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猫を抱いて象と泳ぐ
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猫を抱いて象と泳ぐの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.35pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全138件 81~100 5/7ページ
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一生涯デパートの屋上で過ごした象のインディラ、壁の隙間から出られなくなってしんだ少女ミイラ、チェスの指南をしてくれたが、太り過ぎで住居のバスから出られなくなり死亡したマスター、また、マスターが飼っていた猫ポーン。 登場人物は、物悲しい一面をもった人ばかり。リトル・アリョーヒン少年も、大きくなることを拒み、チェス板下でチェスを指すようになり、ついには人形の中に入って自動チェスマシーンとなってチェスを行う。この物語の軸となる人物たちが、伏線となって、話に深みを与えている。 悲しい過去を持ちながらも、それと向き合って生きていく人々の美しさがあふれている。 チェスをさす場面では全くチェスの知識がない私も、文章の美しさに引き込まれてしまった。小川洋子さんの静かで、情景を彷彿と想像させる文章力の高さに脱帽します。 先天性の奇形というハンデを背負い、短いアリョーヒンの人生は、ささやかながら幸せだったにちがいない。 もう一度、じっくり読見たくなる作品です。 | ||||
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まずその題名に惹かれました。何をテーマとした小説なのだろう? チェス?チェスと猫と象にどんなつながりが? その導入、デパートにおばあさんと弟といくシーン、みずたまりを 象のインディラの足跡だと思い、狭い家と家の間に挟まれて 出れなくなってしまう少女をミイラと思い、想像の友人に囲まれて 過ごしていたアリョーヒンは、バスの中に住むマスターに出会って チェスに出会う。 その冒頭から惹きつけられる文章、アリョーヒンの内面、細やかな 表現 チェスがよくわからないことは、途中ゲームの佳境での緊張感を よく理解できないことがあるやもしれません。 でも、そんなことはたいした問題ではありません。 小さいアリョーヒン、チェス板の下や人形の中でのみ落ちついた ゲームができる彼は、ほんの一握りの理解者の中で幸せな 短い人生をおくるのでした。 最期は寂しい顛末ですが、彼にとってはけして不幸ではなかったと 思わせるものです。 静かで優しく細やかな配慮に満ちた、緻密な作品。 猫を抱いて象と泳ぐアリョーヒンに永遠の祝福を。 | ||||
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導入部分から一気に話に引き込まれました。 バスの中でのマスターとの交流にはじわっと胸が熱くなり、ミイラとの別れには何とも切ない気分になりました。後半は主人公の晩年の話になるので、少し色鮮やかさが失われましたが、それも含めて、一人の天才の人生を感慨深く味わうことができました。 何より圧巻なのは、盤下の詩人と評され、その棋譜がまるで詩のようだと言われる主人公の対局を、まさに詩のごとく美しい言葉で表現する作者の筆力です。素人目には、ただ升目を行ったり来たりするだけのチェスを、これほど豊かなイマジネーションを持って芸術的に実況できることにただただ驚き、溺れました。 | ||||
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人形の中の、とても狭い空間に居てチェスを指すリトル・アリョーヒン。だが彼はそこでは無限に自由だ。彼は回りの人を静かに愛し、回りの人も彼を静かに愛している。今の息をまともにできないほどに狭くて苦しい空間の日本社会、会社、学校。あらゆることに急がされ、家族愛や友情よりも経済効率が最優先され、わずかな自分の時間も携帯電話に束縛される。私たちはもうそこでしか生きられないのか。本書はゆっくりと時間の流れるなか、やさしい感情を持った一人一人のものがたりだ。「あわてるな坊や」読後にマスターのやさしい言葉が私たちに残る。 | ||||
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小川さんの作品は初めて読みましたが、繊細な言葉や詩的な表現力に感動しました。 読み終わってしまうのが残念なくらいでした。 | ||||
