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わたしを離さないで



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【この小説が収録されている参考書籍】
わたしを離さないで
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないでの評価: 4.10/5点 レビュー 707件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.10pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全544件 61~80 4/28ページ
No.484:
(5pt)

ディストピア、、、アイランド(2005年マイケルベイ監督)を思い出す。

映画アイランドもショッキングなストーリーだった。本書も予備知識なしで読み進めた。まどろっこしい展開というか異質感・違和感は英米文学からいつも感じるところだ。(本書の前には、ザリガニの鳴くところ(2020年発刊)を読んでいたが、あれも最後にかけて息もつかせぬ展開となった。)
こういうディストピアものは嫌な後味で終わります。深刻といってもいい。人類の明るい未来を信じる態度とは反対だが、もしそれが光と影であれば、つまり未来の表と裏となる。どらちもあるということ忘れてはいけないということだと思う。
本書の映画化も2011年にはされているので機会があったら観てみたいと思う。
ついでにいえば、キャシャーン(紀里谷和明監督2004年)にも似たようなプロットがあって思い出した。これもまたディストピアである。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.483:
(5pt)

さすがです。

是非読んでください。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.482:
(5pt)

おもしろい

映画を見て読んでみました。
自分の現実に向き合う子どもたちの生き方に引き寄せられ2日で爆読みしました!笑
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.481:
(5pt)

人間とは何か考える

私は、この本の最後の一頁を思い出すと、息が詰まり、瞼が震える。
私はいわゆる「泣ける小説」と呼ばれるものが嫌いだ。近年、日本文学を騒がせるのは、そんな「泣ける」が売り文句の小説ばかりで、少し食傷気味ですらあった。
しかし私はこの本を発売前から心待ちにしていた。そのわけからまず話そうと思う。
著者、カズオ・イシグロの名に、ぴんとこない、という方も多いだろう。しかし、映画「日の名残り」の名前なら聞いた事があるのではないか。私はこの作品を、母の勧めで見たのだから、あれはまだ十代のこと。今思うとすべてをきちんと理解出来ていたこというと疑問ではあるが、アンソニー・ホプキンスと、エマ・トンプソンの名演が実に素晴らしかった。そしてそれを引き立てていたのは、広い邸宅の明暗と、イギリスの風景。私はその後、もう一度その光景に会いたくて原作を求め、カズオ・イシグロを知ったのだ。日本語訳された彼の作品は殆ど読んだ。しかし何故か、「日の名残り」で受けたような深い感情の揺らぎは得られなかったような気がする。
 それでも私は「カズオ・イシグロ」の名に足を停める。そうしてこの本の出版予定を知ったのは何に於いてだったか、それはもう忘れてしまったのだが、私は題名を分厚いメモ帳に書き付け、いつか読む本リストに付け加えた。それから約一年を経て、やっと私はこの本を手にすることが出来た。
 セピア色の柔らかな装丁画の下に眠っているのは、同じくセピア色の風に吹かれた、しかし鮮やかな記憶。
主人公のキャシー・Hは素晴らしい語り手で、その丁寧な語り口は介護人という職業にふさわしいと感じさせる。
話は自身の紹介からやがて、彼女の育った「ヘールシャム」での思い出へと遡っていく。
 ヘールシャム。作中特別な場所として描かれる全寮制の施設。そこでは普通の授業のほか、展示会、交換会、販売会などの行事がある。何となく引っかかるものはあるが、幼稚園で同じような「お買い物ごっこ」をやった私は何となくそれを読み過ごす。
仲良し友達もいれば、いじめもある。ごく普通の学生生活。その中でキャシーは、ルースやトミーと言う親友を得る。ルースへの憧れやライバル意識、嫉妬。トミーへの友情と恋。そうした複雑な感情を経験しながら成長していく。そんな輝かしい青春の思い出を暗雲のように取り巻いているのは、「提供者」というキーワード。
16歳になり、「コテージ」での生活を経て、キャシーは介護人になることを決める。
そして介護人として、コテージを出る時に別れたルースやトミーにも再会する。
「日の名残り」の主人公二人(執事と女中頭)は、再会してもその人生を交えることはなかったが。しかし今作に置いてキャシーは、提供者となった二人を介護する中で、かつて言えなかった言葉を伝えることができる。(それはカズオ・イシグロ自身の変化なのだろうか。)
 本の題名はジュディ・ブリッジウォーターの「わたしを離さないで」の一説から。
 その曲は作中実に効果的に、何重もの意味を持って流れているのだが、私は読み終えて、そこにもう一つ意味を付け加えたいと思う。
私達はある記憶を手放したくないと願う。それと同時に、記憶も、忘れ去られたくないと、手を伸ばすのではないか。ふとした瞬間、その曲のワンフレーズが頭の中を繰り返し流れるように。
「わたしを離さないで」と、何度も、何度も。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.480:
(5pt)

