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天地明察



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【この小説が収録されている参考書籍】
天地明察
天地明察(下) (角川文庫)
天地明察(上) (角川文庫)

天地明察の評価: 4.20/5点 レビュー 418件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.20pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全338件 261~280 14/17ページ
No.78:
(5pt)

大願成就に熱く震える

09年11月の単行本の文庫化.加筆,修正されて分冊されており,こちらは下巻になります.

上巻以上に厳しい主人公の挑戦は,その壁の多さにこちらが挫けてしまいそうになりますが,
何度も倒れ,諦めかけながらも立ち上がり,前へと進み出す姿は,強く震えるものがあります.
そしてそれは主人公一人の力だけではなく,多くの人たちに支えられ,見守られてのものであり,
同時に,彼のこれまでの生き様であったり,人柄のものであることを改めて感じることになります.

終盤の流れは,いささか駆け足に感じるところもありますが,周りがめまぐるしく動いている中,
主人公だけはぶれず,自分たちを信じ,ただ黙々と己のなすべきことをこなす姿が却って印象的で,
静と動,そしてこの『速さ』の対比が,結末へと向かっていく独特の高揚感をあおり立てていきます.

そして多くの時間,出会いと別れ,彼らとともに願い,挑み続けてきてた末にたどり着く大願成就.
若き日の思い出を踏襲し,託された数々の思いが溢れかえる様子には,ただ胸が熱くなるばかりです.
また,ここぞで織り込まれるいくつかの『決め台詞』と,同じく大きな意味を持ついくつかの『音』は,
それらの情景が鮮やかに浮かび上がってくるのはもちろん,込められて思いまでも伝わってくるようです.
主人公を長きに支えた妻もすてきで,その強さと優しさは美しく,二人のやり取りもほほえましく映ります.

ただ,あえて言えば分冊だったのが残念で,できれば『一冊』として読み,味わいたかったところ.
上下巻,この二冊のボリュームなら全く問題なかったはずで,たとえ中断しながら読むのだとしても,
本が分かれたことで微妙な『隙間』が生まれたようで,いい作品だけにそこが少しだけ気になりました.
天地明察(下) (角川文庫)Amazon書評・レビュー:天地明察(下) (角川文庫)より
4041002923
No.77:
(4pt)

じっくりと練り上げられていく下地

09年11月の単行本の文庫化で,『第31回吉川英治文学新人賞』と『第7回本屋大賞』の受賞作.
今回の文庫化にあたり上下巻へと分冊となり,また加筆と修正が加えられているとのことです.

全六章の半分,三章までを収めた本巻は,いかにも下巻のための上巻の感じではあるものの,
それは決して『過程』などで片付けられるものではなく,多くの人たちとの出会いにはじまり,
挑戦,挫折,復活と,先へと繋がる主人公の『下地』が練り上げられていく様子がうかがえます.

そんな主人公の少しどぼけた感もある様子は,堅苦しさのない穏やかな文章もあり好印象で,
作品へと引き込まれていくのと同じく,失敗や成功にも思わず感情が入っていってしまいます.

時代小説というより,一人の人間を綴った作品で,この巻だけでも結構な様子が描かれますが,
それでいて妙な暑苦しさを感じさせないのは,物語はもちろん主人公の魅力によるものでしょう.
また,そんな彼の周り集まる人物にも惹かれ,ほのかに漂う恋の雰囲気もほどよいアクセントです.

