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ハンニバル・ライジング



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ハンニバル・ライジングの評価: 3.32/5点 レビュー 56件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.32pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全56件 41~56 3/3ページ
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No.16:
(2pt)

えっ‥

これまでの作品と比べるとそこまで面白くはないです!淡々と一日で上下巻を読み、翌日に捨てました☆ハンニバル参考書。中古で十分。映画は絶対にオススメだけどd (&#62;◇&#60; ) !
ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)より
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No.15:
(5pt)

退行するハリス

レクター博士がもっとも魅力的だったのは「羊たちの沈黙」だった。「レッドドラゴン」も良かったけど、相手がグレアムであるかクラリスであるかは大違いだ。それほどまでにクラリスは偉大な登場人物だった。なにしろ、作者ハリスさえも飲み込んでしまったのだから。

前作「ハンニバル」はクラリスにぞっこんになってしまったハリスが「レクターとクラリスの物語」として書いた。いや、ぶっちゃけて言うと「俺とジョディ(フォスター)の物語」だった。
「ドラゴン」「羊」の頃のハリスは、一生懸命、アメリカ社会の中にいかにもいそうなレクターやダラハイド、バッファロービルたちを発掘していた。貧しさや暴力、虐待が子どもの心をどれほど蝕むか、地道に掘り下げていた。だから描写が少々冗長でも、緊張感があり、リアリティがあった。
「俺とジョディの物語」になると、人物造型の志向がなんだか変わってしまい、突飛であれば良い、視覚的にショッキングなら良い、というようになった気がする。地に足が着いていない。結句、物語は必然性や緊張感を失い、ジョディはクラリス役を降りた。ハリスは振られたのだ。

やはりジュリアン・ムーアでは満足できなかったのか、ハリスは別のクラリスを創造しようとした。それが本作の「紫夫人」なのだろうか、と思う。そして本作は、もはやリアリティなど志向しておらず、ひたすらレクター(ハリス)の内的世界を深めようとする。リトアニアやフランスではさぞ長期取材をしたのだろう(前作でもイタリアに長々といたみたいだし)。その成果は空しい。ハリスが創造したレクターの世界は、勧善懲悪っぽい幼児的な世界へと還元されていく。いわばハリスの「俺様ワールド」。

ハリスの俺様世界では、居酒屋チェーンのような名前のヒロインは、伊達政宗の子孫(宇和島ならぎりぎりOKだろうが…広島出身?)。昭和21年時点で「原爆の子」に折り鶴を捧げる風習はまだないと思うが(禎子は3歳だし)、まあ許せる。オマージュだろうから。しかし、その他の設定はちょっとついていけない。脱衣所で琴を弾かせるとか、シュールすぎる。俺様度が高すぎる。

結局、ハリスの「記憶の宮殿」でレクターは王子様になった。本作はその戴冠式なのだ。ただし、王子様を祝福してくれるはずのジョディはいない。永遠に満たされない魂を抱えて生まれ落ちた作品、それが「ハンニバル・ライジング」だ。
ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)より
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No.14:
(3pt)

あれ〜?;;

正直、どうしちゃったの?;;ってカンジ。
一体、作者のTハリス、ハンニバルをどういうキャラにしたいわけ?
家族、特に妹の復讐のために次々人を殺してくなんて、まるで、フツーの人間みたいじゃないですか。
レクターのファンが、そんな、アメコミ風のダークヒーローを求めてるとでも??
最後のほうの“衝撃の事実”にしても、ちっとも衝撃的じゃないし、ああやっぱりな、ってくらい。

ジャポネスクも、好奇心以上の造詣は感じられない。
宮本武蔵の絵は源氏物語との対でしかないし、紫夫人も一人の人間ではなく異文化の窓口でしかない。
だいたい、ハンニバルがリトアニア出身で、しかも紫が外交官の娘って設定なのに、
杉原千畝の名前が全く出て来ないあたり、本気で日本が好きってワケじゃなさそうだし。

メインのモチーフはあくまで、ヨーロッパの第2次大戦前後の現代史なのですよ。
そのへん、特にヴィシー政権だのってフランスなどとナチスの関りについて
欧米人の一般常識がないと、登場人物の心情はわかりづらいカモ。

