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猫を抱いて象と泳ぐ



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【この小説が収録されている参考書籍】
猫を抱いて象と泳ぐ
猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

猫を抱いて象と泳ぐの評価: 4.35/5点 レビュー 138件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.35pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全138件 101~120 6/7ページ
No.38:
(4pt)

8×8の無限の宇宙

世間では速読とか言って一冊10分!とか流行ってるらしいが
ゆっくりとじっくりと時間をかけて読んでほしい一冊。
ちょっと変わった少年のチェスの話。
チェスのルールをまったく知らない人でも、
チェスというゲームの偉大さ、美しさ、おもしろさ、奥深さが
分かるようになっている。
実際私もチェスはコマの動き方はかろうじてわかるだけで
ルールはよくわからない。
が、チェスの魅力は十二分に伝わってきた。

言葉以外の何かで人と会話する手段を持っている人は素晴らしい


猫を抱いて象と泳ぐAmazon書評・レビュー:猫を抱いて象と泳ぐより
4163277501
No.37:
(5pt)

猫を抱きたくなります!

チェスという馴染みの薄い作品ではありましたが、作品に流れる空気感を堪能しました。
「猫」「象」「ミイラ」などの各ワードの持つ雰囲気も満喫できます。特にデパートの屋上のシーンは大好きです。
もし仮に映像化されるとしたら、ヨーロッパ系の作りでやって欲しいなぁ。
邦画にしたら、なんかすべてオジャンになってしまいそうな気がしています。
猫を抱いて象と泳ぐAmazon書評・レビュー:猫を抱いて象と泳ぐより
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No.36:
(5pt)

遅まきながら、この感動を皆様に。

先日、読み返す機会がありまして、まだレビューを書いていなかったことに気づきました。
遅まきながら、私も評価を加えたいと思います。

さて、感想を書こうとは言うものの、何から書けばいいのか。
とても、私の稚拙な文章では言い表せないほどの感動をいただきました。

最初に読んだ時、まず引き込まれたのはその文章でした。
流れるような美しい文章に夢中になり読み進めました。
しかし間もなく、私は素直に登場人物たちに情を寄せていました。
純粋にチェスと向かい合うリトル・アリョーヒン、彼を支え、ともにある仲間たち。

そして何より「チェス」というものに強く惹かれました。

本物のチェスのことは良く分かりません。ですが、本書の中のチェスはとても美しく、優雅で、心地の良い旋律を奏でるものでした。今でもその光景が目に浮かびます。そしてそのたびに、目頭が熱くなるのです。

そして、2度目の今回。前回よりもその感動は大きいものでした。
何気ない登場人物の会話にすら深く、感じ入りました。

「e2のポーンをe4へ動かすよりももっと豊かな言葉が、一体どこにあるというのか」

作中の言葉です。この言葉を読んで本当に、言葉の不思議さを感じました。
本書を読めば、この言葉の意味は痛いほど伝わります。ですが、それを伝えているのも「言葉」に他ならないのです。これほど深い意味のある言葉が他にあるでしょうか?

これほどの「良書」にはめったに出会えないでしょう。
この本と出合えたことを深く感謝します。
猫を抱いて象と泳ぐAmazon書評・レビュー:猫を抱いて象と泳ぐより
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No.35:
(4pt)

美しいチェスプレーヤー、リトル・アリョーヒンの物語

一見タイトルは「?」ですが、実在したロシアのチェスプレーヤー「アリョーヒン」を
題材にしたチェスプレーヤー「リトル・アリョーヒン」の物語です。

彼は、生まれつき唇が閉じた状態で、満足に話ができない少年でした。
そんな彼が、チェスの上手い「マスター」に出会い、チェスの才能が開花します。
彼がチェスを指す時、傍らには必ず「ミイラ」と呼ばれる少女と
「リトル・アリョーヒン」と呼ばれる人形がいました。

少年は街角の賭けチェスや公式な競技会、グランドマスターとの対局でも
終始美しい手を指すことにこだわります。
相手を負かす「最強の手」ではなく、美しい「最善の手」を指し、美しい棋譜が残ります。