このあと,いよいよ下巻から大きく動き出すようで,この男の人生がどのように進んでいくのか,
これ以外にも,未だに見ぬ好敵手の大きな存在,恋の行方と,続きが気になって仕方がありません.
天地明察(上) (角川文庫)Amazon書評・レビュー:天地明察(上) (角川文庫)より
4041003180
No.76:
(5pt)

日本人ってすごい

仙台に向かう東京駅で「あなたこそ読むべき」と薦めれた本。

元禄時代に、天文観測と最新の和算を融合し、日本の暦を開発した'男、春海の物語。春海は、暦の開発に3度挫折し、4度目に暦の開'発に成功する。日食や月食の日時を正確に計算してみせた驚くべき'暦。おそらくは微積分に相当する和算を駆使して、ケプラーの法則を発見した上で'、過去の暦の誤謬の理由を発見。上下巻を一気に読んでしまった。'9月には映画化されるとか。

3度の挫折の後の、精緻な暦の完成。勅令で正式の暦として採用させることに成功している。晴海は、暦の独占による版権による経済'効果(経済)、暦と占いが不可分だった時代の宗教的な権威の調整'(宗教)、朝廷と幕府の拮抗(政治)そして庶民への文化的影響な'ども検討し、工作活動を行っている。 優れたものであっても、成功するには別の努力も必要だとわかる。

彼の功績の裏には、和算の開発者の関孝和の表に出てこない友情溢れる支援もあった。晴海と、当時の幕僚や陰陽師との信頼関係にもとづく交流も感銘する。

2度結婚。最初の妻とは死別。どちらの奥方とも夫婦仲の良い方だったようである。最後は、後妻とは「同じ日に没した。家人が祝うべきことと話している」とある。
天地明察(上) (角川文庫)Amazon書評・レビュー:天地明察(上) (角川文庫)より
4041003180
No.75:
(4pt)

久しぶりです

金環日食の日に読み終えましたが、
何度も挫折しながらも前に進んでいく主人公に共感。
読んでてこんなにワクワクした本は久しぶりです。
天地明察(上) (角川文庫)Amazon書評・レビュー:天地明察(上) (角川文庫)より
4041003180
No.74:
(5pt)

明察…この言葉が好きです

歴史物や時代小説は得意ではない自分でも面白いと思えた。
ちなみに理系音痴でもあるけれど、解りやすくて夢中で読めた。
思わず応援したくなるような春海や、個性的な周囲の人々。
心に残る言葉やシーンが多く、清々しい読後感です。
「天地明察!!」その瞬間のための数多の人生に、感動に涙が何度も溢れました。
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
404874013X
No.73:
(5pt)

幸福な物語

ラノベ作家の書いた歴史小説か、と思って読み始めた。導入部が気にいらなっかたが、読み進むうちにどんどん物語に引き込まれていった。渋川春海を主人公にしたという以外に新しさは感じなかった。登場人物も類型的だし、ストーリーも予想を外すことはない。ただ、最近の歴史小説にありがちな強引なフィクションがなく、フィクションが先走ったところで実際の歴史に沿った事実に引き戻すあたりに作家の良心を感じた。
だが、そんなことはどうでもいい。この小説を読んでいるあいだ幸福だった。それは渋川春海という恐ろしく幸福な人生を送った人間の幸福さだ。ひさびさに晴れやかな歴史小説を読んだ思いがする。
ぜひ、最近歴史に興味を持ち始めた小学校5年生の甥っ子に読ませてやりたいと思ったが、少し難しいかも知れない。これを200ページくらいの児童文学にできないだろうか?子どもたちに歴史と小説の醍醐味を教えてあげるのに絶好の題材だと思う。映画化と漫画化するくらいだから、児童文学化もありでしょう。
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
404874013X
No.72:
(5pt)

凶作にて重税を課すのはただの無為無策

水戸光圀ではないが、思わず「うぬう」と唸りたくなるような傑作であり、もし些かでも文士を志す者ならば、この著作の前に、恐れ入りました、と平伏させる代物でもある。凡庸な草食系、算術好きの青年が日本独自の和暦を開発し、改暦の大事業を成し遂げた話であるが、豊富な語彙と詳細な時代考証に裏打ちされて、優れた文芸作品として昇華している。
さほど重々しく書いてはいないが、算術でも暦術でも自分の誤謬については決死の覚悟で臨んでいることが随所に現れ、武士ではない主人公にも武士の精神が十分に浸透していたことが伺い知れる。
とくに感心したのは保科正之の明晰さであろう。凶作にて重税を課すのはただの無為無策であるとし、改暦の必要性、手法、影響などをつぶさに検討して、大事を成す姿は現代の政治家にはぜひ見習って欲しい。
主人公がなんども失敗しながらも、少しずつ布石を重ねていって最後に改暦を成就させたのは、鮮烈な勝負の世界を見るようですがすがしい。
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
404874013X
No.71:
(4pt)

