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死せる獣 殺人捜査課シモンスン



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死せる獣 殺人捜査課シモンスンの評価: 3.00/5点 レビュー 4件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(4pt)

理性よりも本能のままに行動する殺人捜査課シモンスン警部補の力作社会派ミステリー!

近年デンマークのミステリー界から世界に向けて大ヒットした人気シリーズ「特捜部Q」に続いて大ブレイクした期待の社会派警察小説の新シリーズが堂々の登場です。これまでミステリー界では全くの未知数だったデンマークが、昨年の「特捜部Q」とはまた違った魅力のある作品で再び脚光を浴びたのは誠に喜ばしい事だと思います。本書を一読した印象としては、軽いユーモアよりもシリアスな面が強調された重厚な小説だと感じました。
月曜の朝ランズベク小中学校の体育館で、異様な姿の5人の男性の首吊り死体が発見された。娘と休暇中だったコペンハーゲン警察課課長殺人捜査課コンラズ・シモンスン警部補が急遽連絡を受けて駆けつけ、部下の刑事たちを率いて被害者の身元特定に取り掛かる。捜査が難航する中で、被害者が小児性愛犯罪の常習犯であるとの噂が広まり彼らに対する刑罰が生ぬるいという世論が高まり始める。やがてコンラズはマスコミを利用して犯人グループに圧力をかけるという作戦に打って出るのだった。
本書は現代ミステリーでは珍しくない形式の最初から犯人の正体を明かす手法が取られておりまして謎解きの興味は希薄ですが、その代わりに様々なエピソードを積み重ねて登場人物達の個性豊かな人間性を浮かび上がらせる濃密な人間ドラマが読み所でしょう。犯人グループでは理知的で狡猾な者、粗暴で残虐な者のどちらもが人間の持つ深い心の闇を感じさせます。殺人課刑事の脇役では、妻子ある身でありながら浮気症の男アーネ、真面目だが時に強面の部分も顔を出す男ポウル、新人でまだ怖い物知らずの女パウリーネ、何故か女伯爵の愛称で皆から慕われる切れ者ナテーリェ、鋭い頭脳はまだまだ衰えを知らない元殺人捜査課課長カスパといった面々です。そして我らが主役のコンラズ・シモンスン警部補については、十五年間も娘をほったらかしにしたという過去の私生活の事情は全く書かれていませんが、知性派ではあっても唯それだけではなく内面に激しい気性を持ちしばしば理性よりも本能のままに行動してしまう野性派の強い男です。彼の身を気遣う女伯爵との仲がどう発展するのかも今後の楽しみでしょう。本書は出だしこそ異常な残酷さですが以降はそれ程でもなく、警察とマスコミと犯人の知恵比べの駆け引きの興味が主体で中盤はややおとなし目ですが、終盤に入って盛り返しまして特にシモンスン警部補と異常殺人犯とのヤバイ心理戦はど迫力があり必読です。そして小児性愛犯罪者が一般市民によって私刑される過激な展開は現実に起きても少しもおかしくない暴力化の傾向にある現代社会の姿を映し出しており、誠に社会性に富み鋭い問題提起を投げ掛けていると言えましょう。
謎解きの面ではやや物足りない部分もありますが、個性的で達者な社会派警察小説の新たなシリーズの今後に期待して要注目して行きたいと思います。
死せる獣 ―殺人捜査課シモンスン― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:死せる獣 ―殺人捜査課シモンスン― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
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