世界には様々な対局ゲームがあります。
ゲーム理論では「二人零和有限確定完全情報ゲーム」と定義しているようですが
チェスはその中でも、コンピューターがかなり強いゲームだそうです
(日本将棋や中国象棋(シャンチー)は、まだ圧倒的に人間が強いようです)。

コンピューターは、「リトル・アリョーヒン」より美しい棋譜を残せるのでしょうか。
そんなことを考えました。チェスを愛した少年の、美しい物語です。
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No.34:
(3pt)

集大成的しかし、初期とのかい離を感じる

「ブラフマン」
「博士」
「ミーナ」
あたりの作品の影響を感じる本作。

ただし「博士」あたりから、大きく作品が変わりつつある気がする。

こういう作品に入り込めないのは、自分が子どもでも、
子どもを持つ親でもないからだろうと思う。
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No.33:
(5pt)

癒される

チェスはやったことはありませんでした。
ひょっとして、自分にはわからないかもと
思いましたが、読み始めてすぐに
不安は消えました。

詩を読むようにチェスを指し、
人生や気持ちまで読み取ってしまう主人公。
いろんな目的でチェスを指す人に
対して、誠実に駒を進める主人公。

タイトルに象徴されています。
マスターのまなざしのもと、
ミイラと白い鳩とともに
猫を抱いて象と泳ぐ話です。

本を開くたびに癒されました。
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No.32:
(5pt)

止まらない

ドクドクあふれて止まらない作者の世界に、みるみる呑み込まれて心地いい。
食べ物の描写が巧みで、今回もマスターの作るおやつにメロメロ。
回送バスの中、猫のポーンを膝に乗せ、マスターのパウンドケーキをほお張りながら
リトル・アリョーヒンとマスターのチェスを眺める午後・・・最高。
読後の妄想も止まらない。
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No.31:
(5pt)

不思議な世界をたんたんとまったりと

本屋大賞候補になりましたので再読しました。

この話は現実にありそうだと思える一方、幻想の中をさまようような不思議な感じで物語りは進んでいきます。まったりした進行具合だという印象ですが、悲しいことも寂しいことも面白いことも詰め込まれた物語です。
そんなもろもろのことを含みながらも、物語はたんたんと、実に客観的に進んでいきます。
小川さんの小説は、そのようなたんたんとした感じとそれによるもの悲しさというのを感じるように思います。
このお話も少しもの悲しい感じの印象でした。
しかし落ち込むような悲しいだけのお話ではなく、とても潔いきれいな物語であったと思います。

静かな場所で物語りに浸りたい方にはお勧めの一冊です。
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No.30:
(5pt)

自由に生きるための枠組み

自由は人間が求めるものだけれど、本当に完全な自由の下では意外に生きづらいかも知れない。例えば、重力という束縛から解き放たれたら、どこを地面として生活したら良いかも定まらなくなる。愛という概念は何ものからも自由な気がするけれど、人や動物や国という形からも自由になってしまえば愛することも出来ないかも知れない。
 だから、人間が自由を行使するには、自然法則やルールなど、世界を形作る枠組み・世界の輪郭が重要な要素となると思う。

 本作品の主人公はチェス・プレイヤーとなる少年だ。
 囲碁や将棋、チェスに代表されるゲームでは、盤上に表現される駒の動きを"宇宙"と対比させて表現する。この宇宙が人々を魅了するのは、プレイヤー全てが共通して理解できる世界だからであり、共通して理解できるのは、8×8という枠組み、そして6種類の駒が決まったルールに基づいて動くからでもある。
 これを象徴するかの様に、リトル・アリョーヒンが出会う人々は閉じられた世界の中で生きている。デパートの屋上で生涯を終えた象のインディラ。改造したバスの中で生活するマスター。地下世界にしか生活の場を求められないミイラ。小さなロープウェーでしか行くことの出来ない施設で生活する人々。だが彼らは不幸なわけではなく、その枠組みの中でそれぞれの宇宙を形成している。