研究者とは。

本屋大賞で知り、わくわくして手に取った一冊です。

 私は物理の専門家でも、天文の専門家でも、数学の専門家でもありません。
しかし、この本を読んで、一つ似たような感想を抱いた、そして共感を抱いた
報道がありました。

 光子よりも速い物質(粒子?)が存在する。と発表されたとき、その研究者の
名古屋大学の先生がおっしゃっていました。
 「これを発表するには、勇気が要りました。」と。

 アインシュタインのような天才であれば、E=mc2を唱えたとき、
 「何だ、君達そんなことも気がつかなかったかい?」
 てな感じだったのでは? 勇気は要らなかったのかもしれません。
(アインシュタインも勇気が必要だったのかもしれませんが。)

 普通は違います。「これは教科書と違う。」と気がついた時、驚きます。
疑います。そして確かめます。何十回も確認します。確認のための確認を
行います。そしてようやくつぶやくのです。
 「これこそが真実だ。」
 つぶやく自分に自信を持つための勇気が、その繰り返す根気以上に必要です。

 鈴木梅太郎も、ワトソン、クリックも、キュリー夫人も、みんなみんな
そうだったんじゃないでしょうか。
 そして、名古屋大学の先生も、そんな気持ちだったんじゃないでしょうか。

 このお話の中では、関孝和が天才、春海がいわば凡才。関孝和とのやり取り
での失敗。失敗に終わった暦法をやり直す根気。そして、ようやくたどり着いた
正解を、公表する勇気。

 暦の歴史も、数学の問題も深くは考えなかったのですが、春海の根気と
勇気に、凡才研究者の生涯を見たようで、結構面白かったです。まあ、私から
みたら、春海も天才ですけど。
 暦の歴史も数学の問題も、誤りがあったようですが、それを読むために
読んだわけではありません。しかし、凡才研究者の心境の掘り下げは、実は
もう少しかな。失敗しても成功しても、どうしても泣いてしまいますからね。

 基本的にはお勧めします。85点かな。
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
404874013X
No.70:
(5pt)

今後売れるでしょう。

ドラマ化決定の情報にちょっと興味もちました。本の梱包も丁寧でしたし傷もなくよかったです。
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
404874013X
No.69:
(4pt)

読み心地の良さ

気持ちのいい人物が次々と出てきて、読み心地のいい小説でした。
会話が多くて動きは少なく、戦や決闘といった派手な見せ場もなく、そういった意味では起伏の少ないストーリーなので、映画化はどうなんだろうと首をかしげてしまいますが、小説としては最初から最後まで面白く読めました。史実をどのように小説にしたか、想像するだけでも楽しかったです。たとえば、主人公が再婚しているとわかったら、前から知り合いだったことにするとか、そういう感じなのかなあ、なんて考えながら読んでいました。
「からんころん」がちょっとしつこいかなと思いましたが、あとはすらすらと読めて、読書の喜びをたっぷりと与えてくれる小説でした。
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
404874013X
No.68:
(4pt)

学生に読んでほしい

私は読書家ではありませんし、文系学生として知っておくべき知識くらいはあるものの、日本史にも精通していません。
ただ、歴史を勉強するにしたがって、人々が織り成してきたドラマに目を向けるようになりました。
このことは歴史を楽しく学ぶことに大きく貢献してくれています。

