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蘆屋家の崩壊
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蘆屋家の崩壊の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.34pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全41件 1~20 1/3ページ
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独自のイメージと、それを読者の中で増幅させる文章。他の誰にも表現できないと思う。 短編各編に長編となりうるモチーフが詰め込まれている贅沢な短編集。亡くなったことが惜しまれてならない。 | ||||
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謎が解けていく、おぞけを纏い。 謎が深まる、くるめきを誘い。 本作の短編は、凡百の長編よりも広く、深く、妖しい。 「超鼠記」の、噎せ返る香り。 「埋葬虫」の、戦慄き蠢き。 豆腐を食べよう。 | ||||
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怪奇小説のはずなのに主人公の猿渡が女性に盛ってばかりで気持ち悪い。 他者表現に顕著ですが、男性への外見描写は皆無。対して女性の外見は品定めし美しいか醜いか、若いか老いているか、女性全員が「主人公の性欲に敵うか否か」の評価対象です。 ルッキズムとエイジズムまみれの、所謂ダメな部類の「サブカルクソ野郎」が主人公です。 冒頭の「ダイハードの主人公の女房の脱ぎたがりの女優」という文章から始まり、細部に渡り古い男尊女卑を感じました。 30歳なのに20歳の感覚で美女を品定めし、女性からの好意があると勘違いし襲いかかるセクハラ、交際していない女性を勝手に女房気取りと思い鼻高々。 これで上下ジーンズの服装(発表年代を考慮すると非常にダサい)、常三日も歯磨きをしない不潔さ、活動地域は下北高円寺のサブカル系、外車をステータスにしている男性主人公、ある意味怪奇。 映画や純文学、神話や伝説の蘊蓄を教養かのようにドヤる文章に加えて上から目線で「お前は知らないだろう」とニヤリと笑うマンスプレイニングも結構しんどいです。 作家などの業界人は褒め称えて、豆腐職人には辛辣で、飲酒運転を「芸当」と表し、会ったばかりの夫婦の仲を「いまひとつ」と勝手に評価する主人公の下衆な性格は唾棄したくなります。 作者が思ってないと出てこないであろう表現の数々は、他に言い方あるだろうと思わずにはいられません。 肝心の物語もありふれてて目新しさはありませんでした。 強いて言えば「イヴェント」「ライヴァル」「サーヴィス」「ヴィニィルテープ」などの「ヴ」の表現に悪寒がしたので新しいホラー表現かもしれません。 | ||||
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古本を買ったのに新品が来たかと思うほどキレイでした。 ヤケも汚れもなく、開いた形跡もない。元々売った人は、買っただけで読まなかったのでしょうか? おもしろいのに。 津原泰水さんの小説は、文体がイイですよね。 | ||||
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ゆるしがたいどすけべな ゲスの極みです!! 私は、金子國義さんの モデルでした!! とても短気な方で、鬼畜ぶりを 発揮してました!! 友人にかりて 吐きそうになりました!! | ||||
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短編というとあえて結末をあやふやにしてハッキリさせないものが多いが、本作はどれも書き切っているので文章の軽快さも相まって読後感はすっきりしている。 しかし面白かったがどうも違和感を覚える。主人公の猿渡にしろ、相棒の伯爵にしろ、いまいち人物像がつかめない。特に猿渡は短編ごとに受ける印象が違う。地の文が一人称ゆえ他人から「猿渡」との呼びかけがなければ本当に猿渡なのか甚だ不安に感じる。一番の怪奇は彼のような気がする。 | ||||
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登場人物に機微に感情移入できないところが多々あり、文の表現が読みにくいこともあり作品に没頭する事が無かった。 | ||||
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「11」で初めて著者を知りました。これが2冊目で、最初の一篇を読んでがっかりしましたが、最後の一篇を読むころには続編を買う気が満々でした。豆腐でいうなら臭豆腐。私は著者より年上ですが、耽美調ではないものの、なんだか懐かしい匂いがする文体です。泉鏡花や谷崎潤一郎のような雰囲気がある今時珍しい作家さんですね。しばらく追いかけてみたいと思いました。 | ||||