自分が変わってしまった

読む前と読んだ後で、完全に自分が変わってしまったと体験した初めての小説。人間の底意地の悪さ、傲慢さ、残酷さ、無力さに完膚なきまでに打ちのめされると同時に、不可抗力でそうなってしまう状況、その中でさえ、人間だからこその、美しい思い出があることに、心が引き裂かれるような矛盾とある種の救いを感じた。
カズオイシグロは、「困難な状況を受け入れてしまう人間」「あの時はいいと思ってたけと、あとから思い出すととんでもないことだった」というものを書く名手だが、いまはまあいいと思っている人生も、死ぬ前に思い出したら大きな間違いだったと知るのかもしれない。そういう意味で、この小説を読む前はお気楽に生きていたのが、そうできなくなってしまった。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.479:
(5pt)

夢中になって読みました

透明感のある文章とでもいいましょうか。
読んでいて、色や温度を感じるほどリアリティがある描写なのに、どこかファンタジーな雰囲気のある、不思議な感覚で読み進められました。

作品も素晴らしいのですが、無知ながら翻訳がすごいとも思います。

読み終わるのが残念になるくらい、世界観に引き込まれて夢中になって読めます。
読んで期待を裏切らない、本当におすすめです。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.478:
(5pt)

読書の時間が節約できる。

作業しながら聴けてとてもよいです。
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4151200517
No.477:
(5pt)

面白かったです

ハラハラしたりするシーンは少ないので、共感性羞恥でも読みやすかったし、面白かったです。

映画の宣伝などで少し内容を知っていたのですが、知らない状態で読みたかったです。
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4151200517
No.476:
(5pt)

カズオ・イシグロ

読了、これはすごい。
いい小説を読みおえたときのあの独特の感覚、感動の余韻につつまれた感じといえばいいのか何ともいいようのない心地いい衝撃と大きな問いを背負わされたような気分。カズオ・イシグロすごい作家だ。
日本人であり英国人でもあるこの作家のことはノーベル文学賞を受賞する前から知ってはいたのだが、はじめて読んだものが本著「わたしを離さないで」だったことは幸運だったかもしれない。本当にすばらしいスケールの大きな作家に出会えて嬉しかったぁーっ。
静かにはじまるこの物語はいわば回想の作品なのだが、一つ一つの大切な記憶をたどるようにきわめて抑制的に描かれている。そう、淡々としていて抑制的、このことは文体としても大きく作用しているようにもおもえる。この小説は本当に自然な感じで作品世界に吸い込まれていく不思議な読書体験となった。

学校なのか宿舎なのかヘールシャムとはどういう場所なのだろう。この施設で育成されていく子どもたち、その過程でおきる奇妙なできごと、親友のトミーやルースたちのようすだけでなく保護管とよばれる教師たちのぎこちない態度や関係性、施設の外からやってくるようにみえるマダムの秘密めいた不可解な行動。
物語はこの施設でトミーたちとともに成長し介護人となった女性キャシー・Hのまなざしで語られていく。つまり、年少期から提供者へと成長していく過程で少しずつこの施設のことがあかされていくことになるのだ。
いうなれば、ヘールシャムが臓器を提供することを目的とするクローン人間を育成するためのものであるという残酷な真実が徐々にあかされていき、ここに関係する提供者や介護人、保護管とよばれる教師たちそれぞれの思惑と葛藤がクールにも壮絶な物語として描かれているのだ。けだし、この怖ろしくも感動的な物語は人間の尊厳と畏怖とともに、《人間存在》の普遍的な問題を孕んだ傑出した作品といえるだろう。