日本人なら誰でも知っている織田信長、坂本竜馬、あるいは源頼朝など目立つ業績を残した人々の遍歴などはおおまかには誰でも聞いたことがあるでしょう。
大河ドラマでも取り上げられるし、彼らを題材とした小説を初めとしたさまざまな作品を目にします。
私たちは、彼らの活躍が殺人に立脚したものであろうと、欧米人の先進文明ありきの活躍であろうと、彼らが偉人であることは疑いません。
そのようなことは小学生高学年でもなんとなく分かるでしょう。
そして、彼らの人生は私たちには真の意味で想像できない波乱万丈なものであったであろう事も理解します。

しかし、この小説の主人公は渋川春海。
小学校でも中学校でも習わないでしょう。
高校生の教科書には載っていますが、それは文化史のページに数多く載っている人たちのうちの一人に過ぎません。
教科書の記述は「渋川春海が中国の授時暦を用いて貞享暦を考案し、天文方が設置された」などという記述。
日本という国に大きく寄与した100人を選ぼうとしたら、おそらく選ばない人も少なくないでしょう。
なぜなら、知名度が高くない上に、今の日本はグレゴリウス暦を採用しており、その意味では渋川の活躍は残っていないのでは、と素人には思えるからです。
知識がある方からは反論があるかもしれませんが、この本は専門書ではなく、大衆小説であることを踏まえて頂き、目をつぶってもらえると助かります。

結局、私が要領を得ない無駄の多い文章で言いたいのは、この本は
「一見目立った活躍をしていないように思われる人でも、このようなロマンに満ち溢れた人生を送ったのか!」
「歴史というのはありとあらゆる人々が凄まじい人生を送り、構成されて、私たちは今このような人生を送っているのか」
ということを再確認させてくれる本だということです。

歴史小説をよく読まれる方からの、何を今更、という声が聞こえてくるようですが、読書家ではなく一介の学生に過ぎない私には軽い衝撃でした。
先述している通り、ただの学生である私がありきたりな教育論を語ることは恥ずかしいですが、ある意味での当事者の生の声と思ってください。
今の日本の教育では、勉強の楽しさというものをなかなか伝えることが出来ていません。
私は、つい最近まで勉強に楽しさを見出したことはありませんでした。
ただ単に、授業に出て、眠かったら眠り、宿題をこなし、あるいはサボり、テストを受け、勉強不足のあまり赤点ギリギリのときもある。
完全に時間の無駄です。よっぽど頭のよくない限り、そのような状況では半月ですべて忘れるでしょう。というよりも、そもそもみにつけたとは言えません。
私の友人にも教師を目指している人たちがいますが、その人たち自身が勉強の楽しさを知りません。そんな人たちに楽しい勉強を教えられるはずがない。

好きな漫画のすぐに死んでしまうキャラクターの名前や細かい世界設定は覚えているのに、二次式の平方完成のやり方は覚えていない。
好きなバンドのドラムが使っているスプラッシュシンバルやスティックのメーカーは知っているのに、ナイティンゲールが何をした人なのかは分からない。
やはり、興味を持っているかどうかで全く違いますよね。
この漫画は好き。だから覚える。二次方程式に何の意味があるの。社会に出てから使わないだろ。
あのドラマーは格好いい。だから覚える。ナイティンゲール?あれでしょ。すごい看護婦でしょ。それで?俺の人生に何の意味があるの。
……こんな感じですね。
もちろん、皆が皆勉強に面白さを見出せるとは言いませんが、今の状況は戦慄を覚えるほどひどい。
生徒に興味を持たせる為には、すべての教師は勉強の楽しさを知っているべきだし、それを伝える為にはさまざまな観点から深く理解する必要があると思います。
そして生徒はそれを受け入れる準備がないといけない。
平方完成をすれば実数の二乗は0以上であることから、数式的にもグラフ的にも頂点を求められる。それが分かれば最大最小も分かるし、視覚的に考えられるようになる。言われてみれば当たり前。
ナイティンゲールは比較的安定していたヨーロッパに衝撃を与えたクリミア戦争で活躍し、多くの命を救った。彼女の活躍がなかったら今の世界の人々の一部は存在しないし、赤十字社もなかった。
たかが高校レベルの勉強でもいろいろな視点から見れば楽しさを見出せるはずです。