翻訳のかた……「ハンニバル」のときもそうだったけど、解説で余計なこと書き過ぎです;
本文への信頼を失わせるようなことは書かないで欲しい……

ごく小さいところだけど、ちょっと気になったのですが。
「スイス製のハンマー」とかって語句が出て来て、たぶん、原文ではlucerne hammer(ルツェルンハンマー)なんでしょうね;
こういう翻訳が甘いあたり、ぼんやりと不信感が漂うんですよ……よほど時間がなかったんでしょうか。

でも、解説にあった、“ハンニバル変奏曲”ってくだりでちょっと納得出来たカモ。
最初から映画化のための小説だから、レクターも、単純でわかりやすいヒーローとして同情しやすい設定にしたんでしょうね。
ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)より
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No.13:
(5pt)

時代の逆行

羊たちの沈黙、ハンニバル、レッドドラゴン

レクター博士に魅入られ、本もDVDも手に入れている私。続編が、ハンニバルの誕生秘話だとは。。。私の中で、ハンニバルの時代が行きつ戻りつしています。しかも、すぐに入り込めるおもしろさ。一気に読み倒しました。
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No.12:
(4pt)

愛しのハンニバル

「ハンニバル」でハンニバルの出生について、少しえがかれていたので、読んだ方は取っ付きやす
いかもしれません。とっつきやすいだけで、妹ミーシャと家族の死、そして戦争と
ケダモノ以下の人々に蹂躙されたハンニバルの運命、これらは読むに耐えないですね。
でも、戦時下の悲惨な状況をおもえば、あったかもしれないとおもわれますね。
地獄というのはこの世のことでしょう。考えてみるとハンニバルがまっとうで、耳を塞いで
自分だけは安全地帯にいようとしている大半の人間がおかしいのかもしれません。
自分だけがたすかろう、という心理をよくかんがえれば、とても冷酷だと
おもいます。極論すれば、自分がたすかれば、他人はどうなろうといい、というのは
自分が生きるために子供を食べるケダモノとなにがどうちがうの?大してちがわないのでは?
とおもいます。
叔父にひきとられたハンニバルが少しずつ立ち直っていくのは読んでいてうれしく、ハンニバル
がとてもいとおしく感じられますね。
ところで、文庫本のカバー、裏表紙の裏に”所詮”とあるのですが、笑っていいのでしょうか?

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No.11:
(3pt)

レクターの印象が変わる

「羊たちの沈黙」「ハンニバル」でハンニバルのクラリスへの接し方とミーシャへの優しさ、紫夫人への愛情などが重なる。レクターには狂気、知性、美食を併せ持った天才という印象があったけれど本書を読んでいると、好青年の復讐から後の怪物へとなかなかつながらない。
ダークサイドに堕ちていくところの描写にいまいち深みがなく、精神のタガが外れてしまう衝撃が、生まれ持った狂気を掘り起こしてしまうところをもう少し読みたかった。

ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)より
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No.10:
(4pt)

ハンニバルの人間形成と日本趣味

上巻は第一部となっており、ハンニバルの少年時代から青年時代にかかる部分が書かれています。

裕福で幸せな幼少時代を妹と共に暮らしています。その間に、ヤコフという数学の先生から「記憶の宮殿」を構築することを教えられます。これは、「ハンニバル」で示された考え方です。
そんな幸福な幼少時代も、第二次世界大戦の戦火によって終焉を迎えます。両親の死から孤児になった兄妹に襲いかかる過酷な状況は、妹を死に至らしめます。しかも、食べられるという事態になります。
そんなハンニバルが辿りついたのは、フランスの地です。そこで紫夫人に出会います。このあたりは、「源氏物語」を踏まえているということですが、その他にも宮本武蔵の水墨画に精通してゆくとか、伊達政宗の甲冑とか、日本趣味が全編に登場します。ついには、日本刀で最初の殺人を犯すに至ります。これは、紫夫人への愛情故になされます。
ここで面白いのは、頬肉が一番上手いと教えられ、殺した相手の頬肉をそぎ落とすところで、この先の人肉を食らうという彼の性癖が窺われます。

いずれにしても、今までの作品と雰囲気が違います。それを良しとするかどうかは、読む人次第ですが、私個人はハンニバルの人間形成の過程が良く解り、散りばめられた日本趣味もあり、楽しく読むことが出来ました。
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No.9:
(2pt)