 枠組みの中で人が生きるのであれば、人の生き様が枠組みをつくるとも言える。だから、チェスだけに生きるリトル・アリョーヒンの言葉は棋譜にある。しかし、棋譜だけでは伝えきれない想いも確かにある。それは、互いに駒を動かす二人が、矛盾するようではあるが、完全に同じ言葉を共有しているわけではないからだろう。
 そのずれを埋めるために、盤の外側にも世界がある。だが、リトル・アリョーヒンの世界は、チェス盤の外側を臨みながらも、棋譜の中だけで閉じた。けれども、残された棋譜から伝えられる想いは、届けるべき者に届いたに違いない。
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No.29:
(5pt)

安らぎと少しの切なさ

『慌てるな、坊や』
読み終わった後に、何度も思い出しては泣いてしまうマスターの言葉です。
主人公は変わった風貌の持ち主ですがそれはあくまでも1つの要素に過ぎず、物語の中心はチェスの深い、深い海にあります。それがとても心安らぐ文章で書き表されています。小川洋子先生の筆がまさに冴え渡っています。
ものすごく泣いてしまったのですが、決して嫌な気持ちにはなりませんでした。
大切な本になる、そんな気持ちにさせてくれる珠玉の物語です。
猫を抱いて象と泳ぐAmazon書評・レビュー:猫を抱いて象と泳ぐより
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No.28:
(1pt)

なんだかなぁ〜〜

なんど呟いたことか
小川ワールドへの入国には事前審査が必要なようです
誰でも入れる所ではありません
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No.27:
(4pt)

久しぶりに小川ワールドを堪能できた

小川さんの本は全部読んでいるが、久方ぶりにこの長編には満足した。主人公の少年はチェスの天才だが、大きくなれば(大人になれば)不幸になると感じ、自らの意思で体の成長を止めて異形の容貌の人間となり、からくり人形をかぶって対局している。そして、チェス好きの老人が暮らすホームへ流れ、誰にも気づかれずに短い生涯を閉じる……。

こう書くと不幸な人間の物語にも思えるが、主人公は満足していたにちがいない。小さきもの、異形のものがひそかに湛えている美が、繊細な言葉で拾い上げられているからだ。「貴婦人Aの蘇生」にも似た、どこの国ともどの時代ともわからない不思議な時空には、甘美で確固とした世界が確かに息づいている。

小川作品には、耳とか刺繍とか数字とかスケートとか、独特のモチーフが繰り返し出てくるが、チェスが登場したのは数学の延長線上にあるためだろうか。チェス盤に描かれた棋譜が実際にメロディーを奏で、コマを動かすプレーヤーたちの恍惚とした表情が見えてくるような錯覚に、何度も陥った。じっくりと物語世界に浸ることができて、改めて本はいいなあと思わされた一冊だった。
猫を抱いて象と泳ぐAmazon書評・レビュー:猫を抱いて象と泳ぐより
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No.26:
(5pt)

海の中のチェスプレーヤー

タイトルを見てもどんな話なのか全く想像できなかったが、
読み終えた今では、タイトルを見るとなぜか安らぎを覚える。

チェスをしたことがない人でも、小川さんの独特な視点から
チェスの魅力的な世界がのぞけます。
アレクサンドル・アレヒンという人物もこの小説をきっかけに初めて知りました。
少年が師事したマスターの人柄や言葉は、読み手にもじんわり
心地よいあたたかさが伝わってきます。
小川洋子の世界は静かで穏やかなものだけではなく不穏な出来事も起こるのだが、
すべて受入れてしまうような寛容さがある。

小説の中に出てくる小鳥のように手の平でそっと包みこんでおきたくなるような、
愛おしいような、そんな小説。


猫を抱いて象と泳ぐAmazon書評・レビュー:猫を抱いて象と泳ぐより
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No.25:
(5pt)

手元に置いておく

読み終わるのが悲しく、結末がちゃんと腑に落ち、読んでいる間も幸せな気分になれた。
きっと手元に置いて、何度も開くと思う。

私はチェスに関しては無知だけど、ちゃんと楽しめた。
もちろん、知っていればもっと楽しめるのだろう。それが残念。
猫を抱いて象と泳ぐAmazon書評・レビュー:猫を抱いて象と泳ぐより
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No.24:
(4pt)

芸術の前に人間は過酷な運命を強いられるべきなのか

バスに暮らす巨漢の師にチェスの手ほどきを受けた少年は、やがてリトル・アリョーヒンとして伝説のチェス・プレイヤーとなる。しかし彼は決してその姿を対戦相手に見せることなく、ロボット“リトル・アリョーヒン”の姿を借りて駒を握った…。