小説のレビューの場をお借りしてこのような、私の日本教育に対する不満を吐き出して申し訳ありません。
改めてレビューを再開させていただきます。
この本はそのような学生にも歴史の面白さを伝えることが可能なのでは、と思うのです。
徳川家康のような有名な人たちだけでなく、目立たない人たちも含めた全ての人間が織り成したのが日本史。それが今の比較的安全な経済大国日本を作った。
数学を発展させたのも、万有引力を発見して宇宙に乗り出したのも、日本語や英語、スワヒリ語を作り出したのも全て人間。戦争ばかりの恐怖に支配された人たちに学問を発展させる暇はそうそうない。
歴史を学べば、先人たちが作り上げてきた平和を尊敬し、あらゆる学問を尊敬できる。
歴史をしっかり学ぶためには、歴史の楽しさをしれば百人力。好きな漫画やバンドと同じ。
好きな漫画は作者やアシスタント、編集者が作るもの。バンドの曲はメンバーやスタジオのスタッフやPAが作るもの。
歴史はめちゃくちゃ頭のいい学者が研究し、今までの人間全てが作り、今の私たち、私たちの子供たちがこれからも作っていく。
どちらが深いか、多角的な面白さが見出せるかは明らかではないでしょうか。
ただ、私は漫画もロックもメタルも大好きなので悪しからず。

私もまだまだ発展途上ですが、この本で成長できました。
この本で、歴史の楽しさを知ってください。
そして、あらゆることを楽しめる人間になる一助となると私は信じています。

天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
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No.67:
(4pt)

「天地明察」を読んで

囲碁侍として江戸城に登城する主人公の安井算哲(渋川春海)は、囲碁の世界で最高峰を極めようとするよりも、無類の数理好きで、神社の和算絵馬に書かれた算術の難問を即答したという関孝和に永らく会うことのないままに脅威と競争意識を持つ。やがて、会津藩主の保科公や幕閣の命を受けて、暦の改正をライフワークにして、その数理好きの能力も全面開花し多数の協力者にも恵まれて、ついに大和暦を採用するとの天皇の詔勅を得る。
 しかし、そんなあらましの展開ではあるが、決して、たんなる成功物語ではない。もし自分が持てる何らかの能力を全開したとしても、欲望、羨望、妬みが渦巻くなかで、事業展開に必要な人の和を確保し、失敗にめげずにどこまでも真実を見極め、また世の人心をひきつけてゆくひたむきな努力が要求されるときに、自己の内面が敗れないでやっていけるだろうかと思う。この小説は、主人公の心の内面をよく描写している。この小説を読んで、主人公はよくやった、このような人物が実在したのかと祝福する温かな気持ち一杯にされた。
 この本については、自宅近くの市立図書館で三百人以上が貸し出しのウエイティングをしていると聞いたので、思い切って買って読んだのは正解であった。さすが、本屋大賞を取っただけの本ではある。
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
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No.66:
(4pt)

映画化が待ち遠しい。

恥ずかしながら歴史に疎く、途中で実在の人物なんだと気付かされました。

今、私たちの日常に当たり前にあるカレンダー、暦というものは、こんなに大変な作業を経てここにあるんだ…と非常に興味深く読みました。
数学というものが、算術として神に捧げられていた時代があったという驚きもありました。

歴史に疎いからこそ、壮大なエンターテイメントとして楽しむことができました。

岡田准一さん主演の映画の公開(2012年秋)が待ち遠しいです!
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
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No.65:
(5pt)

主人公を応援せずにはいられなくなる

昨年のことだが、第7回本屋大賞を受賞した「天地明察」が面白かった。
日ごろ何々賞とかの本に、それほど関心はないのだが、ニュースで絶賛していたのと、主人公がはじめて聞く歴史上の人物ということが気になり、さっそく本屋に行き手に取った。

