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ロマンス
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ロマンスの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.92pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1~9 1/1ページ
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華族という存在があった時代があった。 華族を視点として、描くと 全く違った歴史を紡ぐ。 ロシア人を母親にもつ華族。清彬。 いわゆる血が汚れると言われた。 パリで生活したので、6ケ国語が話せ、射撃の名手。 華族にもかかわらず、軍に仕官している嘉人。 清彬と嘉人。嘉人には、妹 万里子がいた。 清彬は、万里子が好きで、万里子も好きだったが、 万里子の父親から、血の問題として、 付き合うことを否定されたのだ。それを清彬は守った。 華族の持つ地位の不安定さから来て、 その存在を疑ってしまう弱さがある。 華族は、天皇を守る存在であるが、 華族から、天皇制を否定する共産党支持者が生まれる。 いわゆる アカに協力する華族も登場する。 嘉人の軍隊においての天皇を尊敬していないことに 軍自体に失望する。 殺人事件から始まり、万里子が拘留されることで、 一体何が問われているのかが見えてくる。 | ||||
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柳広司氏の作品は初読です。柳氏といえば「ジョーカー・ゲーム」のシリーズが有名で、そちらがスパイもののミステリ・エンタメ小説で、この「ロマンス」はちょっと違う作風らしいというくらいの前知識しかありませんでした。そのためか読み終わった後で、この小説は一般文学、純文学に入るのではと感じました。 主人公が若き華族の子爵様で、心に秘めた幼馴染の愛する女性がいて、けれどその女性は天皇の側室に望まれている、そしてその兄は親友で・・というあたりの設定から、なんとなく三島由紀夫の最後の作品で映画化もされた「春の雪」を思い出しました。 主人公は両親が住んでいたパリで生まれ育ちました。その両親はフランス滞在が長くあちらで自由奔放な生活を送った末に自動車事故で死亡してしまったという設定です。このあたり、大正12年にフランスで起きた北白川宮様と朝香宮様の自動車事故を思い出させます。この事故で北白川宮様は死亡、朝香宮様は看病に渡仏された妃様とフランスに長期滞在することになり、あちらの生活や文化になじまれたとか。このあたりの史実を、柳氏は参考にされたのかもしれません。他のレビューアさんが書いていらっしゃいますが、主人公の後見人的な存在である周防老人も、西園寺公望公爵を思わせます。また、世間からも何もせず贅沢していると批判されていた華族階級の中で、自分たちの恵まれた境遇に疑問を抱き、共産主義に共鳴して逮捕された若い華族たちがいたこと、逮捕された中で最後まで黙秘を貫き通した岩倉家の靖子様は、主人公が思いを寄せる万里子のようです。 柳氏は昭和初期あたりの時代がお得意なようですが、このあたり、史実をよく調べておられると思います。2・26事件前夜の重苦しい雰囲気がよく出ていますし。 主人公にはロシア人の血が4分の1入っていて、それは華族として純粋な血ではないとみなされていたようです。外国人とのハーフがもてはやされる現在から見るとちょっとびっくりしますが。そのあたりも当事は国粋主義だったのでしょうか。 ミステリを期待されると違和感があると思いますが、昭和初期を背景に、華族の若者の青春と葛藤を描いた小説として読めばなかなかのものだと思います。順番は逆になりますが、これから「ジョーカー・ゲーム」シリーズを読んでみたいです。 | ||||
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擦り傷やへたり・汚れ等もなく綺麗な状態で届いたので大満足です。 | ||||
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1930年代東京の華族社会を舞台に、自由奔放さと相反する閉塞感に悩む青年子爵、清彬を主人公に、親友の陸軍中尉、その妹である万里子、権力に陰りの見え始めた元老、特高刑事を軸に物語は進捗する。 本書のタイトルは絶妙だ。人生のRomanceをどう捉えるかは個々人によって異なるし、同じものはあり得ない。 作者の提示したRomanceもその一つ。これがわれわれ読者へ投影されるとき、どう「舞台」を生きるべきか、考えさせてくれる。 ・アブサントの香る殺人現場で、落ち着き払って親友との会話を愉しむ余裕はこの階級ならではか。 ・天皇の藩屏。没落ロシア人とのクォーター=異端者として特権階級を生きる清彬にとって、何不自由ない華族の生活は、まるで操られた人形劇のよう。その操り糸を断ち切る”決意”と”計画”は革命的であり、哲学的なものですらある。 ・”計画”のその日、意想外の人物が訪れることで、清彬の奥底に潜んでいた真実が明らかにされる。 清彬の”決意”は力強い。だが「この世界をからくり小屋たらしめていた特別な一本の糸」(p215)を断ち切ることで、本当に「茶番劇は終わりを告げ」るのだろうか。明治憲法から戦後憲法に変わったところでこの国の本質は変わらないように、舞台装置が変わるだけ。何千年も続いた神話が終わることはないのではないか。 欲を言えば、もう少し、時代の特徴である帝都の華やかな場面描写が欲しかった。 | ||||