象徴的なできごととして、カセットテープを聴きながらキャシーが枕を抱いて眼を閉じて「オー、ベイビー、ベイビー、わたしを離さないで・・・」とリフレーンを一緒に歌いながら、スローダンスを踊るところをマダムにみられる場面がある。赤ちゃんを産めないこの子たちの間で交わされる「映画俳優になれたらいいな」とか「スターの人生ってどんなだろう」などといった他愛のない会話を聞いた保護管のルーシー先生はこのようにいう。
「あなた方は教わっているようで、実は教わっていません。それが問題です。(・・・略)あなた方の人生はもう決まっています。これから大人になっていきますが、あなた方に老年はありません。いえ、中年もあるかどうか・・・。いずれ臓器提供が始まります。あなた方はそのために作られた存在で、提供が使命です。ビデオで見るような俳優とは違います。わたしたち保護管とも違います。あなた方は一つの目的のためにこの世に生み出されていて、将来は決定済みです。ですから、無益な空想はもうやめなければなりません。間もなくヘールシャムを出ていき、遠からず、最初の提供を準備する日が来るでしょう。それを覚えておいてください。みっともない人生にしないため、自分が何者で、先に何が待っているか知っておいてください」(p127)
ルーシー先生のこの言葉は唐突にもあまりに残酷で強烈ですが本質的な問いとして何を意味するのか、物語の終章になってこのことがマリ・クロード(マダム)やエミリ先生の証言によってあかされていく。

ヘールシャムを出たキャシーたちはコテージで過ごすことになるが、ルースのポシブル(親)さがしでノーフォークへと向かう少人数の旅行もこの小説を象徴する印象的なエピソードだ。
カップルとして過ごしたトミーとルースは提供者として、キャシーは優秀な介護人として彼らのお世話をする人生をおくる。そして、ルースは何回かの臓器提供を終え人生の最期をむかえるのだがキャシーにトミーの介護人となるべきだしそうなって欲しいと切望するのだった。
キャシーはトミーの介護人として複雑な想いを抱えながらも平穏に過ごすことになるが、トミーも4回目の提供を済ませクローン人間としての使命を終える。だが、その前にマダムの邸を訪ねたトミーとキャシーは、そこで年老いたエミリ先生とマダムの二人からヘールシャムの活動における思惑と葛藤の真実を知ることになる。すでに、ヘールシャムは閉館しているのだが、彼らが施設で経験した不可解で奇妙なできごとの記憶が謎解きのようにあきらかになっていく。
医学のためとはいえクローン人間の可能性については、いうまでもなく倫理的人道的問題のみならず未解決の複雑な問題がのこされている。特定の目的を前提とした命、理想と現実、ぼくたちは人間の尊厳や畏怖と同時に《人間存在》にかかわる普遍的で哲学的な大きな課題を突きつけられたような気がする。カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」、まさしく魂を揺さぶる作品といえる。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.475:
(4pt)

SFであることを感じさせない不気味さ

この作品は一言で言えば高度なバイオテクノロジーが発達した近未来の物語で、ハードSFとして描くことも可能と思えます。

しかしイシグロ氏は、そうしたテクノロジーも、異様な世界を支える政治もほとんど全く語りません。

十代の少女達の日常が延々と語られ、大きな事件もなく、やがて大人になった彼女達は、このディストピアに運命づけられたエンディングを淡々と迎えます。

なので、これを青春小説として楽しめる方は別ですが、そうでない方は読み通すのにかなり忍耐力を要するかも知れません。

それでも頑張って読み通せば、活き活きと描かれた彼女達の生き様に涙することは出来ますが、そうした表層だけで済ますことが不可能な、語られなかったことの不気味さやグロテスクさが際立ちます。

第一に、この世界を支配し異様なシステムを享受する人々が全く語られません。
第二に、登場人物たちは異様なシステムを当たり前に受け入れ、疑問も持たず、反抗もせず、悲嘆に暮れることもなく、淡々と運命を受け入れます。
ただ、かって彼女達を厳しく教育しながら見守り、この世界のシステムと闘って挫折した教師達だけが、彼女達の運命を悲しむのみです。

深く心に残る作品なのは間違いないですが、読後感を考えると覚悟を持って読まないといけない作品だと思います。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.474:
(5pt)

なんか恋愛小説のタイトルみたいですが

文庫の表紙がカセットテープの写真なんだけれど、実に象徴的である。

心理描写の細やかさ、というか、うまく言えないけど例えば、誰かとのあいだで暗黙の了解となっていた(はずなのに)それを裏切られ、小さく傷つく、みたいな、なんとなくそういうところが日本的だなぁ、とか思った。私小説風というか。太宰っぽい、というか。