 『博士の愛した数式』で数学に秘められた美しさを見事に描いた小川洋子が今回挑んだのはチェスを言語化すること。ここに描かれているのは、円舞し、滑走し、そして跳躍する駒たちの美しい姿です。私はチェスをやりませんが、頁を繰るごとに駒の躍動するさまを確かに眼前に思い描き、心躍る思いに間違いなくとらわれました。

 しかしながらそうしたよどみなく舞い踊るチェスの優美な姿と対比して描かれるのは、リトル・アリョーヒンのあまりに痛ましい人生です。ギュンター・グラスの『ブリキの太鼓』か、John Irvingの『A Prayer for Owen Meany』の主人公を想起させるアリョーヒンの姿は、チェスという美しき詩を描くことを宿命づけられた人間のこの上ない残酷なめぐり合わせを表しています。

 そしてまた、もうひとりの主要登場人物である少女ミイラが、人間チェスで強いられた試練の、言葉を失うほどの無残な末路。
 チェスが内に秘めたその美を体現するために、人間がかようなまでに過酷に生きなければならないのだとしたら、それはどこかに誤謬があると私は感じざるをえないのです。

 そう感じながら私は、チェスに打ち込む少年を描いた映画『ボビー・フィッシャーを探して』のことを思い返していました。あれはまさにチェスの美とそれを具象化しようとする人間の拮抗と均衡を描いた見事な映画でした。あの映画の結末に私は救済と希望を感じたのです。芸術と人はかくあるべしと思ったものです。
 本書を読み終えた人には、ぜひあの映画もあわせて見て比べてほしいと強く希望します。
猫を抱いて象と泳ぐAmazon書評・レビュー:猫を抱いて象と泳ぐより
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No.23:
(5pt)

チェスというゲームの美しさ

『博士が愛した数式』に相通じる小説。今回はチェスを題材にしている。
野球もチェスも知的なスポーツである、ということで共通しているのかな。
チェスの方が愛好者は多いし、題材にする小説も多いのだろうが、愛情の対象とする人たちの感じは共通のような気がする。
ストーリーは淡々と進む。詐欺の場面はちょっとショックだが、それまでは、チェスというゲームの美しさを際立たせる記述で、むしろこの小説の主人公はチェスというゲーム自身であるように感じられる。
自分がその美しさのどこまでを理解できているかは心もとないが、この小説の美しさ、面白さは理解できる。
まさに自分好みの小説。
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No.22:
(4pt)

棋譜に描かれる人生。

小川洋子氏の作品は大きく2つのジャンルに
分けられるような気がする。

この作品は、「博士の愛した数式」の方にあてはまる物語。
彼女の持つグロテスクな表現は影を潜め、
ただ美しい調べだけが描かれていて、読者はその繊細な世界に酔うのだ。
そして両作とも主人公は少年。その意味で、児童文学の様相を見せている。

この作品では「リトル・アリョーヒン」と
後に呼ばれるようになるチェスの棋士の少年が主人公。

彼は象のインディラやチェスのマスター、ミイラの少女と出会う。
彼らは皆、身体が大きくなりすぎて不運に遭遇した者たち。
少年の彼らに対する想像は膨らんで、
やがて「大きくなることは悲劇」という墓標を打ち立てる。

彼は11歳で身体の成長を止めた。
そして、生涯をチェスに捧げる。

全般に及んでチェス、チェス、チェスの話だけど、
でもこれが、単なるチェスじゃない。
リトル・アリョーヒンは駒の音だけで、チェス盤の上の
旋律を読み取る。そして、自分も、最も相手にふさわしく、
美しいカタチでキングを攻めていくのだ。

チェス盤は人生。ゲームの進行を書き留めた棋譜は、まさに、
その人物が歩んできた道を表す。
リトル・アリョーヒンは単にチェスが強いんじゃない。
美しい棋譜を描くことを最も大切にしている棋士なのだ。