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まず、タイトルに惹かれました。なんだこれは?と。 内容を見ると、より惹かれました。 チェスが好き(巧くはありませんが・・・)でしたので。 で、読んでみると、終始とてもとても静かな物語でした。 リトル・アリョーヒンのように、そこに存在しないかのような静かな物語でした。 また、チェスとはこんなにも静謐な競技だったのかと気づかされました。 良い意味で期待はずれです。 もう少し年老いてから、再読したいなと思いました。 | ||||
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デパートの屋上に上がったまま大きくなりすぎて下りられなくなった象、インディラ。 家の壁と壁の間に挟まれて抜けられなくなってしまったミイラ。 バスの中に住み、太りすぎて出られなくなったマスター。 狭いところに閉じ込められて身動きが出来なくなったその状況を「仕方がない」と不満一つ言わずに引き受け、そこから逃げ出すことも抗うこともせず、黙々と自分に出来ることを一つ一つ行い、できる限り誠実に日々を過ごしていく人たち。 そういう名もなき存在に心惹かれる主人公は、最後まで名前を持たなかった。 彼の名は、ただ「リトル・アリョーヒン」と名指されるだけだ。 アリョーヒンは伝説的なチェスの名手だった。 そのアリョーヒンの姿を模して作られたチェスを打つ人形。人形がチェスをさすテーブルは、かつてマスターが彼にチェスを教えてくれたチェステーブルだった。その人形のテーブルの下に隠れ、彼は人形として様々な人々とチェスをさし、美しい棋譜を刻み続けた。 「リトル・アリョーヒン」とは、その人形の名前でもあり、中でチェスを打つ彼のことでもある。 たぐいまれなるチェスの腕前を持ちながら、マスターの形見であるチェス・テーブルの下を自分の居場所として引き受け、有名になるためでもなく、お金を稼ぐためでもなく、勝つためでさえもなく、ただただ美しい詩を紡ぎ出すためにチェスを指し続けた彼の、はかなくも濃密な人生。 彼の一生をたどるとき、人が生きるということはこういうことなのだと静かに納得させられてしまう。 かつてチェス盤の上で自分と美しい詩をともに奏でた老嬢が、もはやチェスの存在そのものも忘れてしまうほど衰えていることを知ったとき、それでもリトル・アリョーヒンは決して落胆することはなかった。 もう一度、その老嬢にチェスを教えることに喜びを見いだしていくのだ。 恐らくその老嬢は二度とチェスを打てるようにはならないだろう。どれほどチェスについてわかりやすく教えたところで、もはや彼女が新しく何かを身につける可能性はゼロに近いはずだ。 それでも、リトル・リョーヒンは老嬢にチェスを教えようとした。 なぜなら、たとえすぐに忘れてしまうとしても、チェスに触れ、その世界に少しでも足を浸すことができれば、その一瞬一瞬が生きる時間となることを知っていたからだ。 人生の半ばを過ぎて、自分自身の小ささを突きつけられ、「おまえはどこにもたどり着けない、ちっぽけな存在だ」という事実を引き受けざるを得なくなった人に、それでも精一杯生きることは無意味ではない、と小さな声でささやき心を支えてくれる。 この作品は、そんな力を持っている。 | ||||
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本作は小川洋子氏による2010年本屋大賞ノミネート作。 「リトル・アリョーヒン」と呼ばれる少年の、静かな冒険物語。 「大きくなることは不幸になること」と信じる少年、リトル・アリョーヒン。 ある日彼は「マスター」と出会い、チェスを覚える。 密かに実力を上げ続ける彼のチェスは、一風変わった独特のスタイルに発展する。 それはチェス盤の下の狭い箱に入り、チェス人形を操るというものだった。 本作で最も印象的なシーンは、やはり第11章。 欠員補充のため、ミイラが人間チェスの駒となるシーンである。 人間チェスの真実を知ったリトル・アリョーヒンの叫び声が胸に突き刺さる。 この第11章が、ストーリー上の大きなターニングポイントとなっている。 チェスを知らない人でも、本書の冒頭に収録されたたった1ページの解説があれば本作を充分に楽しめる。 小川洋子氏が描く小さなファンタジー(これはもうファンタジーだと思う)の世界に浸って欲しい。 | ||||