彼女は提供者、と呼ばれる人々の介護をする職についている。子供の頃を振り返る。彼女はヘールシャムという施設で育った。

人里離れ、隔離された施設での生活を送る子供達。健康管理が行き渡り、教育を受け、特に絵画だとか詩だとか、創作的なことに比重がおかれていた。それら創作の中から特に出来がいいものを外部から来るマダム、と呼ばれる女性が持ち帰る。

昔『アイランド』って映画を見たことあって、そのせいか健康管理が厳しくされている、というところで彼らがどういう存在か、ということにほとんど気づいてしまった。そして創作に力を入れてる、というのがどういう意図であるかも。

比較的早い段階で彼らの存在理由が明かされるし、ミステリーじゃないので、気づいてしまっても別に支障はないけれど。

あの映画ではユアンマクレガーとスカーレットヨハンソンが真実を知り逃亡する。運命に対する自由意志の勝利だけれど、この物語の登場人物たちは逃げることを試みもしない。ただ運命を受け入れる。

将来、医学だとか遺伝子工学だとか生物工学だとかが進歩した時、こういうことが起こりうるかも、とか思うとなかなかショッキングなモチーフだけれど、人の人生、というのはこういうものなのかもしれない。多かれ少なかれ。

少なくとも、物心ついてすぐ自分の使命がなんであるか、なんて確信が持てる人はそういないだろう。考え、悩み、情報収集し、どうやて生きていくか、なにをやるか、手探りで探っていく。

人間の尊厳とはなんだろう、自我の優先か人間性の否定か、そんなことを考えながら読んでいた。もちろん答えなんて書かれてない。

この小説に書かれているのは、真実を知りたいか、希望を信じたいか、という選択であるし、運命に対しての怒り(たとえそれが不当であってもどうしようもなく怒りとか悲しみとかが沸いてくることがある。というか少なくとも私にはある)であるし、成長に対する恐怖でもある。

キャシーが好きで子供の頃よく聞いていた曲がそのままタイトルになっている。本当は恋の歌なんだけど、子供の頃の彼女は勝手に別の解釈をしていた。

子供ができないと思っていた女性に赤ちゃんができた、とても嬉しいけれど、赤ちゃんが急にいなくなったら、と考えて不安になる、だからベイビー、私を離さないで。

施設にいた頃、枕を赤ちゃんに見立てて、この曲を聴きながら踊っていたのをマダムに目撃される。マダムは泣いていたのであった。

後年、マダムを訪ねていった時、キャシーはこのことを覚えているか、とたずねる。見当はずれな解釈で、勝手に悲しい歌だと思っていた、あなたはその私の気持ちが解ったから泣いていたのではないのですか、と。

枕を胸に踊る少女に、マダムは別のものを見ていた。

科学の進歩、技術の発達、効率の追求。すばらしいことである。だがそれは無慈悲を、残酷を、犠牲を含む世界でもある。厭世観にとらわれての涙だった。

マダムには、キャシーが失われていく古い世界に必死でしがみついているかのように見えていたのだ。
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4151200517
No.473:
(4pt)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

良かった。
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4151200517
No.472:
(5pt)

早く届いた

読みたかった
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4151200517
No.471:
(5pt)

中国

作者もそこまで思っていなかったと思いますが、まさに中国で実際に起こっていること。
こんな恐ろしく何のハッピーエンドもない作品に没頭してしまうとは思いませんでした。
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4151200517
No.470:
(5pt)