なんとも、幻想的な世界。現実とはかけ離れているのに、
どうしてだろう、実際にリトル・アリョーヒンが存在しているような、
そんな錯覚さえ覚えてしまう。

小川氏は“静寂”という音さえも表現できてしまうから、スゴイと思う。
静かに、優しく語られていく物語。

でもね、そう、人生は夢じゃない。
一歩踏み間違えば、危険であり、取り返しがつかなくなったり、
相手を損ねてしまうことさえ、あるのだ。
それでも、進んでいかなくちゃならない。
決して後ろに下がることができない、ポーンと同じように。
前へ。前へと。

さるきちの棋譜はどんな模様を描いているのだろう。
読者をそんな想像に駆り立てる素敵な一冊です。
猫を抱いて象と泳ぐAmazon書評・レビュー:猫を抱いて象と泳ぐより
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No.21:
(5pt)

美しく繊細、崇高な味わい

美しく、繊細。崇高な作品でした。
読んでいる間、素晴らしい時間を味わわせてもらったような気がします。

チェスのやり方なんてまったくわからないんだけど、そんなことは気にならない。
むしろ、黒と白の8×8の世界で描かれる鮮やかな駒の動きに引き込まれてしまう・・・。
これは「博士の愛した数式」で数学の美しさに魅せられたあの感動に似ています。

何かとてつもなく愛せるものを見つけた時、
リトル・アリョーヒンのように自分を激しく主張せずに、つつましやかに愛することがはたして私にはできるのか。
彼のように世界を壊さずに汚さずに、影となって謙虚に愛することこそが本当に愛し方であり、美である。
こういう人こそ尊いといえるのだと思う。

老婆令嬢の言葉・・・・。
「自分のスタイルを築く、自分の人生観を表現する、自分の能力を自慢する、自分を格好良く見せる。
そんなことは全部無駄。何の役にも立ちません。自分より、チェスの宇宙の方がずっと広大なのです。
自分などというちっぽけなものにこだわっていては、本当のチェスは指せません。」
これはチェスに限らず、人生にも言えること。
「最強の手が最善とは限らない」というのも奥が深い。

大きくなりすぎてデパートの屋上から降りることができなくなった象・インディラ。
“大きくなりすぎる恐怖”がこの作品の大きなテーマになっているのだけれど、
それは体の大きさだけでなく、心の問題でもあるのでしょう。

最後は頬に一筋の涙がこぼれていました。静かに泣けて、大きな余韻の残る作品
小川洋子の最高傑作」といわれてますが、それも言い過ぎではないと思います。
猫を抱いて象と泳ぐAmazon書評・レビュー:猫を抱いて象と泳ぐより
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No.20:
(5pt)

私が無尽蔵にお金を持っていたら・・・。

今日のこの日、何万人の人がこの本を手にし、この世界に身をまかせたのだろう。
きっと、何万通りのリトル・アリョーヒン、ミイラ、マスター、トルコ人形などの
イメージが存在することだろう。
映像化してほしいような、ほしくないような・・・。
私が無尽蔵にお金を持っていたら、ヨーロッパの女性監督と毎日毎日、ワイン片手に
お話をして、配給も興行も関係なく映像化し、この本を手にした全てのみなさんに
「いかがでしょうか?」とお届けしたい。
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4163277501
No.19:
(4pt)

美しきもの

小川洋子さんの作品を読んで感じることはいつも「美しさ」。文体の美しさももちろんだが、今回のテーマである「チェス」にも確かに美しさを感じる。駒やチェス盤の美しさは静謐な美しさ、そしてその駒たちが紡ぎ出すゲームの美しさ。
筆者は『博士の愛した数式』では「数学」の美しさを、本書では「チェス」の美しさを描き出した。一見どちらも整然とクールな印象だが、それを愛する者にとっては詩のように美しい。
ただし『博士〜』では読者の誰もが驚きと共に数式の美しさを感じることができたが、本作品ではリトルアリョーヒンの美しい一手に驚いているのは登場人物だけで、読者は置いてけぼりを食ったようなもどかしさを感じてしまうかもしれない。
ビショップはいったいどのような軌跡で奇跡を起こしたのだろうか。想像できない自分がもどかしい。
猫を抱いて象と泳ぐAmazon書評・レビュー:猫を抱いて象と泳ぐより
4163277501

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