この作品のおもしろいのは、登場人物のキャラクター設定が巧みで、彼らのイメージが鮮明に浮かび、
吸い込まれるように入ってしまうところである。
飄々とした主人公が、たくさんの個性的な登場人物に愛され期待されるのが、軽いタッチで表現され、読者もついつい彼の成功を応援せずにはいられなくなる。

神社に奉納された算術勝負絵馬の問題に一瞥で解答を記す天才数学者「関孝和」の存在を知ったときの驚きや、そのまだ見ぬ天才との算術勝負にかける思いにわくわくさせられ、彼を探してたどり着いた、算術道場の師範と明るく気の強い道場の娘「えん」との出会い、お抱え棋士の天才ライバル「本因坊道策」が彼に一目置くところなどもおもしろ可笑しい。

また、「北極出地」事業の二人の老上役に、緯度予測のシーンで主人公の才能や性格をすぐに気に入られてしまうところなどもなんともいえない。
そして、彼ら二人が事業の完遂を見届けられず主人公に託したり、事業の実質の指揮者「保科正之」やその配下の人たちなど、いろいろな人物に支援され、最後まであきらめずに事業を成し遂げる姿が印象深い。


天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
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No.64:
(5pt)

囲碁と算術と天文という魅力的な組み合わせ !

個人的には囲碁棋士としてしか知らなかった安井算哲こと渋川春海が大和歴を創り上げるまでの過程を、関孝和、本因坊道策の二人の天才を初めとする多くの人々との係わり合いの中で描いた作品。本来なら重苦しくなってもおかしくない"改暦"という題材を、爽やかに描いた点に本作の魅力があると思う。普段は茫洋としているが、目標が定まると一心不乱に突き進む春海の性格付けが作品全体のムードを支配している。一部の人間を除き、春海の周囲の人々が善意に溢れ春海に好感を持つ様に設定されているのは、作者が敢えてそうしたのだと思う。

出会いから始まって、その後に到る"えん"との係わりも微笑ましいが、何と言っても関孝和、本因坊道策の使い方が上手いと感じた。同年齢の幻のライバル・畏敬の的として描かれる関孝和の登場のさせ方も巧妙だし、当時の囲碁界を考えればあり得ない(城碁の結果、憤死した棋士も居たと言う)安井家と本因坊家の相続候補同士の奇妙な友情関係という設定も面白い。また、江戸時代における武断政治から文治政治への変遷の流れと"改暦"とを自然にマッチさせている創りも上手いと思った。江戸時代において庶民にまで拡がっていた算術の隆盛も巧みに織り込まれている。作中では、関孝和が独自に考案した代数的解法や行列式が紹介されているが、実は微積分も殆ど完成していたのである。

そして何より魅力的なのは囲碁と天文という組み合わせである。現在の一流プロ囲碁・将棋棋士は盤上に宇宙を観ると言われている。そこに着眼した作者のしたたかさにも舌を巻いた(作中で何度か碁盤上の"星"に言及しているのは偶然ではあるまい)。夢とロマンに溢れた一級のエンターテインメントと言って良いのではないか。
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
404874013X
No.63:
(4pt)

明察に近づきたくて

この小説で一番面白かった点は、一番初めの序章で印象的に書かれていたのは、実は「負け」寸前の風景だったこと。

本文のラストに近いところで同じ光景が書かれ始めたから、あぁ、これでやっと主人公が長年取り組んだ念願の『改暦』=「勝ち」にたどり着いたかと思いきや、、、、結果はガクッと異なった。

若い頃は、算術で解けない誤問を世に出してしまったとき、消えてなくなりたいと切腹しかねないほどの恥を意識した少年だったけれど、
45歳の改暦の勝負のときには、「負け」さえ想定内に置き、そこからのシナリオを用意して、負けが決まった瞬間から、本当の勝負を見せた。

くりかえされた光景の先にあったもの。それは、必至の信念と、政治的な根回し。周囲の大人が与えてきた知恵であり、成熟した器だった。

その勢いったら、、怖かったわ〜。けど、楽しかった〜。

みごと機を熟させて改暦を成し、初期に出逢った少女としっかり一緒に歳を重ね、同じ日にこの世を去ってのハッピーエンド。
実在した人物の名をもって、改暦や算術や武家の世を題材にして、一見、小難しく思ったけれど、
内容はシンプルに一本筋の人生を歩むことの魅力を伝えるものでした。

次回作の主人公「光圀」を、インパクト強い短文で潜ませてあるあたりも、くすっ。

天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
404874013X
No.62:
(5pt)

快作!!