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まずはタイトルに惹かれました。レビューを書きながら気がついたのですが、宮野叢子「鯉沼家の悲劇」と桜庭一樹「赤朽葉家の伝説」が頭のどこかにあったのではないかと思います。そしてタイトルの蘆屋家から「蘆屋道満に何か関係ある?」と。つまり自分の中では悲劇的なミステリと伝奇的怪奇小説のイメージがごっちゃになっていました。そして到着した本を手に取ってみれば、カバーに書いてある要約は、「”豆腐好きで意気投合した俺、猿渡と小説家の「伯爵」に襲いかかる奇怪な現象”??なんじゃこれは・・・」と(笑)。そこへ至って初めて気がついたのもうかつでしたが、「ん~?津原泰水?どこかで聞いたような・・」と本棚を探してみたら、ありました。あの「爛漫たる爛漫―クロニクル・アラウンド・ザ・クロック」の作者ではありませんか。とあるロックバンドと絶対音感を持つ不登校の少女の物語。てっきり音楽ジャンルが得意な作家さんだと思っていたのに、なんで??と、前置きが長くなってしまいましたが、こんな気持ちで読み始めました。 結論からいうとまさに星5つでした。ジャンル分けできない奇怪な物語集。この作家さんの個性でしか書けない、ストーリー、文章、雰囲気、視点。おもしろくて読むのが止まらなくなってしまいました。導入部分の「反曲廃道」ではニートの俺、猿渡と、長身色白黒衣のために「伯爵」と呼ばれている怪奇小説作家の出会いから始まります。無類の豆腐好きという2人のふざけた(本人たちはいたってまじめ)共通項と手に入れたばかりの中古車シトロエンに起きた怪異で話の先が読めなくなり(笑)そのままお目当ての「蘆屋家の崩壊」に突入。これが一番好みの話でした。やはり蘆屋道満が関係していましたが、強いて言えば怪奇小説なのに、どこかひょうひょうとしたユーモアが漂い(これはこの作品集全般に言えることですが)絶世の美女なのに”どこか所帯崩れしたような”だらっとした女が登場。彼女の実家がある福井の小村は蘆屋道満や八百比丘尼ゆかりの地。各地豆腐めぐりの旅の中でひょんなことからそこを訪ねて行くことになり、到着してみれば文化財級の旧家で、裏山には妖しい稲荷の祠が鎮座ましましていた・・。刑事ドラマのような逃走劇とラストのオチが効いています。 また、「カルキノス」に登場する高足蟹の存在感は圧倒的で、しばらくはカニが食べられなくなってしまうかも(汗)。「埋葬蟲」もそうですが、気持ち悪さと奇っ怪さはこの上もなく、なのにユニークで読むのをやめられない、またこの「カルキノス」、文章のリズム感が素晴らしく、読んでいて笑いが出て仕方ありませんでした。 「ケルベロス」も大変お気に入りです。ギリシャ神話に登場する地獄の番犬ケルベロスと神社の狛犬、水の神、息長帯比売命=インドの水神ナーガ、川から現れる悪しきものが渾然一体となったお話で、これらが作家さんの頭の中でどんどん繋がってお話になっていく様子が目に見えるようです。 どれもこれも、まあどうしてこんな突拍子もない話を思いつけるのだ?というような話ばかりで、それでいて読後のこの爽快感はいったいなんなのでしょうか(笑)。津原泰水氏は、ちょっと調べてみれば、書かれる作品ごとに雰囲気がまったく違いとても同じ人物が書いたとは思えないという作家さんだそうです。が、それだけ多才な方なのだと思います。こちらの作品には2冊、続編があるそうですし、ほかの作品もぜひ読んでみたくなりました。またお気に入りの作家さんが増えました。 | ||||
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なんとなく勢いで買ってしまったものの、読み始めると、面倒臭い、詰まらない小説だと思った。 それが、篇を進むうちに、段々と気持ちを掴まれていき、しまいには、久振りに本をよんだなぁ、という気持ちになった。 じっくり読むと、とても面白いのです。 猿渡&伯爵譚の一巻目だけを買ったのですが、次もその次も読みたくなりました。シリーズ以外も。 構成もよいが、文体と醸状がよい。 | ||||
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反曲隧道 蘆屋家の崩壊 猫背の女 カルキノス ケルベロス 埋葬蟹 奈々村女史の犯罪 水牛群 の短編が入っている。どれも幻想小説であり、猿渡と伯爵の珍道中の際に起こる物語となっている。 その中でも水牛群は、猿渡のひとつの結末を迎えるものであり、小説家としての伯爵のお供だった男が全てをひっくり返し、小説家として生まれることになる短編である。 そして次点が、蘆屋家の崩壊と、ケルベロスか。悪ふざけ的な豆腐への偏愛と、斜に構えた猿渡のキャラクター、飄々とした伯爵に、作品ごとにマドンナがいるというのが大きな流れとなっているが、この2作はそのマドンナとの関係が、センチメンタルな物語となっており、津原 泰水の真骨頂ではないかと思う。 話の内容など、どうでもいいのだ、ということもないが、津原 泰水の文章には魔力がある。文章を読んでいるだけで心地よく、何が底に書いてあるかを読み進めるというよりも、とりあえず文章を追ってしまう。それがこの猿渡シリーズには、センチメンタルなシーンや感情に訴えかけるものが散りばめられていて、時代の流れに流されることの無い内容が描かれている。 作家は嘘が上手いとも言えるが、それが彼の魔法の文章で、幻想譚を語られると、たちまち引き込まれてしまう。この作品の後、続巻を一気に読み終えてしまったのは、嬉しくもあり、続編がもうでないことの悲しみでもある。 | ||||