がっかり

トマス・ハリスはだんだん面白くなくなっていく。本作中のあちこちに、どうだ、これでもか、とばかりにばらまかれた日本的小道具も、異国趣味を出ない。巻頭の宮本武蔵の絵を見たとたんいやな予感に襲われ、読み進むにつれて予感が実感に変わり、ついにハンニバルの叔母の紫夫人が「ブレイモノ!」と叫んだときは、思わず「ニホンか!」と呻いて、読むのを止めようとしたほどだ。プロットも登場人物も水っぽい。思い返せば、トマス・ハリスはレッド・ドラゴンが一番面白かった。トマス・ハリスに限らず、サイコものでこれ以上のものを知らない。レッド・ドラゴンに出てくる捜査官のグレアムがよかった。彼には感情移入できた、特にグレアムが犯人の手掛かりを掴む場面などは切ないほど同化できた。その記憶が強いので、ハリスを読み続けてきたのだが・・・がっかりだ。
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No.8:
(5pt)

満足するが…

読み進うちに、「ハンニバル」のときと同じく、レクターを応援している自分に気づく。
「日本」(ジャポニズムと言った方がいいか…)の扱い方も、よく研究されてると思わせるものでうまい。
ただ、個人的に「?」と思ったのは、「バッハの弦楽四重奏曲」というのと(オリジナルの弦楽四重奏曲がバッハにあったかしら?)、紫婦人が、宮城道雄の「春の海」を弾くところ。確か宮城道雄には、「水の変態」という曲もあったはず。もしくは、もう少しマイナーな曲のほうがよかったのかなあ…。でも、満足しました。
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No.7:
(3pt)

今ひとつ説得力にかける?

本作では、ハンニバル・レクターがいかにして、「怪物」になっていくのかが明らかになるのであろうと読者は誰もが期待するはず。
その重大な要因のひとつは、おそらくレクター家の「血筋」であろうし、戦時中のショッキングな「事件」であることは確かなんだろうけど、今ひとつ説得力にかけると感じてしまうのは何故か?レッドドラゴンに出てきた「噛みつき魔」などと比べると、明らかに人物描写に冴えが無いと思ってしまう。
源氏物語をはじめとして日本文化に関する事が色々出てきたのは、日本人として興味深く読ませてもらったが、それが無かったらあまり読む価値は無いかもしれない。
ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)より
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No.6:
(4pt)

結構面白く読めます。

「羊たちの沈黙」の時は「何をしでかすか分からない怖い人」という印象が強かったが、「ハンニバル」では意外に筋の通った人物であるという風に変り(女性、黒人などの被抑圧者階級に優しいとか)、この「ハンニバル・ライジング」では楽器のケースに刃物が仕込んであったり、恋人のピンチに駆けつける様が描かれたりと、マカロニ・ウェスタンのヒーローもどきになってしまった。それでも飽きさせずに最後までページを繰らせるのは、作者の力量ゆえか読者の期待感か?
日本文化についてかなり研究したとのことだが、おかしな点がないわけでもない。入浴中に召使に脱衣所で琴を弾かせたりする日本人はいないだろうし、買い物へ行くたびに刃物を持ち歩いたりする日本人もいないだろう。それでも許せてしまうのは、アメリカ映画などにありがちな日本文化に対する蔑視がないせいだと思う。多少の誤解や勘違いはあっても。
ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)より
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No.5:
(4pt)

ハンニバル・ライジング

ハンニバル・レクターはいかにして「人間」から「怪物」になったか。
言ってみれば「episodeI〜III」みたいなもんなんですが、いやぁ面白かった。
上下2巻、各1日で読了です。まぁ同じ文庫2冊の「レッド・ドラゴン」や「ハンニバル」と比べてボリューム感は半分という気もしますけれど。

ふと気づいてみればトマス・ハリスの作品は全部読んでいます。と言っても5作しか書いてない寡作家ですね。
今回はいつもの超絶技巧、超絶薀蓄という感じではありませんが、スピード感溢れる作品となっています。(日本文化が薀蓄ねたになっているのでとっつきやすいという部分もあります)
GWには映画化作品も公開されるのですが(若きハンニバル・レクターをやる役者は相当の美形ですぞ、ただ、トマス・ハリスが紫式部をイメージしたという「紫夫人」をコン・リーがやっているというのはいかがなものかと思わないでもないですが、「SAYURI」だってチャン・ツイイーだったしなぁ)、もしハンニバル・レクターに深い共感を覚えるスプラッターな方や、ペダンティック志向な方や、人の「業」に涙する方や、ただもう面白ければ何でもいいという方は、映画を観る前にぜひご一読を!
ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)より
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No.4:
(4pt)

これは教養小説だ!

