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迷蝶の島



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迷蝶の島の評価: 4.63/5点 レビュー 8件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.62pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全8件 1~8 1/1ページ
No.8:
(5pt)

貴重な本の購入なので大変満足でした。

この三著者さんの作品はどれも素晴らしいと思い今回所持してない迷蝶の島購入に至りましたが商品状態も良く満足でした。又機会あれば是非ご利用させて頂きたいと思います。注文から発送迄の手際良さと梱包状態も良かったです。
迷蝶の島Amazon書評・レビュー:迷蝶の島より
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No.7:
(5pt)

(2018年―第143冊)真相を知りたくなって頁を繰る手が一気に加速する

東智大学2年生の山菅達夫は親が買ってくれたヨット「ローリエ号」で沖に出ては読書にいそしむ孤独な19歳。ある日、ピーチズⅡ世号という名のヨットと危うく接触しそうになる。そのヨットに乗っていたのはモモコとトキコという二人の女性。これが愛憎渦巻く猟奇的な事件の幕開けになるとは、誰ひとり思ってもみなかった…。

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 2009年に鬼籍に入った作家・泡坂妻夫が1980年に発表したミステリ小説を、今年(2018年)河出文庫で復刊されたものです。

 今後この書を手に取る読者の興を削ぐことを恐れ、誰が加害者で誰が被害者なのか、それすら語るのを控えたほうが良いと思わされる展開をこの物語を見せます。
 慎重を期して、言葉を選びながら筋をわずかに紹介するならば、山菅の手記で語られ始める謎の事件は、まず女二人に対する山菅の勘違いから転がり始めるのです。その勘違いは、読者もまた欺く仕掛けが施されていて、まずもってそこで思わず、やられた! と小さく叫ぶことになります。

 そして海で殺したはずの相手が甦ったに見え、思わずこれはゾンビ小説か、はたまた幻想小説かと思わせておいて、後半50頁ほどで一気に謎を回収していく手際が鮮やかです。最終ページに姿を現すに違いない真相へ向けて、頁を繰る手はどんどんと加速していきました。

 島の殺人事件の真相が明らかにされたあともなお、もうひとつの事件の真相が最後の最後に明かされます。poetic justiceともいうべきその結末もまた、読者の安っぽい推測をおよそ寄せ付けないものです。

 読者は巧みに騙されたい、大きな驚きを与えてもらいたいのです。そんな思いに十分こたえてくれる佳作ミステリでした。
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 同じく泡坂妻夫の作品で、私を心地よく欺いてくれた以下の書も紹介しておきます。

◆『』(新潮文庫)
:230頁もの間、とてつもない企みが目の前でずっと展開されていながら、多くの読者がそのことにずっと気づかないでしょう。なにを隠そう、私も気づきませんでした。そして書を閉じる直前に詳細が明らかになった瞬間、「そんなことを思いつく作者も、それを本にしてしまう編集者もお見事!」と快哉を叫びたくなること間違いありません。

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迷蝶の島 (河出文庫)Amazon書評・レビュー:迷蝶の島 (河出文庫)より
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No.6:
(4pt)

読者を楽しませる鮮やかなトリック

泡坂妻夫の作品はサービス精神に溢れている。
いかに観客を楽しませるかを考える手品と共通しているのだろうが、
魅力的な女性の描写や軽妙な会話のやりとり、そして鮮やかなトリックなど、
読者を楽しませる仕掛けに満ちている。
ドキドキしながら読み進めているうちに、あっというまに結末がやってくる
迷蝶の島 (河出文庫)Amazon書評・レビュー:迷蝶の島 (河出文庫)より
4309415962
No.5:
(4pt)

不可思議な現象を描いた佳作

本作品の発表は、1980年で、もうすぐ40年になろうとしています。
「乱れからくり」や「11枚のとらんぷ」といった傑作の陰に隠れたような作品でしたが、電子書籍化を機に読んでみたところ、日本を代表するミステリ作家の著者らしい、佳作でした。

物語は、まぐろ漁船が太平洋の日本近海で、女性の遭難者を発見するところから始まる。
同乗していた男性とクルーザーで航行中、低気圧に遭い、船が沈没してしまったという。
女性は救助されたものの、男性の姿は見当たらなかった。

次の章からは、ある手記が示される。
東京の大学生である、執筆者の男性は、伊豆のマリーナで、ヨットを通じてふたりの女性と知り合ったようだ。
この三人に、あることがきっかけで、愛憎劇が繰り広げられる。
これが、冒頭の遭難とどう繋がるのか、読者は目が離せなくなります。

そして、この作品の醍醐味は、この手記の後半にあります。
ある不思議な現象が記されていたのです。それは、現実には起こるはずがなく、幻覚とも呼べるような事柄です。
著者は、マジシャンでもあったことで有名ですが、まるでマジックを見ているかのような感覚に襲われました。

もちろん、本作品は、マジックではなく、ミステリなので、最後には合理的な説明があるのですが、これもマジックの種明かしのような感じで、その奇妙な現象とのギャップに巧妙なトリックを味わうことができます。

著者は、2008年に亡くなっているのですが、このように電子書籍で、復刊してくれると、また、新たなファンを生み出すのではないか、と期待しています。
ミステリの巨匠の巧妙な技を楽しんでいただきたい作品です。
迷蝶の島 (河出文庫)Amazon書評・レビュー:迷蝶の島 (河出文庫)より
4309415962
No.4:
(5pt)

