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わたしを離さないで
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わたしを離さないでの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.10pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全544件 361~380 19/28ページ
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カズオ・イシグロの最高傑作だと思う。 すべての人に手にとって欲しい本。 なぜなら、人はみなある意味“ドナー”なのだから。 | ||||
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情報がこれほど氾濫している昨今、たとえ裏表紙のあらすじに残酷な真実が表記されていなくても、僕ら読者はおおよその梗概を知り得るだろう。僕もそうだった。そしてそれを承知の上、長い長いヘールシャムの日々を主人公たちと共に過ごした。それはイギリス文学にしばしば登場する孤児院、または寄宿舎の生活を彷彿させつつも、何か懐かしい日本的な、のぺっりとしたモルタル壁の校舎を僕は思い描いた。確執、嫉妬、裏切り、そして思い浮かべただけで落涙してしまいそうな友情。子どものころ、これだけは決して忘れてはならない、いつまでも大切にとっておくべきだと思ったさまざまな情感。たとえ備忘録を取ったとしても、読み返しても決して再現できない、きわめて個人的なエピソード。作者はそれらをまるで追体験するように描写する。僕はたしかにこの夏を、ヘールシャムでコテージで、ノーフォークで、そしてキングスフィールドで過ごした。そして保護官やマダムが時折見せる不可解な仕草に、ようやく予備知識(残酷な真実)を思い出す。この作者はほんとに魔法使いのような作家だと思う。残酷な真実を決して作為的に隠蔽していないしトリックのようなものもない。そして僕らを包み込んだそれら体験の末に、現実を突きつけるのである。ここで僕らは、この作品を開く前に得た予備知識は単なる認識でしかなかったこと、そして同じ日々を過ごした友人たちの前に立ちはだかる現実の酷さを思い知るのである。静かな、ややもすると倦むような描写は、実はここへ導くための非常に巧妙な伏線だったのかな?とすれば大変な小説だな。 | ||||
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落ち着いた語り口で、ある特殊な運命を強いられた若者たちを描いた話 強烈な感動はなかったが、しみじみとした余韻が残った。 登場人物の描写が素晴らしい。 決して完璧ではなく、欠点もあるし、もろい所もある。 だからこそ感情移入してしまうし、だからこそ運命の残酷さも感じてしまうことになる。 なぜヘールシャムでは絵を描く行為が重要視されているのかなど、ミステリー要素もあり、最後までぐいぐい読ませる所も素晴らしい。 小説はあまり読まないのだけれど、上品な雰囲気の漂う良い小説だった もし最近の小説で、良い小説を探しているなら、これを勧める | ||||
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「臓器提供用のクローン」というテーマはSFそのものだけど、科学的部分はほとんど語られることはない。 じゃあこの話はSFじゃないのか? というと、そうでもない。 自分がクローンであるという事実は知っていても、その問題と正面から対峙していく人間ばかりではない。その運命の中でどうやって生きていくかを彼らは真剣に考えている。 試験管の中ではなく現実の世界で生きていかなくてはならない彼らがなにを考え、なにを思うのか。その心の動きこそがこの物語の本質だと思う。 そしてその真摯な姿に静かに心揺さぶられるのだ。 ありふれたSFではページを割いて書かないだけのことだ。 彼らがその「いけにえの運命」にあまりに従順であることに個人的には違和感を覚えるけど、当然なにかの理由があるんだろう。 語られていないだけで。 それを語るのはほかのSF小説に任せておけばいいじゃないか。 | ||||
