より
4000221957
No.1:
(3pt)

文学ではない娯楽小説だが、謎解きでも痛快でもない

岩波が出し、池澤夏樹が帯を書いているので、文学を期待したが、小説だった。

イギリス諜報部、ロシアマフィア、各フィクサー、マネーロンダリングなどが出てくるが、謎解きではない。

ハラハラドキドキするが、結末は・・・。

諜報部上司・部下、マフィアと妻、子、そして、若いイギリス人カップル、それぞれの単位やそれを越えての人間関係、心理の変化などが、「背き」も含めて、それなりに緻密かつ複雑に描かれているが、文学的な深みは感じられなかった。

ストーリー展開だけを追おうとすると、そのあたりを見逃しそうなので、最初からそのつもりで読むと、もっと味わい深いのかも知れない。
われらが背きし者Amazon書評・レビュー:われらが背きし者より
4000221957

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