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スペードの女王



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スペードの女王の評価: 4.00/5点 レビュー 15件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全6件 1~6 1/1ページ
No.6:
(3pt)

著者得意の顔のない死体テーマ

登場人物の相関がかなりややこしい所為だろうか、いつも「解説」で物語の概要を語り直すw中島河太郎が、大きな勘違いをしていた。
 「お手本の入れ墨のほうだと、麻薬密輸の大ボスの妾であり、新しく彫られた女性は、政財界の背後にいる汚職屋の愛人であるが」(P.231)と書いているのがそれ。大ボスの妾と汚職屋の愛人は同じ女である。麻薬王陳隆芳の使者スペードの女王だった神崎八百子が、一昨年の陳の死後に麻薬流通のノウハウをもとにビジネスを再開しようとして、新たなバックとして選んだのが、汚職屋こと政財界の黒幕岩永久蔵という流れになる。

 一方「新たに彫られた女」は七割近くまで読み進めないと姿が見えてこないが、彼女の背景が、本書の社会派推理小説としての読み処wである。寡聞にして、オンリーさんという用語をはじめて知った。
 日本がアメリカを中心とする連合国に占領されていた時期、彼らに体を売る女がパンパンと呼ばれたことは知っていたが、そういった一夜の女ではなく、現地妻として扱われた女はオンリー/オンリーさんと呼ばれたらしい。そういった女はもちろん進駐軍兵士と正式な婚姻関係を結んでいたわけではなく、兵士が帰国する際には捨てていかれた。中には、後任者への申し渡しでもあるまいに、次々と順繰りに別の兵士のオンリーさんになり続ける例もあったようなのが、悲しい歴史の断片である……。

 余談になってしまうが、オンリーさんを調べるために「オンリーさん 進駐軍」なんてキーワードで検索して見つけたブログの主は、千歳での進駐軍兵士をこども時分に見聞きしていた人のようだった。
 下級兵士の中には傲慢な輩も大量にいたわけで、同時代の証言は貴重なものなのだが、そのブログを読んでいると、あれっと思う箇所がちらほら。「敗戦を終戦と言い換え」とか「占領軍を進駐軍と言い換え」とかのぷんぷんした記述だ。たまにお目にかかる。
 前者はともかく、後者は明らかにGHQの"指導"で、当時の日本政府に拒否できるわけもないのだから、それらをひっくるめて一切合切、「だから日本はダメなのだ」的に扱うのは間違っている。まさにレッドパージ前のGHQと、日本では逆に、大量にパージされた者の後にすべりこんできた二流サヨクたちの思想教育に見事なほど感化された書き方であるw
 当時のアメリカを糾弾するのはいい。
 東京大空襲をはじめとする都市部無差別爆撃と二発の原爆投下は、当時の国際法をもガン無視したまさに大虐殺だった。それに戦前日本の政治的無能と判断の間違いを糾弾するのもいい。
 だがソ連やチャイナの壮大な社会実験が悲惨な間違いだったことも十分証明されつつある21世紀にもなって、反省ポイントがずれたまま、「だから日本はダメなのだ」論を続ける人はあまりにも無知すぎると言わざるを得ない。自らショッカーの手先になっているも同然なことに気付いて欲しいのだが、……まぁ今さら無理なんだろーなぁ。

 閑話休題。
 首のない死体に関する入れ代わり? のトリックは、著者が何度となく取りくんでいたので、このテーマに絞って各作品の比較を試みれば、随分興味深くなりそうな気がするが、あいにく日に日に記憶が零れ落ちる身としては、残念ながら手に余る。
 そこ以外の感想となると、うーむ思いつかないw
 数日のうちに四人の男女を殺し、金田一耕助まで狙っていた凶悪犯人だというのに、驚くほど影が薄いというのが本作の特徴か……。
 「姉は昭和二年生まれですから数え年でいうとことし二十八歳でございます」(P.165)の記述があるので、昭和29年の事件だと確定できる。
 つまり緑ヶ丘荘とは完全に矛盾しているわけだが、本作のベースとなった「ハートのクイン」ですら昭和33年の作品なので、すでに緑ヶ丘荘へ転居済みの時期である。現に作中何度も緑ヶ丘荘が登場するし、数十メートルを隔てて犯人と対峙するシーンすらある。
 となると、前田浜子の手紙の文面が間違いってことになる。
 どうやら昭和35年の再構成時に、追加されたようだ。
スペードの女王 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:スペードの女王 (角川文庫)より
4041118441
No.5:
(3pt)