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店頭で見かけて、購入。 なかなか、独特の感じが漂っていて、面白く読めた。 読者を現実から異界へといざなう感覚が楽しいのだ。 | ||||
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E.A.ポーの代表作をもじるに恥じない、超高品質な、怪奇調サスペンス短編集です。 最初の方のお話は、ちょっと作者の先走り感が目立ち、やや戸惑い気味に読み進めましたが、「猫背の女」くらいから、読了するごとに「怖い‼ 面白い‼」の連呼に。 個人的には、「ケルベロス」の葉子ちゃんの最後が、異形かつ面妖かつ切なくて、猿渡と一緒に慟哭しました。 いやあ面白い。 面白いお話ばかりでした。 津原さんホント凄いです。 | ||||
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この作品は面白い! 愛すべき人、おぞましい人、気味の悪い人、悲しい人、謎の人。 そして安易な結論に至らない、今後に含みを持たせた短編の数々は 恐怖と悲しみ、愉快さと躍動感と相反する感情が同居する何ともいえない味わいの 名作と感じます。 魅力溢れる猿渡&伯爵のバディ物かと思いきやさにあらず、猿渡単独のエピソードだけでも おぞましくて面白い! この作者は一筋縄ではいかぬ人物と見た! 全3作品のシリーズの様ですが、今から次作を読むワクワク感と後2作で終わりの淋しさが 去来する本当に何とも言えない味わいの作品に出逢ったものです。 幽明志怪もっと味わい尽くしたい! | ||||
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何に惹かれて買ったのか思い出せないのだが、今となってはそんなことはどうでもいい。おもしろかった。 ホラーより怪異譚という言い方のほうが合っているように思うが、それとて本作を言い当ててはいないかな。わたしのイメージに近いのは、その昔のドラマ、怪奇大作戦。 語り口は近代小説のようであったり、雑誌コラムのようであったり。挿話も伝承あり、漢字にまつわる話あり、都市伝説あり。主人公の嗜好面では、豆腐好き、クルマは選ばず(?)黄色いビートルや三菱デボネアなど。いろいろゴタマゼになっているのに非常に読みやすい。さらっと読み飛ばしてしまうというタイプの読みやすさではなく、語られているうちに怖さがじわじわ溜まっていき、ラストへと読み手を急がせる。 この作品の怖さはなんだろう。少し考えただけではなんだかわからないが、主人公の内側にあるのではないか。一見、主人公は事件に巻き込まれているかに思えるが、自ら呼び込んでいるのではないか。いや、主人公の身体や心にある何かが外側に飛び出してきたのでないか。 登場人物の科白に「・・・事実をそのまま写したりしませんよ。小説ですから。胸の底にしまって一度忘れて、それがいつか自分の物語として甦ってきたとき、自分の言葉で描きなおすんです。」というのがある。 作者が人生の中で見聞きし体験したいろんなものがある時、何かをきっかけに再構成され溢れ出して怪異譚の形をとった。それが本作なのか。 読み手まで入れ子構造に組み込まれしまうような作品でした。 | ||||
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フリーターと怪しい作家のコンビが遭遇する不思議な出来事の数々。 日本的な怪奇小説とミステリー小説が好きな方にはお薦めの連作短編集です。 得体の知れない非日常へと度々足を踏み入れてしまう主人公達。 どこか不気味な世界観と、どこか気の抜けたような二人の空気感が絶妙に混ざり合い、 読者を幻想的な風景へといざないます。 一冊に配置された各話のバランスがとても良く考えられており、毎回新鮮な読後感に 浸ることができるでしょう。 | ||||
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「妖都」が全く私には合いませんでした。不快感のみが残り、再読出来ず早々と捨てました。なのに同作者のこの本を買ったのは、「男性二人の呑気なオカルト短篇集」なのかと思わせる作品紹介がされていたからです。豆腐。 まあ結果お笑い小説では無かったんですが。 短篇集ですが、一作目から「いい本買ったかも」と思いました。 ともかく主人公の怪異遭遇率高すぎ。 しかしご都合主義には感じず、 シリーズ化する気は無い、この一作が面白ければそれでいいと言わんばかりのはじけっぷりに、もう読者は夢中。 無理に耽美を演出している所もなく、読みやすい。 文章がいいのか展開が早いせいか、がんがん作品世界に入り込めて嬉しい。 …しかし「妖都」みたいな作品は苦手なんだよなあ。次に買うのは何にしたらいいんだろ…。 | ||||