この”気分爽快!”感は一体なんなんだ。
暦も囲碁も全く興味無いし、絶対無理と思いながら読み始めたのに!!!
作者さん、いい時間をありがとうございました。
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
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No.61:
(4pt)

内容的にも、作品評価的にも、「たかが暦、されど暦」という言葉がピッタリの作品

本屋大賞第1位に加え、この本の帯に寄せられた専門家筋の賛辞の嵐。読む前に、これだけの情報を刷り込まれてしまうと、否が応でも、どんなに素晴らしい本だろうかと、期待に胸をふくらませてしまう。しかし、そんな期待の大きさからすれば、実際に読んでみた印象は、期待ほどではなかったといわざるを得ない。前記賛辞の中には、「読んでいて涙が止まらなかった」という感想がある。私はどこで泣けるのかもわからないのだが、これは、皮肉でも何でもなく、この本を読んで涙が止まらなくなるくらいの豊かで繊細な感受性があれば、読書が本当に楽しくてしょうがないだろうと、うらやましくさえ思う。 

私は、この本を、「暦を作ることに生涯を賭けた男の壮大なストーリー」と思って読み始めたのだが、実際に読んでみると、この本は、碁、神道、朱子学、算術、測地、暦術に多芸な渋川春海の伝記的小説といった方が近いと思う。これらに関するエピソードや、春海を取り巻く人物のエピソードを丹念に拾って物語を進めていくため、暦を作るというこの本のテーマが具体的に形を持って現れてくるのは、全474ページのようやく中盤過ぎになってからなのだ。 

「たかが暦、されど暦」というこの本のテーマの性格上、致し方ない面はあるのだが、決して、読者を引き付けて離さないような力のある物語でもないし、読者を引き付けて離さないような筆致でも書かれていないので、このあたりの進行の遅さを、まどろっこしいと感じてしまう面があることは否めない。とはいえ、一つ一つのエピソードは結構面白いし、これらの多くが、この本のテーマの布石の役割を果たしていることも認めなければいけないと思う。

むしろ私は、本編の筋立て以上に、脇役のキャラ立ての上手さの方に感心した。その双璧が、えんと関孝和だろう。春海は気弱で頼りなく、美人で、勝気、しっかり者のえんは、春海にきつい一言を返してくるような女性なのだが、どこかいとおしさを感じてしまう魅力的な女性であり、箒を構えて春海と相対する姿が目に浮かんでくるような存在感がある。 

関孝和は、春海以上の才能を持った希代の天才でありながら、不遇な立場に置かれた孤高の存在として描かれている。2人がお互いの存在を知ってから15年を経過して、ようやく初めて顔を会わせる終盤の場面は、「されど暦」を象徴するようなシーンであるとともに、この物語の最高の見せ場といっていいだろう。 

天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
404874013X
No.60:
(4pt)

伝記にしては面白すぎる

非常に楽しく読ませていただきました。
歴史物にはほとんど興味のなかった自分ですが、登場人物のセリフや動作が目に浮かぶようで、
すごくリアリティのある優れた物語に仕上がっています。
長編だけに読了までに時間がかかりましたが(もともと遅読なもので)、いつもわくわくしながら
読みました。
映画化を楽しみに待ちたいと思います。

天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
404874013X
No.59:
(5pt)