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全ての人に受け入れられる作品ではないと思う。救いがあると感じる人もあれば、全くないと解釈する人もあるだろう。このタブーに触れることはこの時代のテーマなのかもしれない。。読了したのちに心臓の重たさを感じさせてくれた名作。 | ||||
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読後、しばらく他の本を手に取る気がしなかった。 それくらい大きな余韻を心に残す物語だ。 静かに、だが確信をもって美しく流れるメロディ。 転調、そして忍び寄る不協和音。 死を運命づけられた我々は、それでもなお、何故生きるのか? 本物の愛があったとしても“死”という人生最大の不条理からは逃れられない。 だけどそれは、生きていく強さになる。“死”の恐怖に立ち向かう強さになる。 そして、子供時代の美しい多くの記憶。 大人になって理解する数々の出来事。 わたしたちのヘールシャム。 わたしたちのノーフォーク。 ストーリー展開をみれば、SF小説、ミステリ小説的な要素もあるのだが、 私には、これ以上ないリアリズム文学に思えた。 世界的な文学作品を読んだ後と同じような、静かな興奮、少しの疲れ、心の充足感をもたらしてくれた。 枕を胸に抱き、目を閉じて「オー、ベイビー、ベイビー、わたしを離さないで……」 と、口ずさみながら体を揺らす少女の画が、頭にこびりついて離れない。 | ||||
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イシグロ氏が用意した言葉の回廊を歩むことになります。 キャシー・Hという名のじょせいが回想します。 キャシーが育ったヘールシャムのことや親友たちのこと、どんな小さなことでも思い出せる限り言葉にしようと試みているような印象です。 多分それはありふれた一人の「提供者」の物語なのでしょう。 キャシーの一生懸命な語り口に惹かれて耳を傾ければ、時々あれっ何のことかなという疑問符が浮かびます。 少し私達とは違う思い出のようだということにすぐに気が付きます。 暫くキャシーの話を聞いていると、全く思いもしなかった世界が存在したことを知らされ、戦慄が背中を走ります。 彼女達は、本当のことは何も知らされず、決められた人生を生き、根拠のない噂に飛びつき、小さな希望を糧に生きます。 英雄的な勇気を持って知った真実は、余りに重く残酷なものでした。 果たして私たちがキャシー達とは別なのだ、と言い切れるでしょうか。深い問いかけです。 | ||||
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青春小説ですね。光景がまざまざと感じられるように映像的な書き方なので 美しいイギリス寄宿学校の雰囲気を楽しめると思います。 SFや社会派小説と思って読むと冗長で読み切れないと思います。 基本的にライトな感じで、サクサクと読み進められますが、 主人公キャシーが心のままに思いだして語るという形式のためか、 時間が前後する場合が多いのが、少し分かりにくく感じました。 作者のインタビューがwebで見られたので読んでみたのですが、 なるほどと思う感じでした。人は意外と運命を選べませんし、 どんな環境でも、良くも悪くも人間的に生きているということでしょうか。 | ||||
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寄宿舎暮らしの子供たち。親身なようで、どこかよそよそしい教師たち。展示館、マダム、そして何らかのシステムの一環であるという秘密。 牧歌的でありながら、どんよりした天候と閉鎖的な環境で、主人公のモノローグでとつとつと語られる過去の物語は、ミステリアスに遡上していく。 子供たちを待ち受ける運命を考えれば、教師たちの役割は重大だ。そしてその成果は十分に現れている。決して自暴自棄にならない、素直な提供者たちが成長し巣立っていった。宿命を受け入れる彼らの従順さは不思議だった。物語の抑えた語り口が、運命を甘受することを当然と感じてしまう諦念につながっているようだった。その無力さがやりきれない感じがした。もう少し、提供者の心の中で役割を認識して、それを受け入れて折り合いをつけるプロセスを語らせて欲しかったと思う。 作品に登場するジュディ・ブリッジウォーター「Never Let Me Go」、Youtubeで簡単に見つけることができる。何度聞いても、あまり主人公の気持ちになれない自分が残念だった。 この子供たちはどことなく天童荒太の作品に登場しそうな気がする。突き抜けた設定の、印象深い作品だ。 | ||||