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これほど何も語らない物語の主人公はまずいない。 彼の唇は生まれたときにはしっかりとくっついていたのに、医者によって無理にひきはがされたのだ。 「自分の唇はもとはひとつの肉塊だった」、その思いが主人公の生き方をつらぬいているので、 彼の口からはあまたの小説の主人公のような饒舌な言葉は何一つもれてくることがない。 主人公は語らないけれど、物語は作者の美しい言葉で読者に多くを語りかけてくれる。 この物語の主人公はその人生において、一切自己主張をしない。 自分という人間を社会という現実に訴えることの意味など、彼の頭の中には一切浮かばない。 彼はただチェス盤という現実世界においてはあまりにも小さな板きれの中に(正確には下にだ)、 無限の宇宙を見いだし、その宇宙の中で人生をまっとうする。 この物語を読み終えると、社会的に見れば無に等しい彼の人生が、豊で、美しく、気高いものに思えてくる。 その昔の日本にはこういう人生をおくった人たちが数多くいたのではないかと思う。 作品にその名を刻まず、高額な対価も求めず、ただ素晴らしい作品をつくることだけに全身全霊を傾ける、市井の職人たちだ。 2011年8月現在の某国の首相や、その周りに集う人たちとはちょうど正反対の生き方になる。 この物語は現代の日本ではやはりファンタジーなのだろうか? | ||||
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なかなかこの本の世界観に入り込めませんでした。 ただ、文章がきれいで上手なので、ついつい読んでしまいました。 この作品は、あまり頭で考えて理解するものではなく、心で感じるものかもしれません。 読み終わった後、そこはかとなく、心暖まるような、寂しいような気持ちが残りました。 | ||||
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タイトルからして興味深い本ですが、読んで行くうちに、その不思議な世界の中に取り込まれてしまいます。 主人公の少年は、屋上から降りられなくなった象や、家と家との間に閉じ込められてしまった少女や、バスから出られなくなったマスターなどを見て、「大きくなること」=悲劇と言う認識に立ちます。 彼はマスターから教えられたチェスに魅了され、その才能をどんどん開花させてゆくのですが、リトル・アリョーヒンの人形の中に入ってしか指せません。 彼は、「大きくなることの悲劇」から逃れるため、11歳で成長を止め人形の中での棋士になります。 しかし、かれには「閉じ込められた」と言う意識はありません。 むしろ、チェスの広く深い海の中で静かに泳いでいます。 この作品の中で、棋風が「詩」に例えられていますが、この本自体が「詩」と言うか、メルヘンの様な感じを抱かせます。 狭いかもしれませんが、与えられた世界の中で自由に生きることの幸せを感じることは、この少年だけでなく、混沌とした現代社会を生き抜いてゆく一つの方法かも知れません。 それにしても静かな美しい小説でした。 | ||||
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著者は独自の世界観を作るのが非常に上手い.物語を包み込む空気に何時も引き込まれる.また,文章が非常に優れている.変に感傷的になりすぎず分かりやすさは抜群,それでいて美しさがある. 博士の愛した数式を読んだときにも思ったが,いわゆる数学的なことを文学的に書くとこうなるのかと非常に驚かされた.論理と感性を対極とするならば,数学やチェスは論理が世界を支配している.誤解を恐れずにいれば,論理的なものというのは得てして造形美的には実につまらないものとなる(その分,機能美的には非常に優れているのだけれど).そんな論理の世界の産物を著者は美しく芸術に昇華させている.多くの人に読んでもらいたい素敵なな小説だ. | ||||
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題名通り、登場するキャラクターが海底を自由に動き回っていると主人公がイメージできた一瞬がとても素晴しく、愛おしく思え、そして肉体は滅びてもチェスの美しい棋譜が残されたことに、切なさと共に主人公が精一杯生きたことに対する限りない共感を覚える。 主要キャラクターは何らかの意味で犠牲を払っている。主人公と猫のポーンはマスターとその心地よい居場所だったバスを失い、主人公は十一歳の身体で成長を止め、象のインディラはデパートの屋上で生涯を終え、幻のミイラは壁にはさまれ、現実のミイラは主人公と別れる悲劇に巻き込まれる。老婆令嬢は記憶を失った。 しかし、それらの犠牲は、主人公がチェスの海をさ迷って居場所を求め、幾多の名勝負、つまり詩を作るために必要だった。その透明な、ブルーの、ガラス細工のような世界の美しさの描写はため息がでるほどに素晴らしい。 チェスの勝負のはかなさと美しさがともに見事に表現された大傑作だ。 | ||||
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途中から読むのが大変でした。 最後は良かったですが。 私にはまだ早いかもしれません。 | ||||