登場人物全てがいとおしい

江戸時代に様々な苦労を経て大和暦を大成し、太陰暦から太陽暦への転換という大事業を成し遂げた渋川春海の生涯を,彼を取り巻く人々とともに描いた作品。

この作品を貫くのは、「知」や「真理」への純粋な探求心と憧憬である。

渋川春海という名前自体、本名である安井算哲という名が、元々代々江戸城で御前碁を打つ家に育ち、優秀な碁打ちでありながら、定石をはみ出すことのできない職務につくものであり、その非創造性に「飽いて」「自分だけの春の海辺がほしい」ということから名乗ったものである。

その「自分だけの春の海辺」を必死で捜し、渋谷の金王神社にある算術の設問と解答を記したたくさんの絵馬を見に行き、その絵馬どうしが風でふれあう、「からん、ころん」という音が、彼の生涯の様々な重大場面で繰り返し出てくる。その音こそが、「知」への憧憬の象徴だからだ。

その絵馬から、和算の大家となる関孝和と出会い、算術の才能から酒井雅楽頭に抜擢され、22歳で北極星観測隊に参加してから、改暦事業に携わるようになり、3度の挫折を経て、ついに、45歳の時、改暦の大事を達成する。

主人公はもちろん、関孝和への出題が誤問と知ってその場で切腹しようとするなど、純粋でまっすぐな性格だが、他の登場人物も、権力にも利害にも関心がなく、学問への純粋な関心だけに突き動かされている愛すべき人たち、とくに、北極星観測隊の隊長建部と伊藤の、儒教社会にもかかわらず、孫のような年齢の春海の計算の正確さを子どものように喜ぶ、純粋さ、その稚気に、思わず本を閉じて落涙した。「学問は長く、人生は短い」という真実を改めて思い出し、一応学問を仕事とする自分のいいかげんさが恥ずかしくなった。

学問や真理、知という絶対的なものに仕える同志愛で結ばれている者という関係は、授時暦の誤りを検証する自分の研究を無償で提供しようとする関孝和や、碁のライバル本因坊道策、会津藩士安藤との関係にも表れ、現実の世界で利害計算が第一になっている人間関係にまみれた者から見ると、そのすがすがしさはまぶしいくらいだ。

しかし、改暦は政治とはもちろん無縁ではなく、春海自身も、改暦事業に関わる中で、暦を相対化するということが、権威そのものを相対化する危険をはらむものだと気づく。「権威の所在−つまり人々は、徳川幕府というものを絶対的なものとして崇めているわけではないのではないか。帝のおわす京、神々の坐す神宮、仏を尊崇する寺院、五畿七道に配置された藩体制。人々が自由に権威を選ぶ余地はいたるところに残されており、しかもそうした余地は、決して誰にも埋めることのできないものなのではないだろうか。」
暦を幕府の力で正確なものに変えることは、幕府の権威を絶対的なものとするためにも必要だったのだ。

しかし、そうした政治的な思惑ですら、作者の手にかかると、やはり公平無私な企みになる。民の安寧のために武断政治から文治政治への転換が絶対必要、改暦はその第一歩と考える家光の異母弟保科正之の徹底した名君ぶり、数々の善政も、自分の手柄とあっては徳川宗家の恥と自分が関わった書類を焼き捨てる忠義と無私(その徳川家への忠誠という家訓のために、幕末会津藩は朝敵とされ白虎隊などの大きな悲劇に見舞われる)にも泣かされる。水戸光国も大きな役割を果たす。それがきれい事になっていない筆力がすばらしい。

全て、歴史の転換点にあって、個人の利益でなく、自らの果たすべき役割だけに集中する人々の姿が、読者に清冽な印象を与えるのだ。

また、主人公のえんとの関係も、甘いばかりの恋愛でなく、えんの自律した女性ぶりも共感できる。

久しぶりに読書の楽しさをどっぷりと堪能させてくれた作品。

『小さいおうち』も悪くはなかったが、なぜ少なくともこの作品が直木賞を同時受賞しなかったのかが不思議でならない。
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
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