現代の人工的、科学的創造という危うい暴走に文学から迫る警鐘の書

これはすごいその時代の人に問いかける小説ですね。ミステリータッチで描かれているが内容は読むにしたがって深刻にならざるを得ないものです。単なるSFではない、ある科学的な進歩というか?、人間をも人工的にやろうとすればどうにでも造れる世界に現代はある。この小説は2005年に書かれていて、前・中・後でいうと、前段後編になって、明らかに「臓器移植を目的とした体細胞クローン人間」として作られた存在としての「人間」集団を扱っていることが分かる。おそらく、1997年の驚愕事実、「体細胞クローン羊”ドリー”」が作られ、世界的に議論がされことが、「人間クローン」の可能性が世界中で大きな議論になり、2018年には中国でクローン猿の双子が作り出されて大きな批判が巻き起こった。日本では2001年に研究に厳格な規制をかける法律が出来ている。世界中でその科学者や医師の暴走を止める措置が取られている。で、この本に戻るが、彼らは臓器移植のために作られたクローン人間である。しかも、自分のルーツもわからない、生殖機能を持たないので赤ちゃんはできないが、性欲はある、人間なのか得体のしれない何かなのかも判然としない、突然、召集令状が来る、そして、魂があり生きたいという本能もある。とはいえ、生まれてから特別な隠された施設で育てられるせいか、本人たちはそのことに特別に何かの感情を強く持つような書き方ではないので、私は不思議な理解しがたい気持ちで読んでいったが、彼らはそれが「使命、与えられた存在価値」として淡々と受け入れている生活をしていく、私には理解しがたい創作内容が展開していく。自覚できない何かを感じながらと言ってよいような感じである。そして、クライマックスは、後段の第二十二章から始まる。これは書かない方がよいと思うが、より深い人間の深み、いや、クローン人間としての深みとその子供を育てたある少数の保母さん、先生を担った人の経歴、そして彼ら間の思いのすれ違い、見解の違い、そして別れ、さらには臓器提供者としての限界(死)による愛し合う二人の有無を言わせない別れが必然的に起きる。そのことを承知しながらも、・・・・・。この作者が問いかけていることは、現在では遺伝子操作まで進んでいる。読者一人一人がどう考えるのかが、どう考えるのかを文中にある「ホラー映画そのものだね」という男のクローン人間たる人物が、ちらっと口にしている。後ろに英米文学作家氏が解説を書いているが、全く中身に触れない技巧的な下らん解説をしている。これは単なるミステリー小説でもないしSF小説でもない。そういうタッチで描かれているが、現代文明と言われる神をも恐れぬ人工的、科学的進歩と言われる思考及び行為に対して、強烈な異議申し立て、問いかけの書である。すばらしい作品となっている。
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4151200517
No.469:
(5pt)

なんともいえない。でも美しい

型があるのではなく、たんたんと流れていくようで、読み終ったあとに気がつくと美しい形になっている。そんな物語です。是非一度お読みください。
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4151200517
No.468:
(5pt)

usedでも新品同様だったことが、嬉しかったです。

希望通りの品を、届けて頂き感謝しています。有難うございました。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.467:
(5pt)

面白かった

内容が興味深いもので、自分に置き換えてみたら怖くなってしまった。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.466:
(4pt)

最初はどのような話なのかつかめなかったが…

読み進めるたびに、内容に少しずつ、また少しずつ引き込まれていくようでした。後半にわかる主人公たちの設定もとても意外でした。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.465:
(5pt)

記憶がわたしの存在証明

…カズオ・イシグロ、「日の名残り」と並ぶ代表作。何度も読んで深く考えたくなる作品です。そういう本との出会いはめったにありません。 
 クローン人間が主人公だったりするので、設定を考えたらSF的とも捉えられるけど、いくつかの要素がまったくSFとは違う作品に仕立て上げています。 
 
 まず、この回想型ともいえる小説のかたちです。カズオ・イシグロは「記憶」というモチーフをとても大事にします。まるで記憶を持っていることが存在証明であり、生きてきた価値そのものであるかのように、主人公は過去を語ります。その語り口に引き込まれます。 
 
 
 もうひとつは、物語の流れそのものが読者を深い思索にいざなうようになっていることです。主人公たちの体験を追体験しているような感覚になっていきます。 
 
 彼らは臓器提供されるためだけに生み出されたクローンであることを隠されて、思いやりのある教師たちに囲まれて育ちました。果たしてヘールシャムでの日々は、彼らにとっては意味があったのでしょうか。 
 彼らは徐々に教師たちの不自然な態度に気づいていき、自分たちで謎を突き止めようとします。その過程は、前に進むというより、どんどん奥に奥にと進んでいくような印象です。存在の意味を知るために、果てしのない井戸に潜っていくような、そんな感じでしょうか。読んでいて自分自身も同じような体験をしているような気持ちになってくるのです。 
 
 
 わたしが思ったことは、ぼくらも彼らと大差はないのだというと。生まれた意味は誰も教えてくれないし、せめてもの慰めとして、さまざまな娯楽や芸術があるだけです。制限のなかで生きている、という意味では、ヘールシャムで過ごした彼らと変わらないのです。 
 実は映画版の最後の台詞は、「私たちと、私たちが救った人たちに違いがあったのだろうか」「生を理解することなく命は尽きる」という主人公キャシーの思索で終わります。 
 
 ぜひ映画と合わせてどうぞ。どちらが先でも楽しめると思います。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517

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