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静かな小説です。語り部の淡々とした丁寧な口調が印象的で不思議な雰囲気です。 ある特定の間柄でしか通用しない冗談や暗黙の了解、そういったローカルルールなど 誰でも経験した事のある人間関係――感情の交錯――が細かく丁寧に描かれていて 気づいたら物語に強く引き込まれていました。 重大な事がさらっと明らかになったりするのですが、衝撃が凄い。 予備知識が少ない方が楽しめるタイプの小説なので、レビューを熱心に見るのはオススメしません。 (ネタバレありのレビューも多いので) | ||||
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ある寄宿舎学校で、教育熱心な保護官たちに見守られ、大切に大切に育てられる子ども達。 うっすらと運命を知りながら、手をつなぎあい成長していく。 それは虐待ですらなかった。とても洗練された形の「犠牲」だった。 代替品としての人間に生まれついていようとも、幼い頃から覚悟していても 愛したい、生きていたいという思いを殺すことはできない。 すくすくと伸びる生命力と、のしかかる避けがたい運命とに 静かに向き合い、対峙する人々の物語。 | ||||
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初め本書を手に取ったとき、冒頭から語られているある《単語》の意味が把握しずらかったため、英文学を日本語に翻訳したとき特有の《翻訳に際する両言語の溝》が読者の理解を妨げているのだと思った。 冒頭が分かりにくいが故に、期待はずれとして読むのを止めようかと思ったくらいだ。 しかし、そのような不安は直ぐに晴らされ、中盤からは別の不安感が漂う。 正直に言って、本書はホラー映画に近いと思う。映画と言ったのは、場面を隅々まで鮮明にイメージしながら読みすすめられたからだ。その分リアリティーが高く、最後まで読んでショックで身が凍ってしまった。 | ||||
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世界観が明かされないまま淡々と描かれる子供たちの人間関係に、実は退屈しながら読みました。けれど第三部で世界の真実を知った途端、退屈だったはずの前半がとてもかけがえのないものに変わります。読了後すぐに最初から読み返し作品世界の深さに驚愕しました。 藤子・F・不二雄のSF短編に「ミノタウロスの皿」という名作があります。やはりこちらもある目的に使用されるために生まれた人間を描いたもので、初めて読んだ時には強烈な残酷さが印象に残りました。けれど本書を読んだ今では「ミノタウロスの皿」は非常に幸福な物語だったのだな、と思えます。 数年置いて再び読み返したい作品です。 | ||||
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20代半ばにして救うためだけにこの世に受けた“生”が見知らぬ誰かに“提供”される “私たちと私たちが救った人々に違いが?” 最後の最後で儚く潰えてしまった、見えかけたささやかなキャシーとトミーほんの少し先の未来 “それがわかっていれば、2人の手を離さずに潮の流れに逆らったのに” 「物の憐れ」 こんなにせつなく苦しくて、胸が痛くて堪らなかった小説は思い出しても、今までない 童謡「シャボン玉」にも似た物哀しさが終始漂う作品で、本当の意味での“傑作”だと思う | ||||
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20代半ばにして救うためだけにこの世に受けた“生”が見知らぬ誰かに“提供”される “私たちと私たちが救った人々に違いが?” 最後の最後で儚く潰えてしまった、見えかけたキャシーとトミーほんの少し先の未来 “それがわかっていれば、2人の手を離さずに潮の流れに逆らったのに” 「物の憐れ」 こんなにせつなく苦しくて、胸が痛くて堪らなかったのは、久しくなかった 童謡「シャボン玉」にも似た物哀しさが終始漂う作品で、本当の意味での“傑作”だと思う | ||||