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物語の後半から、とてもせつなくなり、たびたび涙を流しながら 読み進めました。 馴染みのないチェスの話ときき、読むのをためらいましたが、 数学嫌いでも博士の生み出す数字の美しさが伝わってきたように、 きっとチェスを知らなくてもそれらが醸し出すメッセージを 受け取ることができるのではと思い、読み始めました。 実際、その通りでした。 全ての小さなエピソードが美しく細やかに織り重なっていて、 ここで物語の要約を書くことができません。 一言でいえば、猫と象と一緒に、リトル・アリョーヒンが静かに 進んでいった、冒険のお話し。 小川洋子さんは、社会的に弱い人や、不器用な人たちを 愛のこもった言葉と文章で丁寧に描き、 いつのまにか彼らの強さと美しさを読者に伝えることができる 素晴らしい作家だと、今回改めて思いました。 | ||||
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「博士の愛した数式」を数年前に読んで、優しい小説を書く人だなあとは思っていましたが、この作品もまた一段と優しい。全篇を通してパステルカラーで描かれているかのようです。 ワクワクして次のページが待ちきれない!という話ではないのですが、文章の一つ一つがとても丁寧で、染み込むように心に響いてきます。 登場人物もそれぞれ魅力的。皆きちんと自分をもっている人たちで、すごく愛おしい。 小川さんの小説の魅力は、作品の中に人の悪意が無いことだと思っています。綺麗すぎるかもしれないけれど、そのファンタジーな部分にたまらなく癒やされました。 | ||||
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胸に来る作品でした。チェスというゲームのルールは全くわかりません。 しかし、大変よいお話でした。 世界の隅っこでひっそり生きる人間達がうごうごと物語に登場します。 その中の主人公は神に与えられた才能を持つ人物でありながら、隅っこで息を潜めて小さくなって生きています。 しかし、その才能は人々を魅了し、次々に彼の前に座ります。 盤下に潜んで耳を澄まし相手の声(音)を聞き入る、それに応える彼の言葉が琴線に触れます。 全てのチェスの対戦に夫々の物語があり、すべて印象深く心に刻まれるお話でした。 私は「ギルバートグレイプ」という映画を思い出しました。 | ||||
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伝説のチェスプレーヤーを名乗る自動人形に扮してテーブルの下に潜む少年。過去のトラウマから成長する事を拒否し、幼いままの姿で裏方として生きることを選んだ少年の奇想天外な生きざまが描かれていきます。献身的な家族や友人、淡い想いを交わす少女、印象的な対局者・・・登場人物も多彩です。 読んでいる内に、ふと、何だか懐かしい感触がして・・・以前読んだ「ミーナの行進」を思い出しました。 そこはかとなく漂う甘く切ない感触・・・子供だった頃の純真な心だけが感じる喜びと哀しみ・・・永遠に失われてしまったあの時・・・そんな感触です・・・。 「ミーナの行進」もそうだったけれど、この作品でも小さな小さな世界が用意されていて、その世界の中で、主人公たちのちょっとコミカルで、ちょっと切なく、それでいて安らぎに満ちた日々が描かれます。ストーリーが進むに連れてその世界も変わりますが、端からみれば不幸と言える境遇の中でも、主人公たちは小さな幸せを感じ、その世界がいつまでも続くことを願うのですね・・・。 でもその幸せは突然の不幸によって終わり、奇跡の物語だけが残される・・・美しいストーリーです。 | ||||
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静謐でファンタジーとはまた違う 謎めいた世界が描かれていました。 どんな喧騒の中で読んでいても 今著を読んでいるときは”静けさ”という 純白のシェルターの中にいるかのような 感覚におそわれました。 そんな静寂の中、訪れる衝撃のラスト。 涙なしには読み進められませんでした。 著者の他の本にも興味が出てきました。 是非、購入をして読んでみたいと思います^0^ | ||||
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最初のページを読んで、あ、これ好きだ!と思って本屋で衝動買いしました いしいしんじ、とかジョン・アーヴィング、とか 物語に乗っかって言葉を紡ぐタイプの小説だな、と思って… しかし、読みすすめていくうちに違和感が… 言葉が安易、っていうのかな イメージ先行で言葉が後からついていく、っていうのかな でもこの小説はそうやって書いてはいけない種類の小説ではないか? 一旦そう思いはじめると、結構描写がイージーなのが目についてしまって… 小説とは既成のイメージを表す言葉を連ねる作業ではなく 言葉でイメージを創造していくものではないでしょうか 残念ながら既視感がいっぱいでした | ||||
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