名人芸というべき、騙しの技巧

名人芸という他ない、素晴らしい騙しの手並み。
たった一言で全てが反転する驚き。サプライズ・エンディングの極致だ。
迷蝶の島 (河出文庫)Amazon書評・レビュー:迷蝶の島 (河出文庫)より
4309415962
No.3:
(4pt)

「太陽がいっぱい」を想起させる野心家の青年が醸し出す洋上での不穏な雰囲気と作者の持ち味のトリッキーさとが見事に調和した隠れた秀作

私は「湖底のまつり」、「乱れからくり」等の作者の代表作を読んでいるが、本作は隠れた秀作と言って良い。パトリシア・ハイスミス「太陽がいっぱい」を想起させる野心家の青年が醸し出す洋上での不穏な雰囲気と作者の持ち味のトリッキーさとが見事に調和している。全体構成も第二章までは巧み。

序章で30歳代の女性がボートで漂流しているのを船長が見つけた事が記述される。第一章は山菅という大学生の手記という体裁で、山菅が30歳代の女性(桃季子)を殺そうと計画を練り、複数回に渡って殺害未遂(記録者は船内と漂着した島とで少なくても2回殺したと確信したのだが...)に終わった経緯を心理合戦を中心に描く。第二章は捜査官の報告書という体裁で、ある島で山菅が変死体で発見され、同時に上述の手記も発見された事が綴られる。また、序章の30歳代の女性が桃季子である事も確認され、更に、上述の手記中で山菅が島に漂着していた時に桃季子が東京の病院に入院していた事が明かされる。驚くべきは、山菅の兄が手記の筆跡が山菅本人のものと証言した事である。私はどうせ手記は桃季子の代筆(創作)だと思っていたので、ここで完全な迷宮に入ってしまった。しかし、ここで、心理学者が手記を分析して、島に漂着してからの手記の後半は、山菅の「幻覚」と指摘している点がやや興醒め(心理学者の分析は不要だったろう)。

第三章は桃季子の手記で、ここでアリバイの謎も明かされるが、拍子抜けのもので、これまた興醒め。途中までは楽しめたから良いものの、もう少し着地点に工夫があって然るべきとの印象を受けた。ただし、「湖底のまつり」の様な"騙し"を好む作者のファンの方にとっては充分読むべき価値のある作品だと思った。
迷蝶の島 (河出文庫)Amazon書評・レビュー:迷蝶の島 (河出文庫)より
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No.2:
(5pt)

完成度の高い恋愛とサスペンスの大傑作

本書の主人公・山菅達夫は東京の大学生。伊豆の引津マリーナで、磯貝桃季子・中将百々子という2人の女性と知り合う。彼らは3人ともヨットの持ち主でセーリングを趣味にしている。達夫は百々子に惹かれるが、ちょっとした行き違いで桃季子と関係を持つようになる、というストーリーである。
本書はミステリーというより恋愛のウェイトの高いサスペンスである。主な登場人物は、達夫・桃季子・百々子の3人と最小限に抑えられている。この3人の間の感情の行き違い、3人の間で何が起こったのかの謎はサスペンスフルで、他のレビュアーの方も言っておられるように読者はページをめくるのを止められないだろう。また本書には、非常にシンプルで鮮やかな仕掛けが設定されている。読者がこれを見破るのは困難だろうと思う。またマリーナやヨットが舞台になっていることで、本書全体に新鮮な印象を与えている。

本書は、非常に完成度の高いサスペンス小説といえる。
本書は泡坂妻夫氏にとって5作目の長編小説とのことだが、評者は自分の読んだ泡坂作品の中で本書を最も好んでいる。しかし本書は1980年代に文春文庫より出版された後、長く絶版だった。このたび河出文庫から再出版されたのは、まことに喜ばしいことである。
迷蝶の島 (河出文庫)Amazon書評・レビュー:迷蝶の島 (河出文庫)より
4309415962
No.1:
(5pt)

一気読みの傑作サスペンス

若い男女の三角関係が生んだ殺人劇を、サスペンス豊かに描く快作。初期傑作の『亜愛一郎の狼狽』『11枚のトランプ』『乱れからくり』などからすると、泡坂妻夫氏は、ひたすらトリッキーな本格派のようだが、何かの対談で、セバスチアン・ジャプリゾなどの心理サスペンスも好きだといった趣旨のことを発言されていたのを思い出す。本作はそちら側の泡坂氏の嗜好が、もっともストレートに表れた作品だろう。

読みながら、洋上のヨットでくり広げられる殺人計画というところから、パトリシア・ハイスミスの『太陽がいっぱい』を思いうかべ、殺したはずの人物が幽霊のように犯人のまえに現れるオカルト的な展開から、ボアロー&ナルスジャックの『悪魔のような女』などを想起した。名作スリラーの面影を散見させながら、倒叙形式でスリリングに描かれる男女の愛憎劇は、それだけで後半まで一気読みさせられる面白さがあるが、謎解き部分では、恐ろしくシンプルなトリックによって、感嘆の膝を打たされることにもなる。

トリックとしてはシンプルすぎて物足りないという感想もあるようだが、逆に筆者は、こんな単純な着想のうえに、これだけ奇怪な謎とサスペンスあふれるミステリを構築してみせた作者の手腕に、より舌を巻かずにはいられなかった。そんなコロンブスの卵的な発想によって、オカルトチックな幻影をあざやかに解体したのち、さらに結末に軽くツイストを利かせてみせる手際も心憎く、作者の精緻で周到な職人技が、隅々にまでうかがえる傑作となっている。
迷蝶の島 (河出文庫)Amazon書評・レビュー:迷蝶の島 (河出文庫)より
4309415962

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