結末がお粗末だ 【ややネタバレ】

この本では、本小説は5頁から始まって249頁で終わるのだが、その244頁から、犯人は、自分が殺して土に埋めた女の死体を掘り出す場面が始まる。そして、犯人が死体を掘り出している現場を金田一耕助と等々力刑事に押さえられる。しかし、私には、犯人が死体を掘り出す必然性がないように思われる。

 金田一耕助は、犯人が女を埋めるときにコンタクトレンズを落としたから、それを回収するために墓を掘っていると、説明するのだが、コンタクトレンズを警察が回収したとしても、それから犯人を割り出すことなどできるはずがない。横溝正史は、小説の終わらせ方に困ってしまって、このような説得力のない場面を作り出したのだろう。締切が迫ってきて、もっとよい終わらせ方を考える時間がなかったのだろうか。

 それにしても、1950年の小説にコンタクトレンズが登場するのに驚いた。(小説の出版は1951年で、小説の舞台はその前年の1950年であると思われる。)小説中にコンタクトレンズの説明が何もないのだが、当時の日本人にはそれが何か理解できたとは思えない。

 以下はウィキペディアによる。
     1948年:アメリカのトヒーが PMMA を用いてハードタイプの
    コンタクトレンズの原型を作り出す。
     1949年:名古屋大学の水谷豊博士が日本で初めて
    臨床試験に着手した。
     1951年:水谷、円錐角膜患者に対し、臨床的に成功を収めた。
     1951年:株式会社メニコン創業者田中恭一が日本初の
    角膜コンタクトレンズの実用化に成功した。

 ウィキペディアによると、アメリカでもコンタクトレンズが普及したのは、角膜レンズが発明された1949年以降なのである。だとすると、横溝正史がコンタクトレンズを犯人に使用させたのはおかしなことだ。
スペードの女王 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:スペードの女王 (角川文庫)より
4041118441
No.4:
(3pt)

刑事ドラマや二時間サスペンスの原作感

内股のきわどい部分にスペードのクイーンの入れ墨をした女。その女に依頼され、顔を隠した状態で眠らされた別の女の同じ部分に、同じ刺青を入れさせられた彫物師が、不審な交通事故死をとげる。さらに後日、内股にスペードの女王の刺青がある女の首なし死体が海に浮かんだ…。田舎を舞台にした金田一ものの血縁や因習のドロドロもなければ、都会の金田一ものにありがちなエログロさも控えめで、分量的にも内容的にも比較的すっきりライトに書きまとめられている。麻薬の密輸組織が絡んだり、捜査陣の動きもテレビの刑事ドラマや二時間サスペンスの原作を読むようだ。本格推理というより刑事物サスペンスといったノリで、金田一耕助と等々力警部の活躍が楽しめる。
スペードの女王 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:スペードの女王 (角川文庫)より
4041118441
No.3:
(3pt)

比較的出来の良い長編化作品

もっと短い作品を長編化したもの。

横溝氏の長編化作品は、あまり出来の良くないものが多い気がするが、
この作品は、まずまずの出来ではないだろうか?

横溝ファンには、楽しい読書時間を提供してくれるだろう。
スペードの女王 (角川文庫 緑 304-31)Amazon書評・レビュー:スペードの女王 (角川文庫 緑 304-31)より
4041304318
No.2:
(3pt)

B級本格推理の傑作

本格推理に「本格」と名乗る以上A級もB級もないかもしれませんが、金田一物にはあると思います。金田一物は長短篇にかかわらず、パズラー(本格)とスリラー(通俗)のふり幅が大きくて多種に渡ります。本作は通俗の衣裳をまとっていますが、本格の骨格を持つ作品だと思います。登場人物と物語の尺、トリックの重さがつりあっていて、だれることがありません。短編に毛が生えた、というか実にちょうど良い手ごろ感。

当時の鎌倉のリゾート感と東京からの距離感が感じられるのも興味深いです。
スペードの女王 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:スペードの女王 (角川文庫)より
4041118441
No.1:
(3pt)

死体の入れ替え

金田一耕助ものの長編。
 怪しい世界が描かれている。淫靡でぞくっとさせられる。
 プロットの組み立てが巧みで、ぐいぐい読んでしまった。このあたり、熟年の技術が生きている。
 首なし死体の入れ替えトリック。ちょっとひねってあり、さすがと思わされる。
スペードの女王 (角川文庫 緑 304-31)Amazon書評・レビュー:スペードの女王 (角川文庫 緑 304-31)より
4041304318

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