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2011年に出た単行本の文庫化。 タイトルにすっかりだまされた。というか、途中で「これはロマンスじゃないな」と思われ、最後に「やっぱりロマンスだったのか」とひっくり返される。二転三転するストーリーがラストにはきっちりとはまっていくのが上手い。 第二次大戦へと突き進んでいく時代の雰囲気も巧みに描かれている。そのあたりは『ジョーカー・ゲーム』と似たにおいがする。 | ||||
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主人公は祖母がロシア人のフランスで育った若き子爵。その親友で伯爵家の長男で陸軍中尉、またその美しい妹が織り成す昭和初期を舞台にスパイ小説の達人が描き出す不可思議な世界。殺人事件が入り口だがその先にはいくつもの鍵のかけられた扉が待ち構えていて飽きさせない。 先達のレビューでも触れられてはいるが、背景は昭和初期の歪んだ時代精神の発露でもある。2.26事件を準備する青年将校に代表されるファシズムと華族学校の学習院に組織されたコミュニストの組織とその末路は史実を踏まえたもの。 続編を期待したい。 | ||||
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ミステリとしては『ジョーカーゲーム』のような騙しの面白さは求めると期待を裏切られることとなる。 著者の主たる意図はそこにはないからだ。(とは云え『キング&クィーン』のように腰砕けになることはないのでフーダニットとしても十分及第点はクリアしている) 軍靴の響きが高くなりつつある戦前の昭和を舞台に、若き華族の葛藤を描いた心理ミステリ。 作中、挿入される蝙蝠のエピソードとロマンスという簡潔なタイトルに二重の意味が込められている。 苦悩を冷徹な仮面で覆った主人公の造形は豊かで見事。一作で葬られるには惜しい魅力的なキャラクター。 | ||||
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一発屋と呼ばれる人が、作家にもいる。爆発的な人気や評価を得た一作を世に出しながら、その後は鳴かず飛ばずとなる人のことだ。「ジョーカーゲーム」の柳広司についても、少なくともamazonのレビューアー様達の評価を真とするならば、そうなってしまったと言えなくもない(苦笑)。 しかし、「ジョーカーゲーム」以前からの彼の作風の軌跡まで踏まえるならば、「ジョーカーゲーム」の一般的な評価である知略のぶつかりあいに手に汗握る的なものが、彼の目指す本質でないことに気付くはずだ。つまり、今の彼に低い評価を下す者の多くは、ジョーカーゲームが好きなだけで、彼の作品そのものを評価していない。 そして、本作品には、「ジョーカーゲーム」が色濃く感じられる。しかし、それはトリックや知略ではなく、戦前昭和の狂気を乾き切ったニヒリズムで見ていた者、また、知略に溺れてしまう者、そして、確実に狂っていく世界そのものだ。 「この作品は、ジョーカーゲームではないですよ」と言わんばかりの、出版社の帯文句とは正反対の宣言をするかのような本作のミステリーとしての部分のアッサリ感。犯人の動機、犯人のトリック、アリバイ、事件の真相などは、非常に古典的(ベタに言えば、手垢のついた)だ。 しかし、ラストに辿り着いた者の目に映った時代の風景は、私には漱石の「それから」のラストのように感じられ、また、その者が感じたその時代への違和感が半世紀以上を超えてアリアリと伝わるものであった。 しかし、それでも☆は4つ。結構読みこんでいる時代背景を、300頁未満では充分描ききれなかった感じがあるし、部分部分では腑に落ちない関係(例えば、主な登場人物の一人と彼の部下の関係)があった。判じ物の体裁を取りながら、判じているのは事件やトリックではなく、秘められ隠された若者達の心の奥底というのは、正統だが、伝わりきらないもどかしさがある。 ところで、巻末に荷風をはじめ多くの参考としたものがあることが記されているが、実は赤化華族に関する部分は概ね史実に即していることに気付いた方はどれだけいただろうか?そのことを知る者には、ラストで登場人物の一人に起きたことは、謎解きとか筋読みとは関係なく、分かってしまうのである。ネタバレ?いやいや、そんなこといったら、歴史小説は全てネタバレになってしまう(笑)少なくとも私は、そのオチが分かっていても、作品の価値を損ねるものとは全く思わなかった。史実と本作に作者が織り込んだ差異こそが、本作の醸し出すものの一つでもあるからだ。 ちなみに、主人公の親代わりの元老にして華族の大物の老人は、西園寺公望のこと。老人だけでなく、主人公のパリ生活を通じて培われたセンスなんてのも、西園寺から引っ張ってきたもの。 | ||||
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柳広司氏といえば、今までは「ジョーカー・ゲーム」シリーズが代表作だったが、ついにそれを超えたと言える。 舞台はジョーカーと同じ昭和初期、華族社会が舞台だ。 冒頭で起こる殺人事件から物語世界に入り込まされ、ページをめくる手が止まらない。 探偵役の子爵、清彬、親友で華族ながら軍人になった嘉人、嘉人の妹の万里子が織りなす人間ドラマに優れた時代の描写がからまる。 追いつめられた清彬の計画と、タイトルのロマンスの意味が分かった時、涙が止まらなくなった。 ミステリーファンであろうと、なかろうと楽しめる一流のエンターテインメントを感じさせてもらった。 2011年を代表する一冊になると思う。 | ||||
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