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裏のあらすじを見ると「?」という感じ。 読み終わればあながち間違いでもないというか、こう書かざるを得ない話なのですが。 登場人物の感情、人間関係はよく描かれていて、そこは勿論良かったのですが、私としては話の先(全貌と言えないまでも“全貌の輪郭”が)が見えてしまうことが残念でした。 テーマ的には少し前に流行ったものですが、読むとちょっと虚しい気持ちになる、こういうのは良いですね。 キャシーの感情は語り手であるためか淡々としているので、感情移入・同情するのは難しいかも?どんなファンタジーだろうとSFだろうと、登場人物にまるっきり親近感が持てない、もしかしたらそれは作者の意図したところかもしれませんが、このせいで感情を揺り動かされるほどの衝撃はないと思いました。 私の印象としては静かで虚しい小説・・・です。 | ||||
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コンディションは自己評価以上によく、非常に満足しました。取引もスムーズでした。 | ||||
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はじめはおだやか、やがて終盤に向かうにつれて恐ろしい事実が明らかになる……。 「もし自分の人生が限られていて、それに反抗ができないとすれば、 人はどうするのだろうか…」と思いました。 主人公たちはまさに、そんなふうに運命が定められている人たちです。 限られた枠のなかで、どう生きていくのか…。 それぞれ違う個性をもつ主人公たちが、自分たちの運命を受け入れていく 様子が、丁寧な語りとともに描かれていきます。 なんとも特殊な世界観で、読んでいると不思議な気分になりました。 とても静かな小説だけれども、そこには普通のホラーとは違う、 芯に迫る恐怖がちりばめられていて、言いようのない戦慄を感じました。 思春期の子供たちの揺れる心を、作者は見事にとらえて自然に 描いており、彼らの初々しさがとても新鮮でした。 やがて物語はある「伝説」を中心にまわりはじめていくのです。 私が今まで読んだ中で、最も美しくて謎に満ち、 神秘的な物語だったと確信をもって言えます。 是非、この本を手にとってみてください。 | ||||
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ミステリーと思って読むと、謎はすぐ解けてしまうのでつまらないかもしれません。 主人公の繊細な心の動きを追いながらじっくり読めば、読み終えた後に人生というものについて思いを馳せてしまうこと間違いなしです。 特異な設定のように思われるかもしれませんが、そこに描かれているのは、誰もが送る人生そのものです。 生まれた時から与えられている運命の枠組みの中で、小さくあがく事はあっても、流れそのものに逆らうことはない。 その中で日々小さな喜びを積み上げていければ、それが幸せです。 流れのはやい川の中で互いにしがみつきあっているけれど、いつかはその手が離れてひとりずつ流されてしまうことも、それをあらかじめ知っている事も、彼らと一緒なのです。 自分の毎日が愛おしく大切なことに、改めて気づかされました。 忘れたときにはすぐ思い出せるように、この本はすぐ手の届くところに置いておきます。 | ||||
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ニューハンプシャーという全寮制の学校で学ぶ子供達の抱く夢、いずれ向き合う未来。 一見普通の青春ストーリーのようだが、本作品ははじめから個性的な「仕掛け」がある。 度々出てくる「提供」や「介護」などの言葉に戸惑う読者も少なくないはずだ。 主人公であるキャシー・H(キャス)は自身の冷静で大人びた感性で 「仕掛け」られた未来とそれに向かう仲間達を語る。 淡々と、的確に、諦めと希望の入り混じった言葉の連なりで。 読み進めていくと、違和感を感じた設定に徐々に溶け込んでいく。 何故ならそれは何者にも侵されるべきでない自分の記憶という領域と共鳴するからだ。 カズオ・イシグロの繊細な描写の数々は穏やかに遠い記憶を揺さぶる。 誰もが抱く将来の夢や希望を描きながら、その対岸にある悲しみや喪失を 回顧的に綴った美しい青春小説、しっとりとした感動に包まれる。 「何か大事なものをなくしてさ、探しても探しても見つからない。でも、絶望する必要は なかったわけよ。だって、いつも一縷の望みがあったんだもの。 いつか大人になって、国中を自由に動き回れるようになったら、 ノーフォークに行くぞ。あそこなら必ず見つかる、って・・・・・」 本文より。 | ||||
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