上巻のレビューではストーリーのまとめを、下巻のレビューでは感想を書きます。

上巻はレクター博士の過酷な幼少期が描かれます。第二次大戦下のバルト沿岸、リトアニアがハンニバルレクターの生まれ故郷なのだが、幼いハンニバルは愛する家族を殺され、生きる代償に人間性を容赦なく奪われます。
幼い妹、ミーシャのエピソードが下巻に大きくつながっていきます。
下巻はフランスの叔父夫婦に引きとられたハンニバルの叔母「紫」への愛とミーシャの復讐が描かれます。
叔母紫は日本人であるため、養育されるハンニバルは日本語を話し、和歌を詠みます。
物語の最後に復讐を成し遂げたハンニバルは、その対価として紫と別れます。

ストーリーは天才ハンニバルの復讐と彼が成長し、
教養を身につけるとともに人間性を失っていく様を丁寧に追っています。
「レッドドラゴン」、「羊たちの沈黙」で描かれたサイコスリラーではありません。
「羊たちの沈黙」のあのドキドキする物語の圧力はありません。
一種の青春小説でもありますし、恋愛小説でもあり、
要するに教養小説のジャンルにくくられるのでしょうか。

確かにレクター誕生の秘密が描かれてますが、
さて、これを傑作と呼べるのでしょうか。
続きは下巻のレビューで。
ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)より
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No.3:
(5pt)

かわいそうで…

『羊たちの沈黙』『ハンニバル』で圧倒的な知性と力で魅了した博士。
その幼少期については『ハンニバル』の中でふれられていますが、この本の中では幼少期のほとんどが語られています。(まだ、『すべて』ではないかも…)
上巻では博士はまだ幼く、翻弄され、痛々しくさえありました。読み進むことにためらいを感じるほどに。
もって生まれた物ももちろんあり、それを見抜いている大人達もいるのですが、人格は経験で形作られるのだと思いました。
ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)より
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No.2:
(5pt)

映画化はさておき

あの怪物ハンニバル・レクター博士の幼少から青年期の物語。第二次大戦末期のリトアニアで凄惨な目にあわされた怨念と復讐…と言えば、何となくストーリーが想像できそうなのですが、「レッド・ドラゴン」「羊たちの沈黙」を読んでしまえば、読まぬわけにはいきません。それでもさすがに寡作家のトマス・ハリスは小説でなければ味わえぬものを用意してくれています。前作「ハンニバル」の映画化ではかなりのいい場面が省略されていました。本作でも迫力あるシーンがあるのですが、これも省略されて、呆気なく描かれるでしょう。映画に期待するよりもまず原作を読むべき、そういう一作です。
ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)より
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No.1:
(5pt)

ミーシャの“M”だ

究極のアンチ・ヒーロー、ハンニバル・レクターが8歳の少年になって戻ってきた。トマス・ハリスのレクターシリーズは文庫出版の度にかかさず購入させてもらっているが、不満が一つ。あまりの面白さに一気読みしてしまい、楽しみが長く続かないのだ。レクターの幼少〜青年期を描いた本作品も、今までのシリーズと同様、ファンの期待を裏切ることのないクオリティをしっかり保っている。しかも、ページをめくると日本人にとってうれしいビッグサプライズが待っているという特典つきだ。

このシリーズにおける楽しみの一つは、なんといっても登場する悪人レベルが尋常ではないという点にある。前作「ハンニバル」では、レクター博士に植物人間にされたヴァージャーが、<養子にして囲っている子供をいじめてその涙でマティーニを割る>という究極のサディズムに度肝をぬかれた。本作品でレクターのディナー(標的)となるのは、第2次大戦中リトアニアに侵攻したドイツ軍に協力しレクター一族をほうむった悪人どもだ。レクターの関係者に対する非道きわまりない言動については、本作品の中で十分味わっていただきたい。

レクターの継母として登場する日本人女性“紫”の存在が、ダーティ・ハリーのような単なるリベンジ劇に本作品を終わらせてはいない。レクターの精神形成に日本文化が大きな比重を占めていたという事実は、日本人にとって少々複雑ではある。だが、彼の美意識の根底をなす“無礼者許すまじ”の精神に武士道がかかわっていたことは、日本人として鼻が高い。読者をストーリーにたくみに引き込むラストの急展開もいつも通りで、近日公開される映画が今から楽しみだ。

ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)より
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