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「妖都」が全く私には合いませんでした。不快感のみが残り、再読出来ず早々と捨てました。なのに同作者のこの本を買ったのは、「男性二人の呑気なオカルト短篇集」なのかと思わせる作品紹介がされていたからです。豆腐。 まあ結果お笑い小説では無かったんですが。 短篇集ですが、一作目から「いい本買ったかも」と思いました。 ともかく主人公の怪異遭遇率高すぎ。 しかしご都合主義には感じず、 シリーズ化する気は無い、この一作が面白ければそれでいいと言わんばかりのはじけっぷりに、もう読者は夢中。 無理に耽美を演出している所もなく、読みやすい。 文章がいいのか展開が早いせいか、がんがん作品世界に入り込めて嬉しい。 …しかし「妖都」みたいな作品は苦手なんだよなあ。次に買うのは何にしたらいいんだろ…。 | ||||
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表題の『蘆屋家の崩壊』を含む8編からなる短編集。 三十路を過ぎても定職に就けない猿渡と怪奇小説家の伯爵との豆腐好きコンビが行く先々で怪異怪奇、珍妙奇妙、奇々怪々な事件に遭遇していくという筋書きであり、その他にも数名話をまたいで登場する者もいるが一話一話に関連性はない。 書評に関係ない事だが自分も豆腐好きで、文庫版の「豆腐がこの不思議な世界に云々」といううたい文句となにやらよくわからぬ表紙の絵になんとはなしに魅入られて購入した。つまり口コミや書評といった予備知識を何ら仕入れずに、それこそ短編であるという事も知らず無垢のままこの本を手に取って読み始めた事になる。 このため一話目の『反曲隧道』を読み終えた時不覚にも「なんだこれは」と思ってしまった。なにやらわかったようなわからぬような不思議な後味の残る話だったため、もしかしてこれはミステリー小説なのかと二話目の『蘆屋家の崩壊』を読み出してみると数行で関連性がない短編集であることを漸く理解する。しかし一話目の後味を引きずっているため「これは失敗したかな」との念も生じたのだが、なんのなんの、それこそが杞憂だった。読み終えてみるとその各話の順番・構成も計算されたものであった事がよくわかる。 つらつらと続く文と過剰気味な漢字変換が、古典的で個性的な文章を作っているためか、始め私には癖があると思えた文章だった。しかし読み進むうちに津原泰水の表現・文体・文章力にぐいぐいと引っ張られていく。筆者の掌に軽々と転がされている自分を認識しつつその心地よさについつい身を任せて読みふけってしまった。 気付けば脳内を不思議な想像力が支配し、もっともっと読み続けたいという欲求が涌き出てくる。読み終えて自室の書棚に返してしまうのが惜しくなる短編集だった。 | ||||
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表題の『蘆屋家の崩壊』を含む8編からなる短編集。 三十路を過ぎても定職に就けない猿渡と怪奇小説家の伯爵との豆腐好きコンビが行く先々で怪異怪奇、珍妙奇妙、奇々怪々な事件に遭遇していくという筋書きであり、その他にも数名話をまたいで登場する者もいるが一話一話に関連性はない。 書評に関係ない事だが自分も豆腐好きで、文庫版の「豆腐がこの不思議な世界に云々」といううたい文句となにやらよくわからぬ表紙の絵になんとはなしに魅入られて購入した。つまり口コミや書評といった予備知識を何ら仕入れずに、それこそ短編であるという事も知らず無垢のままこの本を手に取って読み始めた事になる。 このため一話目の『反曲隧道』を読み終えた時不覚にも「なんだこれは」と思ってしまった。なにやらわかったようなわからぬような不思議な後味の残る話だったため、もしかしてこれはミステリー小説なのかと二話目の『蘆屋家の崩壊』を読み出してみると数行で関連性がない短編集であることを漸く理解する。しかし一話目の後味を引きずっているため「これは失敗したかな」との念も生じたのだが、なんのなんの、それこそが杞憂だった。読み終えてみるとその各話の順番・構成も計算されたものであった事がよくわかる。 つらつらと続く文と過剰気味な漢字変換が、古典的で個性的な文章を作っているためか、始め私には癖があると思えた文章だった。しかし読み進むうちに津原泰水の表現・文体・文章力にぐいぐいと引っ張られていく。筆者の掌に軽々と転がされている自分を認識しつつその心地よさについつい身を任せて読みふけってしまった。 気付けば脳内を不思議な想像力が支配し、もっともっと読み続けたいという欲求が涌き出てくる。読み終えて自室の書棚に返してしまうのが惜しくなる短編集だった。 | ||||
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